「ギリシア文字」の版間の差分

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+
'''ギリシア文字'''(ギリシアもじ)
{{表記揺れ案内
 
|表記1= ギリシア文字
 
|表記2= ギリシヤ文字
 
|表記3= ギリシャ文字
 
|議論ページ=
 
}}
 
{{特殊文字}}
 
{{Infobox WS
 
|name=ギリシア文字
 
|type= [[アルファベット]]
 
|languages=[[ギリシア語]]
 
|time=[[紀元前9世紀]]頃-現在
 
|fam1=[[原カナン文字]]
 
|fam2=[[フェニキア文字]]
 
|children=[[ゴート文字]]<br />[[グラゴル文字]]<br />[[キリル文字]]<br />[[コプト文字]]<br />[[エトルリア文字]](及びその他の[[古イタリア文字]])<br />[[ラテン文字]]<br />[[アルメニア文字]](論争あり)<br />[[グルジア文字]](論争あり?)
 
| unicode = [http://www.unicode.org/charts/PDF/U0370.pdf U+0370-U+03E1, U+03F0-U+03FF](ギリシア文字)<br />[http://www.unicode.org/charts/PDF/U1F00.pdf U+1F00–U+1FFF](ギリシア文字拡張)<br />[http://www.unicode.org/charts/PDF/U10140.pdf U+10140–U+1018F](古代ギリシア数字)
 
|sample=Greekalphabet.svg
 
|caption = 現代ギリシア語による「ギリシア文字」
 
|iso15924=Grek
 
}}
 
 
 
{{音素文字}}
 
 
 
'''ギリシア文字'''(ギリシアもじ)とは、[[ギリシア語]]を書き表すために用いられる文字である。現代ギリシア語では'''24'''文字からなる。
 
 
 
== 概要 ==
 
ギリシア文字は、古代[[ギリシャ人|ギリシア人]]が[[ギリシア語]]を表記するため、[[フェニキア文字]]を元に作った文字である。[[ラテン文字]]や[[キリル文字]]は、このギリシア文字を元に、後に生まれたものである。今日でも現代ギリシア語の表記に用いられ、また非ギリシア語圏でも、[[自然科学]](主に[[物理学]]や[[数学]]の分野)を始めとする様々の分野で使われている。
 
 
 
「[[アルファベット]]」という言葉は、この文字体系の伝統的配列の1番目(アルファ)と2番目(ベータ)の文字名称が、その語源である。各文字の日本語慣用名称は、主として英語式発音に由来する。例えば、{{Unicode|Π}} は、[[古代ギリシア語]]では「ピー」と発音するが、日本では一般に「パイ」と読まれる。これは英語の pi {{IPA|paɪ}} に倣ったものである。
 
 
 
21世紀初頭において、ギリシア文字を言語の表記に使用するのはギリシア語のみである。このため、使用地域はギリシア語を[[公用語]]とする[[ギリシア]]及び[[キプロス]]、およびギリシア人の居住する近隣地域に限られている。
 
 
 
== 歴史 ==
 
[[File:Griechisches Alphabet Varianten.png|thumb|left|古代の地域による字体の違い]]
 
 
 
ギリシア文字以前には、[[線文字B]]、またはミュケナイ文字と呼ばれている文字体系の使用もみられるが、これは[[仮名 (文字)|仮名文字]]と同じく[[音節文字]]で、音節構造の複雑なギリシア語の表記には必ずしも適さないものであった。ギリシア文字の案出は、紀元前9世紀頃まで遡ると考えられている。その元となった、[[セム語派]]の[[フェニキア]]が使用していた[[フェニキア文字]]は[[アブジャド]]であり、文字は子音ばかりの22文字であった。これは、セム諸語が子音に言語の核を置き、母音は補助的な役割しかもたないためである。一方、ギリシア語においては、母音は極めて重要な位置を占める。そこで、ギリシア語発音にはない音価を持つA、E、O、Y、Iの5つのフェニキア文字を、母音を表す[[音素文字]]に転用する<ref>「ビジュアル版 世界の文字の歴史文化図鑑 ヒエログリフからマルチメディアまで」p241 アンヌ=マリー・クリスタン編 柊風舎 2012年4月15日第1刷</ref>など、さまざまな改良が加えられた。この改良によってギリシア文字は母音と子音がそれぞれ文字を持つ、いわゆるアルファベットとなった。文字表はフェニキア文字(最後の文字は「Τ」)の後ろに、[[Υ]] /u/、Φ、Χ、Ψ、Ω を追加している。またギリシアの地域により一部異なる[[音素文字]]・字体が使われた。イオニアや[[アッティカ]]、[[コリントス]]などのギリシア本土の大部分や東方諸地域全般においては現代のギリシア文字体系につながる東方ギリシア文字が使用されたが、一方[[エウボイア島]]やクマエを中心とする[[イタリア半島]]のギリシア植民市など、ギリシア世界の西方においては[[西方ギリシア文字]](エウボイア文字、クマエ文字)が使用された。この西方ギリシア文字はイタリア半島の諸民族に伝わってエトルリア文字やラテン文字などの[[古イタリア文字]]群の原型となったが、紀元前4世紀ごろにはイオニア式のアルファベットに吸収されて姿を消した。
 
 
 
[[古代ギリシア語]]では、文章を書く方向が一定せず、右から左、または[[牛耕式]]に書かれた<ref name="threatte">Threatte (1996) p.271</ref>。右から左へ書かれるときと、左から右で書かれるときでは文字は左右裏返しになった([[鏡文字]])。西の[[エトルリア語]]・[[ウンブリア語]]・[[ファリスク語]]などは右から左に固定して書かれた<ref>Swiggers (1996) p.263</ref>。紀元前500年頃には左横書きで行は上から下に移動するという書式で統一され<ref name="threatte"/>、現在に至る。
 
 
 
<!--フェニキア文字の最後の文字は「Τ」だったが、-->ギリシア文字においては、フェニキア文字の6番目である [[Image:Phoenician waw.svg|20px]] [[ワウ]]を分化させ、そのまま {{IPA|w}} を表す場合と {{IPA|u, uː}}<ref>後に {{IPA|y, yː}} に変化した。</ref>を表す場合とで異なる字形とし、字母表上は前者(ϝ、[[ディガンマ]])をフェニキア文字と同じ6番目の位置に置き、後者([[Υ]])を「Τ」の後に置いた<ref>Allen (1986) p.47</ref>。「Υ」より後の「Φ・Χ・Ψ」の起源については議論が分かれる<ref name="swiggers">Swiggers (1996) p.265</ref>。「Φ・Χ・Ψ」および「Ξ」は地方によって音が異なり、東方ではΞ {{IPA|ks}}、Φ {{IPA|pʰ}}、Χ {{IPA|kʰ}}、Ψ {{IPA|ps}} であったが、西方では Φ {{IPA|pʰ}}、Χ {{IPA|ks}}、Ψ {{IPA|kʰ}}(Ξは使用せず、{{IPA|ps}} はΦΣと書く)であった<ref name="threatte2">Threatte (1996) p.272</ref>。
 
 
 
紀元前6世紀になると、[[イオニア]]の[[ミレトス]]で、長母音エー・オーを表す新しい文字が作られた。イオニア方言には {{IPA|h}} が存在しなかったので、本来 {{IPA|h}} を表していた「[[Η]]」を長母音エーのために使用し、オーを表すためには新しい字「[[Ω]]」を作った<ref name="swiggers"/>。[[アテネ]]では紀元前403年にこのイオニア式のアルファベットを公式に採用した<ref name="threatte"/>。それ以外の地域でも紀元前4世紀前半にはイオニア式を採用するようになった。
 
 
 
イオニア式に統一される以前は地方ごとに異なる文字が使われていた。「[[ディガンマ]]」(「[[スティグマ (ギリシア文字)|スティグマ]]」)、「[[ヘータ]]」、「[[サン (ギリシア文字)|サン]]」、「[[コッパ]]」、「[[サンピ]]」といった文字は、古典期には廃れた古い時代のもので、その後は数を表記する場合にのみ使われる(サンを除く)。
 
 
 
古代には[[大文字]]のみで、また筆記体もない。その後、4世紀には丸みを帯びた[[アンシャル体]]が現れた。9世紀以降に[[小文字]]が案出され、[[東ローマ帝国]]時代の文書には筆記体も見られる。現代ギリシアでは、あまり筆記体を用いないようである。1470年代にイタリアでギリシア文字は[[活版印刷]]されるようになり<ref name="threatte2"/>、このとき古代の碑文に見える大文字と中世以降の小文字を組み合わせた。各大文字には一つの小文字が対応するが、「シグマ」のみ例外的に二つの小文字を持つ。語頭・語中の場合 {{Unicode|σ}}、語尾の場合には {{Lang|el|ς}} が用いられる。例えば {{Lang|el|ΘΕΟΣ}}(神)を小文字で表記すると、{{Lang|el|θεοσ}} とならずに、{{Lang|el|θεος}} となる。今日、古代ギリシア語を表記する場合、すべて大文字または小文字でも、大文字と小文字の併用でも特に構わない。現代ギリシア語では、文頭と固有名詞の語頭に大文字、それ以外を小文字で表記するのが基本である。無論、ラテン文字と同様、すべて大文字にしても間違いではない。
 
 
 
ヘレニズム時代以降、発音を正確に表すために[[ダイアクリティカルマーク]]が発達した。古代ギリシア語を表記する場合、3種のアクセント記号(鋭アクセント、重アクセント、曲アクセント)や[[気息記号]]をつける。ただし、すべて大文字の場合は何もつけない。現代ギリシア語には h 音が存在しないため気息記号は用いられず、古代ギリシア語と異なって高低アクセントではないため、1980年代以降はアクセント記号は[[強勢]]の位置を表すトノス( {{el|´}})と[[トレマ]]に相当するディアリティカ({{el|¨}})の2種類だけに簡略化された。
 
 
 
ギリシア文字は数を表す際にも使われる。「イオニア式」と呼ばれる[[記数法]]は、[[アラビア数字]]のような専用の文字を用いず、通常のギリシア文字を使ってこれを表した。たとえば、1は {{Lang|el|{{unicode|αʹ}}}}、10は {{Lang|el|{{unicode|ιʹ}}}} で表し、11は {{Lang|el|{{unicode|ιαʹ}}}} である。6を表す「スティグマ」は、「シグマ」の語末形と形態が酷似しているため、現代ではこれを「シグマ」と呼ぶこともあり、また6を表す場合に代用されることもある。(詳細は[[ギリシアの数字]]の項目を参照)
 
 
 
<gallery>
 
Dipylon Inscription.JPG|ギリシャ文字が刻まれた最も古い器物の一つ。紀元前740年ごろの作品。ディピュロン碑文として知られる
 
NAMA Alphabet grec.jpg|[[古代ギリシア語]]が刻まれた陶器。[[アテネ国立考古学博物館]]所蔵
 
Codex Sinaiticus-small.jpg|[[シナイ写本]](4世紀)。[[アンシャル体]]で三日月形のシグマを使用
 
AdrianopleConquestByzSoldBGhistory.jpg|[[東ローマ帝国]]時代の『[[ヨハネス・スキュリツェス#マドリード・スキュリツェス(スキュリツェス年代記)|スキュリツェス年代記]]』(12世紀の挿絵入り写本)。
 
Gospel Estienne 1550.jpg|1550年の[[ロベール・エティエンヌ]]の[[新約聖書]]。活字設計は[[クロード・ギャラモン]]による
 
</gallery>
 
 
 
== 発音 ==
 
古代ギリシア語と現代ギリシア語では発音体系が著しく異なり、このため各文字の[[音価]]も異なる。古代の音価は、現代の[[言語学]]の研究によって推測されている紀元前5世紀ごろのアッティカ地方の音である。古代ギリシア語ではおおむね文字と発音の関係は一対一だったが、例外として {{el|α ι υ}} は長母音と短母音の両方を表した。{{el|ει}} は {{IPA|eː}} {{IPA|ei}} の両方の音を表した。{{el|ου}} も {{IPA|oː}} {{IPA|ou}} の両方を表していたが、後に {{IPA|uː}} に変化した。単独の {{el|υ}} は {{IPA|y(ː)}} だったが、{{el|αυ ευ}} の {{el|υ}} は {{IPA|u}} だった。{{el|γ}} は {{el|κ χ γ}} の前では {{IPA|ŋ}} を表し、{{el|σ}} は有声子音の前では {{IPA|z}} と発音した。{{el|ζ}} が {{IPA|zd}} と {{IPA|dz}} のどちらであったかは議論が分かれる。
 
 
 
これとは別に、しばしば「古典的」と呼ばれる発音体系に、エラスムス式発音({{lang-en-short|[[:en:Pronunciation of Ancient Greek in teaching|Erasmian pronunciation]]}})がある。これは[[16世紀]]の人文学者[[デジデリウス・エラスムス|エラスムス]]によって整理されたものを元にしている(地域によって、幾つかバリエーションがある)。実際の古代の発音とはかなり異なるものもあるが、古代ギリシア語が[[死語 (言語学)|死語]]である以上、元来の発音に拘泥する必要はなく、こちらの発音を用いることも多い。例を挙げれば、{{Unicode|Φ}} の古代アッティカ発音は {{IPA|pʰ}}([[有気音]]の{{IPA|p}})と推測されるが、エラスムス式では {{IPA|f}} である。
 
 
 
現代ギリシアでは、古代の文章でも、現代の発音体系で読まれる。これは、日本人が古典文学を現代日本語発音で読むのと同じである。
 
 
 
現代ギリシア語では {{el|φ θ χ β δ γ}} は {{IPA|f θ x v ð ɣ}} のように摩擦音になっており({{el|χ γ}} は前舌母音の前では {{IPA|ç ʝ}} になる)、有声閉鎖音は {{el|μπ ντ γκ}} のように表す。同じ母音を表すのに複数のつづり方があり、これらは歴史的発音にしたがってつづり分けられる。また、{{el|αυ ευ}} の {{el|υ}} は、{{IPA|f}}(有声音が後続するときは {{IPA|v}})と発音する。
 
 
 
音声記号は[[国際音声記号]] (IPA) による。
 
{|class="wikitable"
 
! 母音 !! つづり
 
|-
 
| a || {{el|α}}
 
|-
 
| i || {{el|ι υ η ει οι}}
 
|-
 
| u || {{el|ου}}
 
|-
 
| e || {{el|ε αι}}
 
|-
 
| o || {{el|ο ω}}
 
|}
 
 
 
== ラテン文字による表記 ==
 
[[File:Bilingual traffic sign greece.jpg|thumb|left|ギリシア文字とラテン文字による標識。翻字でなく音を転写している]]
 
ラテン文字はギリシア文字から発展したものだが、ギリシア文字にあるいくつかの文字(ΗΘΦΧΨΩ)が存在しない。古典ラテン語でギリシア語からの借用語を表すときにはΗを e、Ωを o で表し、ΘΦΧΨはそれぞれ th ph ch ps のように2文字で表した。ほかに二重母音の {{el|αι}} を ae、{{el|οι}} を oe に変えたり、語尾をラテン語風に変えたりしている。現在でも[[学名]]などでギリシア語を使用するときにはこのような変形を行う。
 
 
 
現代のギリシア語では発音とつづり字の差が大きく、ラテン文字表記には音声に対する[[転写 (言語学)|転写]]と文字に対する[[翻字]]の2種類がある。ギリシア文字をラテン文字に[[翻字]]する方法は統一されていないが、方式による差は少ない。「ΗΩ」はマクロンをつけ(ē、ō)、気息音は h に翻字するなど。
 
 
 
{{clearleft}}
 
 
 
== 文字 ==
 
{{ギリシア文字}}
 
 
 
=== 文字表 ===
 
「メガ」、「プシロン」、「ミクロン」といった語は、[[東ローマ帝国|ビザンツ]]時代に文字を区別するために付加されたもの<ref>Allen (1986) p.69,79</ref>。その他、ギリシア文字の各文字の詳細は、それぞれ独立の項参照。なお、コイネーギリシア語ではアルファベットの読み方は異なる。
 
{| class="wikitable" style="text-align:center;font-size:small;"
 
!rowspan="2"|大文字と<br />小文字
 
!rowspan="1" colspan="3"|文字名称
 
!rowspan="1" colspan="3"|音価
 
!rowspan="2"|数値
 
!rowspan="2"|ヘブライ<br />文字
 
!rowspan="2"|ラテン<br />文字
 
!rowspan="2"|HTML<br />[[文字参照]]
 
|-
 
!紀元前4世紀
 
!現代
 
!日本語の慣用
 
!古代
 
!中世
 
!現代
 
|-
 
|lang="el"|[[Α]] α
 
|アルパ
 
|アルファ
 
|アルファ
 
|{{IPA|a}} {{IPA|aː}}
 
|{{IPA|a}}
 
|{{IPA|a}}
 
|1
 
|lang="he" dir="rtl"|א
 
|a
 
|&amp;Alpha; &amp;alpha;
 
|-
 
|lang="el"|[[Β]] β
 
|ベータ
 
|ヴィタ
 
|ベータ
 
|{{IPA|b}}
 
|{{IPA|β}}
 
|{{IPA|v}}
 
|2
 
|lang="he" dir="rtl"|ב
 
|b
 
|&amp;Beta; &amp;beta;
 
|-
 
|lang="el"|[[Γ]] γ
 
|ガンマ
 
|ガマ
 
|ガンマ
 
|{{IPA|ɡ}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|ɣ}} ~ {{IPA|ʝ}}
 
|3
 
|lang="he" dir="rtl"|ג
 
|g
 
|&amp;Gamma; &amp;gamma;
 
|-
 
|lang="el"|[[Δ]] δ
 
|デルタ
 
|ゼルタ {{Nowrap begin}}{{ipa|ðelta}}{{Nowrap end}}
 
|デルタ
 
|{{IPA|d}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|ð}}
 
|4
 
|lang="he" dir="rtl"|ד
 
|d
 
|&amp;Delta; &amp;delta;
 
|-
 
|lang="el"|[[Ε]] ε
 
|エー<ref name="sa">Allen (1986) p.169</ref>
 
|エ・プシロン
 
|エプシロン<br />イプシロン
 
|{{IPA|e}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|e}}
 
|5
 
|lang="he" dir="rtl"|ה
 
|e
 
|&amp;Epsilon; &amp;epsilon;
 
|-
 
|lang="el"|[[Ζ]] ζ
 
|ゼータ
 
|ジタ {{Nowrap begin}}{{ipa|zita}}{{Nowrap end}}
 
|ゼータ
 
|{{IPA|zd}} {{IPA|dz}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|z}}
 
|7
 
|lang="he" dir="rtl"|ז
 
|z
 
|&amp;Zeta; &amp;zeta;
 
|-
 
|lang="el"|[[Η]] η
 
|エータ
 
|イタ
 
|エータ<br />イータ
 
|{{IPA|ɛː}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|i}}
 
|8
 
|lang="he" dir="rtl"|ח
 
 
|&amp;Eta; &amp;eta;
 
|-
 
|lang="el"|[[Θ]] θ
 
|テータ
 
|シタ
 
|テータ<br />シータ<br />セータ
 
|{{IPA|tʰ}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|θ}}
 
|9
 
|lang="he" dir="rtl"|ט
 
|th
 
|&amp;Theta; &amp;theta;
 
|-
 
|lang="el"|[[Ι]] ι
 
|イオータ
 
|ヨタ
 
|イオタ
 
|{{IPA|i}} {{IPA|iː}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|i}}
 
|10
 
|lang="he" dir="rtl"|י
 
|i
 
|&amp;Iota; &amp;iota;
 
|-
 
|lang="el"|[[Κ]] κ
 
|カッパ
 
|カパ
 
|カッパ
 
|{{IPA|k}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|k}} ~ {{IPA|c}}
 
|20
 
|lang="he" dir="rtl"|כ (ך)
 
|k
 
|&amp;Kappa; &amp;kappa;
 
|-
 
|lang="el"|[[Λ]] λ
 
|ラブダ<ref name="sa"/>
 
|ラムザ {{Nowrap begin}}{{ipa|lamða}}{{Nowrap end}}
 
|ラムダ
 
|{{IPA|l}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|l}}
 
|30
 
|lang="he" dir="rtl"|ל
 
|l
 
|&amp;Lambda; &amp;lambda;
 
|-
 
|lang="el"|[[Μ]] μ
 
|ミュー
 
|ミ
 
|ミュー
 
|{{IPA|m}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|m}}
 
|40
 
|lang="he" dir="rtl"|מ(ם)
 
|m
 
|&amp;Mu; &amp;mu;
 
|-
 
|lang="el"|[[Ν]] ν
 
|ニュー
 
|ニ
 
|ニュー
 
|{{IPA|n}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|n}}
 
|50
 
|lang="he" dir="rtl"|נ (ן)
 
|n
 
|&amp;Nu; &amp;nu;
 
|-
 
|lang="el"|[[Ξ]] ξ
 
|クセー
 
|クシ
 
|クシー<br />クサイ<br />グザイ
 
|{{IPA|ks}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|ks}}
 
|60
 
|lang="he" dir="rtl"|ס
 
|ks, x
 
|&amp;Xi; &amp;xi;
 
|-
 
|lang="el"|[[Ο]] ο
 
|オー<ref name="sa"/>
 
|オ・ミクロン
 
|オミクロン
 
|{{IPA|o}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|o}}
 
|70
 
|lang="he" dir="rtl"|ע
 
|o
 
|&amp;Omicron; &amp;omicron;
 
|-
 
|lang="el"|[[Π]] π
 
|ペー
 
|ピ
 
|パイ
 
|{{IPA|p}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|p}}
 
|80
 
|lang="he" dir="rtl"|פ (ף)
 
|p
 
|&amp;Pi; &amp;pi;
 
|-
 
|lang="el"|[[Ρ]] ρ
 
|ロー
 
|ロ
 
|ロー
 
|{{IPA|r}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|r}}
 
|100
 
|lang="he" dir="rtl"|ר
 
|r, rh
 
|&amp;Rho; &amp;rho;
 
|-
 
|lang="el"|[[Σ]] σ ς
 
|シグマ シーグマ
 
|シグマ
 
|シグマ
 
|{{IPA|s}} {{IPA|z}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|s}} {{IPA|z}}
 
|200
 
|lang="he" dir="rtl"|ש
 
|s
 
|&amp;Sigma; &amp;sigma; &amp;sigmaf;
 
|-
 
|lang="el"|[[Τ]] τ
 
|タウ
 
|タフ {{Nowrap begin}}{{ipa|taf}}{{Nowrap end}}
 
|タウ
 
|{{IPA|t}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|t}}
 
|300
 
|lang="he" dir="rtl"|ת
 
|t
 
|&amp;Tau; &amp;tau;
 
|-
 
|lang="el"|[[Υ]] υ
 
|ユー<ref name="sa"/>
 
|イ・プシロン
 
|ユプシロン<br />ウプシロン
 
|{{IPA|y}} {{IPA|yː}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|i}}
 
|400
 
|lang="he" dir="rtl"|&nbsp;
 
|u, y
 
|&amp;Upsilon; &amp;upsilon;
 
|-
 
|lang="el"|[[Φ]] φ
 
|ペー
 
|フィ
 
|ファイ
 
|{{IPA|pʰ}}
 
|{{IPA|ɸ}}
 
|{{IPA|f}}
 
|500
 
|lang="he" dir="rtl"|&nbsp;
 
|ph
 
|&amp;Phi; &amp;phi;
 
|-
 
|lang="el"|[[Χ]] χ
 
|ケー
 
|ヒ
 
|キー<br />カイ
 
|{{IPA|kʰ}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|x}} ~ {{IPA|ç}}
 
|600
 
|lang="he" dir="rtl"|&nbsp;
 
|kh, ch
 
|&amp;Chi; &amp;chi;
 
|-
 
|lang="el"|[[Ψ]] ψ
 
|プセー
 
|プシ
 
|プシー<br />プサイ
 
|{{IPA|ps}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|ps}}
 
|700
 
|lang="he" dir="rtl"|&nbsp;
 
|ps
 
|&amp;Psi; &amp;psi;
 
|-
 
|lang="el"|[[Ω]] ω
 
|オー<ref name="sa"/>
 
|オ・メガ
 
|オメガ
 
|{{IPA|ɔː}}
 
|&nbsp;
 
|{{IPA|o}}
 
|800
 
|lang="he" dir="rtl"|&nbsp;
 
 
|&amp;Omega; &amp;omega;
 
|-
 
|}
 
 
 
「[[ディガンマ]]」、「[[スティグマ (ギリシア文字)|スティグマ]]」、「[[ヘータ]]」、「[[サン (ギリシア文字)|サン]]」、一つ目の「[[コッパ]]」、「[[サンピ]]」といった文字は、古典期には廃れた古い時代のもので、その後は数文字としてのみ使われる。《この内「コッパ」は、現代ギリシア語では、異なる字体(二つ目の「コッパ」)のものを用いているらしい。》また、バクトリアには「[[ショー (ギリシア文字)|ショー]]」と呼ばれる文字が加えられているが、これはバクトリア音素のʃからとられたものである。
 
{| class="wikitable" style="text-align:center;font-size:small;"
 
!rowspan="2"|大文字と<br />小文字
 
!rowspan="1" colspan="3"|文字名称
 
!rowspan="1" colspan="3"|音価
 
!rowspan="2"|数値
 
!rowspan="2"|ヘブライ<br />文字
 
!rowspan="2"|ラテン<br />文字
 
!rowspan="2"|HTML<br />[[文字参照]]
 
|-
 
!紀元前4世紀
 
!現代
 
!日本語の慣用
 
!古代
 
!中世
 
!現代
 
|-
 
|lang="el"|[[ファイル:digamma uc lc.svg|28px|Ϝ ϝ]]<br />{{nowrap begin}}([[ファイル:pamphylian digamma uc lc.svg|28px]]){{nowrap end}}
 
|
 
| -
 
|[[ディガンマ]]
 
|{{IPA|w}}
 
| -
 
| -
 
|6
 
|lang="he" dir="rtl"|ו
 
|&nbsp;
 
|&amp;#988; &amp;#989;<br />(&amp;#886; &amp;#887;)
 
|-
 
|lang="el"|[[ファイル:stigma uc lc.svg|28px|Ϛ ϛ]]
 
|
 
| -
 
|[[スティグマ (ギリシア文字)|スティグマ]]
 
|{{IPA|st}}
 
| -
 
| -
 
|6
 
|lang="he" dir="rtl"|ו
 
|&nbsp;
 
|&amp;#986; &amp;#987;
 
|-
 
|lang="el"|[[ファイル:heta uc lc.svg|28px|Ͱ ͱ]]
 
|
 
| -
 
|[[ヘータ]]
 
|{{IPA|h}}
 
| -
 
| -
 
| -
 
|lang="he" dir="rtl"|ח
 
|
 
|&amp;#880; &amp;#881;
 
|-
 
|lang="el"|[[ファイル:san uc lc.svg|28px|Ϻ ϻ]]
 
|
 
| -
 
|[[サン (ギリシア文字)|サン]]
 
|{{IPA|s}}
 
| -
 
| -
 
| -
 
|lang="he" dir="rtl"|צ(ץ)
 
|&nbsp;
 
|&amp;#1018; &amp;#1019;
 
|-
 
|lang="el"|[[ファイル:qoppa uc lc.svg|28px|Ϙ ϙ]]<br />{{nowrap begin}}([[ファイル:qoppa new uc lc.svg|28px]]){{nowrap end}}
 
|
 
| -
 
|[[コッパ]]
 
|{{IPA|k}}
 
| -
 
| -
 
|90
 
|lang="he" dir="rtl"|ק
 
|&nbsp;
 
|&amp;#984; &amp;#985;<br />(&amp;#990; &amp;#991;)
 
|-
 
|lang="el"|[[ファイル:sampi uc lc T-shaped.svg|28px|Ͳ ͳ]]<br />{{nowrap begin}}([[ファイル:sampi uc lc.svg|28px]]){{nowrap end}}
 
|
 
| -
 
|[[サンピ]]
 
|{{IPA|sː}}
 
| -
 
| -
 
|900
 
|lang="he" dir="rtl"|צ(ץ)
 
|&nbsp;
 
|&amp;#882; &amp;#883;<br />(&amp;#992; &amp;#993;)
 
|-
 
|lang="el"|[[ファイル:sho uc lc.svg|28px|Ϸ ϸ]]
 
|
 
| -
 
|[[ショー (ギリシア文字)|ショー]]
 
|{{IPA|ʃ}}
 
| -
 
| -
 
| -
 
|lang="he" dir="rtl"|צ(ץ)
 
|&nbsp;
 
|&amp;#1015; &amp;#1016;
 
|-
 
|}
 
 
 
[[Unicode]]には「ヨット」と呼ばれる文字が加えられているが、これはラテン文字の[[J]](この文字は、中世に [[I]] から分岐して成立した文字である)からとられたもので、古代には存在してはおらず、また現代でも日常的なギリシア語に使われることはない。この文字は、[[言語学]]において、有史以前のギリシア語の発音([[硬口蓋接近音]])を表記するためのものらしいが、詳細は不明である。
 
{| class="wikitable" style="text-align:center;font-size:small;"
 
!rowspan="2"|大文字と<br />小文字
 
!rowspan="1" colspan="3"|文字名称
 
!rowspan="1" colspan="3"|音価
 
!rowspan="2"|数値
 
!rowspan="2"|ヘブライ<br />文字
 
!rowspan="2"|ラテン<br />文字
 
!rowspan="2"|HTML<br />[[文字参照]]
 
|-
 
!紀元前4世紀
 
!現代
 
!日本語の慣用
 
!古代
 
!中世
 
!現代
 
|-
 
|lang="el"|[[ファイル:LetterJj.svg|14px|Ϳ ϳ]]
 
|
 
| -
 
|[[ヨット]]
 
|{{IPA|j}}
 
| -
 
| -
 
| -
 
|lang="he" dir="rtl"|י
 
|
 
|&amp;#895; &amp;#1011;
 
|-
 
|}
 
 
 
=== 記号 ===
 
現代ギリシア語においては、[[鋭アクセント]]記号 (´)と[[トレマ]](¨)の2種類の[[ダイアクリティカルマーク]]を使用する。その他の記号は、専ら[[古典ギリシア語]]等の表記にのみ用いられる。
 
 
 
なお、[[Microsoft Windows]]の場合、通常のギリシャ語キーボードでは、[[鋭アクセント]]記号 ( ´ ) 以外は入力できないので、それらを入力したい場合は、「ギリシャ語 Polytonic」キーボードを使用する必要がある。
 
 
 
==== アクセント記号 ====
 
{|class=wikitable
 
!記号!!名称!!意味
 
|-
 
|class=Unicode|´
 
|[[鋭アクセント]]記号
 
|高音(または強アクセント)
 
|-
 
|class=Unicode|`
 
|[[重アクセント]]記号
 
|中高音(または弱アクセント)
 
|-
 
|class=Unicode|˜(または ˆ)
 
|[[曲アクセント]]記号
 
|上2つの結合(山なりの発音)
 
|}
 
 
 
==== 気息記号・その他 ====
 
{|class=wikitable
 
!記号!!名称!!意味
 
|-
 
|class=Unicode style=font-size:x-large|῾
 
|[[有気記号]]
 
|語頭母音の有気 (h) 発音
 
|-
 
|class=Unicode style=font-size:x-large|᾿
 
|[[無気記号]]
 
|語頭母音の無気発音
 
|-
 
|class=Unicode|¨
 
|分離記号([[分音符号]])
 
|連続母音字を個別に発音
 
|-
 
|class=Unicode|◌ͅ
 
|[[下書きのイオータ]]
 
|歴史的過程で省略・脱落された {{el|ΑΙ}} /aːi/(アーイ)、{{el|ΗΙ}} /ɛːi/(エーイ)、{{el|ΩΙ}} /ɔːi/(オーイ)のΙを表現する記号
 
|-
 
|class=Unicode|˘
 
|[[ブレーヴェ|短音記号]]
 
|母音の長さを短くする
 
|-
 
|class=Unicode|¯
 
|[[マクロン|長音記号]]
 
|母音の長さを長くする
 
|}
 
 
 
== シンボルとしてのギリシア文字 ==
 
{{main|数学・自然科学・工学分野で使われるギリシア文字}}
 
 
 
ギリシア文字は、ギリシア語世界以外では[[シンボル]]としてさまざまな用途に用いられる。特に小文字はラテン文字と異なる形をした文字が多いため、ラテン文字で不足のときによく用いられる。
 
 
 
箇条書きなどの順序数で「α、β、γ…」を使用することが多い。[[アルファ粒子|α線]]・[[ベータ粒子|β線]]・[[ガンマ線|γ線]]も似た使い方である。
 
 
 
単位として使われる「[[オーム|Ω]]」<ref>Unicode には[[文字様記号]]として U+2126 にオーム記号が定義されているが、ギリシア文字のオメガを使うのが望ましいとする。{{cite web|url=http://www.unicode.org/charts/PDF/U2100.pdf|title=Letterlike Symbols|publisher=The Unicode Consorcium|accessdate=2015-05-29}}</ref>や[[SI接頭辞]]の「[[マイクロ|μ]]」、角度の「θ」、[[標準偏差]]を表す「σ」、増分の「Δ」、[[円周率]]の「π」、[[総和]]の「Σ」や[[総乗]]の「Π」、[[ラムダ計算]]、[[カイ二乗分布]]、[[ガンマ関数]]などはよく知られる。詳細は個々の文字を参照。
 
 
 
シンボルとして使われるギリシア文字は、通常のギリシア文字とは異なる形をしていることもある。Unicode では通常のギリシア文字のほかに主にシンボル用に使われるいくつかの文字を定義している({{unicode|ϑ ϕ ϖ ϰ ϱ}} など)。
 
 
 
[[国際音声記号]]では {{IPA|β}} を[[有声両唇摩擦音]]に、{{IPA|θ}} を[[無声歯摩擦音]]に使用する。{{IPA|ɑ}} {{IPA|ɣ}} {{IPA|ɤ}} {{IPA|ð}} {{IPA|ɛ}} {{IPA|ɵ}} {{IPA|ʎ}} {{IPA|ɸ}} {{IPA|ø}} などは一見ギリシア文字のように見えるが、少なくとも Unicode の上ではギリシア文字ではない。
 
 
 
== ギリシア文字から派生した文字 ==
 
ギリシア文字は母音と子音からなるアルファベットであり使用しやすいものであったことから、[[ヨーロッパ大陸]]や[[コーカサス]]地方を中心にかなりの民族によって模倣されたが、ギリシア文字をそのまま導入することは少なく、ほとんどの民族はギリシア文字を参考に自らの言語の特徴に合わせた新しい文字を考案するのが常であった。
 
 
 
こうした派生文字の中で最も古いものは[[エトルリア文字]]などの[[古イタリア文字]]群であり、[[紀元前8世紀]]ごろにはエトルリア文字の使用が開始され、[[紀元前7世紀]]ごろには現代において最も使用されている文字である[[ラテン文字]]が成立した。同時期、[[小アジア]]においても[[リュディア文字]]、[[カリア文字]]、[[リュキア文字]]などといった文字が西方ギリシア文字より考案された。アレクサンドロス大王の遠征によって[[中央アジア]]の[[バクトリア]]にギリシア人王朝が成立すると、同地方で話される[[バクトリア語]]もギリシア文字で書かれるようになり、[[クシャーナ朝]]の公用語として広く使用された。バクトリア語におけるギリシア文字はほぼオリジナルと同じものだが、「[[ショー (ギリシア文字)|ショー]]」と呼ばれる文字が加えられている。
 
 
 
紀元後に入ってもこの流れは続き、[[4世紀]]には[[エジプト]]において[[コプト文字]]がギリシア文字から派生し、同じく4世紀には[[ウルフィラ]]によって、ギリシア文字から強く影響を受けた[[ゴート文字]]が考案された。さらにこの時期[[カフカース]]においても、[[404年]]から[[406年]]にかけて[[メスロプ・マシュトツ]]により[[アルメニア文字]]が開発された<ref>「ビジュアル版 世界の文字の歴史文化図鑑 ヒエログリフからマルチメディアまで」p266 アンヌ=マリー・クリスタン編 柊風舎 2012年4月15日第1刷</ref>。おそらく同じころに[[グルジア文字]]が発明されたと考えられているが、この文字の成立時期や成立過程は不明な点が多い。ただし文字の並びや、[[グルジア語]]には不要な文字がギリシア文字に対応するところに存在していることから、この文字がギリシア文字から考案されたことはほぼ確実視されている<ref>『図説 世界の文字とことば』 町田和彦編 26頁。河出書房新社 2009年12月30日初版発行 ISBN 978-4309762210</ref>。この二つの文字は現代においても使用され続けている。
 
 
 
一方、[[860年]]ごろに[[正教会]]の[[キュリロス (スラヴの(亜)使徒)|キュリロス]]と[[メトディオス (スラヴの(亜)使徒)|メトディオス]]が、[[スラヴ諸語]]を表記するために[[グラゴル文字]]を考案した。グラゴル文字は数百年間使用されたものの、[[900年]]ごろにやはりギリシア文字から考案された[[キリル文字]]が有力になっていき、やがて正教会圏の諸国において広く使用されるようになっていった<ref>「ビジュアル版 世界の文字の歴史文化図鑑 ヒエログリフからマルチメディアまで」p273 アンヌ=マリー・クリスタン編 柊風舎 2012年4月15日第1刷</ref>。このほか、かつてギリシア文字は[[アルーマニア語]]を表記するのにも使われていたが、現在はラテン文字を使うのが普通になっている。
 
 
 
== コンピュータ ==
 
=== Unicode ===
 
[[Unicode]] での収録位置は以下のとおり。
 
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:large; font-family:'DejaVu Sans', 'Komatuna P', 'M+ 1c', 'Meguri P', 'UmePlus P Gothic', 'VL Pゴシック', 'New Athena Unicode', Alfios, Anaktoria, Analecta, Avdira, Quivira, Symbola, Code2000, Atavyros, Alexander, 'Nishiki-teki';"
 
|-
 
! U+ !! width="15pt" | 0 !! width="15pt" | 1 !! width="15pt" | 2 !! width="15pt" | 3 !! width="15pt" | 4 !! width="15pt" | 5 !! width="15pt" | 6 !! width="15pt" | 7 !! width="15pt" | 8 !! width="15pt" | 9 !! width="15pt" | A !! width="15pt" | B !! width="15pt" | C !! width="15pt" | D !! width="15pt" | E !! width="15pt" | F
 
|-
 
! 0370
 
|&#880;||&#881;||&#882;||&#883;||&#884;||&#885;||&#886;||&#887;||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||&#890;||&#891;||&#892;||&#893;||&#894;||&#895;
 
|-
 
! 0380
 
|style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||&#900;||&#901;||&#902;||&#903;||&#904;||&#905;||&#906;||style="background:#666;"| ||&#908;||style="background:#666;"| ||&#910;||&#911;
 
|-
 
! 0390
 
|&#912;||Α||Β||Γ||Δ||Ε||Ζ||Η||Θ||Ι||Κ||Λ||Μ||Ν||Ξ||Ο
 
|-
 
! 03A0
 
|Π||Ρ||style="background:#666;"| ||Σ||Τ||Υ||Φ||Χ||Ψ||Ω||&#938;||&#939;||&#940;||&#941;||&#942;||&#943;
 
|-
 
! 03B0
 
|&#944;||α||β||γ||δ||ε||ζ||η||θ||ι||κ||λ||μ||ν||ξ||ο
 
|-
 
! 03C0
 
|π||ρ||&#962;||σ||τ||υ||φ||χ||ψ||ω||&#970;||&#971;||&#972;||&#973;||&#974;||&#975;
 
|-
 
! 03D0
 
|&#976;||&#977;||&#978;||&#979;||&#980;||&#981;||&#982;||&#983;||&#984;||&#985;||&#986;||&#987;||&#988;||&#989;||&#990;||&#991;
 
|-
 
! 03E0
 
|&#992;||&#993;||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"|
 
|-
 
! 03F0
 
|&#1008;||&#1009;||&#1010;||&#1011;||&#1012;||&#1013;||&#1014;||&#1015;||&#1016;||&#1017;||&#1018;||&#1019;||&#1020;||&#1021;||&#1022;||&#1023;
 
|-
 
| colspan="17" |
 
|-
 
! 1F00
 
|&#7936;||&#7937;||&#7938;||&#7939;||&#7940;||&#7941;||&#7942;||&#7943;||&#7944;||&#7945;||&#7946;||&#7947;||&#7948;||&#7949;||&#7950;||&#7951;
 
|-
 
! 1F10
 
|&#7952;||&#7953;||&#7954;||&#7955;||&#7956;||&#7957;||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||&#7960;||&#7961;||&#7962;||&#7963;||&#7964;||&#7965;||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"|
 
|-
 
! 1F20
 
|&#7968;||&#7969;||&#7970;||&#7971;||&#7972;||&#7973;||&#7974;||&#7975;||&#7976;||&#7977;||&#7978;||&#7979;||&#7980;||&#7981;||&#7982;||&#7983;
 
|-
 
! 1F30
 
|&#7984;||&#7985;||&#7986;||&#7987;||&#7988;||&#7989;||&#7990;||&#7991;||&#7992;||&#7993;||&#7994;||&#7995;||&#7996;||&#7997;||&#7998;||&#7999;
 
|-
 
! 1F40
 
|&#8000;||&#8001;||&#8002;||&#8003;||&#8004;||&#8005;||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||&#8008;||&#8009;||&#8010;||&#8011;||&#8012;||&#8013;||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"|
 
|-
 
! 1F50
 
|&#8016;||&#8017;||&#8018;||&#8019;||&#8020;||&#8021;||&#8022;||&#8023;||style="background:#666;"| ||&#8025;||style="background:#666;"| ||&#8027;||style="background:#666;"| ||&#8029;||style="background:#666;"| ||&#8031;
 
|-
 
! 1F60
 
|&#8032;||&#8033;||&#8034;||&#8035;||&#8036;||&#8037;||&#8038;||&#8039;||&#8040;||&#8041;||&#8042;||&#8043;||&#8044;||&#8045;||&#8046;||&#8047;
 
|-
 
! 1F70
 
|&#8048;||&#8049;||&#8050;||&#8051;||&#8052;||&#8053;||&#8054;||&#8055;||&#8056;||&#8057;||&#8058;||&#8059;||&#8060;||&#8061;||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"|
 
|-
 
! 1F80
 
|&#8064;||&#8065;||&#8066;||&#8067;||&#8068;||&#8069;||&#8070;||&#8071;||&#8072;||&#8073;||&#8074;||&#8075;||&#8076;||&#8077;||&#8078;||&#8079;
 
|-
 
! 1F90
 
|&#8080;||&#8081;||&#8082;||&#8083;||&#8084;||&#8085;||&#8086;||&#8087;||&#8088;||&#8089;||&#8090;||&#8091;||&#8092;||&#8093;||&#8094;||&#8095;
 
|-
 
! 1FA0
 
|&#8096;||&#8097;||&#8098;||&#8099;||&#8100;||&#8101;||&#8102;||&#8103;||&#8104;||&#8105;||&#8106;||&#8107;||&#8108;||&#8109;||&#8110;||&#8111;
 
|-
 
! 1FB0
 
|&#8112;||&#8113;||&#8114;||&#8115;||&#8116;||style="background:#666;"| ||&#8118;||&#8119;||&#8120;||&#8121;||&#8122;||&#8123;||&#8124;||&#8125;||&#8126;||&#8127;
 
|-
 
! 1FC0
 
|&#8128;||&#8129;||&#8130;||&#8131;||&#8132;||style="background:#666;"| ||&#8134;||&#8135;||&#8136;||&#8137;||&#8138;||&#8139;||&#8140;||&#8141;||&#8142;||&#8143;
 
|-
 
! 1FD0
 
|&#8144;||&#8145;||&#8146;||&#8147;||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||&#8150;||&#8151;||&#8152;||&#8153;||&#8154;||&#8155;||style="background:#666;"| ||&#8157;||&#8158;||&#8159;
 
|-
 
! 1FE0
 
|&#8160;||&#8161;||&#8162;||&#8163;||&#8164;||&#8165;||&#8166;||&#8167;||&#8168;||&#8169;||&#8170;||&#8171;||&#8172;||&#8173;||&#8174;||&#8175;
 
|-
 
! 1FF0
 
|style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||&#8178;||&#8179;||&#8180;||style="background:#666;"| ||&#8182;||&#8183;||&#8184;||&#8185;||&#8186;||&#8187;||&#8188;||&#8189;||&#8190;||style="background:#666;"|
 
|-
 
| colspan="17" |
 
|-
 
! 10140
 
|&#65856;||&#65857;||&#65858;||&#65859;||&#65860;||&#65861;||&#65862;||&#65863;||&#65864;||&#65865;||&#65866;||&#65867;||&#65868;||&#65869;||&#65870;||&#65871;
 
|-
 
! 10150
 
|&#65872;||&#65873;||&#65874;||&#65875;||&#65876;||&#65877;||&#65878;||&#65879;||&#65880;||&#65881;||&#65882;||&#65883;||&#65884;||&#65885;||&#65886;||&#65887;
 
|-
 
! 10160
 
|&#65888;||&#65889;||&#65890;||&#65891;||&#65892;||&#65893;||&#65894;||&#65895;||&#65896;||&#65897;||&#65898;||&#65899;||&#65900;||&#65901;||&#65902;||&#65903;
 
|-
 
! 10170
 
|&#65904;||&#65905;||&#65906;||&#65907;||&#65908;||&#65909;||&#65910;||&#65911;||&#65912;||&#65913;||&#65914;||&#65915;||&#65916;||&#65917;||&#65918;||&#65919;
 
|-
 
! 10180
 
|&#65920;||&#65921;||&#65922;||&#65923;||&#65924;||&#65925;||&#65926;||&#65927;||&#65928;||&#65929;||&#65930;||style="background:#666"| ||style="background:#666"| ||style="background:#666"| ||style="background:#666"| ||style="background:#666"|
 
|}
 
 
 
=== キーボード ===
 
基本的に、[[ラテン文字]]の[[QWERTY配列]]に対応する配列になっている。
 
 
 
[[Microsoft Windows]]における現代ギリシア語のキーボード配列(灰色はラテン文字との対比のために加えたもの)。ラムダの右のキーが[[デッドキー]]になっており、ダイアクリティカルマークを入力することができる。
 
[[ファイル:KB Greek.svg|thumb|left|650px]]
 
{{clear}}
 
[[Microsoft Windows]]における[[ギリシャ語]][[キーボード (コンピュータ)|キーボード]](ギリシャ語 Polytonic)。
 
[[ファイル:Greek_keyboard_polytonic_win.png|thumb|left|650px]]
 
{{clear}}
 
 
 
=== JIS X 0208 ===
 
日本の符号化文字集合である[[JIS X 0208]]にはギリシア文字を含んでいるが、語末用のシグマ({{el|ς}})がなく、またアクセント記号もないため、ギリシア語の表記には適していない。また、日本語のフォントは JIS X 0208 に含まれるすべての文字に対して同じ幅のグリフを用意していることが多いため、そのままだとギリシア文字が漢字と同じ幅で表示されてしまう問題がある。
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{reflist|2}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
* {{cite book|author=W. Sidney Allen|title=Vox Graeca|edition=3rd|year=1986|origyear=1968|publisher=Cambridge University Press|isbn=0521335558}}
 
* {{cite book|year=1996|author=Pierre Swiggers|chapter=Transmission of the Phoenician Script to the West|editor=Peter T. Daniels; William Bright|title=The World's Writing Systems|publisher=Oxford University Press|pages=261-270}}
 
* {{cite book|year=1996|author=Leslie Threatte|chapter=The Greek Alphabet|editor=Peter T. Daniels; William Bright|title=The World's Writing Systems|publisher=Oxford University Press|pages=271-280}}
 
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Commons|Category:Greek letters}}
 
{{wiktionary}}
 
* [[西方ギリシア文字]]
 
* [[コプト文字]]
 
* [[バクトリア語]]
 
* [[ラテン文字]]
 
* [[キリル文字]]
 
* [[ギリシア語]]
 
* [[グルジア文字]]
 
* [[フェニキア文字]]
 
* [[アルメニア文字]]
 
* [[エトルリア文字]]
 
  
 +
古代ギリシア人が[[フェニキア文字]]を借用してつくった文字。前 1000年頃にできあがったものとみられており,初めは東ギリシア文字 (イオニア文字) と西ギリシア文字 (カルキディア文字) とで多少の差があったが,前4世紀にイオニア文字に統一された。イオニアのアルファベットは,24の文字から成る。ギリシア文字のフェニキア文字と異なる大きな特徴は,母音を表わす文字があることである。なお,現在は,現代ギリシア語を書くのに用いられている。
 +
 +
{{テンプレート:20180815sk}}
 
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2018/10/27/ (土) 14:47時点における最新版

ギリシア文字(ギリシアもじ)

古代ギリシア人がフェニキア文字を借用してつくった文字。前 1000年頃にできあがったものとみられており,初めは東ギリシア文字 (イオニア文字) と西ギリシア文字 (カルキディア文字) とで多少の差があったが,前4世紀にイオニア文字に統一された。イオニアのアルファベットは,24の文字から成る。ギリシア文字のフェニキア文字と異なる大きな特徴は,母音を表わす文字があることである。なお,現在は,現代ギリシア語を書くのに用いられている。



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