『雇用・利子および貨幣の一般理論』
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こよう・りしおよびかへいのいっぱんりろん
The General Theory of Employment, Interest and Money
1936年に公刊された J.M.ケインズの主著。 1920年代のイギリスの不況や 30年代の世界的不況を背景に古典学派,新古典学派経済学との対決として書かれた。おもな内容は所得決定理論としての乗数理論と利子率決定理論としての流動性選好説とから成る。
乗数理論とは投資の増加に応じる所得の増加の過程をとらえたもので,古典派の理論が貯蓄と投資の利子率を媒介とした均等化を論じたのに対し,所得の変化を媒介として貯蓄と投資が均等化することを主張した。また投資誘因の一つとしての利子率の決定は,古典学派が主張したように貯蓄,投資によって決るのではなく,貨幣需要関数である流動性選好関数と中央銀行の政策による貨幣供給により決ると主張した。これらの理論により新古典学派の雇用理論を批判し,不完全雇用下の均衡の可能性を説き,さらに不況からの脱出のためには国家の経済への積極的介入が必要であると主張した。
また方法論的には所得分析ともいわれるマクロ分析が中心であり,動態的要素を多分に含んでいるが,形式的には経済全体としての均衡状態を問題としているため静学分析である。また資本ストックの変化,完全雇用水準の変化を考慮しておらず,短期分析である。