コマツナ

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コマツナ(小松菜、学名Brassica rapa var. perviridis)はアブラナ科野菜。別名、冬菜(フユナ)、鶯菜(ウグイスナ)。また、アブラナ科の野菜が咲かせる黄色い花全般を菜の花という。

概要

ツケナ類(野沢菜チンゲンサイなど、アブラナ科の非結球葉菜の総称)の一種で、江戸時代初期に現在の東京都江戸川区小松川付近で、ククタチナ(茎立ち)を品種改良して栽培され始めたといわれる。将軍吉宗鷹狩りの際に献上され、そのときに地名から小松菜の名がつけられた、といわれる。

生産

関東地方で古くから親しまれた野菜で、東京都、埼玉県神奈川県千葉県といった東京近郊(首都圏)が多いが、現在では大阪府兵庫県愛知県福岡県などの日本各地の大都市近郊でも盛んに生産されている。耐寒性が強く、旬は冬であるが、周年栽培されている。冬にが降りたり、非常に強い冷え込みでが凍っても枯れることは少ない。最近は、農薬だけに頼らない病害虫防除や安定生産のため、夏と冬を中心に無加温ハウスでの栽培も増えている。東京では、栽培の始まった江戸川区以外でも葛飾区足立区八王子市武蔵村山市町田市府中市立川市など、生産の盛んな地域が多い。市場出荷のほか、農産物直売所での販売も増えている。収穫までの栽培日数は、秋冬まきは80-90日かかるが、夏は20数日ほどと短い。

利用

で、関東地方ではハクサイとともに冬の野菜の代表格。東京風の雑煮には欠かせない野菜である。ホウレンソウ(アカザ科)と似た使い方をされることが多いが、あっさりした味わいと手軽さから、ホウレンソウより用途は広く、灰汁(あく)が少ない扱いやすく食べやすい野菜である。味噌汁鍋料理によく入れられ、おひたし炒め物等で使用される。現在は年を通して栽培・収穫が可能だが、コマツナは江戸時代から関東で栽培された冬菜として認知されているので、関東風の雑煮など冬の献立も有名。味噌や醤油だけでなくバタークリームとの相性もよく、洋風にも調理できる。

コマツナの菜の花は、花が開いてしまうとえぐみが出てくるため、蕾のうちに食する方がよいとされている。

また、種子が安定して入手でき栽培が容易で生育が速いことなどから、成長試験(肥料効果の評価)や発芽試験(堆肥の腐熟度評価)に常用されている。

栄養

ビタミンAに富み、分などのミネラルが豊富で、野菜の中では、ケールに次いで、カルシウムの含有量が高いことでも知られる。その他、ビタミンK1が多くまた硝酸根も多い。

保存

傷みやすいので、収穫または購入してから2-3日以内で使い切ること[1]

使い切れなかった場合は、濡れた新聞紙で包んでビニール袋に入れて保湿対策をするが、冷蔵の場合は密閉すると萎れやすくなる。立てて(生えている状態に近づけて)保存することで、葉から水分が蒸発することを防げる。冷蔵庫で保存すると、2-3日は鮮度を保てる。冷凍の場合は、硬めに茹でてから使いやすい長さに切り、水気をよく切って荒熱をとり、タッパーラップなどで密封して冷凍保存する[2]

効能

貧血 / 肌あれ / 風邪予防 / 高血圧予防 / 骨粗鬆症の予防 / ガン予防

栽培

栽培方法

コマツナは暑さにも寒さにも強く、半日陰でもよく育ち、プランターでも簡単に栽培できる。コマツナは比較的病害や連作障害が少ないため、家庭菜園でも育てやすいが、害虫に食べられやすい。日当たりと水はけをよくし、有機物を多く含む肥えた土で育てると美味しく育つ。あるいは、液肥を使った水耕栽培によって作物を土壌から隔離し、清潔に保って育てる方法もある。

水耕栽培も行われている。一般家庭でも、ペットボトルなどを活用して苗床をつくって手軽に栽培できる[3]

栽培期間

1年を通して栽培できるが、種まきの季節によって栽培期間が変わる。生育の適温は10-25℃程度。

暖かいときは種まきから20日で収穫できるが、

  • 春に種まきすると、種まきから90日前後で収穫できる。
  • 夏に種まきすると、種まきから30日前後で収穫できる。
  • 秋に種まきすると、種まきから90日前後で収穫できる。
  • 冬に種まきすると、種まきから110日前後で収穫できる。

旬は冬。霜が降りる季節には葉肉が厚くなり、柔らかみが増し、甘みがのる。

白菜など冬の食材として使われる野菜の多くは冬菜とよばれるが[4]、コマツナは12-2月によく食べられる冬菜である。寒さに強いが、11月を過ぎたら簡単な霜よけをして発芽や生育を助ける必要がある。

家庭菜園での栽培

    • 元肥入りの野菜用培養土を使うと簡単である。
  • 種まき
    • 発芽の適温は5-30℃。種をまいたら暖かい夏季は1-3日、寒い冬季は1週間(7日)くらいで発芽する。
  • 間引き
    • 鉢の中で小松菜同士の葉が触れ合うようになったら間引きする。間引きしたものも食べられる。
  • 害虫対策
    • 青虫アブラムシに食べられやすいので、見つけたらすぐに駆除するか、防虫ネットなどで対策をすること。
  • 収穫
    • 手で引き抜くかハサミで葉を切り取って収穫する。本葉4-5枚、草丈20cmくらいが収穫に適している。育ちすぎると繊維質が強くなりすぎ、食感が落ちるので早めに収穫するとよい。

歴史

コマツナは江戸時代なかばまでは「葛西菜」とよばれていた。『大和本草』には「葛西菘(かさいな)は長くして蘿蔔(だいこん)に似たり」とあり、『続江戸砂子』では、菜葉好きが全国の菜葉を取り寄せたが「葛西菜にまされるはなし」と高く評価した。葛西菜が品種改良ののち小松菜になるが、『本草図譜』に描かれた葛西菜は現在の丸い葉のコマツナとは異なる。青葉高によれば小松川の椀屋久兵衛(1651年 - 1676年)が葛西菜をコマツナに改良したというが、『江戸川区史』によれば椀屋久兵衛が評判の高かった葛西菜をわざわざ江戸から上方に取り寄せて人に振る舞ったという。椀屋久兵衛とは、数々の豪遊のあまり身を持ち崩し、浮世草子『椀久一世の物語』にもなった上方の豪商である。

葛西菜が小松菜と改称された理由の一つに、江戸市中の糞尿を持ち帰って下肥とし、野菜を江戸に運んだ葛西船(かさいぶね)の存在を挙げる向きもある。葛西船の異称として単に葛西と呼ばれていた。当時のイメージとして屎尿臭を連想させる葛西の語を嫌って、めでたい常盤の松にあやかった小松の名を採ったとする。

東京都江戸川区中央の香取神社には「小松菜ゆかり塚」がある。

脚注


外部リンク