ピタゴラスの定理

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ファイル:Pythagoras theorem leonardo da vinci.png
レオナルド・ダ・ヴィンチによるピタゴラスの定理の証明。橙色のついた部分を 90 度回転し、緑色の部分は裏返して橙色に重ねる。

初等幾何学におけるピタゴラスの定理(ピタゴラスのていり、: Pythagorean theorem)は、直角三角形の3の長さの関係を表す。斜辺の長さを c, 他の2辺の長さを a, b とすると、定理は

[math]c^2=a^2+b^2[/math]

が成り立つという等式の形で述べられる[1][2][3]三平方の定理(さんへいほうのていり)、勾股弦の定理(こうこげんのていり)とも呼ばれる。

ピタゴラスの定理によって、直角三角形をなす3辺の内、2辺の長さを知ることができれば、残りの1辺の長さを知ることができる。例えば、直交座標系において原点と任意の点を結ぶ線分の長さは、ピタゴラスの定理に従って、その点の座標成分を2乗したものの総和の平方根として表すことができる[注 1]。このことは2次元の座標系に限らず、3次元の系やより大きな次元の系についても成り立つ。この事実から、ピタゴラスの定理を用いて任意の2点の間の距離を測ることができる。このようにして導入される距離はユークリッド距離と呼ばれる。

ピタゴラス直角二等辺三角形のタイルが敷き詰められた床を見ていて、この定理を思いついた」など幾つかの逸話が知られているものの、この定理はピタゴラスが発見したかどうかは分からない。バビロニア数学プリンプトン322古代エジプト[4]などでもピタゴラス数については知られていたが、彼らが定理を発見していたかどうかは定かではない。

中国古代の数学書『九章算術』や『周髀算経』でもこの定理が取り上げられている。中国ではこの定理を勾股定理商高定理等と呼び、日本の和算でも中国での名称を用いて鉤股弦の法(こうこげんのほう)等と呼んだ[5]三平方の定理という名称は、敵性語が禁じられていた第二次世界大戦中に文部省の図書監修官であった塩野直道の依頼を受けて、数学者末綱恕一が命名したものである[6]

ピタゴラス数

a2 + b2 = c2 を満たす自然数の組 (a, b, c)ピタゴラス数またはピタゴラスの三つ組数 (Pythagorean triple) という。特に、a, b, c互いに素であるピタゴラス数 (a, b, c)原始的 (primitive) あるいは (prime) であるといい、そのようなピタゴラス数は原始ピタゴラス数 (primitive Pythagorean triple) などと呼ばれる。全てのピタゴラス数は、原始ピタゴラス数の正の整数倍により得られる。

ピタゴラス数 (a, b, c) が原始的であるためには、3つのうち2つが互いに素であることが必要十分である。

原始ピタゴラス数の具体例は a < b とすると以下の数となる。ただし同じ数値が重複している場合は重複の数だけ異なる数で表せることを示している。

a : 3, 5, 7, 8, 9, 11, 12, 13, 15, 16, 17, 19, 20, 20, 21,… (オンライン整数列大辞典の数列 A020884)
b : 4, 12, 15, 21, 24, 35, 40, 45, 55, 56, 60, 63, 72, 77,… (オンライン整数列大辞典の数列 A020883)
c : 5, 13, 17, 25, 29, 37, 41, 53, 61, 65, 65, 73, 85, 85,… (オンライン整数列大辞典の数列 A020882)

ピタゴラス数の性質

ファイル:TomoyukiMogi(StructureOfPythagoreanTriple).gif
2つの整数mとn(m>n≧1)を基にピタゴラス数(a,b,c)を生成できることを示した図。単一の黄色の長方形および正方形の面積はいずれも[math]m^2 n^2[/math]となっている。
ファイル:TomoyukiMogi(FormationOfPythagoreanTriple).gif
色付きの正方形群で三辺の長さが整数の直角三角形を表した例。正方形の合計数は図中右上のように1つの長方形内に余白なく収まるものとなっている。
ファイル:TomoyukiMogi(Pythagorean Triple) 2.gif
ピタゴラス数を面積及び長さの比で表した図。青は[math]m^2-n^2[/math]、緑は[math]2mn[/math]、赤は[math]m^2+n^2[/math]を表現している。右上の矢印の先で青の長方形の右の辺の延長線並びに赤と青の円弧が交差していることで、面積及び長さの比が直角三角形の三辺の比として成り立っていることが確認できる。
ファイル:TomoyukiMogiIntegralTriangle2.gif
数1に相当する長さを定めた上でピタゴラス数の関係を長さで表した図。ピタゴラス数を表現する長さが直角三角形(桃色)の三辺として成り立っていることが確認できる。(赤矢印が示す交点一致)

自然数の組 (a, b, c) が原始ピタゴラス数であるためには、ある自然数 m, n

  • mn は互いに素
  • m > n
  • mn奇数

を満たすとして、

(a, b, c) = (m2n2, 2mn, m2 + n2) or (2mn, m2n2, m2 + n2)

であることが必要十分である。上記の (m, n) は無数に存在し、2mn は重複しないから、原始ピタゴラス数は無数に存在する。これにより、すべての原始ピタゴラス数を重複なく見つけ出すことができる。

例えば

(m, n) = (2, 1) のとき (a, b, c) = (3, 4, 5)
(m, n) = (3, 2) のとき (a, b, c) = (5, 12, 13)
(m, n) = (4, 1) のとき (a, b, c) = (8, 15, 17)

である。

原始ピタゴラス数 (a, b, c) について、次のような性質も成り立つ。

  • a または b4 の倍数
  • a または b3 の倍数
  • a または b または c5 の倍数

また、一般のピタゴラス数 (a, b, c) に対して、S = 1/2ab(直角三角形の面積)は平方数でない。

直角三角形の三辺の長さを整数とするための調整

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ファイル:TomoyukiMogi(SquarePythagoreanTriples3a).gif
直角三角形の三辺の長さを整数とするための調整の図

直角三角形の三辺の長さを整数とするための調整の図において、赤の正方形の面積から青の正方形の面積を差し引いた残りの面積を互いに合同な黄の長方形4枚で占めている。

黄の長方形の長辺と短辺の長さが整数であれば、

  • 赤の正方形の辺の長さは黄の長方形の長辺と短辺の和
  • 青の正方形の辺の長さは黄の長方形の長辺と短辺の差

となり、いずれも整数として表せることになる。

また、黄の長方形の面積を整数の二乗で表せれば、黄の長方形4枚分の面積に等しい緑の正方形の辺の長さも整数で表すことができる。

なおかつ、二つの正方形(緑と青)の面積の和が別の正方形(赤)の面積となることにもなり、この場合、三つの正方形の各辺の長さを用いて直角三角形(桃色)を作れることになる。

ただし、黄の長方形は当然正方形となってはならず(長辺と短辺の差によって青の正方形を作る必要がある)、互いに異なりながらその積が整数の二乗となる2つの数を黄の長方形の幅と高さに割り当てる必要がある。

それを実現する方法の一つとして、黄の長方形の幅と高さをそれぞれ異なる整数の二乗とする方法がある。

図では、数1の長さを定めた上で整数m,n(m>n≧1)の長さも設定し、それぞれの二乗を黄の長方形の辺の長さにしている。

(緑の正方形の辺の長さは [math]4m^2n^2[/math] の正の平方根 [math]2mn[/math] となる。)

青、緑、赤の各正方形の辺の長さをa,b,cとすると、

  • [math]a=m^2-n^2[/math]
  • [math]b=2mn[/math]
  • [math]c=m^2+n^2[/math]

となり、それぞれ整数であり、[math]a^2+b^2=c^2[/math] が成り立つので、a,b,cを三辺の長さとする三角形(桃色)は直角三角形となる。

Jesmanowicz 予想

1956年に Jesmanowicz が以下の予想を提出した。

(a, b, c) を原始ピタゴラス数、n を自然数とする。x, y, z

[math](an)^x+(bn)^y=(cn)^z[/math]

で自然数解を持つには、

[math]x=y=z=2[/math]

であることが必要である。

一般化

角の一般化

第二余弦定理

c2 = a2 + b2 − 2ab cos C

はピタゴラスの定理を C = π/2 = 90° → cos C = 0 の場合として含む。 つまり、第二余弦定理はピタゴラスの定理を一般の角度について拡張した定理になっている。

指数の一般化

指数の 2 の部分を一般化すると

an + bn = cn

となる。n = 2 の場合は自明でない(つまり a, b, c のいずれも 0 でない)整数解は実質原始ピタゴラス数であり、無数に存在するが、n ≥ 3 の場合には自明でない整数解は存在しない(詳細はフェルマーの最終定理を参照)。

次元の一般化

3次元空間内に平面があるとき、その閉領域 S の面積は、yz 平面、zx 平面、xy 平面への射影の面積 Sx, Sy, Sz を用いて

[math]S^2={S_x}^2+{S_y}^2+{S_z}^2[/math]

と表される。これは高次元へ一般化できる。

ピタゴラスの定理の証明

この定理には数百通りもの異なる証明が知られている。ここにいくつかの代表的な証明を挙げる。

以下では頂点 A, B, C からなる三角形を △ABC と表す。また、各辺 AB, BC, CA に向かい合う角をそれぞれ ∠C, ∠A, ∠B と表し、各頂点 A, B, C対辺 BC, CA, AB長さをそれぞれ a, b, c と表す。 頂点の記号は直角三角形 △ABC直角∠C になるように与える。

相似による証明

ファイル:Pythagoras1.jpg
相似を用いた証明

頂点 C から斜辺 AB に下ろした垂線の足を H とする。△ABC, △ACH, △CBH は互いに相似である。よって △ABC△ACH の相似比より

[math]\text{AC}:\text{AH} = \text{AB}:\text{AC} \Longrightarrow \text{AH} = { \text{AC} \times \text{AC} \over \text{AB} } = {b^2 \over c}[/math]

であり、同様に △ABC△CBH の相似比より

[math]\text{BH} = {a^2 \over c}[/math]

である。したがって

[math]c = \text{AB} = \text{AH} + \text{BH} = {b^2 \over c} + {a^2 \over c}[/math]

であるから、両辺に[math]c[/math] を掛けて

[math]c^2=a^2+b^2[/math]

を得る。

正方形を用いた証明

ファイル:Pythagoras2.jpg
正方形を用いた証明

△ABC合同な4個の三角形を図のように並べると、外側に一辺が a + b正方形(以下「大正方形」)が、内側に一辺が c の正方形(以下「小正方形」)ができる。

(大正方形の面積)=(小正方形の面積)+(直角三角形の面積)× 4

である。大正方形の面積(a + b)2, 小正方形の面積は c2, 直角三角形4個の面積の合計は

[math]{ab \over 2} \times 4 = 2ab[/math]

である。これらを代入すると、

[math](a+b)^2=c^2+2ab[/math]

整理して

[math]a^2+b^2=c^2[/math]

を得る。

ファイル:Pythagoras-2a.gif
幾何学的な証明

内接円を用いた証明

△ABC の面積 Sテンプレート:NumBlk である。また △ABC内接円半径r とすると

[math]c=(a-r)+(b-r)[/math]

であり、これを半径 r について解くと テンプレート:NumBlk となる。一方、三角形の面積 S を内接円の半径 r を用いて表すと テンプレート:NumBlk となる。テンプレート:EquationNoteテンプレート:EquationNote, テンプレート:EquationNote を代入すると

[math]{ab \over 2}={(a+b-c)(a+b+c) \over 4}[/math]

となり、整理すると

[math]a^2+b^2=c^2[/math]

が得られる。

オイラーの公式を用いた証明

三角関数と指数関数は冪級数によって定義されているものとする。(指数法則やオイラーの公式の証明に本定理が使用されない定義であればよい。)まず sin2 θ + cos2 θ = 1 が任意の複素数 θ に対して成り立つことを(3通りの方法で)示す。

オイラーの公式より

[math]\begin{align}1&=e^0=e^{i\theta-i\theta}=e^{i\theta}e^{-i\theta}\\ &=(\cos \theta+i\sin \theta)(\cos \theta-i\sin \theta)\\ &=\sin^2 \theta+\cos^2 \theta\end{align}[/math]

または

[math]\begin{align} \sin^2 \theta+\cos^2 \theta &=\left(\frac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i}\right)^{2}+\left(\frac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2}\right)^{2}\\ &=\frac{e^{2i\theta}+e^{-2i\theta}-2}{-4}+\frac{e^{2i\theta}+e^{-2i\theta}+2}{4}\\ &=\frac{4}{4} =1 \end{align}[/math]

もしくは、オイラーの公式から三角関数の半角の公式を導出する。

[math]\begin{align} \sin^2 \theta &=\left(\frac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i}\right)^{2}\\ &=\frac{e^{2i\theta}+e^{-2i\theta}-2}{-4}\\ &=\frac{1-\cos2\theta}{2}\ ,\\ \cos^2 \theta &=\left(\frac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2}\right)^{2}\\ &=\frac{e^{2i\theta}+e^{-2i\theta}+2}{4}\\ &=\frac{1+\cos2\theta}{2} \ . \end{align}[/math]
テンプレート:NumBlk

テンプレート:EquationNote の式はピタゴラスの基本三角関数公式 (Fundamental Pythagorean trigonometric identity) と呼ばれている[7]

テンプレート:EquationNote の時点ですでに単位円上において本定理の成立が明らかである。なぜならば、本定理の逆は本定理を用いずに証明可能であるし、単位円上の任意の点の座標は (cosθ, sinθ) で表せるからである[8]

さて、前提とした △ABC について考え、∠A = θ とおけば

[math]a = c \cdot \sin \theta[/math]
[math]b = c \cdot \cos \theta[/math]

したがって テンプレート:NumBlk テンプレート:NumBlk テンプレート:EquationNote, テンプレート:EquationNote より テンプレート:NumBlk テンプレート:EquationNote, テンプレート:EquationNote より

[math]a^2+b^2=c^2[/math]

が得られる。

三角関数の微分公式を用いた証明

正弦および余弦関数を微分すれば テンプレート:NumBlk テンプレート:NumBlk テンプレート:EquationNote, テンプレート:EquationNote および微分公式より

[math](\sin^2 \theta +\cos^2 \theta )'=2\sin \theta \cos \theta + 2 \cos \theta (-\sin \theta )=0[/math]

したがって

[math]\sin^2 \theta +\cos^2 \theta =C[/math]

ここで C は定数である。θ = 0 を代入すると sin 0 = 0, cos 0 = 1 であるので、C = 1 が得られる。よって テンプレート:NumBlk が得られる[9]。 ここで、前提とした △ABC について考え、∠A = θ とおいて、テンプレート:EquationNote および、三角関数と直角三角形の関係を考慮すれば

[math]a^2+b^2={a^2+b^2 \over 1}={a^2+b^2 \over \sin^2 \theta + \cos^2 \theta}={a^2+b^2 \over {a^2+b^2 \over c^2}}=c^2[/math]

が得られる。

三角関数の不定積分を用いた証明

下記のように関数を定める。

[math]\begin{align}f(\theta)=\sin^2 \theta+\cos^2 \theta .\end{align}[/math]

上記を漸化式を利用して不定積分すると

[math]\begin{align}\int f(\theta) d\theta &= \int (\sin^2 \theta) d\theta + \int (\cos^2 \theta) d\theta\\ &=\left ({1 \over 2}\theta - {1 \over 2}\sin\theta\cos\theta +C_{1} \right ) + \left ({1 \over 2}\theta + {1 \over 2}\sin\theta\cos\theta +C_{2} \right )\\ &= \theta + C_{1} +C_{2}\end{align}[/math]

である[10]微分積分学の基本定理を考慮し、これを微分すると

[math]\begin{align}\frac{d}{d\theta} \left \{\int f(\theta) d\theta \right \} &= f(\theta) &= \frac{d}{d\theta}(\theta + C_{1} +C_{2}) &= 1\end{align}[/math]

である。したがって

[math]\begin{align}f(\theta)=\sin^2 \theta+\cos^2 \theta &= 1 .\end{align}[/math]

ゆえに、ピタゴラスの定理は成立する。

三角関数の加法定理を用いた証明

三角関数は級数など(幾何以外の原理)によって定義されているものとし、オイラーの公式など(証明に本定理を使用しない方法)によって導出された三角関数の加法定理を用いれば

[math]1 = \cos 0 = \cos( \theta - \theta ) = \cos \theta \cos \theta + \sin \theta \sin \theta = \cos^2 \theta + \sin^2 \theta[/math]

または

[math]\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = \sin \theta \cos \left( \frac{\pi}{2} - \theta \right) + \cos \theta \sin \left( \frac{\pi}{2} - \theta \right) = \sin \frac{\pi}{2} =1[/math]

が得られる[11][12]。 また、加法定理を応用した三角関数の積和公式を用いて

[math]\begin{align} \sin^2 \theta &= \frac{\cos(\theta - \theta) - \cos(\theta + \theta)}{2}\\ &= \frac{1 - \cos 2\theta}{2} \end{align}[/math]
[math]\begin{align} \cos^2 \theta &= \frac{\cos(\theta - \theta) + \cos(\theta + \theta)}{2}\\ &= \frac{1 + \cos 2\theta}{2} \end{align}[/math]

したがって

[math]\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1[/math]

が得られる。 両辺に c 2 を乗算して

[math]c^2\sin^2 \theta + c^2\cos^2 \theta = c^2[/math]

ここで、前提とした △ABC について考え、∠A = θ とおいて、三角関数と直角三角形の関係を考慮すれば

[math]c^2 \times \left({a \over c}\right)^2 + c^2 \times \left({b \over c}\right)^2 = c^2[/math]

よって

[math]a^2+b^2=c^2[/math]

が得られる[11]

冪級数展開を用いた証明

三角関数は級数によって定義されているものとし、cosθsinθ の自乗をそれぞれ計算すると

[math]\begin{align} \sin^2 \theta &=\left(\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{(2n+1)!}\theta^{2n+1}\right)^2\\ &=\sum_{n=0}^\infty \sum_{k=0}^n \frac{(-1)^k}{(2k+1)!} \frac{(-1)^{n-k}}{(2n-2k+1)!}\theta^{2n+2}\\ &=\sum_{n=0}^\infty \frac{(-1)^n \theta^{2n+2}}{(2n+2)!} \sum_{k=0}^{n} \binom{2(n+1)}{2k+1}\\ &=\sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n-1} \theta^{2n}}{(2n)!} \sum_{k=0}^{n-1} \binom{2n}{2k+1}\\ &=- \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n} \theta^{2n}}{(2n)!} \sum_{k=0}^{n-1} \binom{2n}{2k+1}\\ \cos^2 \theta &=\left(\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{(2n)!}\theta^{2n}\right)^2\\ &=\sum_{n=0}^\infty \sum_{k=0}^n \frac{(-1)^k}{(2k)!} \frac{(-1)^{n-k}}{(2n-2k)!}\theta^{2n}\\ &=\sum_{n=0}^\infty \frac{(-1)^n \theta^{2n}}{(2n)!} \sum_{k=0}^{n} \binom{2n}{2k}\\ &=1+\sum_{n=1}^\infty \frac{(-1)^n \theta^{2n}}{(2n)!} \sum_{k=0}^{n} \binom{2n}{2k} \end{align}[/math]

となる[注 2]。ここで二項定理より

[math]\begin{align} \sum_{k=0}^{n} \binom{2n}{2k} - \sum_{k=0}^{n-1} \binom{2n}{2k+1} &= \sum_{m = 0}^{2n} (-1)^m {2n \choose m} &= (1 - 1)^{2n} &= 0 \end{align}[/math]

である。したがって

[math]\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1[/math]

が得られる。 ここで、前提とした △ABC について考え、∠A = θ とおいて、三角関数と直角三角形の関係を考慮し、各辺のを考えれば

[math]\sin^2 \theta : \cos^2 \theta : 1=a^2:b^2:c^2[/math]

であるから

[math]a^2+b^2=c^2[/math]

が得られる[13]

回転行列を用いた証明

平面の原点を中心とする角 θ回転

[math]R(\theta)=\begin{bmatrix} \cos \theta&-\sin \theta\\ \sin \theta&\cos \theta \end{bmatrix}[/math]

で表される。 R (θ) R (−θ) = I2単位行列)であるが[14]、この式の左辺を直接計算すると

[math]\begin{align} R(\theta) \cdot R(-\theta) &= \begin{bmatrix} \cos \theta&-\sin \theta\\ \sin \theta&\cos \theta \end{bmatrix} \begin{bmatrix} \cos \theta&\sin \theta\\ -\sin \theta&\cos \theta \end{bmatrix}\\ &= \begin{bmatrix} \cos^2 \theta+\sin^2 \theta&\cos \theta\sin \theta-\sin \theta \cos \theta\\ \sin \theta \cos \theta-\cos \theta\sin \theta&\sin^2 \theta+\cos^2 \theta \end{bmatrix}\\ &= \begin{bmatrix} \sin^2 \theta+\cos^2 \theta&0\\ 0&\sin^2 \theta+\cos^2 \theta \end{bmatrix} \end{align}[/math]

となる[15]。したがって

[math]\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1[/math]

が得られる[16]。 ここで、前提とした △ABC について考え、∠A = θ とおいて、三角関数と直角三角形の関係を考慮すれば、正弦定理より

[math]\begin{align} \frac{a}{\sin \theta} &= \frac{b}{\sin (\pi-\frac{\pi}{2}-\theta)} = \frac{c}{\sin (\frac{\pi}{2})}\\ \frac{a}{\sin \theta} &= \frac{b}{\cos \theta} = c \end{align}[/math]

であるから

[math]a^2+b^2=c^2[/math]

が得られる。

三角関数と双曲線関数を用いた証明

任意の zC に対し

[math]\begin{align} \sin^2 iz + \cos^2 iz &= (i\sinh z)^2 + \cosh^2 z\\ &= \cosh^2 z - \sinh^2 z\\ &=1 \end{align}[/math]

である[17][18]。よって任意の θ ∈ C に対して

[math]\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1[/math]

が成り立つ。 ここで、前提とした △ABC について考え、∠A = θ とおいて、三角関数と直角三角形の関係を考慮すれば、連比関係より

[math]\frac{a^2}{\sin^2 \theta} = \frac{b^2}{\cos^2 \theta} = c^2[/math]

であるから

[math]a^2+b^2=c^2[/math]

が得られる。

ピタゴラスの定理の逆の証明

ピタゴラスの定理の逆とは、△ABC に対して

[math]a^2+b^2=c^2[/math]

が成立すれば、△ABC∠C = π/2 の直角三角形であるというものである。以下に証明を示す。

ピタゴラスの定理に依存しない証明

a 2 + b 2 = c 2 を満たす △ABC において、線分 ABb 2 : a 2 の比に内分する点を D とすると

[math]\begin{align} \text{AD} &= c \times \frac{b^2}{b^2+a^2}\\ &= c \times \frac{b^2}{c^2}\\ &= \frac{b^2}{c}\\ \text{DB} &= c \times \frac{a^2}{b^2+a^2}\\ &= c \times \frac{a^2}{c^2}\\ &= \frac{a^2}{c} \end{align}[/math]

である。これより、△ABC と △ACD において

[math]\begin{align} \text{AB} : \text{AC} &= c : b\\ \text{AC} : \text{AD} &= b : \frac{b^2}{c} = c : b \end{align}[/math]

であるから

[math]\text{AB} : \text{AC} = \text{AC} : \text{AD}[/math]

が成り立つ。ここで

[math]\angle \text{BAC} = \angle \text{CAD}[/math]

であるから、2辺比夾角相等より

[math]\triangle \text{ABC} \sim \triangle \text{ACD}[/math]

が成り立つ。したがって

[math]\angle \text{ACB} = \angle \text{ADC}[/math]

である。 同様に △ABC と △CBD において

[math]\begin{align} \text{AB} : \text{BC} &= c : a\\ \text{CB} : \text{BD} &= a : \frac{a^2}{c} = c : a \end{align}[/math]

であるから

[math]\text{AB} : \text{BC} = \text{CB} : \text{BD}[/math]

が成り立つ。ここで

[math]\angle \text{ABC} = \angle \text{CBD}[/math]

であるから、2辺比夾角相等より

[math]\triangle \text{ABC} \sim \triangle \text{CBD}[/math]

が成り立つ。したがって

[math]\angle \text{ACB} = \angle \text{CDB}[/math]

である。ここで

[math]\angle \text{ADC} + \angle \text{CDB} = \pi[/math]

であるから

[math]\angle \text{ACB} + \angle \text{ACB} = 2 \angle \text{ACB} = \pi[/math]

である。したがって

[math]\angle \text{ACB} = \frac{\pi}{2}[/math]

である[8]。ゆえに、△ABC∠C = π/2 の直角三角形である。

同一法を用いた証明

ファイル:Inverse of Pythagorean theorem.jpg
ピタゴラスの定理を用いた証明

Bテンプレート:'Cテンプレート:' = a, Aテンプレート:'Cテンプレート:' = b,∠Cテンプレート:' = π/2 である直角三角形 Aテンプレート:'Bテンプレート:'Cテンプレート:' において、Aテンプレート:'Bテンプレート:' = cテンプレート:' とすれば、ピタゴラスの定理より テンプレート:NumBlk が成り立つ。 一方、仮定から △ABC において テンプレート:NumBlk が成り立っている。テンプレート:EquationNoteテンプレート:EquationNote より

[math]c^2=c'\,^2[/math]

c > 0, cテンプレート:' > 0 より

[math]c=c'[/math]

したがって、3辺相等から

[math]\triangle \text{ABC} \equiv \triangle \text{A'B'C'}[/math]

よって、∠C = ∠Cテンプレート:' = π/2 である[8]。 ゆえに、△ABC∠C = π/2 の直角三角形である。

対偶を用いた証明

△ABC において ∠C ≠ π/2 であると仮定する。頂点 A から直線 BC に下した垂線の足を D とし、AD = h, CD = d とする。

∠C < π/2 の場合、直角三角形 ABD においてピタゴラスの定理より

[math]\begin{align} c^2 &= (a-d)^2+h^2\\ &= a^2-2ad+d^2+h^2 \end{align}[/math]

であり、同様に直角三角形 ACD では

[math]b^2=d^2+h^2[/math]

である。よって

[math]c^2 = a^2-2ad+b^2 \lt a^2+b^2[/math]

となる。

∠C > π/2 の場合も同様に考えて

[math]\begin{align} c^2 &= (a+d)^2+h^2\\ &= a^2+2ad+d^2+h^2\\ &= a^2+2ad+b^2 \end{align}[/math]

ゆえに

[math]c^2 \gt a^2+b^2[/math]

となる。

よっていずれの場合も

[math]a^2+b^2 \ne c^2[/math]

である。対偶を取って、a 2 + b 2 = c 2 ならば ∠C = π/2 である。

なお、この証明から分かるように、

  • ∠C < π/2a 2 + b 2 > c 2
  • ∠C = π/2a 2 + b 2 = c 2
  • ∠C > π/2a 2 + b 2 < c 2

という対応がある。

余弦定理を用いた証明

ピタゴラスの定理は既に証明されているとする。△ABC において、a = BC, b = CA, c = AB, C = ∠ACB とおくと、余弦定理より

[math]c^2=a^2+b^2-2ab\cos C[/math]

である。仮定より

[math]a^2+b^2=c^2[/math]

であるから

[math]\cos C=0[/math]

である。三角形の内角の和は π であるから、0 < C < π である。 したがって

[math]\angle \text{ACB}=\cos^{-1} 0=\frac{\pi}{2}[/math]

である。ゆえに、△ABC は ∠C = π/2 の直角三角形である。

ベクトルを用いた証明

ピタゴラスの定理は既に証明されているとする。△ABC において

[math]\Vert \vec c \|^2 = \Vert \vec a \|^2 + \Vert \vec b \|^2[/math]

であり

[math]\vec c = \vec b - \vec a[/math]

である。 ここで

[math]\begin{align} \Vert \vec c \|^2 &= \vec c \cdot \vec c \\ &= (\vec b - \vec a) \cdot (\vec b - \vec a) \\ &= \Vert \vec b \|^2 - 2\vec b \cdot \vec a + \Vert \vec a \|^2 \\ \end{align}[/math]

である。したがって

[math]\vec b \cdot \vec a = 0[/math]

である。よって

[math]\angle \text{C}=\frac{\pi}{2}[/math]

である。ゆえに、ピタゴラスの定理の逆が証明された。

脚注

注釈

  1. 2次元の座標系を例に取ると、ある点 Px 軸成分を x, y 軸成分を y とすると、原点から P = (x, y) までの距離は x2 + y2 と表すことができる。ここで 平方根を表す。
  2. 級数の収束半径は であるからこれは任意の複素数 θ に対して成り立つ

出典

  1. 大矢, 真一 『ピタゴラスの定理』 東海大学出版会〈Tokai library〉、2001年8月。ISBN 4-486-01558-4。
  2. 大矢, 真一 『ピタゴラスの定理』 東海大学出版会〈東海科学選書〉、1975年。
  3. 大矢, 真一 『ピタゴラスの定理』 東海書房、1952年。
  4. 亀井喜久男. “エジプトひもで古代文明に挑戦しよう”. . 2008閲覧.
  5. コラム ピタゴラスの定理 江戸の数学 国立国会図書館
  6. 「ピタゴラスの定理」を「三平方の定理」という由来は?(2013年11月28日時点のアーカイブ) - 道新ぶんぶんクラブ(北海道新聞社)
  7. Leff, Lawrence S. (2005). PreCalculus the Easy Way, 7th, Barron's Educational Series. ISBN 0-7641-2892-2. 
  8. 8.0 8.1 8.2 三平方の定理の逆の証明”. . 2014閲覧.
  9. 新関章三(元高知大学),矢野 忠(元愛媛大学). “数学・物理通信”. . 2014閲覧.
  10. 不定積分の漸化式
  11. 11.0 11.1 三平方の定理の証明”. . 2014閲覧.
  12. Einige spezielle Funktionen”. . 2014閲覧.
  13. Hamilton, James Douglas (1994). “Power series”, Time series analysis. Princeton University Press. ISBN 0-691-04289-6. 
  14. 行列と1次変換”. . 2014閲覧.
  15. 対称行列と直交行列”. . 2014閲覧.
  16. Solution for Assignment”. . 2014閲覧.
  17. 双曲線関数について”. . 2014閲覧.
  18. Complex Analysis Solutions”. . 2014閲覧.
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参考文献

  • 出光, 英則ピタゴラスがくれたおくり物 ピタゴラスの定理銀林浩編、国土社〈数学ワンダーランド 7〉、1997年8月。ISBN 4-337-56207-9。
  • 数学の隠れたハーモニー ピタゴラスの定理のすべて水谷淳訳、ソフトバンククリエイティブ、2011年12月。ISBN 978-4-7973-6467-5。 — 原題:Hidden harmonies.
  • シルヴァーマン, ジョセフ・H 『はじめての数論 発見と証明の大航海 ピタゴラスの定理から楕円曲線まで』 鈴木治郎訳、ピアソン・エデュケーション、2007年4月、原著第3版。ISBN 978-4-89471-492-2。 — 原題:A friendly introduction to number theory (3rd ed.).
  • マオール, エリピタゴラスの定理 4000年の歴史伊理由美訳、岩波書店、2008年2月。ISBN 978-4-00-005878-0。 — 原題:The Pythagorean theorem.
  • 森下, 四郎 『ピタゴラスの定理100の証明法 幾何の散歩道』 プレアデス出版、2010年8月、改訂版。ISBN 978-4-903814-36-0。
  • 森下, 四郎 『ピタゴラスの定理をめぐる2つの謎 三平方の定理の謎』 プレアデス出版、2010年12月。ISBN 978-4-903814-39-1。

関連項目

外部リンク