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{{Redirect|ハドソン・ベイ|列車|ハドソン・ベイ (列車)}}[[ファイル:Hudsonbay.png|thumb|300px|ハドソン湾地図]]
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[[ファイル:ハドソン湾.jpg|サムネイル]]
[[ファイル:HudsonBay.MODIS.2005may21.jpg|thumb|300px|春5月、湾の東の海岸では流氷が流れているが、湾中央はまだ凍っている。]]
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'''ハドソン湾'''(ハドソンわん、英語:Hudson Bay、仏語:baie d'Hudson)
'''ハドソン湾'''(ハドソンわん、英語:Hudson Bay、仏語:baie d'Hudson)は、[[カナダ]]北東にある面積123万平方kmにおよぶ大きな[[湾]]。その水深は比較的浅い。西経78度から95度、北緯51度から70度までの範囲に広がる。島が多く、[[多島海]]のひとつ。
 
  
湾内には[[オタワ諸島]]、[[ベルチャー諸島]]、[[アキミスキ島]]などの島があり、全て[[ヌナブト準州]]に属している。ハドソン湾の南部、[[オンタリオ州]]と[[ケベック州]]の境に向かって[[ジェームズ湾]]が切れ込んでいる。また東は[[ハドソン海峡]]で[[大西洋]]に、北は[[フォックス海峡]]と[[ローズウェルカム海峡]]から[[フォックス湾]]などを経て、[[北極海]]と繋がっている。[[国際水路機関]](IHO)はハドソン湾を北極海の一部に分類している。
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[[カナダ]]北東部の湾。面積 81万9000km<sup>2</sup>。広義には[[ジェームズ湾]],フォックス海峡,フォックスベーズン ()フォックスベーズン () ,ハドソン海峡,アンゲーバ湾を含む (面積 124万3200km<sup>2</sup>) 。平均水深は 100mと浅く,海底はきわめて平坦。湾の西部には粗粒な堆積物が,中央部には泥またはシルト (微砂) が分布する。河川の流入で塩分は少ない。沿岸部は永久凍土で,水面も 1~5月は流氷に覆われる。1498年ジョバンニ・カボートが発見したといわれ,1610年ヘンリー・ハドソンがアンゲーバ湾岸からジェームズ湾岸までを調査し,1612年トーマス・バトンが東海岸の地図を完成した。西岸部の調査は,1929~31年に行なわれた。近年は年平均 50~60隻の船が出入りし,穀物を積み出している。アメリカインディアンやイヌイット(エスキモー)が海岸各地に分散して居住する。夏期にはタラ,サケなどを漁獲する。 
 
 
ハドソン湾に注ぐ河川のうち大きなものは東の[[ケベック州]]から注ぐ[[ラ・グランド川]]および、[[ウィニペグ湖]]から発し[[マニトバ州]]を流れる西の[[ネルソン川]](支流:[[ノースサスカチュワン川]]、[[サウスサスカチュワン川]]、[[サスカチュワン川]]、[[ボウ川]]、[[レッド川 (ネルソン川水系)|レッド川]])、および[[チャーチル川 (ハドソン湾)|チャーチル川]]である。また南の[[オンタリオ州]]からはジェームズ湾に[[オールバニー川]]、[[ムース川]]などが流れ込んでいる。ハドソン湾に流れる水系の流域は[[北アメリカ]]大陸の中央部からハドソン湾を取り囲む島々に広がり、面積は390万平方kmに及ぶ。カナダ国土の半分ほど([[ケベック州]]と[[オンタリオ州]]の北側の大部分、[[マニトバ州]]と[[サスカチュワン州]]のほとんど、[[アルバータ州]]の南半分、[[ヌナブト準州]]の南東部)と[[アメリカ合衆国]]の一部([[ノースダコタ州]]、[[ミネソタ州]])も含む。
 
 
 
ハドソン湾という名前は、[[1610年]]に湾を探検した[[ヘンリー・ハドソン]](Henry Hudson)にちなんでつけられた。先住民の東部[[クリー語]]ではハドソン湾を「泥の水」という意味の「Wînipekw」(南部方言)または「Wînipâkw」(北部方言)という。[[ウィニペグ湖]](Lake Winnipeg)と語源は同様である。
 
 
 
== 歴史 ==
 
[[ヘンリー・ハドソン]]は1610年8月、イギリス船ディスカバリー号(Discovery)でこの海域に達した。彼はイギリスやオランダの支援を受けながら三度にわたり北米大陸を迂回するアジアへの最短航路([[北西航路]])を見つけようとしたが、四度目の航海でついにグリーンランドの西海岸に出てハドソン湾まで達することができた。彼は湾内の地図製作や測量を行ったが、冬になると氷に閉じ込められ、ジェームズ湾で越冬した。春になって氷が解け始めると彼は西への航海を再開しようとしたが、厳しい航海と少ない備蓄に不満を募らせていた船員は1611年6月22日に反乱を起こし、ハドソンとその部下らは食料なしの小船で置き去りにされそのまま行方知れずとなった。
 
 
 
[[ファイル:Wpdms ruperts land.jpg|thumb|350px|[[ルパート・ランド]]]]
 
60年後の[[1668年]]にイギリス船ノンサッチ号(Nonsuch)が湾内に入り、沿岸のクリー系民族らと[[ビーバー]]の[[毛皮]]を交易することに成功した(それまでハドソン湾沿岸の良質の毛皮は、先住民同士の交易で南へ渡り、[[五大湖]]周辺で活動する[[フランス]]商人が独占的に扱っていた)。これがきっかけで[[1670年]]に[[ハドソン湾会社]](Hudson's Bay Company)が成立した。ハドソン湾会社は、ハドソン湾および湾に流れ込む河川の流域全土([[ルパート・ランド]] Rupert's Land)における交易の独占を勅許された。フランスはこれに対し何度も軍隊を送り対抗したが、[[1713年]]4月の[[ユトレヒト条約]]でルパート・ランドに対する主張を放棄した。
 
 
 
ハドソン湾会社は多くの砦や交易所を、湾岸の大きな河川の河口付近に設けた(オンタリオ州のフォート・セヴァーン Fort Severn、マニトバ州のヨーク・ファクトリー York Factory やチャーチル Churchill など)。これらの戦略的要所に設けられた拠点はルパート・ランドの内陸探検の基地となり、また河川を伝って往来する先住民たちとの[[毛皮交易]]の場ともなった。ハドソン湾会社はこれら毛皮を、モントリオールなどを経由せず最短距離でヨーロッパへ直送し、巨利を得た。これらの交易所は[[20世紀]]初頭まで使用された。ハドソン湾会社は Hudson's Bay Company と表記されたが、ハドソン湾自体は Hudson Bay が正式名称となっている。このため、湾名や会社名はしばしば混同された上で誤記されている。
 
 
 
ルパート・ランドはハドソン湾会社と[[北西会社]]との合併によりさらに北極海方面へ拡大したが、[[1870年]]にハドソン湾会社の独占権は撤廃され、ルパート・ランドはカナダの[[ノースウェスト準州]]の一部となった。
 
 
 
== 地理 ==
 
=== 気候 ===
 
年間を通じ寒冷で、平均気温はマイナス5度Cである。水温は西岸で夏に最高9度Cで、12月から6月に湾は結氷しているが、最近100年間の気温上昇により、17世紀に4か月しかなかった融氷期間が伸びてきた。
 
 
 
=== 水域 ===
 
ハドソン湾は南北1,370km、東西1,050kmに広がり、最大水深270mである。世界の海洋に比べ、[[海水]]の[[塩]]分濃度が低い。これは、
 
# 海水が余り蒸発しない(年のほとんどの期間、海面が氷で覆われているため)
 
# 地表を通ってきた大量の水が湾に流れ込むため(カナダの国土の相当部分の雨水はハドソン湾に流れる)
 
# さらに毎年流氷が溶けるたびに、河川からの流入量の三倍の淡水が湾の表層に供給される
 
# [[塩分濃度]]の高い大西洋との出入り口や海水のやり取りが少ない
 
ことが理由に挙げられる。
 
表面が凍るのは12月中旬から6月中旬にかけて。
 
 
 
=== 海岸 ===
 
[[ファイル:Ursus maritimus walks over ice.jpg|thumb|300px|ハドソン湾は11月には凍結する。チャーチル川付近で氷を渡るホッキョクグマ]]
 
オンタリオ州北部など、湾の西部沿岸は「ハドソン湾低地(または、ジェームズ湾西方の低地も含めハドソン・ジェームズ低地)」と呼ばれ、その面積は32万4,000平方kmにおよぶ。これら低地は多くの川が流れる[[湿地]]となっており、低木のほか[[トウヒ]]や[[ポプラ]]が生える[[マスケグ]](ムスケグ、muskeg)と呼ばれる特異な[[泥炭]]地になっている。この泥炭地は、北のツンドラと南のタイガ(針葉樹林)との移行地域である。湾周辺の土地は長年の[[氷河]]による侵食や湾の縮小により削られた跡がある。内陸部には、かつて湾が広い時期の海岸線だった地形が多く残っている。こうした泥炭地は岩盤が地下深くにあり、地表はぬかるむ湿地や無数の湖沼が主で夏は大量の虫が舞うため、家屋・道路の建設に適さず手つかずの自然が残っている。
 
 
 
ハドソン湾低地にはオンタリオ州のポーラー・ベア州立公園、マニトバ州のワプスク国立公園(wapusk とはクリー語で「[[ホッキョクグマ]]」の意味)がある。この周辺の泥炭地は、ホッキョクグマが住むほか、[[ヘラジカ|ムース]]、[[トナカイ|カリブー]]、[[ホッキョクギツネ]]、[[フクロウ]]、[[ハヤブサ]]などの多様な生物が生きる。海中には[[ワモンアザラシ]]や[[セイウチ]]、[[シロイルカ|ベルーガ]]や[[イッカク]]や[[ホッキョククジラ]]などがおり、とくにアザラシはホッキョクグマの貴重な食料となる。近年は、温暖化の影響からか流氷の量と凍結時間が減っており、たとえば[[ザトウクジラ]]や[[ミンククジラ]]、[[シャチ]]などがより進出してきている。<ref>Higdon W.J., Ferguson H.S., 2011 [http://www.bioone.org/doi/abs/10.1656/045.018.0309 Reports of Humpback and Minke Whales in the Hudson Bay Region, Eastern Canadian Arctic]. Northeastern Naturalist 18(3):370-377. [[BioOne]] Online Journals.</ref>
 
 
 
反対に、湾の東のケベック側海岸([[ラブラドル半島]]、およびその北部の[[アンガヴァ半島]])は、[[カナダ楯状地]]の縁に当たっており、岩が多く丘が連なっている。植生は[[タイガ]]となっており、さらに北は[[ツンドラ]]になっている。
 
 
 
=== 島 ===
 
ハドソン湾、特に東側の海岸付近には多くの島が浮かぶ。これらはすべてヌナブト準州の管轄に入っている。たとえば湾の南部、ケベック寄りにある比較的大きな群島、[[ベルチャー諸島]](Belcher Islands)もその一つである。
 
 
 
湾の入り口は、世界有数の面積の大きな島々でふさがれている。主な島は、西から順に[[サウサンプトン島]](Southampton)、[[コーツ島]](Coats)、[[マンセル島]](Mancel)があり、[[フォックス湾]]とハドソン湾を分けている。
 
 
 
== 地質 ==
 
[[ファイル:PGR_Paulson2007_Rate_of_Lithospheric_Uplift_due_to_PGR.png|right|thumb|450px|氷床の消失による[[リソスフェア]]上昇の割合(2007年の調査)]]
 
 
 
20~18億年前の原生代にこの地域でハドソン横断造山運動 ([[:en:Trans-Hudson orogeny|Trans-Hudson orogeny]])と呼ぶ大規模な大陸衝突が生じた。その後カンブリア紀は陸地であったが、オルドビス紀に海となり、シルル紀に再び隆起運動が起こり、デボン紀には陸現物を多く含む浅海堆積物が形成された。
 
 
 
1960年代に地球の[[重力場]]を地図化し始めた時、ハドソン湾に広大な低重力が観測された。[[最終氷期]]の{{仮リンク|ローレンタイド氷床|en|Laurentide ice sheet}}による地殻の圧縮が続いているためと当初考えられたが、[[GRACE (人工衛星)|GRACE]]人工衛星による詳細な観測で、それだけが[[重力異常]]の原因でなく、[[マントル対流]]に起因することが分かった。現在の観測では、湾を中心とした地域は年間に17mmと、氷床消失による地殻の上昇が世界でも最も大きい地域となっている。
 
 
 
湾の南東部には半円形の海岸線([[ナスタポカ諸島弧]])と、それに沿うように湾内に[[ベルチャー諸島]]が並んでいる。[[クレーター]]を想起させるこの地形の成因については、月面の[[危難の海]]との比較により[[先カンブリア時代]]に起きた地球外天体の衝突の衝撃によってハドソン湾が形成されたと主張する地質学者もいたが、現在においてなお[[地磁気]]や[[重力異常]]など地質学的に確実に衝突地形であるとされる証拠は発見されていない<ref>Eaton D. W. and F. Darbyshire, 2010, Lithospheric architecture and tectonic evolution of the Hudson Bay region. Tectonophysics. v. 480, pp. 1–22.</ref>
 
 
 
== 湾岸の自治体 ==
 
ハドソン湾岸にはほとんど住民がいない。町村の数はわずか1ダースほどであり、そのいくつかは17世紀末から18世紀にハドソン湾会社が設立した交易所が元になっている。ハドソン湾会社の交易所や経営する店舗が20世紀後半には閉鎖されており、住民の多くはクリー諸族や[[イヌイット]]である。
 
 
 
特に大きな町は以下の通り。
 
* ケベック州[[プヴィルニトゥク]](Puvirnituq):湾の北東部、イヌイットの1300人弱の集落
 
* ヌナブト準州[[ランキン・インレット]](Rankin Inlet):湾の北西部、[[キヴァリク地域]](Kivalliq Region)の中心
 
* ヌナヴト準州[[アルヴィアット]](Arviat、旧名エスキモー・ポイント Eskimo Point):湾の北西部、キヴァリク地域の町、人口2,060人)
 
* マニトバ州[[チャーチル (マニトバ州)|チャーチル]](Churchill):湾の西部、チャーチル川河口。名はハドソン湾会社で17世紀末に総督を務めた[[マールバラ公]][[ジョン・チャーチル (初代マールバラ公)|ジョン・チャーチル]]にちなむ。
 
 
 
=== 軍事基地 ===
 
東西[[冷戦]]が始まるまで、この地に軍事的重要性はなかった。[[1950年代]]、北極海を越えたソ連の攻撃に備え、ミッド・カナダ・ラインと呼ばれる防空レーダー網を構築するためレーダーサイトが北米大陸を横断するように設置され、この湾岸のいくつかの場所にもレーダーサイトがおかれた。
 
 
 
== 注釈 ==
 
<references />
 
  
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
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* [[ハドソン湾会社]]
 
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ハドソン湾.jpg

ハドソン湾(ハドソンわん、英語:Hudson Bay、仏語:baie d'Hudson)

カナダ北東部の湾。面積 81万9000km2。広義にはジェームズ湾,フォックス海峡,フォックスベーズン (湾)フォックスベーズン (湾) ,ハドソン海峡,アンゲーバ湾を含む (面積 124万3200km2) 。平均水深は 100mと浅く,海底はきわめて平坦。湾の西部には粗粒な堆積物が,中央部には泥またはシルト (微砂) が分布する。河川の流入で塩分は少ない。沿岸部は永久凍土で,水面も 1~5月は流氷に覆われる。1498年ジョバンニ・カボートが発見したといわれ,1610年ヘンリー・ハドソンがアンゲーバ湾岸からジェームズ湾岸までを調査し,1612年トーマス・バトンが東海岸の地図を完成した。西岸部の調査は,1929~31年に行なわれた。近年は年平均 50~60隻の船が出入りし,穀物を積み出している。アメリカインディアンやイヌイット(エスキモー)が海岸各地に分散して居住する。夏期にはタラ,サケなどを漁獲する。

関連項目




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