地上波
地上波(ちじょうは)は、地上を伝わる電波。衛星波の対義語として用いられる。
伝播
地上波は地上の2点間を伝播する電波であり、直接到達する直接波のほか、地面・地形・建物などで反射する反射波、地面・地形・建物などで回折する回折波がある(もちろん、反射し回折する波などもある)。
最も重要なのは、直接波と、地面で反射する大地反射波で、あわせて空中波という。空中波は距離の逆自二乗で減衰し、また地平線や障害物を超えては届かない。
地面で回折する大地回折波は、地表波ともいい、中波(AMラジオ)で特に重要である。大地回折波(地表波)は距離の逆四乗と急速に減衰するが、地平線を越えられるので、空中波より遠方まで届く。
電離層で反射する波は電離層波という。ただし、電離層波は厳密には地上波に含めない。短波(短波ラジオ)や夜間の中波で重要である。電離層波は、距離の逆一乗とゆるやかにしか減衰せず、また地平線を越えるため、非常に遠くまで届く。
超短波(FMラジオ・VHFテレビ)・極超短波(UHFテレビ)は回折が弱く電離層反射もしないため、地平線の向こうには届かない。障害物に対しては、山岳・建物などによる反射波が届くこともあるが、電界強度は弱くなる。電界強度が非常に弱い場合を除いては高性能アンテナ(UHFはパラスタックアンテナ)で受信する場合が多い。
放送
地上波を利用する放送を地上波放送という。送信所が地上にある地上放送とほぼ同義である。衛星放送の対義語として使われ、厳密には電離層反射波も使う中・短波放送も便宜的に地上波放送に含めるのが普通である。放送初期は地上波放送しかなかったため、テレビ、ラジオともに普及率は衛星放送よりも高い。
一般に、見通しのよい山頂や高い電波塔に設置された送信所のアンテナからVHF帯またはUHF帯(難視聴地域の一部などではSHF帯)の周波数を用いて放送する。
衛星放送が国家〜超国家エリア(日本だと全国)にほぼ同じ強度の電波を届けられるのに対し、地上波放送では受信可能な地域は送信所のアンテナが見える範囲の近隣地域に限られる。また送信所から遠ざかるにつれ電波が弱くなり、特に回折の弱い超短波・極超短波放送では、都道府県スケールのエリアでも山間部などに複数のアンテナを立てる必要がある。
一方で、衛星放送がほとんど反射・回折しないSHF波を使うのに対し、地上波放送では反射や回折があるため受信アンテナの位置や方向の制約が比較的少ない。また周波数や電波強度にもよるが、衛星放送よりずっと小型の携帯できるサイズのアンテナで受信できる場合もある。