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| − | {{Infobox 漫画家
| + | '''つげ 義春'''（つげ よしはる、戸籍上は[[1937年]][[10月30日]]{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=406}}<ref>日本文芸家協会（編）『文藝年鑑』1984年版、新潮社、82頁。</ref>（実際は4月の生まれ{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=406}}） - ） |
| − | | 名前 = つげ義春
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| − | | 画像 =
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| − | | 脚注 =
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| − | | 本名 = 柘植 義春<br/>（つげ よしはる）
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| − | | 国籍 = {{JPN}}
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| − | | 生年 = {{生年月日と年齢|1937|10|30}}
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| − | | 生地 = {{JPN}}・[[東京府]][[東京市]][[葛飾区]]<br />（現：[[東京都]]葛飾区）
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| − | | 没年 = | |
| − | | 没地 = | |
| − | | 活動期間 = [[1955年]] - | |
| − | | 職業 = [[漫画家]] (現在は引退)<br/>[[随筆家]] | |
| − | | ジャンル = [[劇画]] | |
| − | | 代表作 = 『[[沼 (漫画)|沼]]』<br />『[[チーコ]]』<br />『[[李さん一家]]』<br />『[[紅い花]]』<br />『[[ねじ式]]』<br />『[[ゲンセンカン主人]]』<br />『[[もっきり屋の少女]]』<br />『[[無能の人]]』 | |
| − | | 受賞 = | |
| − | | 公式サイト = | |
| − | }} | |
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| − | '''つげ 義春'''（つげ よしはる、戸籍上は[[1937年]][[10月30日]]{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=406}}<ref>日本文芸家協会（編）『文藝年鑑』1984年版、新潮社、82頁。</ref>（実際は4月の生まれ{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=406}}） - ）は、[[漫画家]]・[[随筆家]]。小学校卒業と同時に[[メッキ]]工場に勤め、[[転職]]、[[家出]]を繰り返しながらメッキ工に戻る。17歳で漫画家を志し、18歳で[[若木書房]]より『[[白面夜叉]]』でデビュー。[[貸本]]雑誌『迷路』『忍風』などに作品を発表。[[1967年]]からは発表の舞台を『[[ガロ (雑誌)|ガロ]]』に移し『[[沼 (漫画)|沼]]』『[[チーコ]]』『[[山椒魚 (漫画)|山椒魚]]』などで注目され始め、『[[ねじ式]]』で多くの読者に衝撃を与える。これらの作品を発表した[[1967年]]‐[[1968年]]の一時期、精力的に執筆したものの、[[1970年代]]からは体調不良もあり年に数作という寡作なペースとなる。[[神経症]]に苦しみながらも[[1984年]]発刊の『[[COMICばく]]』誌上に『[[無能の人]]』などを毎月連載。[[1987年]]を最後に漫画作品は発表していない<ref name="KINEMA">『マンガ夜話』VOL.3、キネマ旬報社〈キネ旬ムック〉、1999年3月、ISBN 4873765099。{{要ページ番号|date=2018-08-07}}</ref>。デビュー当初は'''つげ・よしはる'''と表記していた<ref>『痛快ブック』 芳文社、1955年4月号。</ref>。本名の'''柘植 義春'''名義による作品もある。またナカグロを入れて'''つげ・義春'''と表記されたこともある<ref>『奴隷侍』（東京トップ社）{{Full citation needed|date=2018-08-07}}</ref>。
| + | 昭和後期-平成時代の漫画家。 |
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| − | テーマを日常や[[夢]]に置き[[リアリズム]]にこだわった作風を特徴とし、[[旅]]をテーマにした作品も多い。『ガロ』を通じて[[全共闘世代]]の[[大学生]]を始めとする若い読者を獲得。1970年代前半には『[[ねじ式]]』『[[ゲンセンカン主人]]』などの[[シュールレアリズム|シュール]]な作風の作品が高い評価を得て、熱狂的なファンを獲得した。
| + | 昭和12年10月30日生まれ。昭和30年貸本屋用単行本の「白面夜叉(やしゃ)」でデビュー。43年「ガロ」掲載の「ねじ式」は少年の心の奥ふかくにひそむ情念をふしぎな感覚でえがいて注目される。作品はほかに「沼」「無能の人」,紀行「貧困旅行記」など。「無能の人」「ゲンセンカン主人」「ねじ式」が映画化された。東京出身。本名は柘植(つげ)義春。 |
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| − | [[漫画家]]の[[つげ忠男]]は実弟。妻[[藤原マキ]]は、[[唐十郎]]主宰の劇団・[[状況劇場]]の元[[俳優|女優]]。一男あり。身長175センチ<ref name="古書">『日本古書通信』2000年5月号、青木正美「つげ義春さんと会う(下)」p.30。</ref>あるいは176センチ{{sfn|つげ|1983|p=136}}。
| + | {{テンプレート:20180815sk}} |
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| − | [[2017年]]には『つげ義春 夢と旅の世界』（[[新潮社]]）と一連の作品で第46回[[日本漫画家協会賞]]大賞受賞<ref name="mainichi">[https://mainichi.jp/articles/20170509/k00/00e/040/243000c 毎日新聞2017年5月9日 12時19分 - 日本漫画家協会賞 つげ義春さんらに大賞] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20170509094810/https://mainichi.jp/articles/20170509/k00/00e/040/243000c |date=2017年5月9日 }}</ref><ref name="chibanippo">[https://www.chibanippo.co.jp/newspack/20170509/406692 千葉日報 2017年5月9日 12:22 - つげ義春さんらに大賞 日本漫画家協会賞]</ref><ref name="nihonmangakakyokai">[https://www.nihonmangakakyokai.or.jp/?tbl=event&id=6533 日本漫画家協会 - 2017年度 第46回日本漫画家協会賞 発表 2017年05月09日]</ref>。
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| − | == 経歴 ==
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| − | === 出生 ===
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| − | [[1937年]]、[[岐阜県]][[恵那市]]の豪農一族の生まれで{{sfn|佐野||p=14}}<ref>つげ義春『流刑人別帳』（パロマ舎、1985年）{{要ページ番号|date=2018-08-07}}</ref>{{sfn|つげ|権藤|1993a|p=281}}[[東京都]][[伊豆大島]]の旅館に勤める[[板前]]の父・一郎と、同じ旅館のお座敷女中の母・ますの次男として、[[東京市]][[葛飾区]]立石の中川べりの船宿{{sfn|佐野||p=14}}（母の実父の家）で生まれる<ref name="jibunnshi">「つげ義春自分史」『つげ義春全集・別巻 苦節十年記／旅籠の思い出』[[筑摩書房]] [[1994年]] ISBN {{ISBN|4-480-70169-9}}</ref>。戸籍上は[[10月30日]]生まれであるが、実際は同年[[4月]]生まれ{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=406}}。つげの出生時、父・一郎は[[伊豆大島]]におり、臨月の母が兄を連れ[[福島県]][[石城郡]][[四倉町]]（現・[[福島県]][[いわき市]]四倉町）から大島（[[大島町]][[元町 (大島町)|元町]]）へ引越移動中急に産気づいたため、葛飾の実家に緊急迂回しての出産であった。出産時、[[産婆]]の来る前に母がつげを生んだので、母の実父が泣き声もあげないつげに人工呼吸を施し、しまいには両足を持って振り回したという{{sfn|つげ|1992|p=188}}。
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| − | === 伊豆大島、千葉大原時代 ===
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| − | [[ファイル:Ohara-Tiba 大原の漁村、海辺の叙景.jpg|thumb|220px|right|母の郷里でつげ自身も幼児期に住んでいた[[大原漁港]]と[[八幡岬]]周辺]]
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| − | [[ファイル:大原漁港千葉ねじ式 117.jpg|thumbnail|220px|right|つげが母と幼少期を過ごした大原の漁村（[[大原漁港]]）]]
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| − | つげ義春の父・柘植（つげ）一郎は、腕のいい板前職人で、東京都大島町元町の最も大きく格式も高かった[[千代屋旅館]]に勤めていた。職位は板長（総料理長）。千代屋は当時、皇族や政府要人が来島の際に必ず泊まる御用達旅館でもあった。また、「南風」「大島を望む」「伊豆大島風景」等を描いた画家・[[和田三造]]を始め、昭和初期の著名な画家達が定宿にしていたという記録もある。千代屋旅館の記憶について、つげは「縁の下に大きな[[イタチ]]が住んでいた記憶がある」と後年回想している。つげが4歳頃まで暮らした[[伊豆大島]]は、家族が仲睦まじく経済的にも安定した時期であった。
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| − | [[ファイル:2013-11-30 Hachiman-Misaki Ohhara Isumi いすみ市大原八幡岬 DSCF8901.JPG|thumb|220px|right|つげが幼少期に過ごし、原風景ともなった[[いすみ市]]大原[[八幡岬]]。のちに『[[海辺の叙景]]』の舞台として描かれた。]]
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| − | つげ義春にとって[[伊豆大島]]は、父が板長として元気に仕事をしていた時代であり、波乱の多い生涯において唯一良い思い出の故郷である。[[1987年]]3月、雑誌「[[COMICばく]]」（[[日本文芸社]]）に発表した、[[密航]]を題材にした自伝的作品「[[海へ]]」において、大島の「[[三原山]]」「[[あんこ]]娘」「[[椿]]」「[[大島節]]」等を背景に、板長の父とあんこ娘姿の母の周りに3人の子（兄の政治と義春と弟の忠男、母の初産であった長女の守子は、つげが誕生する前、3歳時にすでに大島で死亡していた）、幸せだったつげ一家の情景が6カットに亘り描かれている。
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| − | [[ファイル:Hachiman-misaki,千葉県大原八幡岬からの展望.jpg|220px|thumb|right|[[八幡岬]]からの展望。つげがお気に入りで石子順造ほか多くの知人を案内した。]]
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| − | [[1941年]]、5歳、三男・忠男が生まれた年、母の郷里である[[千葉県]][[大原町 (千葉県)|大原]]（現在の[[いすみ市]]）の[[漁村]]小浜へ転居。父は東京の旅館へ単身、板前として出稼ぎ。母は自宅で夏は氷屋、冬はおでん屋で生計を立てる。経済的には山をもてるほどの余裕があった。大原町では幼稚園に入園したが、集団生活になじめず、3日で退園。すでに臆病で自閉的な性格があらわれていた。この年、父は病に倒れ[[東京大学医学部附属病院|東大病院]]へ入院。
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| − | 父・柘植一郎は、自分の病気の悪化に伴い、入院先の東大病院から妻・ます宛に手紙を出している。「…自分の病気（[[アジソン病]]）はもう治りそうにない。政治や義春や忠男は元気でいるでしょうか、自分にもしものことがあったら、子供たちのことはくれぐれもよろしくお頼み申し上げます」。母が箪笥の奥にしまっていたこの手紙を偶然見つけ、こっそり読んだのは12〜13歳の頃だったと、つげは回想している{{sfn|つげ|1992|p=148}}。
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| − | [[1942年]]、5歳のとき、父・一郎が前述のアジソン病により42歳で死去。死の直前の父は錯乱状態であり、東京の出稼ぎ先の旅館の布団部屋に隔離され、布団の山の間に逃げ込み、そこで座ったまま絶命した{{sfn|つげ|1977|p=不明}}。母はつげとつげの兄を引きずるように父の前に立たせ「お前達の父ちゃんだよ、よく見ておくんだよ」と絶叫したという{{sfn|つげ|1977|p=不明}}。[[1943年]]、[[葛飾区]][[立石 (葛飾区)|立石]]に転居。母は軍需工場に就職。一家4人で社宅の4畳半で生活する<ref name="jibunnshi" />。あまり外出せず兄・政治と弟を相手に遊ぶ。貧しい[[一人親家庭|母子家庭]]で苦労して育つ。
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| − | === 小学校時代 ===
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| − | [[1944年]]に[[葛飾区立本田小学校]]（当時は[[国民学校]]）に入学。この頃から、絵を描いて遊ぶようになる<ref name="jibunnshi" />。当時は[[空襲]]が激しく、ろくに通学もできなかった。学校嫌いであったつげは空襲で休校になるのがうれしく、毎日空襲があればよいと思っていた{{sfn|つげ|1977|p=不明}}。この頃、自宅付近の中川べりで[[不発弾]]処理を見学中に近くに被弾した[[爆弾]]のために[[土手]]から転落、軽症を負う。また、近くにあった[[高射砲]]が[[B-29 (航空機)|B-29]]を撃墜し真っ二つにする光景を目撃する{{sfn|つげ|1977|p=不明}}。[[1945年]][[3月10日]]の[[東京大空襲]]の後、[[空襲]]を避けて兄・政治に続き[[新潟県]][[赤倉温泉 (新潟県)|赤倉温泉]]に[[疎開|学童疎開]]するが、慣れない集団生活からかこの頃より[[赤面|赤面恐怖症]]を発症する<ref name="jibunnshi" />。唯一の楽しみはいつでも[[温泉]]へ入れることであった{{sfn|つげ|権藤|1993a|p=不明}}{{efn|「葛飾区史」によると[[葛飾区]]の学童疎開は5214名で東京都の指導による割り当てで[[深川区]]とともに新潟県に決定され、滞在先は[[中頸城郡]][[名香山村]]の10軒の旅館だったが、つげが滞在した旅館は板倉屋、清水屋、和泉屋、香雲閣、豆腐屋のいずれかだろうと推測されている{{sfn|つげ|権藤|1993a|p=不明}}。}}。疎開地で終戦を迎え、10月に兄と共に東京に戻り、葛飾区内で転々と間借り生活を送るようになる。母は、海産物の行商、仕立物の仕事で生計を立てる。
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| − | [[ファイル:Keisei-railway-KS49-Keisei-tateishi-station-entrance-20170104-151154.jpg|thumb|220px|right|立石駅（2017年1月4日撮影）]]
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| − | 翌[[1946年]]、9歳のつげは母のモク拾いなどについて回って過ごしていた。この頃母が再婚するが、養父との折合いが悪く、乱暴な義父の仕打ちにおびえる日々が続く。この頃より漫画、書物に興味を覚える。4年生の頃に[[手塚治虫]]のマンガに熱中しはじめ、新刊が出ると本屋へ走る日々であった。貧しさのため母に買ってもらうことはできず、3ヶ月に一度くらい帰ってくる[[泥棒]]の義祖父を待ちわびて買っていたが、その間に本が売切れてしまうのを案じ、手持ちのおもちゃをおもちゃ屋に売ってお金を工面した。それでも手に入らないときは万引きをしようと本屋の前をうろうろするほどであった。義祖父には可愛がられ、しばしばマンガ本を買ってもらう。しかしつげの母は子供のころにこの義祖父の養女となったが過酷な仕打ちを受けていたため、その後窃盗で逮捕され1年間の服役のあと帰ってきて泥棒を廃業し無収入になったときには、義祖父を冷たい態度であしらったという。[[1947年]]には、[[京成立石駅|立石駅]]前の[[闇市]]で母が[[居酒屋]]を経営するが半年ほどで廃業。さらに、妹が生まれるなど生活は困窮。つげ自身は[[ベーゴマ]]に熱中し、[[横井福次郎]]、[[沢井一三郎]]、[[大野きよし]]のマンガや[[南洋一郎]]の[[冒険小説]]を読む。[[1948年]]には葛飾区立石駅近くの[[廃墟]]のようなビルに無断入居。総勢8名の大家族であった。母は千葉から[[水産物|海鮮物]]を仕入れ[[行商]]する一方、義祖父が収入を支え、つげも兄と共に[[闇市]]で[[セルロイド]]の[[おもちゃ]]を売る商売を始め、安価であったためよく売れた<ref name="jibunnshi" />。また、義父の発案で立石駅での[[アイスキャンデー]]売りなども経験する<ref name="jibunnshi" />。こうした生活で1年休学する<ref name="jibunnshi" />。[[1949年]]、6年生で初めて[[船員]]になる夢を抱いている親友Oができ、つげ自身も海が好きであったため、船員になるための勉強を一緒にしたりし将来を誓い合ったりした。Oの家に泊まりこみ帰らない日々が続く。Oの家は[[ラーメン|中華そば]]屋であったため、毎日[[ワンタン]]作りを手伝う。[[田端義夫]]、[[美空ひばり]]、[[水の江瀧子|ターキー]]の娯楽映画などを好んで見る。また、手塚、[[東浦美津夫]]、[[田中正雄 (漫画家)|田中正雄]]のマンガを読む。一方、自閉・赤面癖・[[対人恐怖症]]が進行し、小学6年生の時には運動会で多くの観客の前で走るのを恐れ足の裏をカミソリで切る<ref name="jibunnshi" />。
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| − | === 小学校卒業後 ===
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| − | [[1950年]]、親友は中学校に進学し、つげは進学せず兄の勤め先の[[めっき|メッキ]]工場に見習い工として就職することになるが、残業、徹夜、給料遅配が続く。つげは[[1991年]]のインタビューで、「人間の屑っていうか吹き溜まりみたいな所で、非常に乱暴な世界でした。[[クロム]]っていうのを日常的に使ってるから癌とかで悲惨な死に方している人も随分いましたね」と回想している<ref name="garo1991">『[[ガロ (雑誌)|月刊漫画ガロ]]』（[[青林堂]]）1991年7月号「つげ義春特集」p180。</ref>。また、手に着いたクロムの黄色い染みを落とすため、つげは[[塩酸]]や[[硫酸]]の原液で毎日手を洗っていたという<ref name="garo1991" />。メッキ工場での経験は[[1973年]]に発表された『[[大場電気鍍金工業所]]』に実話に近い形で描かれる事になる。
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| − | [[ファイル:2013-11-30 Hachiman-Misaki Ohhara Isumi いすみ市大原海水浴場 DSCF9097.JPG|thumb|220px|right|『[[海辺の叙景]]』のラストシーンに描かれた大原海水浴場（当時とは位置が異なっている。）14才の頃の[[海]]への憧れは、せつなさを通り越し夢中になるほどであった。]]
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| − | [[1951年]]、14才の頃の[[海]]への憧れは、せつなさを通り越し夢中になるほどであった。海で暮らすためには[[船員]]になるしかないと思いつめ、海員養成講座を[[通信教育]]で受けたり、[[横浜]]へ出かけ停泊する[[船]]を見学したりする。転々としたメッキ工場も労働条件が厳しく、母が製縫業を始め、つげも手伝うが義父との生活が苦痛であり、また[[赤面恐怖症]]などから鬱屈した心情になり[[密航]]を企てる。父親が元気で、家族が幸せだった伊豆大島（大島町）に帰りたい望郷の念も日増しに強まった時期であった。ある日、船員になるつもりで横浜に向かい密航を実行するが、船員に見つかり警察署で一晩を明かす。翌[[1952年]]にも[[横浜港]]から[[ニューヨーク]]行きの[[汽船]]（[[日産汽船]]日啓丸10000t）に一日分の[[コッペパン]]と[[ラムネ (清涼飲料)|ラムネ]]だけを持って潜入。しかし[[野島崎]]沖で発覚し、[[横須賀市|横須賀]]の田浦[[海上保安庁|海上保安部]]に連行されるが、船内ではケーキや冷奴（船内には豆腐製造機もあった）の差し入れを受けたり風呂に入れてもらうなどの厚遇を受ける。日産汽船の重役を乗せた[[海上保安庁]]の[[巡視艇]]へ移され、振り返ると日啓丸の[[甲板]]には乗務員がずらりと並び手を振っていた。その瞬間、汽笛が大きく鳴らされた<ref>『ガロ臨時増刊号・つげ義春特集』 [[青林堂]] [[1968年]]</ref>。
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| − | 密航に失敗した後は家にいるのが気まずく、先の親友Oの中華そば屋で出前持ちとして朝9時から夜2時まで働く<ref name="jibunnshi" />。時には[[赤線]]への出前もあり、赤線の女にからかわれたりする。この頃、同じそば屋に戦争で両親を失くした同い年の美しい少女が働いており、彼女に誘われ休日に一緒に[[映画館]]へ行く。映画館の中では、彼女に手を握られたがつげは決まりが悪くずっと俯いていたという{{sfn|つげ|1977|p=不明}}。その後、少女は店に来る[[ヤクザ|やくざ者]]に騙されて堕落してしまう。
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| − | === 漫画家デビュー ===
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| − | [[1953年]]、再びメッキ工に戻り兄と共にメッキ工場を経営する夢を抱いたが、赤面恐怖症はひどくなり、一人で部屋で空想したり好きな絵を書いていられる職業として漫画家になることを志す<ref name="jibunnshi" />。当時、[[豊島区]]の[[トキワ荘]]に住んでいた[[手塚治虫]]を訪ね、原稿料の額などを聞き出し、プロになる決意を強める。その後、メッキ工場に勤めながらマンガを描く。[[1954年]][[10月]]、雑誌『痛快ブック』（[[芳文社]]）の「犯人は誰だ!!」「きそうてんがい」で漫画家[[デビュー]]を飾る。その後、一コマ、四コマなどの作品が少年誌に採用され始め<ref>本間正幸『少年画報大全 20世紀冒険活劇の少年世界』少年画報社、2001年、p.51</ref>、母の反対を押し切ってメッキ工を辞める。自身の作品を持って1週間ほど多くの出版社を回り10軒目の[[若木書房]]でようやく採用され、[[1955年]][[5月]]に『[[白面夜叉]]』で若木書房から正式にプロデビュー。18歳であった。
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| − | === 貸本漫画時代 ===
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| − | 当初は一冊分（128ページ）買取3万円で[[貸本漫画]]に数多く執筆していた。この頃、[[永島慎二]]・[[遠藤政治]]と親交を持つようになる。[[新漫画党]]の集まりにも度々参加するも人見知りが激しく、[[トキワ荘]]系の漫画家とはそれほど交流を持つことはなかったが、トキワ荘へ引っ越す前の[[赤塚不二夫]]とだけは、赤塚の部屋に出入りして漫画論を交わしたり泊まったりしていた<ref>石森章太郎『章説トキワ荘・春』風塵社、1996年、p.36</ref><ref>武居俊樹『赤塚不二夫のことを書いたのだ』文藝春秋、2005年、p.89</ref>。手塚治虫の影響を強く受けた『[[生きていた幽霊]]』([[1956年]])やトリック推理ものである『罪と罰』を契機として[[江戸川乱歩]]的なデカダンス風の推理ドラマをはじめ、『四つの犯罪』では初めて作者の[[温泉]]への憧憬もうかがわれる。探偵もの『[[七つの墓場]]』や『[[うぐいすの鳴く夜]]』、『[[おばけ煙突 (漫画)|おばけ煙突]]』、『[[ある一夜]]』なども描かれた。これらの作品は、ストーリーとしては完成度が高いもので、『ガロ』時代の旅ものを思わせるユーモアの片鱗をも随所にちりばめられていた。しかしながら『[[不思議な手紙]]』などの暗いタッチが主流を占め、当時の貸本マンガの主要読者層だった[[小学校]]高学年〜中学生からは不評を買うこととなり、出版社からももっと明るい作風を要求された。翌[[1956年]]には早くも創作に行き詰まり、[[岡田晟]]の手伝いをするようになり、[[クラシック音楽]]と[[コーヒー]]に傾倒するようになる<ref name="jibunnshi" />。[[ヨハン・ゼバスティアン・バッハ|J.S.バッハ]]以前の音楽を愛好し、特に[[宗教曲]]、[[ルネサンス音楽]]には造詣が深く、{{いつ範囲|現在|date=2018年8月7日 (火) 11:58 (UTC)|title=}}に至っても[[クラウディオ・モンテヴェルディ|モンテヴェルディ]]、[[ドラランド]]、[[シャルパンティエ]]、[[タヴァーナー]]などをよく聴く。この当時は[[池袋]]の「小山」、[[高田馬場]]の「らんぶる」などの[[名曲喫茶]]へしばしば通っていた。一方で、作品に音楽が登場する場面は意外に少なく、その後の作品を含めても「[[四つの犯罪]]」、「[[やなぎや主人]]」、「[[散歩の日々]]」くらいである<ref name="garo1993">『月刊漫画ガロ』（青林堂）1993年8月号「つげ義春する!」</ref>。
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| − | 漫画家になって以降も赤面恐怖症はさらに悪化。家族とも顔を合わせるのが苦痛で部屋を仕切ったり、[[押入れ]]にこもりじっとしたりしていた。通信療法も試すが効果はなかった<ref name="jibunnshi" />。「女を知れば度胸が出るかもしれない」と考え、自転車で[[赤線]]へ赴く。3つ年上の女に親切にされ外へ出ると急に勇気が出たように思え、嬉しさで[[涙]]を流しながら[[中川]]の土手を自転車を走らせたが、数日して彼女に会いに行くと別の客が付いており、胸が張り裂けそうな思いをする。その後、赤線へ行くことはなかった。やがて、家を出て[[高田馬場]]に下宿する<ref name="jibunnshi" />。
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| − | [[1957年]]、[[錦糸町]]の下宿に転居。女子美大生との交際や喫茶店「ブルボン」への出入りの中で仕事を怠けるようになり困窮。[[血液銀行]]へ通っての売血を経験する<ref name="jibunnshi" />。こうした中、大阪から上京した劇画家[[辰巳ヨシヒロ]]と知り合う。[[1958年]]までは『[[痛快ブック]]』をはじめ『少女』、『漫画王』、『ぼくら』、『日の丸』という大手雑誌に続けて作品を発表し、その後1年間の沈黙を置いて[[2000年]]に[[権藤晋]]によって再発見された『[[墓をほる]]』（31頁）を『痛快ブック』（[[芳文社]]）[[1959年]]12月号に発表。1959年は若木書房の『迷路』に毎月短編を発表していた。『痛快ブック』12月号には、『完全犯罪』という作品の次回予告が掲載されたが、タイトルを先に決められたことでストーリーが思い浮かばなかったことや、女性との同棲問題などがあり、締切日を過ぎ断るが「[[補償金]]を取られる場合がある」と脅され、それ以降締め切り恐怖症となり、その後どこの雑誌にも描かなくなる<ref name="gento200001" />{{efn|当時の『迷路』の原稿料は1頁350円ほどで30頁描くと約1万円（現在の価値で約13-14万円）になった。当時の錦糸町の[[下宿]]が2食付きで6-7000円であった。そのため1万円あれば生活はできた（当時の大卒の平均給料が約1万円）<ref name="gento200001">『幻燈』2（[[北冬書房]] 2000年1月20日）</ref>。}}。
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| − | [[1960年]]、コケシという渾名の女性と知り合い、大塚のアパートで同棲を始める。精力的に作品を書くようになったが、貸本漫画で2人の生計を立てることは難しく、[[安保闘争]]も知らぬまま極貧の生活を送る<ref name="jibunnshi" />。[[1961年]]、主に貸本漫画を描いていた[[三洋社]]が倒産し、アパートを追い出されて女性とも別離。[[1962年]]には元の下宿に戻ったが、作品はなかなか売れず、下宿の支払いを2年分も溜めたため、自ら望んで食事を1回に減らしてもらい、便所を改造した一畳の部屋に移った{{efn|「義男の青春」には、この部屋に閉じ込められて8年間にわたり苦悶の日々を送ることとなった、とあるが、随筆と異なり作品である上に年数も合わない。}}。家主が経営する装飾店に勤めて、フスマ張り替えなどの仕事を手伝う<ref>桜井昌一『ぼくは劇画の仕掛人だった』上巻p.146（[[東考社]]、[[1985年]]）</ref>。同年、[[アパート]]で[[睡眠薬]]「[[ブロムワレリル尿素|ブロバリン]]」を大量に飲み[[自殺]]をはかるが、病院に担ぎ込まれ未遂に終わる<ref>つげ義春「自殺未遂」『夜行』No.10 [[北冬書房]] [[1981年]]</ref>。家主の勧めで[[創価学会]]に入信させられたが、宗教に興味が無く、不真面目な信者であった<ref name="jibunnshi" />。
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| − | [[1963年]]、装飾店が倒産し、再び漫画を描くようになったが、娯楽作品を書くことに苦痛を覚えるようになる。貸本漫画業界自体が衰退していくと辰巳ヨシヒロなどの勧めもあって、従来の[[時代劇]]や推理物に加えて[[サイエンス・フィクション|SF]]や青春ものなど様々なジャンルに手を染めるようになり、一方、[[さいとう・たかを]]、[[佐藤まさあき]]、[[白土三平]]などこの頃の人気漫画家の絵柄を真似ることも要求される。仕事仲間であった[[深井国]]がしばらく同居する。[[1964年]]、のちに『[[池袋百点会]]』（[[1984年]]）に「ランボウ」として描かれる喫茶店「ブルボン」通いが続く。
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| − | === 『ガロ』時代 ===
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| − | [[ファイル:寿恵比楼旅館2.JPG|thumbnail|220px|白土三平に誘われ宿泊し名作『[[沼 (漫画)|沼]]』や『[[紅い花]]』を生むきっかけとなった[[旅館寿恵比楼]]]]
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| − | [[ファイル:千葉ねじ式 太海054.jpg|thumbnail|220px|『[[ねじ式]]』に描かれた太海の漁村]]
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| − | 1965年、田端で行なわれた貸本漫画家の集まりで[[白土三平]]や[[水木しげる]]と知り合う<ref name="jibunnshi" />。『[[ガロ (雑誌)|ガロ]]』創刊当初、社長の[[長井勝一]]と三洋社時代に一緒に仕事をしたことのある白土がつげ義春の所在を誌上で尋ね、それに応える形でつげはガロに創作の場を得ることになった。[[1965年]]、「噂の武士」で『ガロ』8月号に初登場。
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| − | 10月、白土はつげを千葉県[[大多喜町|大多喜]]の[[旅館寿恵比楼]]に招待し、また赤目プロのアシスタントであった岩崎稔から[[井伏鱒二]]を読むよう勧められる<ref name="jibunnshi" />。これらの経験からつげは旅に夢中になり、のちの一連の「旅もの」作品として結実させた。やがて、生活のために水木の[[アシスタント (漫画)|アシスタント]]を兼業することになり<ref>水木しげる『妖怪になりたい』河出文庫、2003年、pp.40、76-77</ref>、[[調布市|調布]]に転居。ガロ誌上でつげを名指しで「連絡乞う」<ref>『月刊漫画ガロ』（青林堂）1965年4月号、168頁柱に「つげ義晴{{sic}}・九鬼まこと、両君至急当社に連絡乞う」とある。</ref>と広告を載せるなど、水木本人からの強い要請もあったという{{sfn|つげ|権藤|1993a|p=258}}{{efn|つげは当時『ガロ』や青林堂の存在を知らず、尋ね人の広告は[[石川球太]]から教えられて知った{{sfn|つげ|権藤|1993a|p=258}}。}}。
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| − | 娯楽作品意識から脱却した<ref name="jibunnshi" />つげは、[[1966年]]2月号の「沼」以降、「チーコ」など作家性の強い短編群を続けざまに発表する。しかし当時の「[[カムイ伝]]」目当てでガロを買う読者層には主に「暗い」という理由（当時の読者欄より）であまり評価されなかった。特に「沼」は不評で、マンガ家を廃業して[[凸版印刷]]の職工になろうと真剣に考えたこともある{{sfn|佐野||p=19}}。
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| − | だが、一部マニアックな読者からは高い評価を得、[[1967年]]3月創刊の日本初の漫画批評誌『漫画主義』{{efn|同人：[[石子順造]]、[[山根貞男]]（当時は「菊池浅次郎」名義）、[[梶井純]]、[[権藤晋]]。}}は、つげ義春の特集を組んだ。[[1967年]]には[[水木プロダクション|水木プロ]]の仕事量が増え、右手の[[腱鞘炎]]を患う。この年には井伏文学からの影響で、4月に友人の立石と[[秩父]]、[[房総]]を、8月には[[伊豆半島]]を旅し、秋には単独で[[東北地方|東北]]の[[湯治場]]（[[蒸ノ湯温泉]]、[[岩瀬湯本温泉]]、[[二岐温泉]]）などを中心とした旅行をする。その際、旅に強烈な印象をもち、また湯治場に急速に魅かれるようになる。このときの旅の印象はこの年後半から翌年にかけての一連の「旅もの」作品として結実する。このころ旅関係の書物や[[柳田國男]]などを熱読する。この年にはユーモラスな[[世捨て人]]的生活の日常スケッチである『[[李さん一家]]』（6月）や、少女が大人になる一瞬を巧みな抒情詩に仕立て上げた『[[紅い花]]』（10月）、小さな村の騒動記『[[西部田村事件]]』（12月）、そして翌[[1968年]]には紀行文学のスタイルを借りた『[[二岐渓谷]]』（2月）、『[[長八の宿]]』（1月）、『[[オンドル小屋]]』（4月）などを立て続けに発表する。しかし、旅は必ずしもつげの心を解放するものとは言えず、[[群馬県]][[湯宿温泉]]を訪ねた時には打ち捨てられたような旅館に強烈な孤独と世捨て人の境地を味わい、その経験は仙人のような犬と旅人の心境を綴った物語『峠の犬』や[[雪国]]の孤独な旅を描いた『[[ほんやら洞のべんさん]]』に結実し、[[1968年]]の『[[ねじ式]]』と『[[ゲンセンカン主人]]』に結実する{{要出典|date=2010年9月}}。
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| − | === 『ねじ式』 ===
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| − | [[ファイル:Futomihama,Kamogawa,Chiba 千葉県鴨川市太海浜 DSCF7475.JPG|thumb|220px|right|『ねじ式』の舞台となった太海浜]]
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| − | [[File:Vitaminwalk-Futomi-Yoshiharu Tsuge2.jpg|thumb|220px|right|『[[ねじ式]]』の舞台となったといわれる[[太海]]は、現在「鴨川ビタミンウォーク絵かきの里コース」の「終点」に指定され<ref name="kamonavi">[http://www.kamonavi.jp/ja/img/outdoor/vw_09.pdf 鴨川ビタミンウォーク ガイドブック「絵かきの里コース」]</ref>、機関車が住宅の中に現れるシーンの場所にはこのような看板が掲げられる（「つげ義春」がなぜか「つげ義治」と誤植されている。）]]
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| − | 『[[ねじ式]]』は[[養老渓谷]]に近い千葉県の太海を旅行した経験が元になっているが、作風は前衛的で[[シュール]]である。つげ本人は「ラーメン屋の屋根の上で見た夢。原稿の締め切りが迫りヤケクソになって書いた」と語っている。こうした作風は、漫画評論誌の『漫画主義』で評価されたが、漫画業界からは異端扱いされて屈辱を味わう。1968年6月頃には『[[もっきり屋の少女]]』を描き上げ『ガロ』8月号に発表したが、9月には{{疑問点範囲|自分の存在意義に理解できず|date=2018年8月7日 (火) 11:58 (UTC)|title=「存在意義〈を〉理解できず」の誤記では？}}、精神衰弱に苛まれ、2, 3度文通を交わしただけの[[看護師]]の女性と結婚するつもりで九州への蒸発を決意したが、10日で帰京。翌、[[1969年]]には[[状況劇場]]の女優[[藤原マキ]]と知り合う<ref name="jibunnshi" />。
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| − | [[ファイル:San-ai Building 2012.JPG|thumb|160px|right|『ねじ式』の元になった夢で女医が最上階で開業していた三愛ビル。作品に描かれた金太郎飴ビルとはかなり異なる趣。]]
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| − | おりしも、時代は[[全学共闘会議|全共闘]]紛争のちょうど前夜。[[劇画]]ブームも手伝い、大学生や社会人も漫画を読むようになった時代であり、そうした世相を反映し[[アンダーグラウンド (文化)|アングラ]]芸術のタッチも取り入れた『ねじ式』は、漫画が初めて表現の領域を超越した作品として絶賛され社会現象となり、後続の作家たちにも絶大な影響を与えることになった。この作品に関しては多くの[[精神分析]]的解釈が試みられたが、つげはそのいずれをも「全然当たっていない」と一笑に付している{{sfn|つげ|権藤|1993a|p=不明}}{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=不明}}。つげは、1969年2月の『[[アサヒグラフ]]』でこの作品にコメントし「[[時間]]・[[空間]]と全く関係のない世界―それは[[死]]の世界じゃないんだけど―それを自分のものにできたらと思っている。『ねじ式』ではそうした[[恍惚]]と[[恐怖]]の世界・異空間の世界がいくらか出ていると思う」と述べている<ref name="asahi">『[[アサヒグラフ]]』（[[朝日新聞社]] [[1969年]][[2月14日]]号“不条理”なマンガ家 つげ義春）</ref>。
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| − | 『ねじ式』に関して多くの[[評論家]]や[[詩人]]、[[文化人]]などがそれぞれの立場から多くの批評を試みた。詩人の[[天沢退二郎]]は、「徹底した[[プライベート]]な視線に貫かれた作品空間がつげ作品の特徴だが、『ねじ式』ではその空間がさらに異様なものになっており、作者そのもののような主人公（[[一人称]]）は自らを踏み外して異空間へ入っていき、もはや作者とは思えない主人公が[[悪夢]]の中にいる。その主人公とは“悪夢の中のわれわれ”なのだ。つげ作品を読むことは、夢を見ることなのだ」と述べ、つげ作品の根源的コワサにふれ絶賛した。[[石子順造]]は“'''存在論的反マンガ'''”と呼び「[[自然]]と[[人間]]が同じ[[位相]]にあり、つげは日常のただなかにある奈落を見ている。つげの漫画は狂猥な現代の文明状況の中で生まれ死ぬしかないぼくらの生の痛みと深くつながっている」とし、つげ作品を読むことは「恍惚とした恐怖の体験をすること」だとした。[[白土三平]]作品が[[唯物史観]]漫画として論議されたのに対し、つげ作品は「[[意識]]」「[[存在]]」「[[風景]]」「[[時間]]」といった言葉で盛んに論じられた<ref name="asahi" />。
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| − | 当時の生活は、「毎日が空白のつらなり」のようなもので、昼頃目覚め洗顔後、[[散歩]]に出ては[[本屋]]の店先を冷やかし、[[喫茶店]]へ足を運び片隅の暗がりでポツンと座りボーッとする。間が持てないと思うと仕方なく漫画の[[アイデア]]を考えることもある。2時ころには[[窓]]を閉め切ったままの一人暮らしの薄暗い部屋に戻り、座ったり寝転んだりを繰り返し、眠気が来るまでボケっとする。[[不眠症]]のため午前3時ころに[[睡眠薬]]を飲む。食事は散歩のついでに[[食堂]]で済ませ、あるいは喫茶店の[[モーニングサービス]]の[[トースト]]で我慢し、夜は[[パン]]か[[インスタントラーメン]]を作る。これが毎日繰り返される。当時は「おそらく日本でいちばん寡作でしょう」と自称するほどで[[生活費]]確保のため[[水木プロダクション]]の手伝いを月に1週間ほどし、「適当に食えるだけ取ればやめてしまう」生活ぶりであった。また、当時「意識を拒否する意識が自分の中にある」とし、次のように発言している。「ここにコップがありますね。こういうものが時どき“ものがある”というふうに見えるんです。その時の恍惚とした気持ち。そうなんです。自分自身が<<もの>>になれたらといつも思っているんですよ」。つげは当時よく見た夢について、「山と澄み渡った空、鮮やかな天然色の風景が眼前に広がり輝くほどに明るい。しかしその風景は何ひとつ動かず時間が止まったようで、ぼく自身は風景と断絶しており、まるで客席から映画のスクリーンを見るような関係にある。その風景は、ぼくを恍惚とさせ、同時にすごく恐怖させる」とも発言し、睡眠薬を常用するのはその“悪夢”を見るためでもあったという<ref name="asahi" />。
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| − | [[1970年]]、調布市内に転居し、藤原と同居するようになる。ガロにおける最後の作品となった『[[やなぎ屋主人]]』では、劇画風のタッチを編み出し再度の変化を見せつけたが、予想外に巻き起こったつげブームにより[[印税]]収入が入ったせいもあり、[[1970年]]頃からだんだん寡作になっていく<ref name="jibunnshi" />。
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| − | === 『ガロ』以降 ===
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| − | 同じ年に、『[[アサヒグラフ]]』の連載で紀行文を描き、夫婦で旅行をした。これをきっかけに、翌[[1971年]]には東北・瀬戸内・奈良・長野・会津へ、[[1972年]]には北部九州、[[1973年]]には長野の[[秋葉街道]]、福島の[[湯岐]]、[[二岐温泉]]を巡る旅行を行なう。この頃から、都会を離れて暮らしたいと思うようになり、千葉の大原付近の土地を物色したり、喫茶店経営を考え家賃が大変に安い六畳一間の住居付きの[[荻窪駅]]前に転居したりする。しかし開業しないまま2ヶ月で再び調布に転居。[[1974年]]には寡作はさらに進行し、生活が困窮。この頃、注文なしに描いた『義男の青春』を[[双葉社]]『[[漫画アクション]]』へ持ち込むが、75ページの一挙掲載は不可能だから3分割するように、ついては1回24ページごとに物語の切りをつける形に直すようにと注文され{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=221}}ショックを受ける<ref name="munounohito">『無能の人』あとがき（[[日本文芸社]]）</ref>。[[1975年]]には妻が[[京王閣競輪場|京王閣競輪]]でアルバイトをするほどになる。10月には雑誌『太陽』の取材で[[田中小実昌]]、[[渡辺克己]]、編集者有川の4名で[[城崎温泉]]、[[湯村温泉]]などを周遊<ref name="kusetsu">つげ義春『苦節十年記 旅籠の思い出』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2009年3月。{{要ページ番号|date=2018-08-07}}</ref><ref name="sun">『太陽』1976年1月号「日本温泉旅行」（平凡社、1975年）</ref>。[[11月19日]]には長男が誕生し、その約1ヵ月後の[[12月25日]]に正式に入籍<ref name="jibunnshi" />。昔のマンガ家仲間は、つげについて「あんなやさしいひとは見たことがない。つげさんが結婚したとき軽い嫉妬を感じた」と述懐している{{sfn|佐野||p=12}}。
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| − | しかし、長男の誕生は、つげにとってむしろ精神的不安定をもたらす。[[1976年]][[1月24日]]、[[日本放送協会|NHK]]でドラマ『紅い花』の試写会とその後の『ガロ』に掲載するための[[鈴木志郎康]]らを交えた座談会に出席するが、その帰路の電車内で初めて[[パニック障害]]様の不安発作に襲われる。3日後の27日にはNHKの[[佐々木昭一郎]]より原作料を受け取るが12万円であった。うち5万円は佐々木個人からの謝礼で、NHKの原作料は7万円であった。NHKの謝礼は[[学歴]]で決まると聞いていたつげは、自分は小学校卒だからこんなに安いのかと暗澹たる気分になる{{sfn|つげ|1983|p=不明}}。同年に酒井荘から近くの富士マンションに転居、『[[近所の景色]]』に実名で登場する。翌[[1977年]]には弟、忠男の住む千葉県[[流山市]][[江戸川台]]に近い[[柏市]][[十余二]]の借家に転居、さらに[[1978年]]に調布市の多摩川住宅へと転居を繰り返す<ref name="tsugesanpo-chofu">[http://tsugesanpo.sakura.ne.jp/14.html つげ義春を散歩する(調布編) 公式サイト]</ref>。
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| − | [[ファイル:Soto-no-hukurami Yoshiharu-Tsuge B299593ss.jpg|thumb|160px|right|『[[外のふくらみ]]』（1979年）の元になる夢は地下道を逃げまどい、最後は先細りの階段で身動きが取れなくなる。]]
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| − | 『ねじ式』によって、つげは芸術漫画家という烙印を押しつけられ、それによって発表の場が限られるようになってしまい、だんだん描きたいものが描けないというジレンマに陥るようになった。当時、徐々に進行しつつあった[[ノイローゼ]]の治療の意味もあって、つげは見た[[夢]]をノートに綴っていく『夢日記』に夢中になり、『[[夢の散歩]]』（[[1972年]]）という見た夢をそのまま漫画化するような実験を試みる。そして、[[1976年]]の『[[夜が掴む]]』以降、夢日記の漫画化を本格化。夢のシュールで漠然とした風景を描くために、つげは[[パース]]をわざと狂わせた絵を意図的に描くようになる。『[[アルバイト (漫画)|アルバイト]]』（1977年）、『[[コマツ岬の生活]]』（1978年）、『[[必殺するめ固め]]』、『[[ヨシボーの犯罪]]』、『[[外のふくらみ]]』（1979年）、『[[雨の中の慾情]]』（1981年）などが描かれた。この当時より、女性の肉体をリアルに豊満に描く傾向が強まり、作品に独特のエロティシズムをもたらすようになる。かつてのおかっぱの少女は、若夫婦ものの妻に受け継がれるが、すでにかつてのような神秘性は失われている。これはつげ自身の述懐によれば、女性にかつてのような憧憬をもはや抱かなくなったからである。
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| − | [[1976年]]には、月刊『ポエム』（1977年1月号「特集つげ義春」）誌上で詩人の[[正津勉]]と対談し、「『ねじ式』は描くネタに困り面白半分で夢を描いてみたもので、思いあまって吐露したというような重大な作品ではなく傑作でもないが、今読み直すとすごく面白い。[[夢]]をそのままに描いたわけではなく脚色はしているが、このころは夢は夢のままに脈絡なく描く方が面白い感じていた。『ねじ式』のあと2、3本描くが、その後寡作になったのは、つげブームで金が入って怠けていたからだ」と説明。1972年の『[[夢の散歩]]』ではがらりと作風が一変したことについて、「もう黒っぽい画は描かなくなった。何か青空のようなものに魅かれるようになった」といい、その理由については「さめてしまったか、ぼけてしまったかどちらかです。重々しいよりも軽々しい方が楽しいですから」と答えた。当時の生活は昼頃に起床し、朝食兼昼食には[[インスタントラーメン]]などを食べ、食べることには関心がないため夕食は[[朝鮮漬け]]か[[納豆]]であった。深夜3時か4時ころまで起きてただ机に向かい、[[妄想]]に耽る日々であった。眠ってばかりいるため夢を多く見るので、夢日記だけはちゃんとつけていた。そういう生活が数年続いていたと告白している<ref name="poem">月刊『ポエム』（1977年1月号「特集つげ義春」[[すばる書房]]）</ref>。
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| − | [[1977年]]、妻がガンにかかり、手術を行なう。結果は良好だったが、心身に不調をきたし、ノイローゼが進行し、[[1980年]]には[[不安神経症]]と診断される。[[森田療法]]を受けるが、病気の深刻さに自殺を決意。しかし、妻子がいることを思い耐える<ref name="jibunnshi" />。
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| − | === ふたたび脱漫画家 ===
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| − | 漫画を描くことを苦痛に感じて他に職を求め、[[1981年]]に[[古物商]]の免許を取得。「ピント商会」を設立し、古本屋の経営を目指して古本漫画を収集する<ref name="jibunnshi" />。また、中古カメラを質屋で安く仕入れて自分で修理し、マニア向けに転売したところ、思わぬ収入になった。成功の秘訣は、[[相場]]よりもかなり安く売ったことである。これは闇市でアイスクリームやおもちゃを安く売り成功した体験が元になっている。そこで「中古カメラ屋」に転業を試みたが、翌[[1982年]]には安い中古カメラが入手できなくなり、この「商売」は断念した<ref name="jibunnshi" />。また、『無能の人』に描かれた「売石業」も、実際に試してみたが、うまくいかなかった。作家として[[1983年]]3月から「[[小説現代]]」に「[[つげ義春日記]]」を発表するが、読み物として若干私事を書きすぎたため妻に怒られ、11月で中断。妻との悶着が続いたことで、ノイローゼは悪化の一途を辿ることになる<ref name="jibunnshi" />。
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| − | [[1984年]]、2年ぶりの新作である『[[散歩の日々]]』を受け取った[[夜久弘]]は、つげ作品の発表の場としてふさわしい季刊漫画雑誌『[[COMICばく]]』（[[日本文芸社]]）を創刊し、つげは毎号漫画を描くようになったが<ref>夜久弘『「COMICばく」とつげ義春 もうひとつのマンガ史』福武書店、1989年、p.11</ref>、「マイナー意識の強い自分」の作品が主体となったことに困惑する<ref name="BAKU1">COMICばくNO.1（1984年春季号）</ref>。
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| − | これら「駄目人間」としての体験を描いた『[[無能の人]]』（[[1985年]]）を刊行。つげ独自の暗さやユーモアは健在であり人気を博した。この間も仏教書や水泳での治療を試みたノイローゼだったが、発作性から慢性に移行。[[1987年]]春先から強度の[[不安神経症]]の[[発作]]に悩むようになり、3月発表の自伝的密航記『[[海へ]]』の後、6月・9月に発表した『[[別離 (漫画)|別離]]』をラストに、仕事が一切できなくなる。気晴らしに子供と一緒に[[ファミリーコンピュータ|ファミコン]]で遊ぶようになり、超高難易度で知られた「[[スーパーマリオブラザーズ2]]」をクリア<ref>『つげ義春全集』（最終巻、自筆年譜から）</ref>したことが[[桜玉吉]]らゲーム業界の人間の中で話題となる。
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| − | [[ファイル:養老渓谷の廃屋P1010116.jpg|thumb|220px|right|絶筆後の1988年、つげが家族とともに[[養老渓谷温泉]]を訪問した際に[[養老渓谷]]沿いに見つけ、隠棲を考えた廃屋]]
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| − | [[1988年]]には自己否定の深化から1人山奥で住んだり、乞食になることを夢想するようになり、山梨県[[秋山 (上野原市)|秋山村]]を訪れて場所探しをする<ref name="jibunnshi" /><ref name="kusetsu" />。[[宗教]]に惹かれながらも同時にどうでもよいとする開き直りの心境も経験した<ref name="kusetsu" />。同年、実売5千部だった『COMICばく』は第15号をもって休刊し、事実上の休筆状態に追い込まれる。以降、エッセイや旅行記等の文筆活動は継続するものの、漫画制作はずっと休止しており{{いつ範囲|今日|date=2018年8月7日 (火) 11:58 (UTC)|title=}}まで新作は発表されていない<ref name="kusetsu" />。
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| − | === 休筆から現在以降 ===
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| − | * [[1990年代]]に入ると、精神衰弱に加え[[急性虫垂炎]]や[[中心性網膜炎]]、[[不整脈]]、[[耳鳴り]]などに次々と罹患、特に目は左目は不治、右目は[[視力]]が悪化する<ref name="jibunnshi" />。多くは精神不安が原因であった。[[1990年]]の虫垂炎の手術後には、自分が[[血管]]の中を流れていく奇怪な夢を見る。同年には家族で山梨県の田野鉱泉、嵯峨塩鉱泉を訪れるが、このころより山に強く惹かれるようになる<ref name="kusetsu" />。
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| − | * 1991年、つげファンである[[竹中直人]]による『[[無能の人]]』を皮切りに[[石井輝男]]により、『[[ゲンセンカン主人]]』『[[ねじ式]]』と、代表作が続けて映画化がされ、それに併せて『ガロ』などの誌上インタビューやコメントなどを積極的に寄稿した。さらには若い頃や家族との旅行を綴ったエッセイ集『[[貧困旅行記]]』を発表したほか、[[権藤晋]]との対談集である『[[つげ義春漫画術]]』を刊行。自身の原作を用いた映画に家族全員でゲスト出演するなど、公の場での活動も目立っていた。1990年、長男が高校受験を控えていた当時に『無能の人』の映画化の話が持ち上がり、提示された原作料がちょうど私立高校の学費と同じぐらいだったので契約に同意したという{{sfn|佐野||p=11}}。しかし映画化に伴う雑事や『貧困旅行記』、『[[つげ義春資料集成]]』、[[版画]]などの仕事をこなした上に[[団地]]の役員を1年間務め忙殺される<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[1992年]]、4月頃より過労から不整脈が始まる。このため10年間続けていた水泳をやめる。精神安定のために[[1956年]]頃より好きだった[[クラシック音楽]]を聴き始める。主に[[ルネサンス]]、[[バロック]]期の音楽が主体。デビュー当時の貸本単行本の復刻『[[つげ義春とぼく]]』の文庫化、[[パルコ]]の[[カレンダー]]などを手がける。8月からは『[[つげ義春漫画術]]』のための対談を[[権藤晋]]と半年以上にわたり続ける。11月には『[[ゲンセンカン主人]]』（石井輝男）の映画化が始まり、12月に[[伊豆]]のロケに同行<ref name="kusetsu" />。同年のインタビューでは、一ヶ月の生活費は17万円と決めていること、無駄な出費はしないよう昔から肝に銘じていること、団地のローンは月に2万円程度なので親子3人どうにか印税収入で暮らしていけていることを語っている{{sfn|佐野||p=11}}。また、子供を見ると不憫でならず自分の子供を溺愛してしまうこと、子供がひどく内向的になったのも甘やかしすぎた自分の責任だと思っていることも語っている{{sfn|佐野||p=21}}。
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| − | * [[1993年]]、『ゲンセンカン主人』映画化に伴う雑事、映画化記念版『ゲンセンカン主人』、『つげ義春漫画術』に加え『つげ義春全集』（[[筑摩書房]]）の刊行により多忙は続く。6月には転居に伴う家探しとトラブルが発生、心身消耗が著しく9月には[[腎盂炎]]を発症、1ヶ月間の病臥に付す。12月には引っ越し準備中に腎臓の衰えが原因の[[ぎっくり腰]]となり再び1ヶ月間寝込む<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[1994年]]、調布市内の一軒家に転居、永年の夢であった[[田舎暮らし]]を断念。[[眼病]]、[[耳鳴り]]、[[不整脈]]、[[腰痛]]に加え、[[リウマチ]]を発症し、再び休養することを宣言<ref name="jibunnshi" />。
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| − | *このころ、[[藤澤清造]]『根津権現裏』復刻版<!--根津権現裏 復刻版〈まぼろし文学館 大正篇3〉 （1998 本の友社）か?-->の装丁を依頼されたが断った<ref name="古書" />。
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| − | [[ファイル:Hanshin-Awaji earthquake 1995 343.jpg|thumb|220px|right|普段は[[テレビ]]、[[新聞]]など一切見ないつげが[[阪神淡路大震災]]には衝撃を受ける。]]
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| − | * [[1995年]]、[[阪神淡路大震災]]、[[オウム真理教事件]]が発生、普段は[[テレビ]]、[[新聞]]など一切見ないつげが阪神淡路大震災には関心を持つ。先年から続く妻と息子の関係悪化が心労となる。息子が[[自動車運転免許]]を取得、25万円の中古車を購入、息子とともに[[多摩]]方面への[[ドライブ]]をし気を紛らせる<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[1996年]]1月、元『ガロ』編集長の[[長井勝一]]死去。同時期に母ますが倒れ、長井の[[葬儀]]に参列できず心残りとなる。母はその後[[痴呆症]]を発症。気性の激しさが一変、[[仏]]のように穏やかになる<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[1997年]]、60歳。4月に妻が[[スキルス性胃癌]]を発病。[[東京医科大学病院]]にて[[手術]]するも全身に転移し不治を宣告される。自宅での療養に切り替え、つげが郵送されてきた薬剤を妻に朝夕2回[[点滴]]、[[家事]]、[[買い物]]に追われるが頼る者もなく孤立無援状態が続く。[[テレビ東京]]にて短編作品が12回放送される。石井輝男による『[[ねじ式]]』が公開されるが、協力する余裕もなし<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[1998年]]、癌の妻が[[世田谷区]]池尻の病院へ転院するが、そこは東京医大で見放されたがん患者の溜り場のようなところであった。入退院を繰り返すも[[肺]]に転移、[[手術]]する体力もなく[[抗がん剤]]の投与を続ける。息子の運転する車に助けられるも、2人きりの看病は厳しく絶望的になる<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[1999年]]1月、母ますが死去。2月には妻・[[藤原マキ]]が癌により死去。2年間の[[看護|看病]]の疲れと虚脱感に襲われ、[[離人症]]になりかかる<ref name="dailyshincho">[http://www.dailyshincho.jp/article/2013/12261630/?all=1 デイリー新潮 超問題作『ねじ式』を書いたつげ義春氏 27年間の休筆のワケ]</ref>。6月には2階の部屋の窓付近に体長60cmほどの[[蛇]]が出現、窓の直下はごみ置き場となっており、[[ネコ]]、[[カラス]]などが多く蛇にとっては危険な場所であり、命がけで2階まで上がってきたのは妻の[[霊]]が蛇に[[憑依]]したものと直感する<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[2000年代]]に入っても作品の映画化は続いたが、つげは、年齢的、身体的な要因からか、沈黙を守る。一定の期間をおいて書籍の再刊、文庫化、全集の刊行などが続き、[[印税]][[収入]]によって生活は支えられている。[[スーパーマーケット|スーパー]]を順ぐりに[[自転車]]で回って、おかずを買う「主夫」生活は変わらず。「一カ月の電話料が100〜200円しかかからない」という。
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| − | * [[2000年]]、妻と2人で分担していた家庭運営を一人でこなさねばならなくなったことや、息子の精神不安定と[[引きこもり]]などがあり、雑用に追われ忙しくなる。長年続けている[[手紙|ファンレター]]への返信も依然減ることなく、その内容も依頼、要望の類が多く、3日に1通の返信書きに追われ休む間もなくなる<ref name="kusetsu" />。[[青木正美]]によるインタビューが『日本古書通信』4月号と5月号に掲載される<ref name="古書" />。「私は本来、マンガ家とか画家とか思われたくないんです。好きな画家も、強いて言えば[[レオナルド・ダビンチ]]、もしくはそれ以前の名のない絵の職人さんなんかなんです。私もやがては、[[ホームレス]]にでもなって消えてしまえたら、それこそ本望なんです」と発言<ref name="古書" />。
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| − | * [[2001年]]、体調不良が続き漢方薬に頼る。息子が大手術を要する重症の[[腸閉塞]]で1ヶ月間の入院するが[[原因]]は不明。転居後に妻の癌をはじめ災いが多いのが何かの[[祟り]]ではないかと心配になる<ref name="kusetsu" />。まんだらけの企画で[[水木プロ]]で机を並べた[[池上遼一]]と久しぶりに会う<ref name="shokitanpen1">『つげ義春初期傑作短編集1』雑誌編 上（講談社）2008年10月10日発刊</ref>。
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| − | * [[2002年]]、息子が2度目の腸閉塞で再び1ヶ月間の入院。原因不明で心因性のものではないかとの疑いで[[心療内科]]を紹介される。間もなく息子が[[強迫神経症]]を発症。息子のために[[心理学]]関係の本を読みあさるが、すべての[[精神疾患]]の原因は解明されておらず、多くの[[治療]]が危険な投薬医療によるごまかし的なものであることを知り失望する<ref name="kusetsu" />。「蒸発旅日記」（エッセイ）が[[山田勇男]]監督によって映画化される。夏にクランクインをするが、調布の撮影所へ見学に行く。[[嶋中書房]]よりコンビニ版「つげ義春自選集」刊行始まる。心身不調は続く<ref name="shokitanpen1" />。
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| − | * [[2003年]]にマキの作品『[[私の絵日記]]』が文庫化された際に、巻末にロング・インタビュー「妻、藤原マキのこと」が収録され、夫婦の間の葛藤などを赤裸々に語る。[[アメリカ]]のコミック研究誌「Comics Journal」上に『ねじ式』英訳版が登場。英訳版は『紅い花』（1984年）、『大場電気鍍金所』（1990年）（ともに「Raw」に掲載）に続き3度目。7月には[[山田勇男]]監督「[[蒸発旅日記]]」が公開される<ref name="shokitanpen1" />。[[毎日新聞]]のインタビューにこたえ、電話をひいていないこと、長男つげ正助<!--映画『ゲンセンカン主人』にこの名前で出演しているのでケースB2の対象外-->が病み、社会に出て働くことができないため身の回りの面倒をみていることなどを語る<ref>「このごろおもうこと」（毎日新聞）2003年12月11日夕刊</ref>。『つげ義春の温泉』（カタログハウス）発売。講談社からは『つげ義春初期短編集』、『つげ義春初期傑作長編集』計8冊発売。「老後のために過去にこだわらず駄作ばかりを放出」（つげ自身の言葉）する<ref name="kodansha">[http://kc.kodansha.co.jp/product?isbn=9784063645323 講談社コミックプラス]</ref>。近所の老乞食と親しくなり、一切の関係を断ち切った[[乞食]]こそ最高の生き方と感得する<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[2004年]]、『[[無能の人]]』が[[フランス]]にて発売。日本在住の[[フレデリック・ボワレ]]に懇願されたものだったが、つげ自身は海外に紹介されることに全く興味はないという。『[[リアリズムの宿]]』が、[[山下敦弘]]監督により映画化される。親友でつげ漫画の名脇役としてもたびたび登場したT君こと立石慎太郎が死去。[[ソニー]]から[[携帯電話]]での漫画配信を依頼されるがほとんど収入になるものではなかった<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[2005年]]、海外よりの出版依頼が急増するが、交渉や手続きの煩わしさのためすべて断る。息子の体調や家事の忙しさで心身とも疲弊、すべての意欲を喪失<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[2006年]]、[[虫歯]]ではない原因不明の歯痛が続く。9月頃より[[北冬書房]][http://manriki.sanpal.co.jp/tsuge/ ウェブサイト]で古い旅の写真の掲載が始まる。漫画を描く際の資料として撮りだめていたもので、視力と気力の衰えから今後漫画を書くこともないとの判断から放出する<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[2007年]]、70歳。夏に[[熱中症]]に罹る。体力・気力ともに益々衰え、人に会うのが億劫となり息子同様の引きこもり状態となる。本人に寄れば、「老いて出しゃばるより[[隠居]]すること」が奥ゆかしく感じられるとのこと<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[2009年]]～[[2010年]]頃に、[[水木しげる]]に最後に会う。場所は地元の[[神社]]で、水木がいきなり「つまらんでしょ?」というので、つげも「つまらんです」と答えた。すると「やっぱり!」といわれる。あれだけの成功を収めても人生に思い残すことや物足りなさがあるのだと感じ、つげにとって印象に残る会話となる<ref>{{Cite news|title=[http://kougasetumei.hatenablog.com/entry/tsugeyoshiharu 水木しげるさんを悼む 葛藤、悩み、本棚には哲学書 つげ義春]|newspaper=読売新聞・東京朝刊|date=2015年12月1日|page=35}}</ref><ref name="asahi.com">{{Wayback|url=http://www.asahi.com/articles/ASHCZ5K6YHCZUCLV012.html|title=朝日DIGITAL 向井理さん、つげ義春さん…悼む声続々 水木さん死去 2015年11月30日21時06分|date=20151130124528}}</ref>。
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| − | * [[2013年]] - 12月25日発売の『[[芸術新潮]]』2014年1月号（[[新潮社]]）紙上にて「大特集 デビュー60周年 つげ義春 マンガ表現の開拓者」が特集され、[[明治学院大学]]教授でもある[[山下裕二]]を聞き手とした4時間に及んだロングインタビューの内容が掲載された。創刊から60余年の『芸術新潮』がマンガ家を特集するのは、[[手塚治虫]]、[[水木しげる]]、[[大友克洋]]に続き4人目<ref name="rocketnews">[http://topics.jp.msn.com/wadai/rocketnews24/column.aspx?articleid=2785899 2013年12月28日 16:00 (ロケットニュース24)「【必見】アートマガジン『芸術新潮』最新号は「つげ義春特集」だ！ 4時間ロングインタビューがスゴイ!!」]{{リンク切れ|date=2018-08-07}}</ref><ref name="geijutsushincho">[http://www.shinchosha.co.jp/geishin/ 『芸術新潮』（[[新潮社]]）2014年1月号]</ref>。このインタビューでも「息子が引きこもりでその世話と家事に追われている」と発言している<ref>『芸術新潮』2014年1月号、p.71-72。</ref>。
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| − | * [[2014年]] - 『東京人』7月号で[[川本三郎]]のインタビューに応じる。この時、[[障害者年金]]を受給中の[[統合失調症]]の息子の世話に追われていること、息子は父つげ義春の作品を理解できず『[[ドラえもん]]』や[[松本零士]]の作品などを読んでいることを明らかにしている。食事は1日2回だが、[[料理]]の本を何冊か買い込み、[[和食]]を中心に献立は[[野菜]]を多く摂取し、[[おかず]]も3-4品付ける。[[家事]]のほか息子の通院や[[障害年金]]の手続きで市役所へ行くなど忙しく、自分の時間がとれるのは1日2時間ほどで散歩する余裕もなく仕事はできない状態である。テレビは[[地デジ]]対応をしなかったので見ていないという。[[DVD]]は操作が覚えられずに、最後に息子と観た映画は[[タル・ベーラ]]監督の『[[ニーチェの馬]]』（2011年）で息子ともども感動する。息子の状態については、20年間他人と関係を持たず友人もなく、会話はよくするものの通じず、現実社会を理解できないため幼稚で現実離れしており、別世界に住んでいるような状態である。しかし、もし息子が健常であればとっくに家を出て、自分は一人で暮らしていかなければならないので、今、息子は自分に[[親孝行]]をしていると感じており、[[高橋和巳 (精神科医)|高橋和巳]]著『子は親を救うために「心の病」になる』という本は読んではいないが、読まなくても内容が分かる気がしているとのこと<ref name="TOKYOJINP30">『東京人』2014年7月号 P30</ref>。
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| − | * [[2015年]] - 2月、『[[水木しげる漫画大全集]]』第58巻「テレビくん他」に「大人物」と題する解説文を寄稿。その一節に「私は二十数年前に休筆し、そのまま引退してしまった」と記す。6月、『日本美術全集』（[[小学館]]）第19巻「拡張する戦後美術」に「ねじ式」の原画が収録される<ref>[http://www.aoyamabc.jp/culture/why-tsuge/ 『芸術新潮』つげ義春特集刊行記念講座 なぜ、いま「つげ義春」なのか―マンガと美術の危うい関係]</ref>。同全集の刊行を記念する対談での山下裕二の発言によると、つげ義春の現在の収入は年間100万円程度であるという。対談相手の[[辻惟雄]]は「[[文化功労者]]にして[[年金]]をあげるべき」と提案している。
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| − | * 2015年[[12月1日]] - 前日に93歳で急逝した[[水木しげる]]の[[ラジオ]]での追悼番組に[[電話]]にて生出演。水木しげるとの神社の骨董市での最後の遭遇時のエピソードなどを語る。その数日後の、水木のお別れ会にも出席した{{sfn|スペクテイター|2018|p=不明}}。
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| − | * [[2016年]][[12月20日]] - 世界最大級の品揃えの[[電子書籍]]販売サイト「[[eBookJapan]]」（[[イーブックイニシアティブジャパン]]）にて作品が初電子書籍化。発表年代順に収録したつげ作品集の4期に分けての配信が開始される<ref name="JIJI">[http://www.jiji.com/jc/article?k=000000589.000001485&g=prt JIJI.COM - シュールレアリズムの天才漫画家・つげ義春の作品が待望、初電子書籍化！「メメクラゲ」の『ねじ式』『紅い花』『無能の人』などeBookJapanが発表年代順に収録したつげ義春作品集を配信]{{リンク切れ|date=2018-08-07}}</ref><ref name="ebook">[http://www.ebookjapan.jp/ebj/special/st/tsugeyosiharu.asp eBookJapan公式サイト - つげ義春作品集 第1弾配信!!]</ref>。
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| − | * [[2017年]]10月 - 『[[アックス (雑誌)|アックス]]』119号（[[青林工藝舎]]）で生誕80周年を記念した特集が組まれる。
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| − | * 2017年11月 - [[月蝕歌劇団]]の本公演100本記念として『ねじ式・紅い花』が演劇として上演。「ねじ式」「紅い花」「女忍」「沼」「狂人屋敷の謎」が原作{{sfn|スペクテイター|2018|p=226}}。
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| − | * [[2018年]]2月22日 - 『スペクテイター』（[[幻冬舎]]）41号が、約230頁にわたり「つげ義春特集」を組む。[[浅川満寛]]、[[赤田祐一]]によるつげの新たなインタビューの他、[[藤本和也]]及び[[足立守正]]による「[[ねじ式]]」の元ネタ写真の分析記事などが掲載された。その他、『[[おばけ煙突]]』『[[退屈な部屋]]』『[[つげ義春日記]]』などが再掲される<ref name="Face">[https://www.facebook.com/tsugeyoshiharu/ つげ義春幻想紀行 Facebook]</ref>{{sfn|スペクテイター|2018|p=不明}}。
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| − | === 日本漫画家協会賞大賞受賞 ===
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| − | [[2017年]]、『つげ義春 夢と旅の世界』（[[新潮社]]）[http://www.shinchosha.co.jp/order/602254/]と一連の作品で第46回[[日本漫画家協会賞]]大賞受賞<ref name="mainichi">[https://mainichi.jp/articles/20170509/k00/00e/040/243000c 毎日新聞2017年5月9日 12時19分 - 日本漫画家協会賞 つげ義春さんらに大賞] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20170509094810/https://mainichi.jp/articles/20170509/k00/00e/040/243000c |date=2017年5月9日 }}</ref><ref name="chibanippo">[https://www.chibanippo.co.jp/newspack/20170509/406692 千葉日報 2017年5月9日 12:22 - つげ義春さんらに大賞 日本漫画家協会賞]</ref>。本人は贈賞式に欠席した{{sfn|スペクテイター|2018|p=100}}。
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| − | === つげ義春資料館 ===
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| − | [[福島県]][[岩瀬郡]][[天栄村]]湯本地区([[岩瀬湯本温泉]])で[[2016年]]6月より、[[NPO法人]]「湯田組」が村の指定管理者となり、つげの資料館整備を始めたことが[[福島民報]]にて知らされた。湯本地区には[[2014年]]に福島県建築文化賞で特別部門賞を受賞している築140年の村農村交流施設（別称「智恵子邸」）があり、これを活用するもので、館内に新たにつげ義春展示コーナーを設けてつげ義春全集や当時の掲載誌などの資料を展示し、つげ作品の魅力を発信する拠点にするほか、ファン同士の交流の場にしたい意向で、同年6月開館された。同地で催されたつげ義春フォーラムで使用されたパネル類も展示され、つげのイラスト内の少女と写真が撮れる。和室の一部は無料休憩所「えんがわカフェ」として開放されている<ref name="minpo">[http://www.minpo.jp/pub/topics/59preject/2016/05/post_50.html 福島民報 2018年1月22日 - つげ義春資料館誕生へ NPO法人「湯田組」漫画作品魅力PR 築140年古民家活用]</ref><ref name=”yudagum”>[http://www.npo-yudagumi.com/work.html 特定非営利活動法人 湯田組公式サイト]</ref>。
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| − | つげは昭和40年代に同村内の[[二岐温泉]]や岩瀬湯本温泉に足しげく通い、実在する湯小屋旅館をモデルにした漫画『[[二岐渓谷]]』や豪壮な[[茅葺屋根]]が建ち並ぶ当時の岩瀬湯元温泉の町並みなどを[[イラスト]]に残している。なお、湯小屋旅館に関しては老朽化で取り壊す話が持ち上がったが、現行の姿のままに残してほしいとのつげファンの根強い声を受け、古い建物を直しながら別箇所に新しい旅館を建てることが検討されるなど、つげ義春ゆかりの地であることを利用した[[地域おこし]]が進んでいる<ref name="SANKEI">[http://www.sankei.com/region/news/141121/rgn1411210074-n1.html 産経ニュース 2014.11.21 - つげ義春が描いた湯小屋「保存を」観光資源化へ有志ら取り組み 福島]</ref><ref name="minpo"></ref>。
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| − | == 旅 ==
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| − | [[ファイル:養老渓谷温泉「川の家」P1010109漫画家のつげ義春が宿泊.jpg|220px|thumb|right|家族とともに宿泊した養老渓谷温泉「川の家」]]
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| − | [[ファイル:Fukenoyu-spa.jpg|thumb|220px|right|[[1967年]]には東北大旅行を決行。[[蒸の湯]]での体験は名作「オンドル小屋」に結実する。]]
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| − | [[ファイル:法師温泉混浴浴場Img913.jpg|thumb|220px|right| [[1969年]]1月、『[[アサヒグラフ]]』の取材で訪問した[[法師温泉]]。]]
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| − | [[ファイル:雪の黒湯温泉Img354.jpg|thumb|220px|right|1969年5月には[[黒湯温泉]]を訪問。]]
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| − | [[ファイル:Futomihama,Kamogawa,Chiba 千葉県鴨川市太海浜 DSCF7817.JPG|thumb|220px|right|千葉県鴨川市太海浜 - 1969年1月、謎の虫に足を刺され、医者を求めさ迷い歩く体験をする。『[[ねじ式]]』執筆の翌年であった。]]
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| − | [[ファイル:2013-11-30 Ohhara Fishing port 大原漁港、八幡岬・小浜八幡神社より DSCF8799.JPG|thumb|220px|right|大原へは不動産物色の目的で家族で何度も訪れている。]]
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| − | つげは[[井伏鱒二]]の影響もあって[[旅行|国内旅行]]を好み、[[旅]]を題材とした作品を多く描いている。『[[初茸がり]]』を始め『[[海辺の叙景]]』、『[[紅い花]]』、『[[西部田村事件]]』、『[[二岐渓谷]]』、『[[オンドル小屋]]』、『[[ほんやら洞のべんさん]]』、『[[もっきりやの少女]]』、『[[庶民御宿]]』、『[[会津の釣り宿]]』など多くの作品は実際の旅の体験と印象から生まれたものである。
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| − | つげが旅を始めたきっかけは、[[水木しげる]]のもとでアシスタントを始めた翌年の[[1965年]]（昭和40年）頃からで、仕事のし過ぎから[[腱鞘炎]]を患い仕事を半年ほど休み暇になったために、友人の立石慎太郎と旅行をし始めた。ただ、無職で収入がないことから立石の車での[[野宿]]をしながらの旅であった。当初は立石の[[オートバイ]]で[[奥多摩]]、[[千葉]]周辺が多く、立石が5万円で中古自動車を買って以降は[[下仁田]]、[[鬼石町|鬼石]]の奥の渓谷、[[秩父]]、[[万場町|万場]]方面へ行く。当時は旅行関係の書物も多くはなく、車であったため特に目的地を定めず出かけた。立石は特に旅行好きではなかったが、暇人であったためつげが誘えば車で同行し、[[親知らず]]から[[能登半島]]一周、さらに[[飛騨]]の[[白川郷]]から[[高山]]、[[乗鞍]]を越えて[[白骨温泉]]を通り[[松本]]経由で[[甲州街道]]で帰るような旅行をしたこともある。途中で[[喧嘩]]になったが、その後、立石が旅行に誘う際には「また暗い気持ちになりましょう」と名文句を残した。当時は2人とも[[独身]]であり、『[[北越雪譜]]』の[[秋山郷]]へ行ったり、[[屋敷温泉]]にも投宿した。しかし目的地には、いわゆる[[観光地]]は含まれず、例えば[[能登]]でも[[輪島]]の[[朝市]]などは素通りしている。[[景勝地]]を外すのは通俗的だという理由からではなく、初めから興味がないためである。また当初は『[[文化地理体系]]』を読み、そこに描かれる[[生活]]に関心を持つことが多かった。のちに、つげの旅の気持ちに近いものとして[[添田知道]]の『[[利根川随行]]』を挙げている。[[1980年代]]半ばには、[[大正]]・[[昭和]]初期の[[文学]]作品を多く読み、その影響から当時の雰囲気に逆行するような志向の[[懐古趣味]]的な旅、それはしかし現実ではありえないために、[[心]]の中で[[時間]]を逆行させるような旅を志向している。また、その頃には[[奥多摩]]の小河内よりさらに奥の丹波などのいくつかの[[集落]]に関心を持ち、その理由としては「暗い暗い山奥へ入っていきたい」心境であることを挙げ、山奥の粗末な生活や貧しい暮らしに惹かれる心境を語っている。また、山の生活にあこがれを持つと同時に、[[現代]]が何も進歩しておらず、ますます不自由になっており、金銭的価値を否定し、「[[都会]]の生活は[[嘘]]で生きている。価値のひとつもないところで生きているというのは、嘘で固まっているということだ。生命体としての人間にとっては山の生活が一番ふさわしいんじゃないか」と発言している<ref name="yagyou14">『夜行』14（[[北冬書房]]1985年7月7日）</ref>。
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| − | [[川本三郎]]は自著の中で「つげ義春には旅の漫画が実に多い」と述べている<ref>川本三郎「第四章 つげ義春とその周辺」（『時には漫画の話を』小学館 [[2012年]]）</ref>。旅そのものを描いた作品でなくても,つげの作品には旅の雰囲気が濃厚なものや旅人の心理が反映されたものがある。鄙びた山村、[[漁村]]、[[湯治場]]、[[宿場町]]、歴史ある古い町などを好むが、これはつげが内包する[[隠棲]]への断ちが思いと無関係ではない。海外へは赴いていないが、国内でも[[北海道]]、[[和歌山県]]、[[島根県]]、[[山口県]]、[[宮崎県]]、[[鹿児島県]]、[[沖縄県]]は訪問していない。北海道を訪問していない理由について『ガロ』1993年8月号収録の『つげ義春旅を語る』に、「北海道はやっぱり歴史が浅いっていうイメージがあってね。あと何となく遠いっていう感じがするんですよね。」と述べているほか[[2014年]]の『東京人』7月号誌上で[[川本三郎]]とのインタビューに答え「お寺などは別にして、瓦屋根の普通の民家がない」ことなどを挙げている。また九州へは[[熊本]]まで行っているが[[鹿児島]]は訪れていない。熊本へ行ったのは[[1968年]]に[[蒸発]]するつもりで[[博多]]在住のファンの[[看護士]]を頼って行ったものである。この際には相手の仕事の都合で翌週まで会えず、[[杖立温泉]]や[[湯平温泉]]あたりをさまよっていた。このとき、目的もなくさまよっている状態に、社会との関連性を喪失し、どこにいようが自分の存在の実感が消滅し、蒸発したようにこの世にいながらいない状態を実感。後年、こうした経験から[[乞食]]に関心を持つに至る<ref name="toukyoujin">『[[東京人]]』（[[都市出版]]）2014年7月号</ref>。寒さは苦手らしく「日本列島が沖縄のあたりに位置していたらよかったと、よく思いますよ」と答えた「ひだまりインタヴュウ」（『点燈舎通信3』）<ref>[http://www.geocities.jp/bbtugeken/mhokaido.html 「つげ義春を旅マップする」【未訪問県】（高田馬場旅行主義社）]{{リンク切れ|date=2018-08-07}}</ref>。
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| − | === 旅の履歴（1990年まで） ===
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| − | [[ファイル:20120608岩瀬湯本温泉街.JPG|thumb|220px|right|「来てよかった。いままでで最高の所だ。」（『颯爽旅日記』）と絶賛した[[岩瀬湯本温泉]]<ref name="ainiiku">[http://www.geocities.jp/bbtugeken/mhuks1.html つげ義春に会いに行く「猪苗代の南天栄村の西【前篇】岩瀬湯本]{{リンク切れ|date=2018-08-07}}</ref>]]
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| − | [[File:仏ヶ浦 - panoramio.jpg|thumb|220px|right|[[1970年]]に訪れた[[仏が浦]]では、役割もなく意味も寄せつけない巨塊を眼前にし、相即的につげ自分も[[岩石]]のように意味のない「[[物]]」に化したような感覚を覚え、後にその印象から「聖地論」「廃墟論」を展開。]]
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| − | * [[1955年]] 手伝いをしていた[[岡田晟]]に伴い[[湯河原温泉]]へ。旅館の[[女中]]と親密な仲になる<ref name="RIARIZUMU">[[リアリズムの宿（つげ義春「旅」）作品集]]（[[1983年]]7月[[双葉社]]）</ref>。
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| − | * [[1958年]] 当時恋愛関係にあった女子大生のS、その友人ら4-5人で[[甲府]]の[[昇仙峡]]へ。26年後の作品、[[池袋百点会]]（1984年12月）のラストシーンに描かれる。
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| − | * [[1965年]] 白土三平の招待で千葉県大多喜の[[旅館寿恵比楼]]に滞在。『不思議な絵』を描き上げる{{sfn|つげ|権藤|1993a|p=不明}}{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=不明}}。
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| − | * [[1967年]] [[井伏鱒二]]の影響で旅に没頭、唯一の友人立石と[[能登]]、[[飛騨]]、[[秩父]]、[[伊豆]]、[[千葉]]などを旅行。秋には一人で[[東北]]へ1週間の長期旅行（10月26日〜11月2日）。古い本で東北地方の湯治場の写真を見て、あまりに惨めで貧しい雰囲気に強い衝撃と胸騒ぎを覚えたため<ref>『つげ義春の温泉』（[[カタログハウス]]）2003年2月</ref>。[[八幡平]]の温泉、[[蒸の湯]]、[[後生掛温泉]]、[[角館]]、[[小安峡温泉|小安温泉]]（[http://www.tarobee.com/ 多郎兵衛]泊、サービスが悪くチップを出す気にもなれず早々に寝る）、会津から[[湯野上温泉]]（[http://www.f-onsen.com/tousenkaku/ 塔泉閣]泊、期待外れだった）、[[塔のへつり]]、[[岩瀬湯本温泉]]、[[二岐温泉]]などを訪問。特に岩瀬湯元温泉を最高と評価。旅に強い印象を抱くとともに[[湯治場]]の雰囲気に魅了される{{sfn|つげ|1977|p=26}}。初めての一人旅であった。この旅の強い印象から『二岐渓谷』、『オンドル小屋』、『もっきり屋の少女』の3作が生まれる。旅に関連した書物や[[柳田國男]]、[[宮本常一]]などを愛読する。
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| − | * [[1968年]] [[2月]]、[[群馬県]]の[[湯宿温泉]]、[[新潟]]の[[十日町]]から[[飯山線]]を経て[[長野県]]の[[麻績宿]]へ旅行。[[6月]]には[[外房]]の大原に1泊。[[7月]]、立石慎太郎と[[秋山郷]]、[[屋敷温泉]]、[[松之山温泉]]、[[草津温泉]]、[[花敷温泉]]、[[尻焼温泉]]へ旅行{{sfn|つげ|権藤|1993a|p=不明}}{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=不明}}<ref name="manriki">[http://manriki.sanpal.co.jp/tsuge/zenkoji.html 万力のある家（[[北冬書房]]）善光寺街道（1968年2月 ・1971年3月）]{{リンク切れ|date=2018-08-07}}</ref>。9月、[[九州]]方面へ蒸発旅行。自分の存在の実感が消滅し、蒸発したようにこの世にいながらいない状態を実感。
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| − | * [[1969年]]1月、『[[アサヒグラフ]]』の取材で[[大崎紀夫]]、[[北井一夫]]と[[湯宿温泉]]、[[法師温泉]]へ旅行。2月に[[藤原マキ]]と知り合う。5月、[[五能線]]の八森、[[鰺ヶ沢町|鰺ヶ沢]]、[[黒湯]]、[[孫六温泉]]などへ旅行。また[[水木しげる]]と長野県の明治湯へも旅行{{sfn|つげ|権藤|1993a|p=不明}}{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=不明}}。6月 [[千葉県]][[房総半島]]の[[太海]]、[[鴨川]]、大原へ。太海で謎の虫に足を刺され、[[医者]]を求めさ迷い歩く体験をする。『[[ねじ式]]』執筆の翌年であった。8月には、[[藤原マキ]]と[[夏油温泉]]から[[定義温泉]]、[[北温泉]]へ。定義温泉は[[精神科]]の紹介がないと宿泊できない施設で、門前のそば屋の計らいで「頭が重いのでわざわざ訪ねてきた」ことにして宿泊。押入れを開けて布団を取り出して寝ていると女将さんに激しく怒られ、このエピソードを後に『[[枯野の宿]]』にて使用する{{sfn|つげ|1977|p=32}}。この数日後、『アサヒグラフ』の取材で再度、[[夏油温泉]]、蒸けの湯、[[今神温泉]]へ。暮れには1年半ぶりに作品を描く。
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| − | * [[1970年]] [[下北半島]]を『アサヒグラフ』の取材で大崎紀夫、北井一夫と3人で旅行。[[大湊線]]の終点からバスで[[陸奥湾]]の出口付近にある[[脇野沢村]][[九艘泊]]の[[漁村]]へ。その貧しい暮らしぶりに[[無常感]]を感じ自分もそこで暮らしたい願望を持つ。[[廃墟]]やそれに類する貧しい暮らしのたたずまいから、＜意味化され社会化されていた自己＞からの解放と生の回復の希求を感じ取る。さらに山手にある[[水上勉]]原作の映画『[[飢餓海峡]]』のモデルとなった[[湯野川温泉]]へ赴くが、高熱を出し2日間身動きが取れなくなる。その後、牛滝、福浦、長後、佐井の小さな漁村、[[仏が浦]]へ。仏が浦では、無意味が目に見える固形になって現われており、その威厳に圧倒される。役割もなく意味も寄せつけない巨塊を眼前にし、相即的につげ自分も[[岩石]]のように意味のない「[[物]]」に化したような感覚を覚える。世界の[[聖地]]に無意味が具現化したような岩場が多いのは、どんな意味も寄せ付けない巨塊を眼前にした時、自分自身が意味のない物に化した感覚になることで、意味からの解放を感じることができ、あるがままに[[現象]]している心地を覚えることが理由で吸引されるのではないかと感得する<ref name="manrikishimkita1">[http://manriki.sanpal.co.jp/tsuge/shimkita1.html 万力のある家（[[北冬書房]]）下北半島ー１ 1970（昭和45）年 9月]{{リンク切れ|date=2018-08-07}}</ref>。
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| − | * [[1971年]] 暇をもてあまし、[[東北]]、[[瀬戸内海]]、[[奈良]]、[[長野県|長野]]、[[会津]]などを歴訪。[[瀬戸内]]の[[兵庫県]][[室津]]を皮切りに[[中山道]]、[[妻籠宿]]、[[奈良井宿]]、[[藪原宿]]を訪問し、さらに[[会田宿]]、[[青柳宿]]、1968年に訪問した[[麻績宿]]を再訪。当時結婚した[[藤原マキ]]を伴っての旅行であった<ref name="manrikiaida">[http://manriki.sanpal.co.jp/tsuge/aida.html 万力のある家（[[北冬書房]]）2－会田宿（長野県）]{{リンク切れ|date=2018-08-07}}</ref>。
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| − | * [[1972年]]9月 漫画家としての将来に不安を抱き家賃の心配のない持ち家を物色するために、母の郷里である外房の大原へ妻とともに赴き、国民宿舎大原荘に一泊。しかし不動産屋が見つからず小浜という漁村を歩き、幼少期に住んでいた家を妻に見せ父の墓へ参る。その後[[八幡岬]]に登り、[[水平線]]を一望、潮風に当たり帰港する漁船を見ているうちに目頭を熱くし、何とかこの地に住みたいと願う。翌日は[[鴨川]]から、[[内房]]の金谷、上総湊の2つの物件を見る<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[1972年]]11月 不動産物件探しのため、再び大原へ。いくつかの物件を見て回り、小浜のの漁村内の古家付き30坪130万円の物件が気に入り、買う気持ちに傾く。幼少期に住んだ家の裏のつげの遠縁が経営する「横山」という[[民宿]]に泊まる。そこで母が地元で評判が良くなかったことを聞かされる。5、6歳ころによく遊んだ「松ちゃん」というその家の息子が部屋に現れるが会話は弾まなかった<ref name="kusetsu" />。
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| − | * [[1975年]] 友人の立石慎太郎と立石の車で[[関東平野]]を旅する。[[調布]]から[[川越]]、[[桶川市|桶川]]へ至り[[深沢七郎]]の[[味噌]]を食べるため立ち寄るが、[[雨戸]]が閉まり呼び鈴を押すが反応がなかった。つげが立ち寄りたいと考えていた[[羽生]]や[[館林]]を通過し、足利で[[そば]]を食べ佐野へ。宿を探し[[葛生町|葛生]]から[[栃木]]へ。川に面した商人宿の「手束旅館」[http://www.kuranomachi.jp/spot/kuranomachi/tetsuka/]に泊まる。翌朝宿近くの[[骨董店]]で欠けた皿やガラス瓶を8000円購入し後悔する。小山、下館、笠間を通り[[土浦]]、[[江戸崎町|江戸崎]]、[[布佐]]のコースを希望するも[[渋滞]]のために運転手の立石に否定される。立石はつげの弟の[[つげ忠男]]の勤める金物屋へ行きたいというが、今度はつげが否定したため気まずいムードとなる。[[京葉道路]]を通り午後8時ころ帰宅。立石はつげに向かって「また、つげさんのふくれっ面を見に来ますよ」と捨て台詞を残し立ち去る<ref name="kusetsu" />。
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| − | :10月には雑誌『太陽』の取材で[[田中小実昌]]、[[渡辺克己]]、編集者有川の4名で[[城崎温泉]]、[[湯村温泉]]などを旅行。[[ヌード小屋]]、ぼったくりバーなどで豪遊。田中小実昌の破天荒な遊びっぷりに仰天する。編集者の有川に有名な写真家Sなら100万円くらいかかると聞かされる。[[余部鉄橋]]、[[日和山公園]]で[[海女]]の実演などを見物<ref name="kusetsu" /><ref name="sun" />。
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| − | * [[1981年]]4月 [[ノイローゼ]]が小康状態となり、湯ヶ野、下田、須崎漁村などを2泊3日で家族旅行<ref name="garo1993" />。
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| − | * [[1984年]]7月 [[湯ヶ野温泉|湯ヶ野]]、[[湯ヶ島]]に2泊旅行。心身不調のため旅への関心が薄れる。年に1、2回の家族旅行程度<ref name="garo1993" />。
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| − | * [[1985年]]5月 連休頃に持病の症状が軽快したため家族と[[1966年]]以来9年ぶりに[[奥多摩]]へ。自然の美に言葉もないほど感動する。特に[[御嶽駅]]前の渓谷美に心打たれる。日帰りの距離であるにもかかわらず長く来なかったことを後悔する。初日は五日市からバスで[[秋川谷]]沿いの本宿の[[国民宿舎]]に投宿。翌日[[網代鉱泉]]を訪問。風格のある[[茅葺屋根]]の豪壮な建物に惹かれ宿泊を願い出るも少人数は泊めないとモンペ姿の老婆に追い返され、奥多摩へ。御岳の割烹旅館「五州園」[http://d51498.com/hotel/428788375]に宿泊。6000円以上の旅館に泊まったことのないつげが、初めて8000円の旅館に宿泊<ref name="okutama">つげ義春『貧困旅行記』奥多摩貧困行</ref>。帰路には夫婦喧嘩をする。石拾いを試みるが一つも拾うことはできなかった。8月には[[下部温泉|下部]]、[[湯河原]]、[[箱根]]に3泊の旅行{{sfn|つげ|権藤|1993a|p=不明}}{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=不明}}。本年12月に『[[無能の人]]』を発表する。
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| − | * [[1986年]]2月 千葉県[[館山]]で[[浄土宗]]の[[尼僧]]・[[八幡清祐]]に出会い、80歳を過ぎ乞食生活を続ける師の生き方に心打たれる。6月には、家族で[[鎌倉]]の寺巡りをし、[[長谷寺]]の門前で一泊。[[鎌倉大仏]]、[[建長寺]]などを見学。8月には、[[秩父]]を訪問。不動湯、[[紫原鉱泉]]に宿泊{{sfn|つげ|権藤|1993a|p=不明}}{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=不明}}。
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| − | * [[1987年]]8月 家族3人で長野県の[[別所温泉]]、[[鹿教湯温泉]]を訪問。9月には友人と車で[[塩山鉱泉]]、恵林寺、放光寺を見物し[[石和温泉]]に宿泊{{sfn|つげ|権藤|1993a|p=不明}}{{sfn|つげ|権藤|1993b|p=不明}}。
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| − | * [[1990年]]4月 [[山梨県]]の[[田野温泉|田野鉱泉]]、[[嵯峨塩鉱泉]]へ家族旅行。このころより山に惹かれるようになる。
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| − | == その他 ==
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| − | === 発言 ===
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| − | *愛煙家だが、「ぼくの煙草は健康のためです。血管が膨張する病気なので、煙草で少し収縮させた方がいいのです」<ref name="geijutsushincho" />。
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| − | * 「マンガは芸術ではないと思っている。しかし、どんな芸術も最終的には意味を排除することが目的だと思う。だから意味のない夢を素材にした一連の夢ものを描いたり、夢日記を付けたりした」<ref name="geijutsushincho" />。
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| − | *選挙では「毎回入れるとこ（=投票政党）変わる」と言いつつ、『つげ義春日記』の1976年の項では自分は貧乏なので[[日本共産党]]に入れたと述べており、[[第23回参議院議員通常選挙|2013年の参院選]]でも「はい、やっぱり共産党に入れましたよ」「保守系に対抗できるのは他にないですから。でも政治思想にはまったく関心ないですね」と語っている<ref name="geijutsushincho" />。
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| − | *統合失調症を患っている息子がもし健常であれば、とっくに結婚をし家を出、私は一人になってしまう。そうなると、一人では生きていけない。息子は、いま親孝行をしていると思っている。息子が理解できなくなり衝突した時には、買い物で家を出た後帰りたくなくなる。その時には一人で喫茶店へ行くが、ものすごく[[孤独]]になる。意識的に[[隠遁]]する孤独とは異なり、日常では一人では生きられない<ref name="toukyoujin" />。
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| − | === 原画 ===
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| − | 「ガロ」以降の作品は、すべてつげ義春自身で保管しているが、『[[必殺するめ固め]]』（[[1979年]]）だけは[[川崎市民ミュージアム]]が購入した。この作品は完成作ではなかったため、下書きや書き損じを雑誌などにはさんで[[古紙回収]]に出したものを抜いた者がいて、売りに出されたものを川崎市民ミュージアムが買ったらしい<ref name="YUME">『つげ義春 夢と旅の世界』（新潮社 2014年9月20日）</ref>。
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| − | == 精神科医、心理学者の見方 ==
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| − | === 福島章 ===
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| − | [[精神科医]]で専門は犯罪精神医学の[[福島章]]は、つげ作品の時期を5期に分類した{{sfn|ユリイカ|1982|pp=126-129}}。
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| − | '''第1期'''
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| − | :'''習作期''' - 模倣時代。[[白土三平]]、[[手塚治虫]]などに影響された描法で、彼らを真似ることでつげは漫画家に「なった」。
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| − | | |
| − | '''第2期'''
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| − | :'''初期''' - 貸本漫画時代。先人の影響を残しながらも、ストーリー展開や構成にいくらかユニークなものが現れる。しかし、このころまでの作品だけであったなら、読み捨てられ凡百の作家で終わっていた。
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| − | | |
| − | '''第3期'''
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| − | :'''中期''' - 貸本漫画時代。『沼』に始まる、つげ独自の世界を構築する時代。この時期の作品が全共闘世代とつげを結び付けた。
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| − | | |
| − | '''第4期'''
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| − | :'''絶頂期''' - 『ねじ式』、『ゲンセンカン主人』を頂点とする、きわめて短い、しかし衝撃的な作品を発表した時期。
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| − | | |
| − | '''第5期'''
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| − | :'''弛緩期''' - 自己模倣期。自作の傑作の森の贋金作りをしていた。[[ムンク]]が『叫び』その他の傑作を、さまざまな形で模倣したがごとく。屈折した[[アイロニー]]という魅力があるとはいえ、緊張した迫力は喪失している。自己模倣とは『ゲンセンカン主人』に対する『やなぎ屋主人』、『山椒魚』に対する『蟹』など。
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| − | | |
| − | '''第6期'''
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| − | :'''虚脱期''' - 「旅日記」ものや「夢日記」ものなどを主に『夜が掴む』、『退屈な部屋』、『必殺するめ固め』以降の作品で、構成力の低下が著しい。
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| − | === 河合隼雄 ===
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| − | [[分析心理学|ユング派]]の[[河合隼雄]]は、つげの性格を「内向 - 感覚型」ととらえ、つげが同時代に与えた衝撃を、現代社会の持つ外向的思考、外向的感覚に対する[[アンチテーゼ]]の提起によると考えた。『沼』を分析することによって、内向 - 感覚型人間の持つ「溶解体験」、「自我同一性の崩壊の危険」を指摘。作中の主人公の青年の沼への発砲を、距離を取り戻すための「儀式」と解釈した{{sfn|ユリイカ|1982|p=128}}<ref>「現代青年の感性 マンガを中心に」『[[中空構造日本の深層]]』、[[河合隼雄]]、中公文庫（pp.169-）</ref>。
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| − | | |
| − | === 横山博 ===
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| − | ユング派の[[横山博]]は「『[[ゲンセンカン主人]]』と『[[もっきり屋の少女]]』-つげ義春の引き裂かれた女性イメージ」と題する論文で『ゲンセンカン主人』を例に挙げ、 つげの[[赤面恐怖症]]を[[統合失調症]]の前駆症状ないしは近縁領域と捉え、つげが少年期に[[エリク・H・エリクソン]]のいう「基本的信頼」の欠如や[[マイケル・バリント]]の「基底欠損」にさらされざるを得なかったことでユング的にいう「母親原型」に守られた形での幼児・子供原型を生き切れなかったとみている。これはつげの母が生活に追われ、つげに対し母性を与えるだけの余裕がなく、つげの著作からは兄への愛情は語られるが、母への愛情は語られていないことなどから推測して、満たされなかった母性への強い渇望があり、それが現代人が持つ不安とともに『[[ねじ式]]』に描かれることとなったとし、つげは「所定めぬ[[異邦人]]（[[エトランゼ]]）」なのだという。多くの人が持つ安心感を持つことができる逗留場所である場所や[[母性]]がつげには得られなかったことが、彼が近代化に取り残され[[既視感]]を伴うような辺鄙な温泉場へ赴くことで地域の[[共同体]]からこれまでに渇望しても得られなかった「母なるもの」を体験する。また、『ゲンセンカン主人』のラストシーンの2人のそっくりな男の遭遇は[[精神病理学]]的には｢[[ドッペルゲンガー]]」に酷似しているという見方を示した。自分自身の分身と出会うとき、周囲は[[嵐]]になる。内面の不安、恐怖の外部空間への投影がラストシーンだという<ref name="konan">横山博「[https://konan-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=2590&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1 『ゲンセンカン主人』と『もっきり屋の少女』-つげ義春の引き裂かれた女性イメージ]」 『心の危機と臨床の知』第7巻、甲南大学、2006年1月、pp.69-85。</ref>。
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| − | == 主な作品 ==
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| − | === 漫画 ===
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| − | 発表順<ref name="garo1993" />
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| − | [[1954年]]（昭和29年）
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| − | * [[犯人は誰だ!!]]（1954年10月、「[[痛快ブック]]」（[[芳文社]]））
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| − | * [[きそうてんがい]]（1954年10月）
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| − | [[1955年]]（昭和30年）
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| − | * [[青空浪人]]（1955年4月、「[[痛快ブック]]」（[[芳文社]]））
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| − | * [[白面夜叉]]（1955年5月、[[単行本]]（[[若木書房]]））
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| − | * [[とんちんかんちゃん]]（1955年5月、「痛快ブック」（芳文社）））
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| − | * [[涙の仇討]]（1955年6月、単行本（若木書房））
| |
| − | * [[しまった (漫画)|しまった]]（1955年7月、「痛快ブック」（芳文社）））
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| − | * [[たすけてー (漫画)|たすけてー]]（1955年8月、「痛快ブック」（芳文社）））
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| − | * [[愛の調べ]]（1955年9月、単行本（若木書房）
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| − | * [[のら犬物語]]（1955年9月、「痛快ブック」（芳文社））
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| − | * [[片腕三平]]（1955年10月、単行本（[[若木書房]]））
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| − | * [[戦雲のかなた]]（1955年11月、単行本（[[ひばり書房]]））
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| − | * [[へんな野球]]（1955年11月、「痛快ブック」（芳文社））
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| − | * [[のっぽ専用]]（1955年12月、「痛快ブック」（芳文社））
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| − | [[1956年]]（昭和31年）
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| − | * [[ジャングルにさるまわしがあったなら]]（1956年1月）
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| − | * [[能祭の乙女]]（1956年2月）
| |
| − | * [[暁の銃声]]（1956年7月）
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| − | * [[生きていた幽霊]]（1956年11月）
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| − | [[1957年]]（昭和32年）
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| − | * [[港のリリーちゃん]]（1957年2月）
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| − | * [[地獄への招待]]（1957年2月）
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| − | * [[走れ！ぼろバス]]（1957年3月）
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| − | * [[仮面の少女]]（1957年4月）
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| − | * [[吹雪の中の顔]]（1957年6月）
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| − | * [[四つの犯罪]]（1957年6月）
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| − | * [[犯人はだれ？]]（1957年7月）
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| − | * [[暁の非常線]]（1957年7月）※1960年9月「影の男」に改題
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| − | * [[七つの墓場]]（1957年8月）※1960年12月「犯人を挙げろ」に改題
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| − | * [[どろぼうと少年]]（1957年9月）
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| − | * [[ゆうれい船長]]（1957年10月）
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| − | * [[狂人屋敷の謎]]（1957年10月）※1960年10月「謎」に改題
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| − | [[1958年]]（昭和33年）
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| − | [[ファイル:Senju Thermal Power Station.JPG|thumb|160px|right| [[おばけ煙突 (漫画)|おばけ煙突]]（1958年11月）のモデルとなった[[千住火力発電所]]。]]
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| − | * [[西洋館のひみつ]]（1958年1月）
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| − | * [[恐怖の終列車]]（1958年2月）
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| − | * [[恐怖の灯台]]（1958年3月）
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| − | * [[船虫小僧の冒険]]（1958年4月〜9月）
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| − | * [[幕末風雲伝]]（1958年6月）
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| − | * [[のろわれた仮面]]（1958年8月）
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| − | * [[のろわれた刀]]（1958年8月）
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| − | * [[三人の逃亡者]]（1958年8月）
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| − | * [[おばけ煙突 (漫画)|おばけ煙突]]（1958年11月）
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| − | * [[ある一夜 (漫画)|ある一夜]]（1958年12月）
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| − | [[1959年]]（昭和34年）
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| − | * [[不思議な手紙]]（1959年2月）
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| − | * [[うぐいすの鳴く夜]]（1959年5月）
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| − | * [[クロ (漫画)|クロ]]（1959年7月）
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| − | * [[手錠 (漫画)|手錠]]（1959年8月）※59年8月版は実弟・つげ忠男との共作・1966年3月に改稿
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| − | * [[鉄路 (漫画)|鉄路]]（1959年9月）
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| − | * [[どくろの秘密]]（1959年10月）
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| − | * [[賭け (漫画)|賭け]]（1959年11月）
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| − | * [[砂漠 (漫画)|裁く]]（1959年11月）
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| − | * [[親分 (漫画)|親分]]（1959年12月）
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| − | * [[墓をほる影]]（1959年12月、『[[痛快ブック]]』（[[芳文社]]）） - [[1999年]]、[[北冬書房]][[高野慎三]]によって新発見された作品。若木書房の『迷路』に毎月短編を発表していた当時の1年ぶりの雑誌向け長編だが、つげ自身も全く記憶がなかった<ref name="gento200001" />。
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| − | [[1960年]]（昭和35年）
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| − | * [[殺し屋 (漫画)|殺し屋]]（1960年1月）
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| − | * [[古本と少女]]（1960年2月）※1966年9月に改稿
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| − | * [[腹話術師 (漫画)|腹話術師]]（1960年2月）
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| − | * [[武蔵秘話3 妖刀村正]]（1960年3月）※のち作品リストから抹消。つげ義春によると「[[五味康祐]]の完全な盗作」であり、その後どの単行本にも再録していない{{sfn|つげ|権藤|1993a|pp=221-222,275}}。
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| − | * [[老人の背中]]（1960年4月）
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| − | * [[灼熱の太陽の下に]]（1960年4月）※1966年12月に改稿・同時にタイトルを「蟻地獄」に改題
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| − | * [[ホワイヴ・ダイス]]（1960年4月）
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| − | * [[四人の素人]]（1960年5月）
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| − | * [[非情 (漫画)|非情]]（1960年6月）
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| − | * [[忍者狩り]]（1960年8月）
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| − | * [[怒れる小さな町]]（1960年9月）
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| − | * [[穴 (漫画)|穴]]（1960年10月）
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| − | * [[鬼面石]]（1960年11月）
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| − | * [[一発 (漫画)|一発]]（1960年12月）
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| − | [[1961年]]（昭和36年）
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| − | * [[女忍 (漫画)|女忍]]（1961年2月）※1966年12月に改稿
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| − | * [[月姫さま]]（1961年4月）
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| − | * [[戦国悲話]]（1961年5月）
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| − | * [[なぜ殺らなかった]]（1961年6月）
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| − | * [[忍者くん (漫画)|忍者くん]]（1961年7月）
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| − | [[1963年]]（昭和38年）
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| − | * [[野盗の砦]]（1963年4月）
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| − | * [[狂った忍者]]（1963年9月）
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| − | * [[忍びの城]]（1963年12月）
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| − | [[1964年]]（昭和39年）
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| − | * [[流浪人別帳]]（1964年2月）
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| − | * [[見知らぬ人々]]（1964年3月）
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| − | * [[上忍下忍]]（1964年7月）
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| − | * [[忍者絶命]]（1964年12月）※1965年9月「奴隷侍」に改題
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| − | [[1965年]]（昭和40年）
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| − | * [[一刀両断]]（1965年2月）
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| − | * [[ねずみ (漫画)|ねずみ]]（1965年3月）
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| − | * [[目には目を (漫画)|目には目を]]（1965年4月）
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| − | * [[右舷の窓]]（1965年6月）
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| − | * [[行ったり来たり]]（1965年8月）
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| − | * [[噂の武士]]（1965年8月）
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| − | * [[西瓜酒]]（1965年10月）
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| − | * [[死にたい気持ち]]（1965年11月）
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| − | * [[運命 (漫画)|運命]]（1965年12月）
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| − | * [[下町の唄]]（1965年12月）
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| − | [[ファイル:寿恵比楼旅館横を流れる夷隅川.JPG|thumb|160px|right|[[沼 (漫画)|沼]]（1966年2月）のイメージのもとになった[[夷隅川]]の淀み。向かって左手に[[白土三平]]と滞在した[[寿恵比楼旅館]]が建つ。『沼』に登場する少女のモデルとなったのがこの旅館の当時17～18歳の娘であった。]]
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| − | [[1966年]]（昭和41年）
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| − | * [[不思議な絵]]（1966年1月）※1966年12月に改稿
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| − | * [[兄貴は芸術家]]（1966年2月）
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| − | * [[沼 (漫画)|沼]]（1966年2月）
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| − | * [[チーコ]]（1966年3月）
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| − | * [[初茸がり]]（1966年4月）
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| − | [[1967年]]（昭和42年）
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| − | [[ファイル:大原海水浴場千葉ねじ式 124.jpg|thumb|220px|right|[[海辺の叙景]]（1967年9月）に描かれた房総半島の大原海水浴場。つげは家族で何度もここを訪れている。]]
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| − | * [[通夜 (漫画)|通夜]]（1967年3月）
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| − | * [[山椒魚 (漫画)|山椒魚]]（1967年5月）
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| − | * [[李さん一家]]（1967年6月）
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| − | * [[峠の犬]]（1967年8月）
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| − | * [[海辺の叙景]]（1967年9月）
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| − | * [[紅い花]]（1967年10月）
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| − | * [[西部田村事件]]（1967年12月）
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| − | [[ファイル:ねじ式 013.jpg|thumb|160px|right|「ねじ式」で[[蒸気機関車]]が到着する場面に描かれた[[千葉県]][[太海漁港]]近くの民家]]
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| − | [[ファイル:ねじ式 太海034.jpg|220px|thumb|right|「[[ねじ式]]」の舞台となった[[太海漁港]]（[[仁右衛門島]]より）]]
| |
| − | [[1968年]]（昭和43年）
| |
| − | * [[長八の宿]]（1968年1月）
| |
| − | * [[二岐渓谷]]（1968年2月）
| |
| − | * [[オンドル小屋]]（1968年4月）
| |
| − | * [[ほんやら洞のべんさん]]（1968年6月）
| |
| − | * [[ねじ式]]（1968年6月）
| |
| − | * [[ゲンセンカン主人]]（1968年7月）
| |
| − | * [[もっきり屋の少女]]（1968年8月）
| |
| − | [[1970年]]（昭和45年）
| |
| − | * [[蟹 (漫画)|蟹]]（1970年1月）
| |
| − | * [[やなぎ屋主人]]（1970年2月-3月）
| |
| − | [[1972年]]（昭和47年）
| |
| − | * [[夢の散歩]]（1972年4月）
| |
| − | * [[夏の思いで]]（1972年9月）
| |
| − | [[1973年]]（昭和48年）
| |
| − | [[ファイル:鰺ヶ沢の町Img388.jpg|thumbnail|220px|『リアリズムの宿』の舞台となった[[鰺ヶ沢町|鰺ヶ沢]]の町 [[1980年]]撮影]]
| |
| − | [[ファイル:Img394.jpg|thumbnail|220px|「鰺ヶ沢は漁港の町で[[床屋]]がやたら多い・・・」（『リアリズムの宿』より）[[1980年]]撮影]]
| |
| − | * [[下宿の頃]]（1973年1月）
| |
| − | * [[大場電気鍍金工業所]]（1973年4月）
| |
| − | * [[懐かしいひと]]（1973年8月）
| |
| − | * [[リアリズムの宿]]（1973年11月）
| |
| − | [[1974年]]（昭和49年）
| |
| − | * [[事件 (漫画)|事件]]（1974年4月）
| |
| − | * [[枯野の宿]]（1974年7月）
| |
| − | * [[義男の青春]]（1974年11月）
| |
| − | [[1975年]]（昭和50年）
| |
| − | * [[庶民御宿]]（1975年4月）
| |
| − | * [[退屈な部屋]]（1975年10月）
| |
| − | [[1976年]]（昭和51年）
| |
| − | * [[夜が掴む]]（1976年9月）
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| − | [[1977年]]（昭和52年）
| |
| − | * [[アルバイト (漫画)|アルバイト]]（1977年1月）
| |
| − | [[1978年]]（昭和53年）
| |
| − | * [[コマツ岬の生活]]（1978年6月）
| |
| − | [[1979年]]（昭和54年）
| |
| − | * [[外のふくらみ]]（1979年5月）
| |
| − | * [[必殺するめ固め]]（1979年7月）
| |
| − | * [[ヨシボーの犯罪]]（1979年9月）
| |
| − | * [[魚石]]（1979年10月）
| |
| − | [[1980年]]（昭和55年）
| |
| − | * [[日の戯れ]]（1980年1月）
| |
| − | * [[窓の手 (漫画)|窓の手]]（1980年3月）
| |
| − | * [[会津の釣り宿]]（1980年5月）
| |
| − | [[1981年]]（昭和56年）
| |
| − | * [[少年 (漫画)|少年]]（1981年7月）
| |
| − | * [[近所の景色]]（1981年10月）
| |
| − | * [[雨の中の慾情]]（1981年12月）
| |
| − | [[1984年]]（昭和59年）
| |
| − | * [[散歩の日々]]（1984年6月）
| |
| − | * [[ある無名作家]]（1984年9月）
| |
| − | * [[池袋百点会]]（1984年12月）
| |
| − | [[1985年]]（昭和60年）
| |
| − | * [[隣りの女]]（1985年3月）
| |
| − | * [[石を売る]]（1985年6月）
| |
| − | * [[無能の人]]（1985年9月）
| |
| − | * [[鳥師 (漫画)|鳥師]]（1985年12月）
| |
| − | [[1986年]]（昭和61年）
| |
| − | * [[探石行]]（1986年3月）
| |
| − | * [[カメラを売る]]（1986年6月）
| |
| − | * [[やもり (漫画)|やもり]]（1986年9月）
| |
| − | * [[蒸発 (漫画)|蒸発]]（1986年12月）
| |
| − | [[1987年]]（昭和62年）
| |
| − | * [[海へ]]（1987年3月）
| |
| − | * [[別離]]（1987年6、9月）
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| − | | |
| − | === 随筆 ===
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| − | [[ファイル:Hotspring Nishiyama Fukushima 01.jpg|thumb|150px|right|「つげ義春の温泉」の表紙を飾った[[西山温泉 (福島県)]] ]]
| |
| − | * 「[[つげ義春流れ雲旅]]」（[[朝日ソノラマ]]）[[1971年]]（共著 絵:つげ義春、文章:[[大崎紀夫]]、写真:[[北井一夫]]）
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| − | * 「[[つげ義春とぼく]]」（晶文社）[[1977年]]
| |
| − | * 「[[猫町紀行]]」（マメ本、[[三輪舎]]）[[1982年]]
| |
| − | * 「[[つげ義春旅日記]]」（旺文社）[[1983年]]
| |
| − | * 「[[つげ義春日記]]」（講談社）[[1983年]][[12月15日]]
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| − | * 「[[貧困旅行記]]」（[[晶文社]]）[[1991年]]
| |
| − | * 「[[つげ義春の温泉]]」（カタログハウス） 2003年 のちちくま文庫
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| − | | |
| − | === 映像化作品 ===
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| − | * [[紅い花]]（[[日本放送協会|NHK]]・1976） 演出：[[佐々木昭一郎]]
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| − | * [[無能の人]](映画・1991) 監督：[[竹中直人]]
| |
| − | * [[ゲンセンカン主人]]（映画・1993） 監督：[[石井輝男]]
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| − | *つげ義春ワールド（[[テレビ東京]]・1998）全12話
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| − | ** [[退屈な部屋]] （[[退屈な部屋 (ドラマ)]]）監督：[[豊川悦司]] 1999年第36回ギャラクシー選奨受賞 1998年7月TVギャラクシー賞受賞
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| − | ** [[懐かしい人]] 監督：[[豊川悦司]]
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| − | ** [[散歩の日々]] 監督：[[長尾直樹]]
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| − | ** [[無能の人]] (前後編) 監督：[[望月六郎]]
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| − | ** [[ある無名作家]] 監督：[[伊藤秀裕]]
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| − | ** [[別離]] (前後編) 監督：[[望月六郎]]
| |
| − | ** [[やもり]] 監督：[[伊藤秀裕]]
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| − | ** [[義男の青春]] (前後編) 監督：[[安藤尋]]
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| − | ** [[紅い花]] 監督：[[渡辺武 (映画監督)|渡辺武]]
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| − | * [[ねじ式]]（映画・1998） 監督：[[石井輝男]]
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| − | *蒸発旅日記（映画・2003） 監督：[[山田勇男]]
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| − | * [[リアリズムの宿]]（映画・2004） 監督：[[山下敦弘]]
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| − | | |
| − | === ゲーム ===
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| − | *名作浪漫文庫 ねじ式（[[PC-9800シリーズ]]、[[X68000]]用。制作：[[ツァイト]]、[[ウィル (埼玉県)|ウィル]]）
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| − | | |
| − | 詳細は[[ねじ式 (ゲーム)]]参照のこと。
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| − | | |
| − | === 装画 ===
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| − | *柴田道子編『日本のお母さんたち』（ぺりかん社、[[1972年]]）
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| − | * 『太陽』[[1976年]]1月号「特集 日本温泉旅行」（[[平凡社]]、[[1975年]]）
| |
| − | * [[大崎紀夫]]『全国雑魚釣り温泉の旅』（[[潮出版]]、[[1979年]]）
| |
| − | * [[荒川洋治]]『ボクのマンスリー・ショック』（[[新潮文庫]]、[[1985年]]）
| |
| − | *種村季弘・池内紀編『温泉百話 東の旅／西の旅』 （[[ちくま文庫]]、[[1988年]]）
| |
| − | * [[高野慎三]]『旧街道』（[[北冬書房]]、[[1990年]]）
| |
| − | * [[梶井純]]『骨董紀行』（北冬書房、[[1992年]]）
| |
| − | * 『藤澤清造貧困小説集』（龜鳴屋、[[2001年]]）
| |
| − | * [[川本三郎]]『時には漫画の話を』（小学館、[[2012年]]）
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| − | *佐々木通武『短編集 影絵の町―大船少年記』（北冬書房、2017年）
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| − | | |
| − | == 関連文献 ==
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| − | [[ファイル:Koshu kaido nodajiri-juku P1010008.jpg|thumb|220px|right|[[高野慎三]]は著書の中で『[[猫町紀行]]』の宿場町が、[[野田尻宿]]であったことを看破する。]]
| |
| − | * [[つげ義春幻想紀行]]（[[権藤晋]] 著 [[1998年]] 立風書房、増補文庫化されて『つげ義春を旅する』ちくま文庫）
| |
| − | * [[つげ義春漫画術]]（上・下）（つげ義春、[[権藤晋]]著 [[1993年]]10月 [[ワイズ出版]]）
| |
| − | :（上巻）ISBN {{ISBN|4948735183}}、ISBN {{ISBN|978-4948735187}}、（下巻）ISBN {{ISBN|4-948-73519-1}}、ISBN {{ISBN|978-4-948-73519-4}}
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| − | * [[つげ義春1968]]（[[高野慎三]]著 [[2002年]] 筑摩書房）
| |
| − | *つげ義春を旅する（[[高野慎三]]著、2001年4月10日 [[ちくま文庫]]）
| |
| − | *つげ義春を読む （[[清水正]]著 [[1995年]] 現代書館）
| |
| − | *つげ義春を解く （[[清水正]]著 [[1997年]] 現代書館）
| |
| − | *つげ義春を読め （[[清水正]]著 [[2003年]] 鳥影社）
| |
| − | *つげ義春: 夢と旅の世界 （つげ義春 戌井昭人 東村アキコ 山下裕二著 2014年9月 新潮社）
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| − | | |
| − | === 雑誌特集 ===
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| − | * 「[[アックス (雑誌)|アックス]]」第119号 特集・つげ義春 生誕80周年記念 祝・トリビュート!（青林工藝舎 2017年10月）ISBN 978-4883794409
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| − | | |
| − | == 関連人物 ==
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| − | * [[権藤晋]]（高野慎三） - [[北冬書房]]を主催。『[[ねじ式]]』をはじめとする代表作を世に出すために尽力した立役者。「メメクラゲ」で[[誤植]]の歴史に名を残す<ref>つげ義春1968（高野慎三著 2002年 [[筑摩書房]]）{{要ページ番号|date=2018-08-06}}</ref>。
| |
| − | * [[夜久弘]] - [[日本文芸社]]で長年、編集者を務める。『カスタムコミック』の副編集長時代に、つげに作品を依頼し、それが縁で[[1984年]]、つげの作品をメインとする漫画雑誌『[[COMICばく]]』を創刊、[[1987年]]まで編集長を務めた。
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| − | * [[水木しげる]]
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| − | * [[岡田晟]]
| |
| − | * [[竹中直人]]
| |
| − | * [[石井輝男]]
| |
| − | * [[北井一夫]] - [[1970年代]]初頭に、つげともに、[[下北半島]]（[[青森県]]）や[[国東半島]]（[[大分県]]）などの[[田舎|僻地]]への撮影旅行を繰り返し、[[アサヒグラフ]]に発表。その後、単行本『[[つげ義春流れ雲旅]]』（[[朝日ソノラマ]] [[1971年]]、共著 絵:つげ義春、文章:[[大崎紀夫]]、写真:北井一夫）として刊行。すでに失われていた日本の[[原風景]]や[[昭和]]の[[日本人]]を記録するなど当時写真が[[都市]]を志向する中、「[[村]]」にこだわる強い姿勢を示した<ref name="sankei">[http://www.sankei.com/life/news/160604/lif1606040027-n1.html 産経ニュース『流れ雲旅』北井一夫 つげ義春と失われた風景 2016.6.4 09:44]</ref>。[[2016年]] には [[1970年代]]につげとともに訪れた僻地の村を収めた写真集『流れ雲旅』（[[ワイズ出版]]）を刊行<ref name="sankei" />。
| |
| − | * [[佐野史郎]]
| |
| − | * [[岡田奈々]]
| |
| − | * [[杉作J太郎]]
| |
| − | * [[畑中純]]
| |
| − | * [[石子順造]]
| |
| − | * [[山下裕二]] - 2014年1月号『[[芸術新潮]]』誌上にてつげとの4時間ロングインタビューのインタビュアーをつとめる。
| |
| − | * [[井上井月]] - 『[[無能の人]]』の最終話である第6話「蒸発」に登場<ref name="inoue" />。同作の主人公がその生き方に共鳴していた<ref name="inoue">{{Cite book |和書 |author=つげ義春 |date=1998-03-01 |title=無能の人・日の戯れ |publisher=新潮社 |series=新潮文庫 |page=353-390 |isbn=9784101328133}}</ref>。
| |
| − | * [[日野日出志]] - 1966年の「チーコ」に大きな衝撃を受け、「つげ義春のようなマンガを描きたい」という思いでマンガを描きつづけたという<ref>清水正監修『日本のマンガ家 つげ義春』（日本大学芸術学部図書館、2013年）p.34</ref>。
| |
| − | * [[はるき悦巳]] - 「つげ義春がめっちゃ好きやね。今はそう読めなくなったけど、もう、漫画描くのいやになるくらい好きやからね」<ref>『ぱふ』1980年5月号。</ref>、「同じ雑誌に載るというだけで、何もつげ義春と机を並べて仕事する訳でもないのだが、「あのつげ義春と共演できる！！」と思うとボーっとなって自分を見失ってしまうのだ」<ref>単行本『日の出食堂の青春』（双葉社）あとがき。</ref>と発言している。
| |
| − | * [[蛭子能収]] - 「それまでの旅物とか温泉物は、それ程好きっていう訳ではなくて、『ねじ式』を読んで一変しましたねえ」<ref>蛭子能収インタビュー『蛭子能収コレクション ギャンブル編』マガジン・ファイブ。</ref>、「映画の世界では、芸術映画ってたくさんありましたけど、漫画の世界では、そんなことありえないって思ってたんですよ。漫画は、普通のストーリーで進んでいくものだって。でも、つげ義春さんの『ねじ式』っていうのを読んで、ビックリしたんですよ。漫画でもこんな芸術っぽいものが出来るんだ、受け入れられるんだって。強い影響を受けましたね」<ref>DISCAS INTERVIEW『TSUTAYA DISCAS』{{Full citation needed|date=2018-08-07}}</ref>と発言している。
| |
| − | * [[雁屋哲]] - 「つげ義春を一言で表現したいと思ったら「天才」という言葉以外は思い浮かばない」、「つげ義春の作品を、日本人全員は読め、と私は言いたい」と絶賛している<ref>[http://kariyatetsu.com/blog/1678.php つげ義春と私 | 雁屋哲の今日もまた]</ref>。
| |
| − | * [[佐藤秀峰]] - 高校生の時に初めてつげ義春の作品を読み、最初は意味がわからなかったが、やがて絵の魅力に取り憑かれ、「僕は原稿中のベタの面積が比較的大きい（画面が黒っぽい）漫画家なのですが、これは間違いなくつげさんの影響です。それまで、漫画は線画が基本であると思っていた僕にとって、線じゃなく白と黒という色で表現する漫画があることに驚き、強烈にカッコイイと思いました。絵を眺めるだけでも飽きず、繰り返し読みました。もちろん（？）模写もしまくりましたよ」<ref>[https://note.mu/shuho_sato/n/n24639ca13713 僕の好きな漫画3「つげ義春」｜佐藤秀峰｜note]</ref>と発言している。
| |
| − | * [[弘兼憲史]] - 影響を受けた漫画家の名に手塚治虫、上村一夫、つげ義春、永島慎二を挙げ、「最初は手塚さんで、それから永島さんの『漫画家残酷物語』で、大学時代はつげさんの『ねじ式』、あと上村さんの『怨獄紅』や『密猟記』『同棲時代』あたりをずっと読んでいました」<ref>[http://evening.moae.jp/news/1680 『学生 島耕作』①巻11.21発売記念！ “弘兼憲史×糸井重里”スペシャル対談が本日発売のイブニングに掲載！]</ref>と発言している。
| |
| − | * [[川上弘美]] - 好きな漫画家の名を挙げて「白土三平，手塚治虫に始まり，萩尾望都，大島弓子，山岸凉子，つげ義春につげ忠男，いがらしみきおに諸星大二郎，しりあがり寿」<ref>「[http://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2014_09/p24-28.pdf INTERVIEW：インタビュー 作家 川上弘美さん]」 『LIBRA』2014年9月号、東京弁護士会、pp.24-28。</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.toben.or.jp/message/libra/libra-2014-9.html |title=LIBRA 2014年 9月号｜東京弁護士会 |publisher=東京弁護士会 |accessdate=2018-08-07}}</ref>と発言している。
| |
| − | * [[小西康陽]] - 「小学校高学年の時に，なんか家庭教師の人が，早稲田の学生さんの人が来てて，その人がいろんないっぱい新しいマンガとか教えてくれて，「ガロ」とか読んでた．つげ義春とか佐々木マキとか好きになって」<ref>[http://www.fujitv.co.jp/FACTORY/CS0041/talk.html FACTORY721 #0041 小西康陽 ロングトーク - フジテレビ]</ref>と発言している。
| |
| − | * [[松本隆]] - [[1970年]]の[[はっぴいえんど]]時代のことを回想し、「ちょうど、つげ義春とか永島慎二とかはやってるころで、しきりに漫画っていうのがすごい先端を行ってるような気がしてたのね。音楽がすごく遅れてるんだってイメージがあって。いまだにコピーばっかりしてるじゃないか、と。英語でやってる限り、人のマネするしかないじゃないか、みたいなことからね」、「だから、ぼくが考えていたのは、とりあえず漫画という表現手段を通じてやってるぐらいのことを、ロックを使ってできないかなってこと。それがひとつの基本テーマだった」と発言している<ref>[[萩原健太]]『はっぴいえんど伝説』{{Full citation needed|date=2018-08-07}}</ref>。
| |
| − | * [[植芝理一]] - 『ねじ式』に影響を受けた独自の作風を持つ。
| |
| − | * [[花輪和一]] - 『ねじ式』を読み衝撃を受け漫画家を志す。
| |
| − | * [[いしいひさいち]] - [[朝日新聞]]連載の『[[ののちゃん]]』[[2003年]][[7月26日]]付で「[[海辺の叙景]]」の一コマを引用している。別のコマに「ねじ式」の主人公に似た人物も描かれている。
| |
| − | * [[江口寿史]] - 好きな漫画家の筆頭につげ義春を挙げ<ref>{{Twitter status|Eguchinn|415921666590404608|accessdate=2018-08-07}}</ref>、「ねじ式」のパロディ作品「わたせの国のねじ式」を発表している。
| |
| − | * [[よしながふみ]] - 「わたしは、つげ義春さんのマンガが好きで」と表明<ref name="itoi">[http://www.1101.com/yoshinaga_fumi/2013-01-23.html 04「元気でるよ」 - ほぼ日刊イトイ新聞]</ref>。「つげさんのマンガの中で、売ろうとしていた石が全然売れなくて、奥さんがばーんてその石を投げて、もう、こんなのやだーっ、あんたにはマンガしかないのよって言って、後ろに喘息の子どもがうぇーって泣いてて、最後にお寺の鐘がゴーン。あれ、元気出るんです、すっごい。もう何度読んでも、このゴーンてとこで元気が出ます」と発言している<ref name="itoi" />。
| |
| − | * [[久住昌之]] - 高校時代『つげ義春作品集』をきっかけにつげファンとなり、特に『つげ義春とぼく』を「奇跡の一冊」と絶賛している<ref>[http://www.ebookjapan.jp/ebj/special/huruhonyatai/pc/150515.asp 第2回 『つげ義春とぼく』 - eBookJapan]</ref>。
| |
| − | * [[逆柱いみり]] - 『ねじ式』を読み漫画家を志す。
| |
| − | * [[鴨川つばめ]] - 『[[マカロニほうれん荘]]』の中で「ねじ式」「李さん一家」をパロディ化している。
| |
| − | * [[鳥山明]] - 『[[Dr.スランプ]]』に「ねじ式」の機関士に由来する「ねじしきクン」を登場させた。
| |
| − | * [[秋本治]] - 『[[こちら葛飾区亀有公園前派出所]]』に「ねじ式」の少年を登場させた。
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| − | * [[吾妻ひでお]] - 『[[やけくそ天使]]』『[[ななこSOS]]』など、さまざまな作品でつげ作品の場面・セリフのパロディが登場する。
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| − | | |
| − | == 関連項目 ==
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| − | {{Div col|cols=2}}
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| − | * [[青林堂]]
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| − | * [[青林工藝舎]]
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| − | * [[北冬書房]]
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| − | * [[夜行 (雑誌)|夜行]]
| |
| − | * [[シュルレアリスム]]
| |
| − | * [[アンダーグラウンド (文化)]]
| |
| − | * [[全共闘世代]]
| |
| − | * [[仁右衛門島]]
| |
| − | * [[八幡岬]]
| |
| − | * [[大原漁港]]
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| − | * [[太海漁港]]
| |
| − | * [[伊豆大島]]
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| − | * [[大多喜町]]
| |
| − | * [[大島町]]
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| − | * [[大島節]]
| |
| − | * [[養老渓谷]]
| |
| − | * [[養老渓谷温泉]]
| |
| − | * [[はげの湯温泉]]
| |
| − | * [[鰺ヶ沢町]]
| |
| − | * [[天栄村]] - [[岩瀬湯本温泉]] - [[二岐温泉]]
| |
| − | * [[古物商]]
| |
| − | * [[キノコ]] - [[ハツタケ]]
| |
| − | * [[アニメ版ポケットモンスターの登場人物]] - ムノーは『無能の人』に由来するキャラクターである。
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| − | * [[ポケモンの一覧_(52-101)]] - メノクラゲは『ねじ式』のメメクラゲに由来。
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| − | {{Div col end}}
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| − | | |
| − | == 脚注 ==
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| − | === 注釈 ===
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| − | {{notelist}}
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| − | | |
| − | === 出典 ===
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| − | {{Reflist|2}}
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| − | | |
| − | == 参考文献 ==
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| − | * {{Cite book |和書 |author=つげ義春 |date=1977-06 |title=つげ義春とぼく |publisher=晶文社 |ref={{SfnRef|つげ|1977}} }}
| |
| − | * {{Cite journal |和書 |author= |date=1982-03 |journal=ユリイカ |publisher=青土社 |volume=1982年3月号 |ref={{SfnRef|ユリイカ|1982}} }}
| |
| − | * {{Cite book |和書 |author=つげ義春 |date=1983-12 |title=つげ義春日記 |publisher=講談社 |isbn=4062009080 |ref={{SfnRef|つげ|1983}} }}
| |
| − | * {{Cite book |和書 |author=つげ義春 |date=1992-06 |title=つげ義春とぼく |edition=新版 |publisher=新潮社 |isbn=4101328110 |ref={{SfnRef|つげ|1992}} }}
| |
| − | * {{Cite book |和書 |author=つげ義春 |coauthors=権藤晋 |date=1993-09 |title=つげ義春漫画術 |publisher=ワイズ出版 |volume=上巻 |isbn=4948735183 |ref={{SfnRef|つげ|権藤|1993a}} }}
| |
| − | * {{Cite book |和書 |author=つげ義春 |coauthors=権藤晋 |date=1993-10 |title=つげ義春漫画術 |publisher=ワイズ出版 |volume=下巻 |isbn=4948735191 |ref={{SfnRef|つげ|権藤|1993b}} }}
| |
| − | * {{Cite book |和書 |author=佐野眞一 |date= |title=人を覗にいく |publisher= |ref={{SfnRef|佐野|}} }}{{Full citation needed|date=2018年8月7日 (火) 11:58 (UTC)|title=佐野『人を覗にいく』は、出版社と出版年が異なる2つのバージョンがあり、どちらが本記事の出典として使用されているか不明。}}
| |
| − | * {{Cite journal |和書 |author= |journal=スペクテイター |date=2018-02 |publisher=エディトリアル・デパートメント |volume=41 |isbn=978-4-344-95336-9 |ref={{SfnRef|スペクテイター|2018}} }}
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| − | | |
| − | == 外部リンク ==
| |
| − | * [http://manriki.sanpal.co.jp/ 万力のある家 北冬書房]{{リンク切れ|date=2018年8月6日 (月) 15:14 (UTC)}}
| |
| − | * [http://tsugesanpo.sakura.ne.jp/index.html つげ義春を散歩する(調布編) 公式サイト]
| |
| − | * [http://www.garo.co.jp/ 青林堂]
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| − | * [http://www.chikumashobo.co.jp/special/tsugeyoshiharu/ 「つげ義春コレクション」筑摩書房]
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| − | * [http://www.shobunsha.co.jp/ 晶文社]
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| − | * [http://www.douban.com/group/topic/27984207/ 「ねじ式」夜話 権藤晋 2012-03-07]
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| − | * [http://polaris.rati.info/ 日本漫画文学研究所]
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