利根川進
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利根川 進(とねがわ すすむ、1939年9月5日 - )は、日本の生物学者(カリフォルニア大学サンディエゴ校Ph.D.)。1987年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。現在、マサチューセッツ工科大学教授(生物学科、脳・認知科学科)を務める他、ハワード・ヒューズ医学研究所研究員、理化学研究所脳科学総合研究センターセンター長、理研-MIT神経回路遺伝学研究センター長等も兼任。京都大学名誉博士。
分子生物学と免疫学にそのバックグラウンドを持つが、近年は、脳科学・神経科学にもその関心を広げ、Cre-loxPシステムを用いた遺伝子ノックアウトマウスの行動解析等による研究で成功を収めている。
経歴
生い立ち
父は機械工学のエンジニアで天満織物(現シキボウ)に勤めており[2][3]、当時家族は大阪に住んでいたが、進は母の実家・愛知県名古屋市で生まれる[2]。利根川家はもともと備後国(現在の広島県東部)福山藩の家臣で[3]、曾祖父・利根川浩は福山誠之館中学(現広島県立福山誠之館高等学校)の2代目校長などを務めたが[4]、跡取りの男児が無く、同じ福山藩の家臣だった岡本家から養子を迎えた[3]。実祖父・利根川守三郎は、電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)の二代目所長や電子情報通信学会初代会長を歴任した電気工学の権威だった[3][5]。生後数ヶ月から大阪で育ち[6]、小学校と中学校の頃は引っ越し続き[6]。父が地方の工場長になり、1947年小学校1年生から1952年中学校1年生まで富山県大沢野町(現富山市)で[6]、中学2年生までは愛媛県三瓶町(現西予市)で過ごした[6]。中学2年生の終わりに兄と一緒に東京の叔父の家に預けられ[2]、1955年、東京都大田区立雪谷中学校卒業。1958年、東京都立日比谷高等学校を卒業した。父の勉も日比谷高校出身。YMCA予備校で一浪の末1959年、京都大学理学部に入学[2]。元京都大学総長である尾池和夫とクラスメートであった。1963年、京都大学理学部化学科卒業。
研究者として
同年四月、同大学院理学研究科に進学、同大学ウイルス研究所の渡辺格に師事するものの、渡辺の薦めもあり中退して、分子生物学を研究するため1963年、設立されたばかりのカリフォルニア大学サンディエゴ校へ留学[2]。1968年、カリフォルニア大学サンディエゴ校博士課程修了[2]。Ph.D. in molecular biology。1969年、米ソーク研究所・ダルベッコ研究室でポスト・ドクター研究員。1971年、バーゼル免疫学研究所(スイス)の主任研究員[2]。1981年、マサチューセッツ工科大学生物学部およびがん研究所教授[2]。
- 1987年 免疫グロブリンの特異な遺伝子構造を解明した功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞した[2]。
- 1994年 マサチューセッツ工科大学ピカウア学習・記憶研究センター所長。
- 2005年 独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構運営委員。
- 2006年 MIT内の他研究所の教官公募に際して、研究内容が競合しているという理由により、女性研究者に辞退を迫るメールを出したことが問題視され告発された。MITの内部調査は、不適切な内容を認めつつも女性差別の証拠はなかったと報告している。2006年を最後に、ピカウア学習・記憶研究センター所長の職を辞している。
- 2009年 理化学研究所脳科学総合研究センターセンター長。
- 2011年11月 学校法人沖縄科学技術大学院大学学園理事就任。
受賞・栄誉
- 1981年 - 第五十三回朝日賞[7]
- 1982年 - ルイザ・グロス・ホロウィッツ賞(コロンビア大学)バーバラ・マクリントック(1983年ノーベル医学賞受賞者)と共同受賞
- 1983年 - ガードナー国際賞
- 1984年 - 文化勲章受勲
- 1986年 - ロベルト・コッホ賞
- 1987年 - アルバート・ラスカー基礎医学研究賞、ノーベル生理学・医学賞
- 1990年 - 新潮学芸賞(立花隆との共著『精神と物質-分子生物学はどこまで謎を解けるのか』)
主要論文
- 『免疫認識の分子生物学』 Protein,nucleic acid and enzyme 32(3), p239-250, 1987-03, NAID 40002330949
- 『「出るくぎは打つな」の社会を (日本の独創性を問う<特集>)』 科学朝日 47(8), p62-65, 1987-08, NAID 40000401411
- 『脳の研究で人の心を理解できるのか』 学術の動向 Vol.7 (2002) No.7 P.53, doi:10.5363/tits.7.7_53
- 『利根川進博士が進める新たな脳科学研究』 現代化学 (461), 28-30, 2009-08, NAID 40016655307
著作
- 『私の脳科学講義』岩波新書 2001年 ISBN 978-4004307556
共著
- 『生命に挑む 利根川進・花房秀三郎の世界 ―官・学識者が紙上討論!―』 日刊工業新聞社 1988.2 ISBN 978-4526023156
- 『精神と物質 ―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか―』(立花隆対談)文藝春秋・1990年 のち文庫 ISBN 978-4167330033
- 『脳の中身が見えてきた』 甘利俊一,伊藤正男共著 岩波書店 2004.9 ISBN 978-4000065993
関連書籍
- 『男の生き方40選・下』 城山三郎、1995年3月、ISBN 4167139219
- 「私の履歴書」 日本経済新聞連載 2013年10月
脚注
- ↑ "1987 Basic Medical Research Award". LASKER FOUNDATION. 2009-11-4閲覧。
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 2.8 “scientist:生命を分子の言葉で語るために - JT生命誌研究館” (2006年2月17日). 2014年12月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2015閲覧.
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 “(私の履歴書)利根川進(2) 親族 父も両祖父も理科系 父方は電子通信技術の権威”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2013年10月2日) . 2015閲覧.
- ↑ 誠之館人物誌「利根川浩」福山誠之館校長(第2代)
- ↑ 電子情報通信学会会長就任にあたって - 富永英義
- ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 “(私の履歴書)利根川進(3) 日比谷高 兄と上京受験校に入学 地方のトップ、「中の上」に転落”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2013年10月3日) . 2015閲覧.
- ↑ “朝日賞:過去の受賞者”. 朝日新聞. . 2009閲覧.
外部リンク
- 研究室紹介 利根川進, Ph.D. - RIKEN BSI
- Studies in memory mechanisms with genetically engineerd mice (英語) - MITピカウア学習・記憶研究センター
(特集)
- 「科学系ノーベル賞日本人受賞者7人の偉業【利根川進】」 - 国立科学博物館『ノーベル賞100周年記念展』
- 北里が発見し利根川が解明した「抗体」一〇〇年の謎 - TERUMO『医療の挑戦者たち』19
(動画)
- JSTサイエンスチャンネル(2009) 吾輩はノーベルである(5) 下村脩 利根川進〜生物の秘密を探る〜
- sciencentral(2007.10.12) テンプレート:Youtube (英語)
- 生命誌ジャーナル サイエンティスト・ライブラリー No.79 生命を分子の言葉で語るために
テンプレート:ノーベル生理学・医学賞受賞者 (1976年-2000年)