ビルマ文字

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ビルマ文字
280x400px
類型: アブギダ
言語: ビルマ語
Unicode範囲: U+1000 - U+109F
ISO 15924 コード: Mymr
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。

テンプレート:ブラーフミー系文字

ビルマ文字は、主にミャンマー連邦共和国(旧ビルマ)の公用語ビルマ語の表記に用いる文字である。

ビルマに住むモン族が使っていた文字が、改変され11世紀後半ごろにビルマ語に使われるようになった。子音を表す基本字母の周囲に母音記号声調が組合わさり文字が形成される。文字は、全体的に丸っこい形が特徴的であるが、それは昔、文字を書くのに紙代わりに用いられていた貝多羅葉タラバヤシの葉)が裂けてしまわないよう、直線を使うのを避けたためであるといわれている。左から右へと綴る。

ビルマ語以外に、シャン語モン語カレン語パラウン語、およびサンスクリットパーリ語などを書くのにも用いられる。

文字の一覧

従前の多くのコンピュータ環境で、ビルマ文字の入力・表示は整備されていないのが現状である。標準搭載されていない環境でビルマ文字を表示するためには、Padauk Font等のビルマ文字フォントをインストールする(ソフト・ブラウザによっては、さらにフォント設定する)必要がある。

なお、以下では、利用者の便宜を図り、一部に画像も併せて掲載する。

基本字母

基本字母は、子音を表し、33個ある。ただし、ga, za, da などのように、同じ発音をさす文字が複数ある場合もあり、実際には子音は23種類である。以下の表は、各段ごとに左から右へ読み、辞書の配列はこれに従う。

インド系文字なので、デーヴァナーガリークメール文字などの表とも、一定程度の対応関係が見られるが、かなり崩れている。

  • 背景を灰色で示した文字は、主にパーリ語由来の語彙で用いられる。
  • 背景をオレンジで示したテンプレート:Myは、パーリ語や外来語の語彙では、よく(元来の発音である)[ɹ]で発音される。

なお、以降の説明において斜体で示すラテン文字表記は、説明のための区別・書き分けの都合上、MLCTS式に準拠する。

ファイル:Burmese Consonant Stroke.jpg
ビルマ文字の基本字母および筆順
無声音 有声音 鼻音
無気音 有気音
軟口蓋音 テンプレート:My
k(a) [k(a)]
テンプレート:My
hk(a) [kʰ(a)]
テンプレート:My
g(a) [ɡ(a)]
テンプレート:My
gh(a) [ɡ(a)]
テンプレート:My
ng(a) [ŋ(a)]
硬口蓋音 テンプレート:My
c(a) [s(a)]
テンプレート:My
hc(a) [sʰ(a)]
テンプレート:My
j(a) [z(a)]
テンプレート:My
jh(a) [z(a)]
テンプレート:My
ny(a) [ɲ(a)]
歯茎音1 テンプレート:My
t(a) [t(a)]
テンプレート:My
ht(a) [tʰ(a)]
テンプレート:My
d(a) [d(a)]
テンプレート:My
dh(a) [d(a)]
テンプレート:My
n(a) [n(a)]
歯茎音2 テンプレート:My
t(a) [t(a)]
テンプレート:My
ht(a) [tʰ(a)]
テンプレート:My
d(a) [d(a)]
テンプレート:My
dh(a) [d(a)]
テンプレート:My
n(a) [n(a)]
唇音 テンプレート:My
p(a) [p(a)]
テンプレート:My
hp(a) [pʰ(a)]
テンプレート:My
b(a) [b(a)]
テンプレート:My
bh(a) [b(a)]
テンプレート:My
m(a) [m(a)]
接近音 テンプレート:My
y(a) [j(a)]
テンプレート:My
r(a) [j(a)]
テンプレート:My
l(a) [l(a)]
テンプレート:My
w(a) [w(a)]
テンプレート:My
s(a) [θ(a)]
摩擦音など テンプレート:My
h(a) [h(a)]
テンプレート:My
l(a) [l(a)]
テンプレート:My
(a) [ʔ(a)]

※なお、画像にも示してあるように、無声音子音は、語中においては先行する発音次第で有声音(濁音)になることもある。

介子音と複合文字

上記の基本字母に、テンプレート:Myy [j])、テンプレート:Myr [j])、テンプレート:Myw [w])、テンプレート:Myh [ ̥] - 鼻音などの無声化)といった4つの介子音記号が付いたものを、複合文字という。

この4つの記号は、それぞれ単独でも基本字母と結びつくが、2~3の記号が結合して一緒に基本字母と結びつくこともある。

  • テンプレート:Myy [j])、テンプレート:Myr [j])は、基本的に軟口蓋音唇音 (すなわち、上記の表の1行目と5行目) に付いて、これらを硬口蓋化(すなわち、「○ャ行」の音に)する。
    (※ただし、これらの記号が軟口蓋音(上記表1行目)に付く場合は、純粋な硬口蓋化というよりも、上記の表の2行目に本来あった音としての硬口蓋音、すなわち[tɕ](チャ行)の音を再現・補充する意味・役割となる。したがって、下の表で青で示した、テンプレート:Myk [k])、テンプレート:Myhk [kʰ])、テンプレート:Myg [ɡ])に、これらの記号が付いた文字は、それぞれ([kj][kʰj](キャ行)[ɡj](ギャ行)ではなく)[tɕ][tɕʰ](チャ行)[dʑ](ジャ行)の発音になる点に、注意が必要。)
  • テンプレート:Myh [ ̥])は、基本的に鼻音接近音 (すなわち、上記の表の5列目と6行目) に付いて、これらを無声化する。ここで言う無声化とは、気息と混ぜることで音素を弱化する働きだと捉えておけばいい。
    (※ただし、下の表で緑で示した、テンプレート:Myy [j])、テンプレート:Myr [j])に、この記号が付いた文字は、[ɕ](シャ行)の発音になるので注意。黄緑で示したテンプレート:Myl [l])でも、語彙によっては[ɕ](シャ行)の発音になる。)
記号 使用例
テンプレート:My (-y [j]) テンプレート:Myky [tɕ])、テンプレート:Myhky [tɕʰ])、テンプレート:Mygy [dʑ])、テンプレート:Mypy [pj])、テンプレート:Myhpy [pʰj])、テンプレート:Myby [bj])、テンプレート:Mymy [mj])、テンプレート:Myly [lj]
テンプレート:My (-r [j]) テンプレート:Mykr [tɕ])、テンプレート:Myhkr [tɕʰ])、テンプレート:Myngr [ɲ])、テンプレート:Mypr [pj])、テンプレート:Myhpr [pʰj])、テンプレート:Mybr [bj])、テンプレート:Mymr [mj]
テンプレート:My (-w [w]) テンプレート:Mykw [kw])、テンプレート:Myhkw [kʰw])、テンプレート:Mygw [ɡw])、テンプレート:Myngw [ŋw])、テンプレート:Mycw [sw])、テンプレート:Myhcw [sʰw])、テンプレート:Myjw [zw])、テンプレート:Mynyw [ɲw])、テンプレート:Mytw [tw])、テンプレート:Myhtw [tʰw])、テンプレート:Mydw [dw])、テンプレート:Mynw [nw])、テンプレート:Mypw [pw])、テンプレート:Myhpw [pʰw])、テンプレート:Mybw [bw])、テンプレート:Mybhw [bw])、テンプレート:Mymw [mw])、テンプレート:Myyw [jw])、テンプレート:Myrw [jw])、テンプレート:Mylw [lw])、テンプレート:Mysw [θw])、テンプレート:Myhw [hw]
テンプレート:My (h- [ ̥]) テンプレート:Myhng [ŋ̊])、テンプレート:Myhny [ɲ̥])、テンプレート:Myhn [n̥])、テンプレート:Myhm [m̥])、テンプレート:Myhy [ɕ])、テンプレート:Myhr [ɕ])、テンプレート:Myhl [ɬ]([ɕ]))、テンプレート:Myhw [ʍ]
テンプレート:My (-yw [(j)w]) テンプレート:Mykyw [tɕw])、テンプレート:Myhkyw [tɕʰw])、テンプレート:Mygyw [dʑw]
テンプレート:My (-rw [(j)w]) テンプレート:Mykrw [tɕw])、テンプレート:Myhkrw [tɕʰw])、テンプレート:Mypyw [pjw]
テンプレート:My (h-y [ ̥ (j)]) テンプレート:Myhmy [m̥j])、テンプレート:Myhly [ɬj]([ɕ]))
テンプレート:My (h-r [ ̥ (j)]) テンプレート:Myhngr [ɲ̥])、テンプレート:Myhmr [m̥j]
テンプレート:My (h-w [ ̥w]) テンプレート:Myhngw [ŋ̊w])、テンプレート:Myhnyw [ɲ̥w])、テンプレート:Myhmw [m̥w])、テンプレート:Myhrw [j])、テンプレート:Myhrw [ɕw]
テンプレート:My (h-rw [ ̥(j)w]) テンプレート:Myhngrw [ɲ̥w])、テンプレート:Myhmrw [m̥jw]

母音・声調

母音記号は、母音だけでなく声調を表す役割も担っているので、同じ音価でも声調の違いによって異なってくる。

母音は[a][1][i][u][e][ɛ][o][ɔ]の7種あり、声調は

  • 下降調 : 短く急激に下降する。「あ!」と驚く調子に近い。(初期値)
  • 低平調 : 低位で平坦に伸ばす。「へぇー」と気持ちなく返事する調子に近い。
  • 高平調 : 高位で平坦に伸ばすが末尾でやや下る。「ふーむ」と納得する調子に近い。
    (※この他に、後述する末子音[ʔ]声門閉鎖音)で終わる高く短い音節を、4つめの声調としてカウントする考えもある。)

の3種があるので、組合わせは7(母音)×3(声調)= 21個 である。

表にまとめると、以下の通り。

下降調 低平調 高平調
[a] ファイル:Thai script-vowels-hojo.png
a.
テンプレート:My/テンプレート:My
a
テンプレート:My/テンプレート:My
a:
[i] テンプレート:My
i.
テンプレート:My
i
テンプレート:My
i:
[u] テンプレート:My
u.
テンプレート:My
u
テンプレート:My
u:
[e] テンプレート:My
e.
テンプレート:My
e
テンプレート:My
e:
[ɛ] テンプレート:My
ai.
ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My
ai
テンプレート:My
ai:
[o] テンプレート:My
ui.
テンプレート:My
ui
テンプレート:My
ui:
[ɔ] テンプレート:My/テンプレート:My
au.
テンプレート:My/テンプレート:My
au
テンプレート:My/テンプレート:My
au:

また、テンプレート:Myny [ɲ])とテンプレート:Myの組み合わせで、[i][e][ɛ]が表現されることもある。

下降調 低平調 高平調
[i]
[e]
[ɛ]
ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My
any.
ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My
any
ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My
any:

なお、一部の母音には、デーヴァナーガリークメール文字など、他のインド系文字と同じく、独立した母音字もある。

下降調 低平調 高平調
[ʔa]
a.

a

a:
[ʔi] テンプレート:My
i.
テンプレート:My
i

i:
[ʔu] テンプレート:My
u.
テンプレート:My
u
テンプレート:My
u:
[ʔe]
e.
テンプレート:My
e
テンプレート:My
e:
[ʔɛ]
ai.

ai

ai:
[ʔo]
ui.

ui

ui:
[ʔɔ]
au.
テンプレート:My
au
テンプレート:My
au:

末子音

末子音は、[ɴ](鼻音「ン」)と[ʔ]声門閉鎖音)の2種類のみ。

基本的には、テンプレート:Myk [k])、テンプレート:Myc [s])、テンプレート:Myt [t])、テンプレート:Myp [p])、テンプレート:Myng [ŋ])、テンプレート:Myny [ɲ]テンプレート:Myの異字体)、テンプレート:Myn [n])、テンプレート:Mym [m])の8字母 (すなわち、上記した基本字母表の1列目と5列目) に、テンプレート:Myを付加することで表現される。

ただし、どちらの場合も、末子音のみを単独で表現するわけではなく、他の記号も織り交ぜられつつ、先行する母音とひとまとめで表現されるので、上記した母音表現の延長線上のものとして捉えるといい。

前者の[ɴ](鼻音「ン」)で終わるものは、上記した母音表現と同じく、3種の声調に合わせて3通りの形に分かれるが、後者の[ʔ](声門閉鎖音)で終わるものは、3種の声調とは異なる高く短い音になるので、1通りしかない(これを4つめの声調と捉える考え方もある)。

複数の表記法があるものは、語彙の区別に活用される。

[ɴ](鼻音「ン」)終わり
下降調 低平調 高平調
[aɴ] ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My/ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My/テンプレート:My
an./am./am.
ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My/ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My/テンプレート:My
an/am/am
ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My/ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My/テンプレート:My
an:/am:/am:
[aɪɴ] テンプレート:My
uing.
テンプレート:My
uing
テンプレート:My
uing:
[aʊɴ] テンプレート:My
aung.
テンプレート:My
aung
テンプレート:My
aung:
[ɪɴ] ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My/ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My
ang./any.
ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My/ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My
ang/any
ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My/ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My
ang:/any:
[ʊɴ] テンプレート:My/テンプレート:My
wan./wam.
テンプレート:My/テンプレート:My
wan/wam
テンプレート:My/テンプレート:My
wan:/wam:
[eɪɴ] テンプレート:My/テンプレート:My
in./im.
テンプレート:My/テンプレート:My
in/im
テンプレート:My/テンプレート:My
in:/im:
[oʊɴ] テンプレート:My/テンプレート:My/テンプレート:My
un./um./um.
テンプレート:My/テンプレート:My/テンプレート:My
un/um/um
テンプレート:My/テンプレート:My/テンプレート:My
un:/um:/um:
[ʔ](声門閉鎖音)終わり
[aʔ] ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My/ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My
at/ap
[aɪʔ] テンプレート:My
uik
[aʊʔ] テンプレート:My
auk
[ɪʔ] ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My
ac
[ʊʔ] テンプレート:My/テンプレート:My
wat/wap
[eɪʔ] テンプレート:My/テンプレート:My
it/ip
[ɛʔ] ファイル:Thai script-vowels-hojo.pngテンプレート:My
ak
[oʊʔ] テンプレート:My/テンプレート:My
ut/up

その他

ファイル:Burmese number.gif

1 2 3 4 5 6 7 8 9 0
テンプレート:My テンプレート:My テンプレート:My テンプレート:My テンプレート:My テンプレート:My テンプレート:My テンプレート:My テンプレート:My テンプレート:My

コンピュータ

Unicode

Unicode では、以下の領域に次の文字が収録されている。

U+ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
1000 က
1010
1020
1030
1040
1050
1060
1070
1080
1090

ビルマ文字のフォントは複数出回っているが、Unicodeと異なる文字コードを使っているものも多い。特にUnicode非対応のフォントで書かれた文章を表示する場合は、専用のフォントを別途入手する必要がある。

なお、ビルマ文字は 2008年の Unicode 5.1 で大幅な変更が加えられ、音節末子音を表す記号 asat、介子音、長い a などが追加された[2]。このため Unicode 5.0 までのフォントではビルマ文字が正しく表示されないことがある。

脚注・出典

  1. 最も基本的な母音である「[a]の下降調」は、曖昧母音[ə]とも表現される。
  2. Unicode 5.1.0, The Unicode Consortium, (2008-04-04), http://www.unicode.org/versions/Unicode5.1.0/ 

関連項目

外部リンク