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'''コムギ'''(小麦)は[[イネ科]]コムギ属に属する[[一年生植物|一年草]]の[[植物]]。一般的には[[パンコムギ]]([[学名]]: ''[[w:Common wheat|Triticum aestivum]]'')を指すが、広義には[[クラブコムギ]](学名: ''[[w:Triticum compactum|Triticum compactum]]'')や[[デュラムコムギ]](学名: ''[[w:Durum|Triticum durum]]'')など'''コムギ属'''(学名: ''[[w:Wheat|Triticum]]'')の植物全般を指す。[[世界三大一覧#食|世界三大穀物]]の一つ。古くから栽培され、世界で最も生産量の多い[[穀物]]のひとつである。年間生産量は約7.3億トンであり、これは[[トウモロコシ]]の約10.4億トンには及ばないが、米の約7.4億トンにほぼ近い(2014年)。
+
'''コムギ'''(小麦)
  
他の三大穀物と同じく基礎食料であり、各国で生産された小麦はまずは国内で[[消費]]され、剰余が[[輸出]]される。
+
[[イネ科]]コムギ属に属する[[一年生植物|一年草]]の[[植物]]。
  
日本国内において、麦(小麦・[[大麦]]・[[はだか麦]])は[[食糧法]]により[[価格統制]]が存在する。
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[[イネ]]とともに世界的に最も重要な穀物の一つで,栽培の歴史も古い。小アジア地方原産と考えられ,ノハラフタツブコムギ <i>T. dicoccoides</i> とタルホコムギ <i>Aegilops squarrosa</i> との交雑により生じたと考えられている。[[穎果]]を精白し,味噌や醤油の原料に用い,また[[押麦]]にして米飯に混ぜることもあるが,大部分は製粉してパンや[[麺類]]をつくる。コムギ属には 10種以上あるが,最も広く栽培されるのがコムギで,品種も多く,アメリカ合衆国,ロシアをはじめ,カナダ,フランス,アルゼンチン,中国などでそれぞれの品種が栽培されている。またマカロニコムギ <i>T. durum</i> は果の形が長く[[グルテン]]に富み,[[マカロニ]][[スパゲティ]]製造に適していて,地中海や黒海地方でつくられている。
 
 
==構造・生態==
 
コムギの実は硬い外皮に覆われ、その中に可食部である[[胚乳]]と、[[胚芽]]が存在する。この3部分の割合は外皮が13.5%、胚乳が84%、胚芽が2.5%である<ref>岡田哲『コムギの食文化を知る事典』東京堂出版、2001年。p.26.</ref>。主に食用とするのは胚乳部分であり、製粉して小麦粉とするのはこの部分である。果皮や胚芽部分(ふすま)も食用とすることはできるが、食味に劣るうえ小麦粉に混入すると品質が劣化しやすくなるため、一般的な小麦粉に使用することはない。しかし、ふすま部分には独特の風味があるため、これを取り除かずそのまま粉にした全粒粉も存在する。
 
 
 
コムギは本来は越年生の植物であり、秋に種をまいて越年させ、春に発芽し夏に収穫するのが基本形である。これは、発芽のためにある程度の低温期間が継続する必要があるためである。しかし、[[突然変異]]によって低温期間を必要としない品種が生まれ、寒さが激しく種が冬を越せない地方や、逆に本来の収穫期に[[雨季]]を迎え収穫が困難になる地域において栽培されるようになった。この品種は春に播いて、夏の終わりに収穫するのが一般的である。播く時期から、前者を秋播き小麦、後者を春播き小麦と称する。
 
 
 
秋播きは10月中から11月初頭にかけてが良く、11月下旬から12月に入ってからの霜が降りる時期になると極端に発芽率が悪くなる。秋播きコムギの開花・結実は5月から6月、春播きコムギのそれは7月から8月であるが、この時期に雨が多いとコムギの種子内の[[グルテン]]の形成が鈍くなる。
 
 
 
==用途==
 
[[File:USDA wheat.jpg|thumb|様々なコムギ食品]]
 
収穫された種子は粉にして[[小麦粉]]として使われる。小麦粉は[[パン]]や[[うどん]]、[[中華麺]]、[[菓子]]、[[パスタ]]、[[そうめん]]、[[クスクス]]などの原料となる。粒の硬さにより、生成される小麦粉の種類、用途が異なる。[[ビール]]は通常オオムギから作られるものであるが、[[白ビール]]はコムギの[[麦芽]]を多く使用して作られる。[[ウイスキー]]や工業用[[エタノール|アルコール]]の原料にもなる。また、小麦粉からは[[グルテン]]を作ることができ、グルテンを加工すると[[麩]]を作ることができる。また、グルテンからは代用肉である[[グルテンミート]](セイタン)も作られ、[[ベジタリアン]]や[[マクロビオティック]]用、[[アレルギー]]や食事制限用の肉代用品として使用されている。
 
 
 
品質が劣るものや製粉の際に出るふすま(麩・麬=コムギの[[糠]])は[[家畜]]の飼料となる。ふすまは、[[セルロース]]など[[不溶性]][[食物繊維]]を豊富に含むことが着目され、朝食用[[シリアル]]等にも用いられるようになった。また、コムギの胚芽には[[油]]が含まれ、食用の小麦胚芽油をとることができる。
 
 
 
==分類==
 
===クロンキスト体系によるコムギ属の分類===
 
* [[植物界]] Plantae
 
* [[被子植物門]] Magnoliophyta
 
* [[単子葉植物綱]] Liliopsida
 
* [[イネ目]] Poales
 
* [[イネ科]] Poaceae
 
* '''コムギ属''' ''Triticum''
 
 
 
===生物的分類===
 
コムギ属 ''Triticum'' は、1小穂の稔実粒数、[[染色体]]数、[[ゲノム]]構成によって以下のように分けられる。
 
 
 
* 1粒系(稔実粒数1、2''n''=14、ゲノム''AA'')
 
** ''T. aegilopoides''
 
** ''T. thaoudar''
 
** ''T. monococcum''([[ヒトツブコムギ|1粒コムギ]])
 
* 2粒系(稔実粒数2、2''n''=28、ゲノム''AABB'')
 
** ''T. dicoccoides''
 
** ''T. dicoccum''([[フタツブコムギ|2粒コムギ]]、エンマーコムギ)
 
** ''T. pyromidale''
 
** ''T. orientale''([[コーラサンコムギ]])
 
** ''T. durum''([[デュラムコムギ]]、マカロニコムギ)
 
** ''T. turgidum''([[リベットコムギ]])
 
** ''T. polonicum''([[ポーランドコムギ]])
 
** ''T. persicum''([[ペルシャコムギ]])
 
* 普通系(稔実粒数3~5、2''n''=42、ゲノム''AABBDD'')
 
** ''T. aestivum''(普通コムギ、[[パンコムギ]])
 
** ''[[w:Triticum spelta|T. spelta]]''([[スペルトコムギ]]〔ディンケルコムギ、ファッロコムギ〕)
 
** ''T. compactum''([[クラブコムギ]]、密穂コムギ)
 
** ''T. sphaerococcum''([[インド矮性コムギ]])
 
** ''T. maha''([[マカコムギ]])
 
** ''T. vavilovii''([[バビロビコムギ]])
 
* チモフェービ系(稔実粒数2、2''n''=28、ゲノム''AAGG'')
 
** ''T. timopheevi''
 
 
 
===その他===
 
小麦は栽培時期等によって以下のように区別される。
 
* 播種時期 - 春播き小麦、秋播き小麦:コムギは秋播きが本来の作型であるが、低温要求性が小さい品種が作られ、それらが春播き小麦として利用されている。
 
* 粒の色 - 赤小麦、白小麦
 
* 粒の硬さ - 硬質小麦、中間質小麦、軟質小麦
 
 
 
==歴史==
 
===世界===
 
[[File:WheatPennsylvania1943.jpg|thumb|収穫され積まれるコムギ]]
 
[[File:Wheat P1210892.jpg|thumb|コムギ]]
 
[[File:Wheat blue sky2.JPG|thumb|left|コムギ]]
 
[[File:Wheat-haHula-ISRAEL2.JPG|thumb|[[イスラエル]]のコムギ畑]]
 
[[File:Wheat in sack.jpg|thumb|袋に入れられるコムギの実]]
 
[[File:Modell eines Korns von Triticum vulgare (Weizen) -Osterloh Nr. 138-.jpg|thumb|[[グライフスヴァルト]]大学にある植物学博物館内のコムギ断面模型]]
 
[[中央アジア]]の[[コーカサス地方]]から[[イラク]]にかけてが原産地と考えられている。1粒系コムギの栽培は1万5千年前頃に始まった。その後1粒系コムギは[[クサビコムギ]]''Aegilops speltoides''と交雑し2粒コムギになり、さらに紀元前5500年頃に2粒系コムギは野生種の[[タルホコムギ]]''Ae. squarrosa''と交雑し、[[普通コムギ]]''T. aestivum''が生まれたといわれる。
 
 
 
コムギの栽培は[[メソポタミア]]地方で始まり、[[紀元前3000年]]ごろには[[ヨーロッパ]]や[[アフリカ]]に伝えられた。[[テル・アブ・フレイラ]]などから採掘された古代の野生種[[ムギ]]はもともと成熟すると麦穂が風などにより容易に飛び散る性質を持っており、当初のコムギも収穫には非常に手間のかかる作物であったと考えられている。このため、その貴重さと保蔵のしやすさから一種の交換の媒体、[[通貨]]として取り扱われていたのではないかと推測されている。[[シリア]]地方からヨーロッパなどに栽培の範囲が広がるにつれて品種淘汰がなされ、この種子の飛び散りやすさの特性が失われ主食穀物としての座を獲得することになった。栽培植物化の時期はオオムギのほうがやや早く、当初はオオムギのほうが重要な作物であった。これは、オオムギの収量の多さや収穫時期の早さ、粒の大きさなどによる。また、この時期はコムギもオオムギも[[粥]]として煮て食べるものであったため、調理方法の差が重要となることはなかった。しかし、[[製粉]]技術が進歩し[[碾き臼]]が登場すると、粉食により美味さが増し、[[グルテン]]を持ち様々な料理へと加工することが容易なコムギがオオムギに代わって最重要の作物となっていった。製粉のための水車を人類初の機械発明とする説もある。
 
 
 
[[聖書]]の中にも頻繁に「麦」や「小麦」が登場し、重要な作物であったことがわかる。聖書の中で小麦が最初に登場するのは、最初の書である[[創世記]](30章14節)である。
 
 
 
[[中国]]への小麦の伝来は四千年前頃であるが粉食し広く栽培される様に成ったのは三千年前頃である。これは、冬作物で粟・稲の端境期に収穫されたことから、七千年前から栽培がおこなわれていた大麦とは対照的である<ref>古賀登『両税法成立史の研究』雄山閣、2012年。p.198.</ref>
 
 
 
中世にはヨーロッパではすでにコムギが最も重要な作物となっていたが、特に農民や下層の都市住民にはコムギだけで作られたパンはぜいたく品であり、オオムギや[[エンバク]]、[[ライムギ]]といった安価な穀物が食生活の中心となっていた<ref>南直人『ヨーロッパの舌はどう変わったか 十九世紀食卓革命』講談社選書メチエ、1998年。p.54.</ref>。一方で栽培されるコムギにおいても、[[パンコムギ]]はエンマーコムギやスペルトコムギよりも優勢であり、より高く評価されていた。パンコムギには易脱穀性があり、難脱穀性のエンマーコムギやスペルトコムギに比べ脱穀の手間が少なかったためである<ref>ブリュノ・ロリウー『中世ヨーロッパ 食の生活史』吉田春美訳、原書房、2003年。pp.57-58.</ref>。
 
 
 
大航海時代に入ると、[[新大陸]]に移住したヨーロッパ人植民者たちが故郷からコムギを持ち込んで栽培し、新大陸においても基幹食料となっていった。アメリカやカナダ、オーストラリアといった現在のコムギ主要生産国にコムギが持ち込まれたのもこの時期のことである。また、[[18世紀]]ごろからヨーロッパでは徐々に市民の生活が向上し、また農法の改善や生産地の拡大によってコムギ生産が拡大するとともにコムギが食生活の中心となっていき、量の面でもライムギにかわってコムギが中心となっていった<ref>石坂昭雄、壽永欣三郎、諸田實、山下幸夫『商業史』有斐閣、1980年。p.123.</ref>。
 
 
 
[[20世紀]]後半、[[ノーマン・ボーローグ]]らによる[[小麦農林10号]]を親としたコムギの短稈種の研究が進められ、[[肥料]]を多量に使用しても丈が高くならず、倒伏の危険なしに大量の収穫が見込める品種が次々と開発された。この研究から[[緑の革命]]がおこり、これによって多収量の上安定した収穫が望める新品種が発展途上国を中心に普及し、[[メキシコ]]など多くの発展途上国でコムギは大幅な増収となり、生産性も大幅に改善された。その一方、[[旱魃]]など災害による地域的な不作もなくなってはいない。
 
 
 
===日本===
 
中国経由で伝来されたと考えられている日本でも約2000年前の遺跡から小麦が出土しており、伝わったのはそれから遠くない[[弥生時代]]であると考えられている。[[奈良時代|奈良]]・[[平安時代|平安]]期には[[五穀]]の1つとして重視された(『[[和名類聚抄]]』には「古牟岐(コムギ)・末牟岐(マムギ=「真麦」)」の名で伝わる)が、一方で収穫前の大麦・小麦の青草を貴族や有力豪族が農民から買い上げて馬の飼料にすることが行われ、当時の政府がこれを禁止する[[太政官符]]が度々発令(751年・808年・819年・839年)されており、[[イネ|稲]]や[[粟]]と比較して食用作物としての認識が十分に広まっていなかったとする見方もある。ただ、これには当時の日本に製粉用の[[臼|碾き臼]]がほとんど普及していない、という事情があった。柔らかい胚乳が硬い表皮で覆われた構造の麦粒を食用にするには、全体をひき潰してから[[小麦粉]]と[[糠|ふすま]]に分離する必要がある。碾き臼を持たない庶民は、搗き臼を使っての非効率な製粉作業に甘んじるしかなかった。その手間を嫌い、手早く利益を得る方法として小麦を飼料用に販売したとも考えられる。それ以降もコムギは全国で栽培され続けたが、製粉技術が未発達だったために使用法が限定されていた。それでも[[鎌倉時代]]にはいって[[二毛作]]がはじまると、稲の裏作作物としてコムギが採用され、[[室町時代]]に入ると米に比べてムギの税率が軽かったために裏作でのコムギの栽培量が急速に増加した。
 
 
 
日本では製粉技術が未発達だったゆえ、小麦その他「粉」を使用した食品は、長らくぜいたく品とされた。庶民が[[うどん]]、[[饅頭]]、[[ほうとう]]、[[すいとん]]などの粉食品を気軽に口にできるようになったのは、碾き臼が普及した[[江戸時代]]以降である。稲の裏作として麦の生産が盛んに行われるようになり、粒のまま食べるオオムギと粉にして食べるコムギがともに食用として栽培された。[[都市]]では小麦粉を使用したうどんや[[天ぷら]]といった料理や饅頭などの[[和菓子]]の消費が大きくなる一方、自家消費の割合の大きい[[農村]]では製粉という手間のかかるコムギは日常ではなかなか口にできるものではなかった。このため、コムギなどの粉食は[[ハレとケ|ハレ]]の日の料理として扱われることが多かった。
 
 
 
[[明治時代]]に入り、欧米からパンなど様々なコムギ料理が伝わってくるとコムギの消費も増大した。明治時代初期には36万haだった栽培面積は、[[大正時代]]には50万ha、最も栽培面積の大きくなった[[第二次世界大戦]]中には70万から80万haにのぼるようになった。第二次世界大戦後には[[学校給食]]がはじまり、パン主体の給食と食の欧米化、多様化はコムギの消費をさらに拡大させた。一方で、アメリカなどから安いコムギが大量に入ってくるようになったことや二毛作自体の衰退、そして1963年の[[三八豪雪]]と夏の多雨により小麦生産が大打撃を受けたことにより、栽培面積は急速に減少して、1963年には栽培面積60万ha、自給率20%前後だったものが、1973年には栽培面積は7.5万haにまで減少し、自給率はわずか4%となった<ref name="加藤来た道">加藤鎌司「コムギが日本に来た道」pp.113-115.『麦の自然史 人と自然が育んだムギ農耕』に収録、佐藤洋一郎、加藤鎌司編著、北海道大学出版会、2010年。</ref>。その後、[[減反政策]]によってコムギの生産が奨励され、生産はやや復調傾向にある<ref>国分牧衛『新訂 食用作物』養賢堂 2010年。p.145.</ref>。2005年には栽培面積は21万ha、自給率は14%となっている<ref name="加藤来た道"/>。
 
 
 
==生産==
 
{{see|国際小麦生産統計}}
 
[[File:WheatYield.png|thumb|300px|right|世界の小麦生産図]]
 
[[File:Wheat harvest.jpg|thumb|[[アイダホ州]]のコムギ畑]]
 
コムギは、[[温帯]]から[[亜寒帯]]にかけて栽培されている。比較的乾燥に強く、生産限界は年間降水量500mmである。[[灌漑]]設備が整っている場合は、さらに乾燥した地域でも栽培できる。
 
 
 
地域別ではアジア州が4割強、ヨーロッパ州が3割強、北アメリカ州が1割強となる。[[国際連合食糧農業機関]]の統計資料 (FAOSTAT) によると<ref>FAOSTAT [http://faostat.fao.org/site/340/default.aspx]{{リンク切れ|date=2017-8}}</ref>、2006年の世界生産量は6億0595万トン。これは米の生産量(6億3461万トン)に匹敵する。[[トウモロコシ]](6億9523万トン、2006年)についで生産量の多い農作物である。上位5位までの生産国、すなわち、[[中華人民共和国]]、[[インド]]、アメリカ合衆国、[[ロシア]]、フランスで総生産量のちょうど5割を生産している。
 
 
 
コムギの反収は、国によって大きな差がある。2012年の10アール当たりの反収は、集約型の農業が行われているヨーロッパでは、[[フランス]]が760kg,[[ドイツ]]が733kg,[[イギリス]]が666kgと非常に多収である。<ref name="a">矢野恒太記念会編『日本国勢図会 2014/15年版』矢野恒太記念会、2014年、164頁。</ref>日本では411㎏であり、ヨーロッパ諸国の2/3程度である。<ref>「[http://www.maff.go.jp/j/seisan/boueki/mugi_zyukyuu/pdf/27_mitoosi.pdf 麦の需給に関する見通し]」農林水産省、2015年。</ref>これは、日本では、[[本州]]以南では、[[水田]][[稲作]]の[[二毛作|裏作]]として副次的に作付されることが多く、コムギに最適な[[土壌]]管理等がなされにくいこと、また、北海道以外では、コムギの登熟期が[[梅雨]]にかかってしまい、収穫量や品質に重大な影響をあたえることがしばしばあるためである。なお、コムギの大生産国であるアメリカ合衆国では311㎏、[[オーストラリア]]では215㎏と反収は低い。[[カザフスタン]]に至っては79kgと、主要な生産国の中では最低レベルである。<ref name="a"/>こういった国々では反収の低さを農園の広大さで補い、粗放型の農業が行われている。ちなみに、コムギにおいては反収は[[先進国]]と[[発展途上国]]の間に明確な差は見られない。[[エジプト]]や、[[1980年代]]から[[1990年代]]にかけての[[ジンバブエ]](ジンバブエ政府の政策により、2000年代には350㎏前後にまで激減した)のように10アール当たりの反収が550㎏から650㎏にものぼり、世界最高水準に達している途上国もある一方で、ロシアの反収は177kgと、フランスの1/4未満にすぎない。<ref name="a"/>
 
 
 
日本の生産量は、86万300トン(2005年)、うち北海道での生産が全体の65%を占める。世界的に問題となる生育期の降水量に関しては、本州以南も申し分ないが、逆に、本州の多くでは、収穫期に梅雨入りしてしまい、コムギの収量・品質に多大な影響を与えてしまうため、国内では梅雨がない北海道が、栽培に適するためである<ref name="20080731nikkeibo">宮嶋康彦「[http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20080730/166712/ 大規模農家の豊かさに隠れた開拓者精神と努力 「たった一晩」で数百万円の損害が出る繊細な作物との格闘]」日経ビジネスオンライン、日経BP社、2008年7月31日。</ref>(熟したコムギは水分を得ると発芽する('''穂発芽''')。穂発芽を起こしたコムギの値段は一気に下がる<ref name="20080731nikkeibo"/>)。
 
国内の栽培品種についても、梅雨の存在が影を落としている。とりわけ東北南部以南では、水田における裏作として伝統的に栽培されてきた、登熟が早く、収穫期の多湿多雨に比較的強い、[[うどん]]等の在来麺類向けの品種が専ら生産され、パン向けは国内生産の半分に満たない。これは、パン向けのコムギは、特に収穫期の高温多湿多雨に弱いため、国内では品質・収量ともに安定的な生産が難しく、農家が敬遠する傾向があるため<ref name="20080731nikkeibo"/>である。しかし、近年のコムギ国際価格の高騰と、製パン向けの国内産小麦に対する根強い国内需要があることから、パン向けの品種改良や、数少ない国内産のパン用小麦の争奪戦がおこなわれている。
 
 
 
{| class="wikitable"
 
|+ 小麦の国別生産量(2006年)
 
! 国名 !! 順位 !! 生産量 !! 比率
 
|-
 
! 中華人民共和国
 
| 1 || 1億447万トン || 17.2%
 
|-
 
! [[インド]]
 
| 2 || 6935万トン || 11.4%
 
|-
 
! アメリカ合衆国
 
| 3 || 5730万トン || 9.5%
 
|-
 
! [[ロシア]]
 
| 4 || 4501万トン || 7.4%
 
|-
 
! [[フランス]]
 
| 5 || 3537万トン || 5.8%
 
|-
 
! [[カナダ]]
 
| 6 || 2728万トン || 4.5%
 
|-
 
! [[ドイツ]]
 
| 7 || 2243万トン || 3.7%
 
|-
 
! [[パキスタン]]
 
| 8 || 2128万トン || 3.5%
 
|-
 
! [[トルコ]]
 
| 9 || 2001万トン || 3.3%
 
|-
 
! [[イギリス]]
 
| 10 || 1474万トン || 2.4%
 
|-
 
! [[イラン]]
 
| 11 || 1450万トン || 2.4%
 
|-
 
! [[アルゼンチン]]
 
| 12 || 1400万トン || 2.3%
 
|-
 
! [[ウクライナ]]
 
| 13 || 1400万トン || 2.3%
 
|-
 
! [[カザフスタン]]
 
| 14 || 1350万トン || 2.2%
 
|-
 
! [[オーストラリア]]
 
| 15 || 982万トン || 1.6%
 
|}
 
 
 
===貿易===
 
コムギは最も貿易量が多い穀物である。2005年時点の総輸出量は1億2027万トン、総輸入量は1億2018万トン<ref group="注">総輸出量と総輸入量が等しくならないのは、輸送に要する時間が原因である。</ref>。例えばトウモロコシの総輸出量は8964万トン、米は2503万トンに過ぎない。輸出国はアメリカ合衆国 2749万トン (22.9%)、[[フランス]]1602万トン (13.3%)、[[カナダ]] 1398万トン (11.6%)、[[オーストラリア]]1392万トン (11.6%)、[[アルゼンチン]]1042万トン (8.7%) の順であり、この5カ国だけで全輸出量の2/3を占める。輸入国は、[[スペイン]] (6.2%)、[[エジプト]]、[[イタリア]]、[[アルジェリア]]、日本、[[ブラジル]]、[[インドネシア]]の順に多い。この5カ国で全輸入量の35%を占める。日本の輸入量は全輸入量の4.6%。
 
 
 
日本のコムギ輸入相手国は、アメリカ合衆国 (55.9%)、オーストラリア (22.2%)、カナダ (21.2%) であり、その他の国は0.7%に過ぎない。
 
 
 
===日本の麦流通===
 
{{節スタブ}}
 
[[食糧法]]第三章により、麦は政府の価格統制が存在する。
 
 
 
{{Quote|(麦等の輸入)<br/>
 
第四十五条 麦等の輸入を行おうとする者は、国際約束に従って農林水産大臣が定めて告示する額に、当該輸入に係る麦等の数量を乗じて得た額を、政府に納付しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。<br/>
 
一 第四十二条第五項において準用する第三十条第二項の規定による政府の委託を受けて輸入する場合 <br/>
 
二 第四十三条の規定による連名による申込みに応じて行う政府の買入れ及び売渡しに係る麦等を輸入する場合 <br/>
 
三 国内の需給及び価格の安定に悪影響を及ぼすおそれのないものとして政令で定める麦等を輸入する場合
 
|[[食糧法]]}}
 
 
 
====政府麦====
 
四十二条により、政府は麦等の輸入を目的とする買入れを行うことができる(政府麦)<ref>[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H06/H06HO113.html 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律] 総務省法令データ提供システム</ref>
 
 
 
日本政府は、商社が輸入した小麦を購入した上で、政府売り渡し価格を製粉会社に提示、引き渡す制度になっている。製粉会社は、[[マークアップ]]と呼ばれる上乗せ金 16,868円/tを政府に、拠出金 1,530円/tを、農水省OBが中心の組織、[[製粉振興会]]に支払うことで、原料を購入することができる。売り渡し価格は、年3回(現行年2回)、10%程度の増減幅で見直されているが、上記の情勢や天候に大きく左右されれば国際価格に影響を受ける。
 
 
 
2006年頃から上昇傾向にあった小麦価格は、2007年には主にオーストラリアでの大規模な不作によって小麦価格が高騰、それに伴い政府価格も改定し<ref>[http://www.maff.go.jp/www/press/2007/20070824press_2.html]{{リンク切れ|date=2017-8}}</ref>、パンや焼きそばなど[[小麦粉]]を使う製品の値段が上昇した。2008年10月には、売渡価格が20%値上げされるほか、2009年には国産買取価格も30%値上げされた。
 
 
 
====政府流通外の麦====
 
四十五条により、政府および政府に委託を受けた以外の者が日本に小麦を輸入する際には、[[関税|輸入関税]]に加え、国内生産農家保護のため麦等輸入納付金を納付しなければならない<ref>主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の施行に関する件 農林水産省告示第四百五十七号</ref>。
 
 
 
* 第四十五条三項に基づき輸入
 
** 45.20円/kg(小麦 メスリン及びライ小麦)
 
* その他の輸入
 
{{節スタブ}}
 
 
 
==品種等==
 
日本における農林水産省が認定する「農林認定品種」は、2010年までに170種を超える<ref>[http://agriknowledge.affrc.go.jp/search/image/hinshu/ 農林認定品種データベース] 農林水産省アグリナレッジ</ref>。日本に輸入される外国産の小麦は、複数品種をブレンドした銘柄で取引される。作付面積は農林水産省調べ<ref>[http://www.library.maff.go.jp/library/list_20-4.htm 麦の品種別作付面積]{{リンク切れ|date=2017-8}} 農林水産省図書館</ref>で、産年による。
 
 
 
{| class="wikitable"
 
!style="white-space:nowrap"|品種名・銘柄名
 
!style="white-space:nowrap"|農林番号
 
!旧系統名
 
!誕生年、開発者など
 
!元になった品種(♀×♂)
 
! 特 徴
 
!リンク
 
|-
 
|農林61号
 
|小麦農林61号
 
|西海75号
 
|1944年 佐賀県農業試験場
 
|福岡小麦18号 × 新中長
 
|短稈で、穂数が多く、倒れにくく多収、萎縮病、縞萎縮病、黄銹病の抵抗性が強く、赤かび病の被害が少ないことから、日本の水田裏作栽培で最も多く栽培されている品種である。記録の残る1959年以降、1980年までおよび1984年より1987年まで日本での作付面積が第1位で、最大約22.4万ヘクタール(1962年)栽培された。現在でも[[関東地方|関東]]以西の地域では基幹品種である。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000556 AgriKnowledge]
 
|-
 
|ホロシリコムギ
 
|小麦農林114号
 
|北見23号
 
|1974年 [[北海道立北見農業試験場]]
 
|北系8 × 北海240号
 
|1981年より1983年まで日本での作付面積が第1位で、最大約8.7万ヘクタール(1981年)栽培された。現在も北海道において秋まき小麦として栽培されている。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000609 AgriKnowledge]
 
|-
 
|チホクコムギ
 
|小麦農林126号
 
|北見42号
 
|1981年 北海道立北見農業試験場
 
|(北見18号 × 北見19号)F1 ×北系320
 
|1988年より1996年まで日本での作付面積が第1位で、最大約8.6万ヘクタール(1992年)栽培された。かつての北海道の基幹品種で、うどん用品質が良かったが、耐病性等が劣った。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000621 AgriKnowledge]
 
|-
 
|ホクシン
 
|小麦農林142号
 
|北見66号
 
|1995年 北海道立北見農業試験場
 
|北見35号 × 北見42号
 
|「チホクコムギ」の後継として開発され、1997年より2010年まで日本での作付面積が第1位で、最大約10.5万ヘクタール(2006年)栽培された。「チホクコムギ」に比べてやや早生で耐病性等が優る。北海道において秋まき小麦として栽培されている。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000637 AgriKnowledge]
 
|-
 
|きたほなみ
 
|小麦農林168号
 
|北見81号
 
|2006年 北海道立北見農業試験場
 
|北見72号 × 北系1660
 
|「ホクシン」の後継として開発され、2011年より日本での作付面積が第1位の小麦品種である。「ホクシン」に比べて穂発芽性や品質が優る。北海道において秋まき小麦として栽培されている。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000663 AgriKnowledge]
 
|-
 
|[[小麦農林10号]]
 
|小麦農林10号
 
|東北34号
 
|1935年 岩手県農業試験場
 
|ターキーレッド × フルツ達磨
 
|[[矮性|短稈]]([[半矮性遺伝子|半矮性]])、直立するため間作に便利で、耐寒耐雪性が強い。 [[緑の革命]]の原動力として世界的なコムギの生産性向上に大きく貢献した。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000505 AgriKnowledge]
 
|-
 
|農林26号
 
|小麦農林26号
 
|近畿10号
 
|1937年 奈良県農業試験場
 
|新中長 × 埼玉小麦29号
 
|かつての[[岐阜県]]、[[奈良県]]、[[香川県]]等の基幹品種で、関東から九州まで広く作付けられ、最大約4.9万ヘクタール(1961年)栽培された。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000521 AgriKnowledge]
 
|-
 
|農林50号
 
|小麦農林50号
 
|北関東28号
 
|1942年 群馬県農業試験場
 
|小麦農林9号 × 新中長
 
|関東を中心に最大2.1万ヘクタール(1959年)栽培された。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000545 AgriKnowledge]
 
|-
 
|農林52号
 
|小麦農林52号
 
|中国33号
 
|1943年 岡山県農業試験場
 
|新中長 × 江島神力
 
|かつての[[岡山県]]、[[徳島県]]の基幹品種で最大約1.3万ヘクタール(1959年)栽培された。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000547 AgriKnowledge]
 
|-
 
|農林53号
 
|小麦農林53号
 
|東海29号
 
|1943年 愛知県農業試験場
 
|埼玉小麦29号 × 鴻巣26号
 
|主に関東から東海にかけて最大約1.2万ヘクタール(1959年)栽培された。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000548 AgriKnowledge]
 
|-
 
|農林64号
 
|小麦農林64号
 
|北関東34号
 
|1944年 群馬県農業試験場
 
|小麦農林9号 × 新中長
 
|[[福島県]]および関東を中心に最大1.4万ヘクタール(1961年)栽培された。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000559 AgriKnowledge]
 
|-
 
|アオバコムギ
 
|小麦農林81号
 
|東北79号
 
|1951年 東北農業試験場
 
|小麦農林7号 × Ardito
 
|強力銘柄品種であり、かつての[[宮城県]]、福島県等の基幹品種で、東北、関東を中心に最大約2.1万ヘクタール(1962年)栽培された。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000576 AgriKnowledge]
 
|-
 
|シラサギコムギ
 
|小麦農林95号
 
|中国79号
 
|1956年 中国農業試験場
 
|新中長 × 近畿35号
 
|中国、四国の基幹品種として、最大約2.1万ヘクタール(1963年)栽培された。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000590 AgriKnowledge]
 
|-
 
|ムカコムギ
 
|小麦農林108号
 
|北見11号
 
|1969年 北海道立北見農業試験場
 
|(Kanred × ナンブコムギ)F1 × 北成9号
 
|小麦急増期の北海道の基幹品種として、最大1.6万ヘクタール(1975年)栽培された。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000603 AgriKnowledge]
 
|-
 
|[[タクネコムギ]]
 
|小麦農林115号
 
|北見30号
 
|1974年 北海道立北見農業試験場
 
|東北118号×北系221
 
|北海道で最大約1.2万ヘクタール(1982年)栽培された。成熟すると穂が赤色になることから赤麦とも呼ばれる。主に[[醤油]]醸造に用いられる。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000610 AgriKnowledge]
 
|-
 
|シロガネコムギ
 
|小麦農林117号
 
|西海120号
 
|1974年 九州農業試験場
 
|シラサギコムギ × 西海104号
 
|[[兵庫県]]、[[佐賀県]]等の基幹品種で、関東から九州にかけて最大約2.9万ヘクタール(1988年)栽培された。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000612 AgriKnowledge]
 
|-
 
|セトコムギ
 
|小麦農林120号
 
|西海134号
 
|1976年 九州農業試験場
 
|西海113号 × 農林26号
 
|かつての[[大分県]]等の基幹品種で、中国、四国、九州で最大約1.0万ヘクタール(1987年)栽培された。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000615 AgriKnowledge]
 
|-
 
|アサカゼコムギ
 
|小麦農林123号
 
|西海144号
 
|1978年 九州農業試験場
 
|西海115号(後のヒヨクコムギ) × 西海120号
 
|中国、九州を中心に最大約1.2万ヘクタール(1987年)栽培された。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000618 AgriKnowledge]
 
|-
 
|ニシカゼコムギ
 
|小麦農林129号
 
|西海154号
 
|1984年 九州農業試験場
 
|西海120号 × ウシオコムギ
 
|かつての[[福岡県]]等の基幹品種で、九州を中心に最大約1.6万ヘクタール(1989年)栽培された。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000624 AgriKnowledge]
 
|-
 
|シラネコムギ
 
|小麦農林131号
 
|東山17号
 
|1986年 長野県
 
|北陸49号 × 東海80号
 
|秋播き型の早生品種で、耐寒性に優れ主に[[長野県]]、宮城県で栽培されている。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000626 AgriKnowledge]
 
|-
 
|チクゴイズミ
 
|小麦農林141号
 
|西海171号
 
|1996年(独)[[農業・食品産業技術総合研究機構]]
 
|関東107 号 × アサカゼコムギ
 
|[[九州沖縄農業研究センター]](筑後市)が育成した、[[西日本]]を中心に多く栽培されている品種である。「農林61号」など従来の品種に比べ[[アミロース]]含量が低い「低アミロース品種」で、柔らかくモチモチとした食感が特徴である。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000636 AgriKnowledge]
 
|-
 
|きたもえ
 
|小麦農林149号
 
|北見72号
 
|2001年 北海道立北見農業試験場
 
|59045(後のホクシン)×北系1354
 
|縞萎縮病抵抗性やや強、耐雪性やや強、耐倒伏性強で、北海道において秋まき小麦として栽培されている。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000644 AgriKnowledge]
 
|-
 
|ミナミノカオリ
 
|小麦農林160号
 
|西海186号
 
|2006年(独)農業・食品産業技術総合研究機構
 
|Pampa INTA × 西海167号
 
|暖地向けに改良された、蛋白質に富み[[パン]]や[[醤油]]に向く品種である。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000655 AgriKnowledge]
 
|-
 
|もち姫
 
|小麦農林糯166号
 
|
 
|2006年(独)農業・食品産業技術総合研究機構
 
|もち盛系C-D1478 × (もち盛系C-G1517 × 盛系B-8605)F1
 
|実用性が改良されたもち小麦(低アミロース)品種である。
 
|[http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/4010000661 AgriKnowledge]
 
|-
 
|[[さぬきの夢2000]]
 
|
 
|香育7号
 
|2000年 香川県農業試験場
 
|西海173号(後のニシホナミ) × 中国142号
 
|[[讃岐うどん]]用として開発された製麺用の品種で、半数体育種法で作出された。讃岐うどんのなめらかさ、粘り、かたさ(噛みごたえ)に最適化するため、「チクゴイズミ」ほど低アミロースにはしていない。
 
|[http://www.hinsyu.maff.go.jp/vips2/cmm/apCMM112.aspx?TOUROKU_NO=11239&LANGUAGE=Japanese 登録品種データベース]
 
|-
 
|春よ恋
 
|
 
|HW1号
 
|2001年 [[ホクレン農業協同組合連合会]]
 
|ハルユタカ × Stoa
 
|北海道で栽培されているパン用の春播き品種で、日本で初めて葯(やく)培養により育成された小麦品種である。
 
||[http://www.hinsyu.maff.go.jp/vips2/cmm/apCMM112.aspx?TOUROKU_NO=8834&LANGUAGE=Japanese 登録品種データベース]
 
|-
 
|オーストラリア産スタンダードホワイト ([[ASW (小麦)|ASW]])
 
|
 
|
 
|オーストラリア
 
|
 
|[[オーストラリア]]の製麺用小麦銘柄で、日本へ輸出するために数種類をブレンドして、安定した高品質を確保している。背丈が長く倒れ易い、赤かび病に弱い。
 
|
 
|-
 
|[[デュラム]]
 
|||
 
|
 
|
 
|[[パスタ]]で用いられている、[[グルテン]]([[蛋白質]])の多い種 (''T. durum'')で、日本での栽培は難しく、ほとんどが輸入物である。超硬質で黄色いのが特徴であり、通常、[[セモリナ粉]](粗挽き粉)として用いられる。
 
|
 
|-
 
|プライムハード (PH)
 
|
 
|
 
|オーストラリア
 
|
 
|強力粉用銘柄でパンや中華めん等の原料として用いられる。
 
|
 
|-
 
|ウエスタンホワイト (WW)
 
|||
 
|アメリカ
 
|
 
|通称「ダブダブ」。薄力粉用銘柄で、菓子やケーキ用として用いられる。クラブコムギ (''T. compactum'') を含む。
 
|
 
|-
 
|ダークノーザンスプリング (DNS)
 
|
 
|
 
|アメリカ
 
|
 
|強力粉用銘柄で、パンの原料として用いられる。
 
|
 
|-
 
|カナダウエスタンレッドスプリング (CWRS)
 
|
 
|
 
|カナダ
 
|
 
|強力粉用銘柄で、パンや中華めん等の原料として用いられる。
 
|
 
|-
 
|}
 
 
 
==健康問題==
 
 
 
コムギのタンパク質の大部分を占める[[グルテン]]は、[[セリアック病]]という遺伝性免疫疾患を引き起こすことがあり、先進国の一般人の少なくとも約1%に影響している<ref name=WGOGuidelines2016/><ref name="niddk">{{cite web|url=https://www.niddk.nih.gov/health-information/health-topics/digestive-diseases/celiac-disease/Pages/definition-facts.aspx|title=Definition and Facts for Celiac Disease|publisher=The National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases, National Institutes of Health, US Department of Health and Human Services, Bethesda, MD|date=2016|accessdate=5 December 2016}}</ref><ref name=WGOGuidelines2016>{{cite web|url=http://www.worldgastroenterology.org/guidelines/global-guidelines/celiac-disease/celiac-disease-english|title=Celiac disease|date=July 2016|publisher=World Gastroenterology Organisation Global Guidelines|accessdate=7 December 2016}}</ref>。罹患していても自覚しなかったり診断されない、というのがセリアック病の例のほとんどであることを示唆するデータもある<ref name=WGOGuidelines2016 />。唯一効果的な対処法として知られているのは、生涯を通しての[[グルテンフリー・ダイエット|グルテン除去食]]である<ref name=WGOGuidelines2016 />。
 
 
 
コムギたんぱく質に対する過剰反応として発症するのがセリアック病だが、これは[[小麦アレルギー]]と異なる<ref name=niddk/><ref name=WGOGuidelines2016 />。鑑別される他の疾患は、[[非セリアック・グルテン過敏症]]<ref name=niddk/><ref name=LudvigssonLeffler>{{cite journal |vauthors=Ludvigsson JF, Leffler DA, Bai JC, Biagi F, Fasano A, Green PH, Hadjivassiliou M, Kaukinen K, Kelly CP, Leonard JN, Lundin KE, Murray JA, Sanders DS, Walker MM, Zingone F, Ciacci C |title=The Oslo definitions for coeliac disease and related terms |journal=Gut |volume=62 |issue=1 |pages=43–52 |date=January 2013 |doi=10.1136/gutjnl-2011-301346 |url=|pmc=3440559|pmid=22345659}}</ref> (一般人口の0.5-13%が罹患している<ref name=MolinaInfanteSantolaria2015SystematicReview>{{cite journal|vauthors=Molina-Infante J, Santolaria S, Sanders DS, Fernández-Bañares F|title=Systematic review: noncoeliac gluten sensitivity| journal=Aliment Pharmacol Ther|volume=41|issue=9|pages=807–20|date=May 2015|pmid=25753138|doi=10.1111/apt.13155}}</ref>)、[[グルテン性運動失調]](gluten ataxia)、[[疱疹状皮膚炎]]が挙げられる<ref name=LudvigssonLeffler />。グルテン摂取が引き起こすこういった疾患は、まとめて[[グルテン関連障害]]と呼ばれている。この障害の発症件数は世界各地で増加しており<ref name=TovoliMasi>{{cite journal |vauthors=Tovoli F, Masi C, Guidetti E, Negrini G, Paterini P, Bolondi L| title=Clinical and diagnostic aspects of gluten related disorders| journal=World J Clin Cases| volume=3| issue=3| pages=275–84| date=Mar 16, 2015| pmid=25789300|pmc=4360499| doi=10.12998/wjcc.v3.i3.275|type=Review}}</ref><ref name=LionettiGatti2015>{{cite journal|vauthors=Lionetti E, Gatti S, Pulvirenti A, Catassi C|title=Celiac disease from a global perspective |journal=Best Pract Res Clin Gastroenterol |volume=29 |issue=3 |pages=365–79 |date=Jun 2015|pmid=26060103|doi=10.1016/j.bpg.2015.05.004|type=Review}}</ref><ref name=SaponeBai2012>{{cite journal |vauthors=Sapone A, Bai JC, Ciacci C, Dolinsek J, Green PH, Hadjivassiliou M, Kaukinen K, Rostami K, Sanders DS, Schumann M, Ullrich R, Villalta D, Volta U, Catassi C, Fasano A |title=Spectrum of gluten-related disorders: consensus on new nomenclature and classification |journal=BMC Medicine |volume=10 |issue=|pages=13 |year=2012 |pmid=22313950 |pmc=3292448 |doi=10.1186/1741-7015-10-13 |type=Review}} {{open access}}</ref>、その原因として、まず[[西洋型食生活|食の西洋化]]が指摘されている<ref name=TovoliMasi />。
 
地中海沿岸域では非伝統的なコムギ系食材の使用が増え<ref name=VoltaCaioQuestionsQuotation>{{cite journal|vauthors=Volta U, Caio G, Tovoli F, De Giorgio R|title=Non-celiac gluten sensitivity: questions still to be answered despite increasing awareness|journal=Cellular and Molecular Immunology|volume=10|issue=5|year=2013|pages=383–392|issn=1672-7681|doi=10.1038/cmi.2013.28|pmid=23934026|type=Review|pmc=4003198}}</ref><ref name=GuandaliniPolanco>{{cite journal|vauthors=Guandalini S, Polanco I|title=Nonceliac gluten sensitivity or wheat intolerance syndrome?|journal=J Pediatr|volume=166|issue=4|pages=805–11|date=Apr 2015|pmid=25662287|doi=10.1016/j.jpeds.2014.12.039|type=Review|quote=The increase in world-wide consumption of a Mediterranean diet, which includes a wide range of wheat-based foods, has possibly contributed to an alarming rise in the incidence of wheat (gluten?)-related disorders.1, 2 }}</ref>、アジアや中東や北アフリカでは伝統的な米と替わるようにコムギが定着しつつある<ref name=TovoliMasi />。障害の増加の原因として他には、近年に開発された新しい種類のコムギが[[細胞毒性]]的なグルテン・[[ペプチド]] をより多く含んでいること<ref name=VoltaCaioQuestions>{{cite journal |vauthors=Volta U, Caio G, Tovoli F, De Giorgio R |title=Non-celiac gluten sensitivity: questions still to be answered despite increasing awareness |journal=Cellular & Molecular Immunology |volume=10 |issue=5 |pages=383–92 |date=September 2013 |pmid=23934026 |pmc=4003198 |doi=10.1038/cmi.2013.28 |type=Review}}</ref><ref name=Belderok>{{cite journal|author=Belderok B|title=Developments in bread-making processes |journal=Plant Foods Hum Nutr |volume=55 |issue=1 |pages=1–86 |date=2000 |pmid=10823487|doi=10.1023/A:1008199314267|type=Review}}</ref>、また、生地の発酵時間の減少によってパン等のベーカリー製品がより多くのグルテンを含んでいることも指摘されている<ref name=VoltaCaioQuestions /><ref name=GobbettiGiuseppe2007>{{cite journal|vauthors=Gobbetti M, Giuseppe Rizzello C, Di Cagno R, De Angelis M |title=Sourdough lactobacilli and celiac disease |journal=Food Microbiol |volume=24 |issue=2 |pages=187–96 |date=Apr 2007 |pmid=17008163 |doi=10.1016/j.fm.2006.07.014|type=Review}}</ref>。
 
 
 
== 注釈 ==
 
<references group="注" />
 
 
 
== 出典 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
<references />
 
 
 
==関連項目==
 
{{Commons|Wheat|{{SUBJECTPAGENAME}}}}
 
* [[麦角菌]]
 
* [[緑の革命]]・[[小麦農林10号]]
 
* [[加水分解コムギ]]
 
 
 
==外部リンク==
 
* [http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv_agreement.html?512 コムギ - 「健康食品」の安全性・有効性情報] ([[国立健康・栄養研究所]])
 
* [http://www.shigen.nig.ac.jp/wheat/komunet/index.html コムギの話] KOMUGI NETWORK(日本のコムギの遺伝・育種の研究者が構築したデータベース)
 
* [http://www.noastec.jp/kinouindex/data2002/pdf/05/05_02.pdf 新形質低アミロース小麦の 加工適性と用途開発](財)北海道科学技術総合振興センター
 
  
 
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+
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[[Category:コムギ|*]]
 
[[Category:コムギ|*]]

2018/10/19/ (金) 00:11時点における版


コムギ(小麦)

イネ科コムギ属に属する一年草植物

イネとともに世界的に最も重要な穀物の一つで,栽培の歴史も古い。小アジア地方原産と考えられ,ノハラフタツブコムギ T. dicoccoides とタルホコムギ Aegilops squarrosa との交雑により生じたと考えられている。穎果を精白し,味噌や醤油の原料に用い,また押麦にして米飯に混ぜることもあるが,大部分は製粉してパンや麺類をつくる。コムギ属には 10種以上あるが,最も広く栽培されるのがコムギで,品種も多く,アメリカ合衆国,ロシアをはじめ,カナダ,フランス,アルゼンチン,中国などでそれぞれの品種が栽培されている。またマカロニコムギ T. durum は果の形が長くグルテンに富み,マカロニスパゲティ製造に適していて,地中海や黒海地方でつくられている。




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