身体障害者手帳
身体障害者手帳(しんたいしょうがいしゃてちょう)とは、身体障害者がそれを対象とする各種制度を利用する際に提示する手帳で、身体障害者が健常者と同等の生活を送るために最低限必要な援助を受けるための証明書にあたる。「身体障害者手帳」を省略して「身障者手帳」と呼ばれる場合もある。
身体障害者福祉法第15条に基づき、対象者の居住地の都道府県知事が発行する[1]。ただし、対象者の居住地が政令指定都市か中核市である場合はその政令指定都市・中核市、都道府県から発行権限が移譲された市町村である場合はその市町村、鳥取県鳥取市・岩美町・若桜町・智頭町・八頭町である場合は鳥取市が発行する[2][3][4]。
援助内容は補装具・義肢の交付など有形のものから、ヘルパーサービスなど無形のものまで多岐にわたる。これとは別に、知的障害がある者に関しては療育手帳が、精神に障害がある者に関しては精神障害者保健福祉手帳がそれぞれ存在する。
Contents
類別
種類
「身体障害者」の種類定義は身体障害者福祉法と身体障害者福祉法施行規則によって定義され以下がある。
- 視覚障害
- 聴覚または平衡機能の障害
- 聴覚障害・平衡機能障害
- 音声機能、言語機能又は咀嚼機能の障害
- 肢体不自由
- 上肢機能障害・下肢機能障害・体幹機能障害・乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害(上肢機能障害・移動機能障害)
等級
等級は数字であらわされ、数字が小さいほど重度である。最高度は1級。障害を複数もつ場合は、各部位に対して個別に等級がつき、その合計で手帳等級が決定される。
1,2級は、重度(特別障害者)、3級以下は、中度・軽度(一般障害者)に区別される。
また、肢体不自由には等級上「7級」が存在するが、7級単独の障害では身体障害者手帳は交付されない。7級の障害が重複して6級以上となる場合は手帳が交付される。
身体障害者手帳の概略
各種の福祉サービスを受けるためには、身体障害者手帳の呈示が必要となる。
実際にサービスを受けようとする場合には、不正使用防止のため原本の呈示でなければ効力がない。手帳を呈示するだけでよい場合もあるし、氏名等を相手が記録する場合もある。
身体障害者手帳の不正使用の例としては、有料道路通行料の割引を受けるために、健常者が身体障害者手帳の写真を貼り替えて行使する事案が発生した。これは有印公文書偽造罪及び同行使罪(また場合によっては詐欺罪)が適用され、罰せられる犯罪行為である。 また手帳を貸与・譲渡した者にも、手帳返還命令が下される(身体障害者福祉法§16-2)
身体障害者手帳には、一部の例外(後述)を除き更新義務がなく、等級変更する場合であっても本人申請が前提であるため、手帳を再交付される機会が少ない。このことから、手帳が更新されないままに長年使用され続けることも多い。そのため、手帳に貼付された顔写真と、現在の容貌とが著しく異なっているために本人確認ができず、サービスが受けられないというトラブルになったりすることもある。こうした場合には、本人の希望があれば新しい写真で再交付される。 貼られた写真が古く、現在の容貌と異なっていても手帳としては有効であるが、その場合、別の写真入り身分証明書も携帯しておくと、手帳使用時に無用のトラブルを避けることに役立つことがある。
ただし、例外的に再認定が必要な場合がある。身体障害者福祉法施行規則第3条各号の規定により、乳幼児にかかる障害等級認定に際しては、先天性欠損等障害の改善が見込めないものを除き、成長に応じてその症状の変化の可能性がありうるため、概ね6歳時を目処に再度認定手続きを要請される。また今後病状の変化(軽度化もしくは重度化)が見込まれる等の理由で、医師の診断書に「将来再認定の必要」に関する記述がある場合にも、再度認定手続きを要請される(1年後または3年後もしくは5年後)。
身体障害者手帳のデザイン(表紙の色など)は、全国統一ではなく都道府県で異なる。したがって他県にてサービスを受けようとして手帳の表紙のみを呈示しても、係員が身体障害者手帳であることを理解できずにサービスを断られることもある。その場合には、本人の写真、障害の種類が記載されているページを開いて呈示すると、身体障害者手帳であることが相手に分かる。
またJR等の鉄道事業者が設けている割引(大部分の私鉄はJRに準ずる)を受ける場合は、手帳に「旅客鉄道会社運賃割引・第1種」等の記載があるので、その部分も見せるようにする(割引が適用される条件については障害の種類や鉄道会社によって異なるので、利用する場合各自で確認されたい。ただし「旅客鉄道会社運賃割引」の記載がない手帳は、JR等の割引は受けられない。また、この制度は日本国内の居住者が対象であるので海外で発行された身体障害についての証明書では割引はない)。
福祉サービスの具体的内容
地域、障害の程度によって異なるため、詳細は住民票のある市区町村に確認のこと。
- 福祉機器(車椅子、義肢、装具、盲人安全つえその他多数)の交付
- 医療費(健康保険の自己負担分)助成[5]
- 所得税・住民税
- 相続税
- 障害者控除の適用[7]
- 特別障害者(1級及び2級)の場合・85歳に達するまでの年数に12万円を乗じた金額の税額控除
- 一般障害者(特別障害者以外)の場合・85歳に達するまでの年数に6万円を乗じた金額の税額控除
- 障害者控除の適用[7]
- 贈与税
- 一定の信託契約に掛る信託受給権の障害者非課税枠の適用[8]
- 特別障害者(1級及び2級)の場合・6000万円まで非課税
- 一般障害者のうち精神に障害のある者の場合・3000万円まで非課税
- 一定の信託契約に掛る信託受給権の障害者非課税枠の適用[8]
- JR[9][10]
- バス・一部鉄道事業者[15]
- タクシー
- 居住自治体が地元タクシーの割引券を交付することが多い。会社によっては障害者手帳の提示で料金を割り引くところもある。
- 公共施設
- 都道府県立施設や博物館・動物園などの公共施設の入場料が免除されたり割引されたりする。
- 自動車関連
- 携帯電話
- 基本料金や通話料金等に割引。詳細は「携帯電話料金の障害者割引」。
- 郵便事業株式会社[21]
- 障害者手帳1級及び2級の場合無地又はインクジェット紙、又はくぼみ入り通常郵便葉書20枚を4月から5月に申請により配布
脚注
- ↑ 身体障害者福祉法 - 法令データ提供システム
- ↑ 障がい福祉課 1 身体障害者手帳 - 平塚市役所障がい福祉課
- ↑ 障がい者手帳交付事務の権限を市町村に移譲します 大阪府 2018年5月29日閲覧
- ↑ 鳥取市の中核市移行について 鳥取県・とりネット 2018年5月29日閲覧
- ↑ 条件は自治体により異なる。
- ↑ 障害者になったことが直接の原因で退職した場合のみ。
- ↑ 過去に相続税の障害者控除の適用を受けた部分については適用なし。
- ↑ 過去に贈与税の障害者非課税枠の適用を受けた部分については適用なし。
- ↑ ただし、旅客鉄道株式会社旅客運賃減額欄に「第1種」又は「第2種」の記載のない障害者手帳は割引の対象外である。
- ↑ 大手私鉄など、JR以外の鉄道事業者の多くも、同様の割引制度を行っていることが多い。
- ↑ 11.0 11.1 11.2 11.3 利用時は単独乗車不可。
- ↑ 大手私鉄など、JR以外の多くの鉄道事業者は普通回数乗車券に限る。
- ↑ 13.0 13.1 小児定期乗車券を除く。介護人は通勤定期乗車券に限る。
- ↑ 第2種と同一扱い。
- ↑ 一部の中小私鉄や一部を除く公営地下鉄など。
- ↑ 16.0 16.1 バス定期のみ3割引。一部の鉄道・バス事業者は小児定期も割引となる場合がある。介護人は通勤定期に限る。本人が満12歳未満の場合、多くの鉄道・バス事業者は定期運賃は介護人のみ5割引(バス定期のみ3割引)。
- ↑ 一部鉄道事業者の鉄道の運賃は普通運賃のみ適用の場合がある。一部の鉄道・バス事業者は介護人も5割引(バス定期のみ3割引)の場合がある。
- ↑ 最大料金に対する割引であるので、休日ETC割引などに重ねての適用はない。本制度ではETCの装備は要件としない。
- ↑ 車両の指定ではなくなった。
- ↑ 駐車禁止指定場所の免除であり、駐停車禁止区域や駐車禁止の法定場所は対象とならない。
- ↑ 青い鳥郵便葉書の無償配布。