キリストの降誕
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キリストの降誕(キリストのこうたん)
キリスト教美術の主題。超歴史的存在である神が,死すべき人間の現身をとり,人間の救済のためにこの世に生まれたという,いわゆる受肉の教義は,キリスト教信仰の中核である。そのため,救い主イエス・キリストの降誕は教会で盛大に祝われ,無数の美術作品に描かれている。おもな典拠は『マタイによる福音書』1章 18~25および『ルカによる福音書』2章 1~20であるが,そのほかいわゆる外典の『ヤコブの福音書』『偽マタイの福音書』などに含まれた伝承が画像化された。一般に聖子イエスは馬小屋(東方では岩穴)の中に置かれた飼葉桶に横たえられ,ウシとロバがこれを見守る。聖母マリアはそのかたわらに座し,あるいは横たわり,養父ヨセフは憂い悩みつつ少し離れたところに腰を降ろす。聖子をたたえる天使の群れ,産湯の場面,不信仰な産婆の物語などがこれにつけ加えられることもある。13世紀以降は民衆の信仰運動が高まるにつれ,しだいに世俗的な要素が増加し,母子の情愛,ヨセフの家庭的役割などが強調されるようになった。中世末期の神秘主義者の幻想(偽ボナベントゥラ,スウェーデンの聖女ビルギッタ)も強い影響を及ぼす。15世紀に入ってからは,夜景として描かれることが多くなった。羊飼いの告知,羊飼いの礼拝,東方三博士の旅と礼拝(東方三博士の礼拝)など,隣接する福音書説話場面と組み合わせて表現することも多い。