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{{legend|#9FCEFF|[[第二言語]](非公式)}}
 
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[[ファイル:Niederfränkisches Sprachgebiet.PNG|thumb|300px|ヨーロッパにおける[[低地フランク語]]の分布]]
 
'''オランダ語'''(オランダご、{{lang-nl-short|Nederlands}} {{IPA-nl|ˈneːdərlɑnts||nl-Nederlands.ogg}})は、[[インド・ヨーロッパ語族]]の[[ゲルマン語派|西ゲルマン語群]]に属し、[[オランダ]]および[[ベルギー]]北部を中心に2300万人以上が使っている[[言語]]。ベルギー方言は[[フラマン語]]と言うことがある。
 
  
[[日本語]]では現在は主にオランダ語と言うが、[[江戸時代]]には'''蘭語'''(らんご)とも呼ばれ、今でも'''蘭'''(らん)という略称が広く使われている。また、[[英語]]ではオランダ語のことを Dutch と言う(詳細は後述「ダッチ」を参照)。
+
'''オランダ語'''(オランダご、{{lang-nl-short|Nederlands}} {{IPA-nl|ˈneːdərlɑnts||nl-Nederlands.ogg}})
  
== 歴史 ==
+
オランダの国語であり,オランダのほかにもベルギーの北部,ベルギーに隣接するフランスの一部で話される言語。ネーデルラント語ともいう。ベルギーで話されているものは特に[[フラマン語]]と呼ばれ,南部に行われるフランス語と対立しつつ公用語として用いられている。系統的には,インド=ヨーロッパ語族の[[ゲルマン語派]]に属し,英語,ドイツ語などとともに西ゲルマン語群をなす。文献は 12世紀から。方言差はかなり大きい。日本語に取入れられているオランダ語の単語は相当多く,コップ kop,ブリキ blik,ズック doekなどはその一例である。なお,南アフリカ共和国のアフリカーンス語は,17世紀にこの地にもたらされたオランダ語が独自の発達をとげたものである。
現代のオランダ地方では、古くは[[西ゲルマン語群]]の一言語[[古フランク語]]を話していた。後にこれが古低フランク語諸方言となる。[[ブルゴーニュ公国]]の下で政治的に統一されたのは[[中世]]後期に入ってからで、[[フランドル]]([[北海]]沿岸)と[[ブラバント]](オランダ南部からベルギー北部)の方言が最も優勢であった。[[1600年]]ごろになって、オランダ語訳[[聖書]]を作成するためオランダ語をひとつにする必要性が生じた際、いくつかの方言のうち[[ホラント州|ホラント地方]]の方言を中心に組み立てられた。これが現在のオランダ語の基礎になった。
 
  
== 分類 ==
 
オランダ語は、言語学の分類上は広義の[[ドイツ語]](狭義のドイツ語を包含する[[ゲルマン語]]の一派の総称)の一[[方言]]とされる。ただしあくまで学問上の分類であり、両言語の母語使用者が互いの書物や放送、[[映画]]を学習抜きでスムーズに読んだり視聴したりできるほど近しい関係にあるわけではない。
 
 
オランダ語は諸方言を含む広義のドイツ語のうち[[低地ドイツ語]]とも言われる北部の言語のうちの西部の言語、[[低地フランク語]]から形成されたものである(標準ドイツ語は[[高地ドイツ語]]のうち[[中部ドイツ語]]に属する東部の[[テューリンゲン・オーバーザクセン語|テューリンゲン・オーバーザクセン方言]]に基づく)。
 
 
== 使用されている国と地域 ==
 
オランダ語はオランダをはじめ、ベルギーの[[フランデレン地域]]、かつてオランダの統治下にあった[[スリナム]]、オランダ自治領の[[アルバ]]、[[オランダ領アンティル]]で使用され、これらの国と地域の公用語になっている。
 
 
オランダ、フランデレン、スリナムの各政府は、{{仮リンク|オランダ語連合|nl|Nederlandse Taalunie|en|Dutch Language Union|preserve=1}}({{lang-nl-short|Nederlandse Taalunie}})を結成し、言語活動に関する政策を共有している。この機関によって定められた標準オランダ語(Standaardnederlands、旧称 ABN: Algemeen Beschaafd Nederlands)は、それぞれの国の教育・政治・放送などの場で使用されている。またベルギーに国境を接するフランスの[[ノール県]]付辺でも、かつてはオランダ語([[フラマン語]])が使用されていたが、現在はごく一部を除き[[フランス語]]が優勢となっている。
 
 
=== 方言 ===
 
[[フラマン語]]はベルギーで話されているオランダ語諸方言の総称である。フラマン語はベルギーのフランデレン(フランドル)地域で話されているオランダ語と、オランダ本国で話されているオランダ語と区別するために使われるが、独立した一言語ではなく、オランダ語の諸方言という社会言語学的な分類にすぎない。近年ベルギーにおいては“Vlaams”(フラマン語)を“Nederlands”(オランダ語)に言い換えることが公的に推奨されている。またフランス・フラマン語はその特性から、フランス国内ではダンケルク語と言うことがある。
 
 
オランダとベルギーにまたがる[[リンブルフ]]地方で話される[[リンブルフ語]]は、学術上は独立した言語とみなされるが、政治上はオランダ語の一方言として扱われる。
 
 
=== 派生言語 ===
 
[[アフリカーンス語]]は[[南アフリカ共和国|南アフリカ]]と[[ナミビア]]で話されており、主に[[16世紀]]のオランダ語の方言から派生したものである。オランダ語(低地ドイツ語)の「[[方言]]」とする見方と、極めて近縁ながら「別の言語」であるという見方があるが、実情はその中間である。
 
 
アフリカーンス語には多くの[[マレー語]]、[[バンツー語]]、[[英語]]からの[[借用語]]があるため、それらの語彙は標準オランダ語(及び、標準オランダ語に極めて近い低地ドイツ語)の話者には理解しづらい。この点を重視すれば、アフリカーンス語はオランダ語(低地ドイツ語)の方言でなく、その派生言語であるといえよう。しかし、アフリカーンス語の文法はオランダ語の文法を簡略にしたものであり、基本的な[[語彙]]は多くの点で共通しているので、借用語さえ理解すれば、オランダ語話者(及び低地ドイツ語話者)はアフリカーンス語話者と容易に相互理解が可能である。そのため、アフリカーンス語はいまだに「オランダ語の方言」と言ってもいいほどオランダ語との一体性を保っているともいえる。
 
 
== 文字 ==
 
オランダ語は[[ラテン文字]]を用いて表記する。
 
 
オランダ語のつづりに特有の「'''[[IJ|ij]]'''」は慣習的に1文字のように扱われ、語頭で大文字にする場合には「IJzer」のように j も大文字にする。
 
 
[[連母音]]と[[二重母音]]と区別するために[[トレマ|分音記号]](¨)が用いる。また強調や同じつづりの語を区別するため[[アキュート・アクセント|鋭アクセント符号]](´)を用いることがある。例えばeenは[[不定冠詞]]と[[数詞]]「1」の両方の意味を持つが、数詞であることを明示したい場合にはアクセント符号を付してéénと書く。
 
 
オランダ語の[[正書法]]は近代では[[1946年]]に改革され、政府発行の''Woordenlijst Nederlandse Taal''(オランダ語単語一覧)、通称''Groene Boekje''(緑本)が公式なつづり方を示している。
 
 
[[1995年]]には、つづり方に揺れがあった複合語や外来語の統一基準などを含む新正書法が公布された。これによって''Groene Boekje''も改訂され、最新版は[[2005年]]に発行された。
 
 
{{オランダ語アルファベット}}
 
 
== 発音 ==
 
オランダ語には以下の[[母音]]と[[子音]]がある。(記事中の発音は[[国際音声記号|IPA]]によって表記する。)
 
 
=== 母音 ===
 
{|align=right
 
|-
 
|オランダ語の[[単母音]]<br/>[[ファイル:Dutch-monophthongs.png|right]]
 
|-
 
|オランダ語の[[二重母音]]<br/>[[ファイル:Dutch-diphthongs.png|right]]
 
|}
 
 
{|class="wikitable"
 
|+'''オランダ語の母音'''
 
|'''つづり'''
 
|'''発音'''
 
|'''単語例'''
 
|-
 
|a([[閉音節]])
 
|{{IPA|ɑ}}
 
|bad {{IPA|bɑt}} (入浴)
 
|-
 
|a([[開音節]]), aa
 
|[aː]
 
|zaad [zaːt] (種)
 
|-
 
|e(閉音節)
 
|{{IPA|ɛ}}
 
|bed {{IPA|bɛt}} (ベッド)
 
|-
 
|e(強勢なし)
 
|[ə]
 
|de [də] ([[定冠詞]])
 
|-
 
|e(開音節), ee
 
|[eː]<sup>1</sup>
 
|beet [beːt] (噛むこと)
 
|-
 
|eeuw
 
|[eːu]
 
|eeuw [eːu] (世紀)
 
|-
 
|eu
 
|[øː]<sup>1</sup>
 
|neus [nøːs] (鼻)
 
|-
 
|i
 
|{{IPA|ɪ}}<sup>2</sup>
 
|bit [bıt] (少量)
 
|-
 
|ie
 
|[i]
 
|biet [bit] (甜菜)
 
|-
 
|ieuw
 
|[iu]
 
|nieuw[niu] (新しい)
 
|-
 
|o(閉音節)
 
|{{IPA|ɔ}}
 
|bot {{IPA|bɔt}} (骨)
 
|-
 
|o(開音節), oo
 
|[oː]<sup>1</sup>
 
|boot [boːt] (ボート)
 
|-
 
|oe
 
|[u]
 
|hoed [hut] (帽子)
 
|-
 
|u
 
|{{IPA|ʏ}}
 
|hut {{IPA|hʏt}} (小屋)
 
|-
 
|uu
 
|[y]
 
|fuut [fyt] (カイツブリ)
 
|-
 
|ei, ij
 
|{{IPA|ɛi}}<sup>3</sup>
 
|ei {{IPA|ɛi}} (卵)<br />wijn {{IPA|ʋɛin}} (ワイン)
 
|-
 
|ui
 
|[œy]
 
|ui [œy] (タマネギ)
 
|-
 
|au, auw, ou, ouw
 
|{{IPA|ʌu}}
 
|faun {{IPA|fʌun}}ファウヌス(牧神)<br />zout {{IPA|zʌut}} (塩)
 
|-
 
|uw
 
|[yu]
 
|uw [yu] (あなたの (your) )
 
|}
 
 
* 註1: /eː/, /øː/, /oː/は、実際には接近した[[二重母音]]のように発音する(/eː/=[ei], /øː/=[øy], /oː/=[ou])。ただし、ベルギーでは二重母音ではなく[eː], [øː], [oː]と長音で発音することが多い。
 
* 註2: 接尾辞の -ig の i は[ə]。
 
* 註3: 接尾辞の -lijk などの ij は[ə]。
 
 
=== 子音 ===
 
{|class="wikitable"
 
|+'''オランダ語の子音'''
 
|'''つづり'''
 
|'''発音'''
 
|'''単語例'''
 
|-
 
|p, b(語末)
 
|[p]
 
|pen {{IPA|pɛn}} (ペン)
 
|-
 
|b
 
|[b]
 
|biet [bit] (甜菜)
 
|-
 
|t, d(語末)
 
|[t]
 
|tak {{IPA|tɑk}} (枝)
 
|-
 
|d
 
|[d]
 
|dak {{IPA|dɑk}} (屋根)
 
|-
 
|k
 
|[k]
 
|kat {{IPA|kɑt}} (ネコ)
 
|-
 
|m
 
|[m]
 
|mens {{IPA|mɛns}} (人)
 
|-
 
|n
 
|[n]<sup>1</sup>
 
|nek {{IPA|nɛk}} (首)
 
|-
 
|ng
 
|[ŋ]
 
|eng {{IPA|ɛŋ}} (怖い)
 
|-
 
|f
 
|[f]
 
|fiets [fits] (自転車)
 
|-
 
|v
 
|[v]<sup>2</sup>
 
|oven [ovən] (かまど)
 
|-
 
|s
 
|[s]
 
|sok {{IPA|sɔk}} (靴下)
 
|-
 
|z
 
|[z]<sup>3</sup>
 
|zeep [zeːp] (石鹸)
 
|-
 
|ch
 
|[x]{{IPA|ɣ}}<sup>4</sup>
 
|acht {{IPA|ɑxt}} (8)
 
|-
 
|g
 
|[x]{{IPA|ɣ}}<sup>4</sup>
 
|gaan {{IPA|ɣaːn}} (行く)
 
|-
 
|r
 
|[r]<sup>5</sup>
 
|rat {{IPA|rɑt}} (ネズミ)
 
|-
 
|h
 
|[h]
 
|hoed [hut] (帽子)
 
|-
 
|w
 
|{{IPA|ʋ}}<sup>6</sup>
 
|wang {{IPA|ʋɑŋ}} (頬)
 
|-
 
|j
 
|[j]
 
|jas {{IPA|jɑs}} (コート)
 
|-
 
|l
 
|[l]
 
|land {{IPA|lɑnt}} (土地)
 
|}
 
 
* 註1: 動詞や名詞の複数語尾 -en の n は標準語では発音しない。
 
* 註2: 語頭では無声化して[f]となることがある。
 
* 註3: 一部の方言において[s]として発音されることがある。
 
* 註4: 基本的に後に母音が続く場合は{{IPA|ɣ}}、そうでない場合は[x]とされているが、ほとんど同じように聞こえる。
 
* 註5: [r]([[歯茎ふるえ音]])、{{IPA|ʁ}}([[有声口蓋垂摩擦音]])、{{IPA|ʀ}}([[口蓋垂ふるえ音]])、{{IPA|ɹ}}([[歯茎接近音]])などさまざまに発音される。標準語の日常会話では{{IPA|ʀ}}が主流だが、改まった場では[r]が好まれる。
 
* 註6: /r/の前で強まり[v]として発音されることがある。
 
sch は s + ch とみなし[sx]と発音されるが、語尾では[s]となる。
 
 
[g]、{{IPA|ʃ}}、{{IPA|ʒ}}は外来語の中にのみ現れる。ときに[g]は{{IPA|ɣ}}として発音される。例: goal [gol], chef {{IPA|ʃɛf}}, jury {{IPA|ʒyri}}
 
 
そのほか、 sj は{{IPA|ʃ}}、 tj は[c]、 nj は{{IPA|ɲ}}と発音される(オランダ語の音韻学上これらは単独の[[音素]]ではなく、それぞれ/s/+/j/、/t/+/j/、/n/+/j/の[[異音]]とみなされる)。
 
 
{{IPA|ʔ}}([[声門閉鎖音]])が母音から始まる[[音節]]の頭に現れる(オランダ語においては単独の音素とみなさないのが一般的である)。
 
 
[[同化 (音声学)|同化作用]]のために、次の語の語頭の子音はしばしば無声化する。例えば''het vee''(the cattle)は/hətfe/になる。この無声化プロセスは一部地域(アムステルダム、フリースラント)では極端になり、[v], [z]及び{{IPA|ɣ}}がほぼ完全に無くなる。さらに、南部では、これらの現象が語中でも起こる。例えば、''logen''が''loochen''  {{IPA|loɣə}} → [loxə]。オランダ南部のブラバントとリンブルフ及び、フランドルではgが口蓋化する(軟g)ため、この差はより大きめである。ただし、本来の有声音である/v/, /z/は/f/, /s/より発音時の息の出し方が弱い傾向にあり、無声化しても音素の対立はある程度認められる。
 
 
=== 歴史的な発音の変化 ===
 
低地ドイツ語に属するオランダ語は[[第二次子音推移]]を受けていない。そのほか独自の変化も見られる。例えば、-oldや-oltで終わる語は''l''を失い、[[二重母音]]になった。比較すると、英語 ''old'', ドイツ語 ''alt'', オランダ語 ''oud'' のようになった。/u/を含む''hus''(「家」)のような語は、まず/y/を含む ''huus'' に変化し、その後二重母音/œy/を含む ''huis'' に至った。音素/g/はなくなり標準語では[[有声軟口蓋摩擦音]] {{ipa|ɣ}} になったが、フランダースやリンブルフなど南部では有声口蓋化摩擦音になった。
 
 
== 文法 ==
 
=== 法と時制 ===
 
[[法 (文法)|法]]と[[時制]]には、[[直説法]]([[現在形]]、[[過去形]]、[[未来形]]、現在[[完了形]]、過去完了形、未来完了形)、[[仮定法]]現在形、[[命令法]]がある。ドイツ語と異なり、仮定法(ドイツ語の[[接続法]]に相当する)はあまり用いられない。
 
 
=== 動詞 ===
 
動詞は主語に応じて[[人称変化]]する。1つの主語に複数の動詞・助動詞が対応する場合、人称変化するもの(定動詞)は1つだけであり、他は不定形のままとなる。ドイツ語と同様[[分離動詞]]と非分離動詞がある。英語のto不定詞、ドイツ語のzu不定詞に相当するte不定詞も用いる。分離動詞のte不定詞はドイツ語と異なり、「分離接頭辞」+te+「動詞本体」を離して書く(例「到着すること」:独anzukommen、蘭aan te komen)。
 
 
=== 語順 ===
 
平叙文の主節(主文)では、動詞(または助動詞)を必ず文の2番目に置くという[[語順]]([[V2語順]]、定形第2位の原則)をとる。主語は1番目に置かれることが多いが、1番目に別の要素を持ってきてもよく、その場合は主語は3番目、すなわち動詞の後ろに置かれる。1つの節の中に複数個の動詞が用いられる場合や、動詞に助動詞が付く場合は、主となる動詞(定動詞)または助動詞のみ人称変化して2番目に置かれ、他は不定形のまま文末に置かれる。ドイツ語とは異なり、助動詞は動詞の前に置かれる。決定疑問文("Ja"「はい」、"Nee"「いいえ」のいずれかで答えられる疑問文)では、動詞が1番目、主語が2番目に置かれる。補足疑問文([[疑問詞]]を用いる疑問文)では、疑問詞が1番目、動詞が2番目、主語が3番目に置かれる。
 
 
従属節(副文)では、動詞や助動詞は節の最後に置かれる。従属節が主節の前に置かれる場合は、従属節の直後に主節の動詞が置かれる。(従属節全体を主節の1要素と見れば、その次に来る主節の動詞の位置は文全体で見れば2番目である。)
 
 
=== 名詞・代名詞 ===
 
名詞の[[性 (文法)|性]]に関しては、ドイツ語では男性・女性・中性の3クラスに分かれているのに対し、オランダ語では男性と女性が融合して通性(共性)になり、通性と中性の2クラスになっている。ただし非常に堅苦しい文章では、単数の女性名詞を受ける代名詞は、男性名詞を受ける代名詞と別のものを用いることがある。このため、オランダ語の辞書には今でも男性・女性の区別を掲載している。
 
 
また、代名詞以外の名詞の[[格変化]]は、かつてはドイツ語と同様であったが、現在は3語以上からなる[[固有名詞]]や一部の定型句に残るのみである。[[格]]の果たした役割は、語順と[[前置詞]]が果たすことが多い。
 
 
形容詞が名詞を修飾する場合、形容詞は名詞の前に置かれ、不特定単数の中性名詞を修飾する場合を除いて、形容詞に語尾eがつく。
 
 
性が通性(共性)と中性の2つとなったことや、格変化がほぼ消滅したことなどは、[[北ゲルマン語群]]の[[デンマーク語]]・[[ノルウェー語]]・[[スウェーデン語]]などと同じである。
 
 
== 語彙 ==
 
地理的関係上、オランダ語にはフランス語からの[[借用語]]が多い(しかし英語がフランス語から受けた影響に比べると少ない)。近年英語からの影響は強く、借用語の数は増加している。"überhaupt"や"sowieso"のようなドイツ語から取り入れられたものもある。
 
 
== 日本語との関係 ==
 
[[江戸時代]]の[[日本]]ではオランダがヨーロッパ唯一の貿易国であり、[[開国]]にいたるまでオランダ語が重視されていた。特にオランダから流入する西洋の学問は[[蘭学]]と呼ばれ、蘭学者は最新の知識を得るためにオランダ語を学ぶ必要があった。さらに[[長崎貿易]]を通じてオランダ語から多数の語が日本語に取り入れられ、今日もなお身近に使用されている。また、幕末の[[日米和親条約]]など欧米列強との交渉や文書においても、オランダ語は共通語として用いられた。
 
{{see|オランダ語から日本語への借用}}
 
 
== 「ダッチ」 ==
 
オランダ語やオランダ人のことを英語では ''Dutch''(ダッチ)と言う。この語は「ドイツ語」「ドイツの」を意味するオランダ語 ''Duits''、ドイツ語 ''Deutsch'' と同源で、イギリス人から見れば「ドイツ方向の大陸人」、「ドイツ語(とオランダ語を含む諸方言)」を意味する俗称が語源であるため似た言葉となっている。オランダの海外進出が著しくなった17世紀頃からオランダ語やその話者のみを指すようになった。
 
 
== 辞書 ==
 
江戸時代後期・末期の蘭学の発展に多大な貢献をした辞書として、まずは次の2点が挙がる。
 
* [[ハルマ和解]] - [[1796年]]に編纂された日本最初の蘭和辞書。
 
* [[ドゥーフ・ハルマ]]、通称『長崎ハルマ』 - [[1833年]]完成。[[オランダ商館]]長[[ヘンドリック・ドゥーフ]]が長崎[[通詞]]と共に編纂。
 
日本におけるオランダ語の学習は、[[明治]]時代以降も細々と続いた。これは当時の[[オランダ領東インド]](現在の[[インドネシア|インドネシア共和国]]に相当する)との交易関係によるところが大きい。学習者の必要に答える形でオランダ語―日本語、または日本語―オランダ語の辞書が編まれた。
 
* [[松岡静雄]](編)『蘭和辞典』、附蘭語文法要録 1921年(大正10年)日蘭通交調査会編纂発行
 
* ファン・デ・スタット(Peter Adriaan van de Stadt)(編)『実用蘭和辞典』 1922年(大正11年) 南洋協会発行
 
* ファン・デ・スタット(編)『日蘭辞典』 1934年(昭和9年) 南洋協会発行
 
[[太平洋戦争]]中に出版された辞書には以下がある。
 
* [[拓殖大学]]南親会(編)『蘭和大辞典』 1943年(昭和18年) 創造社発行
 
* 朝倉純孝(編)『蘭日辞典』 1944年(昭和19年) 明治書院発行
 
戦後は単語帳の類を除いて、長らく辞書は登場しなかった。しかし、20世紀末以降に2つの辞書が刊行されている。
 
* 日蘭学会他(監修)『オランダ語辞典』 1994年(平成6年) 講談社発行 - クラマース蘭英辞典第37版を元に編纂。
 
* 朝倉純孝(編)『オランダ語辞典』 2014年(平成26年) 大学書林発行 - この辞典が編者の没後30年以上を経て世に出た経緯は、本辞典内に記されている。
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Wiktionary|オランダ語}}
 
* [[Wikipedia:外来語表記法/オランダ語]]
 
* [[ゲルマン語派]]
 
* [[英語]]
 
* [[ドイツ語]]
 
* [[古フランク語]]
 
* [[低ザクセン語]]
 
* [[リンブルフ語]]
 
* [[フリジア語]]
 
* [[アフリカーンス語]]
 
* [[オランダ]]
 
* [[ベルギー]]
 
* [[スリナム]]
 
* [[キュラソー]]
 
* [[アルバ]]
 
* [[蘭学]]
 
* [[オランダ語起源の日本語]]
 
 
== 外部リンク ==
 
{{Wikipedia|nl}}
 
* [http://dutch21.free.fr/ オランダ語を学ぼう] - オランダ語解説サイト(日本語)
 
* [http://users.telenet.be/orandago/ 演習、発音、語彙と文法とオランダの学びサイト]
 
* [http://www.h4.dion.ne.jp/~room4me/dutch/pron.htm オランダ語の発音と人名・地名のカタカナ表記]
 
* [http://www.qasana.com/cgi/content.pl?skin=jpn&lng=dut オランダ語単語暗記システム](日本語)
 
* [[b:en:Dutch|オランダ語]]教科書 ([[ウィキブックス]]の一部。編集中。英語)
 
* [http://www.taalunie.org/ Nederlandse Taalunie] - オランダ語連合(オランダ語)
 
* [http://woordenlijst.org/ Woordenlijst Nederlandse Taal - Officiële Spelling 2005] - 公式単語リスト(オランダ語)
 
* [http://www.ethnologue.com/show_language.asp?code=nld Ethnologue report for language code:nld] - オランダ語を使用する地域のデータ(英語)
 
* [http://www.ned.univie.ac.at/publicaties/taalgeschiedenis/en/ History of the Dutch] - オランダ語の歴史(英語)
 
* [http://www.uoc.es/euromosaic/web/document/neerlandes/an/i1/i1.html Flemish in France] - フランスにおけるオランダ語(フレミング語)の地位(英語)
 
* [http://www.vandale.nl/ Van Dale] - オランダ語辞書(オランダ語)
 
* [http://oase.uci.kun.nl/~ans/ De Elektronische ANS] - オランダ語文法(オランダ語)
 
* [http://www.101languages.net/dutch/ Dutch 101] - オランダ語の入門(英語)
 
* [http://www.sprachprofi.de.vu/english/nl.htm Sprachprofi Homepage] - 学習者のためのフリーオンライン素材(英語)
 
* [http://www.worldlingo.com/ja/products_services/computer_translation.html ワールドリンゴの無料オンライン/プロフェッショナル翻訳] - 全語翻訳辞書
 
* [http://www.hss.nagasaki-u.ac.jp/about/holland-tokubetsu.html 長崎大学多文化社会学部オランダ特別コース] - ライデン大学への1年間留学が卒業の必須条件
 
  
 
{{ゲルマン語派}}
 
{{ゲルマン語派}}
 
+
{{テンプレート:20180815sk}}
 
{{DEFAULTSORT:おらんたこ}}
 
{{DEFAULTSORT:おらんたこ}}
 
[[Category:オランダ語|*]]
 
[[Category:オランダ語|*]]

2018/10/10/ (水) 23:03時点における最新版


オランダ語(オランダご、: Nederlands [ˈneːdərlɑnts]

オランダの国語であり,オランダのほかにもベルギーの北部,ベルギーに隣接するフランスの一部で話される言語。ネーデルラント語ともいう。ベルギーで話されているものは特にフラマン語と呼ばれ,南部に行われるフランス語と対立しつつ公用語として用いられている。系統的には,インド=ヨーロッパ語族のゲルマン語派に属し,英語,ドイツ語などとともに西ゲルマン語群をなす。文献は 12世紀から。方言差はかなり大きい。日本語に取入れられているオランダ語の単語は相当多く,コップ kop,ブリキ blik,ズック doekなどはその一例である。なお,南アフリカ共和国のアフリカーンス語は,17世紀にこの地にもたらされたオランダ語が独自の発達をとげたものである。




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