太陽

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たいよう、英: Sun、羅: Sol

地球から最近距離にある恒星。地球を含む八つの惑星がその周囲を公転する。地球から見た視直径は約 32′,地球からの平均距離は約1億 4960万 km,半径 69万 6000km。質量 1.989× 1030 kgで地球の約 33.3万倍。平均密度は水の約 1.4倍。表面重力は地球の約 28倍。見かけの光度-26.74等,絶対光度 4.83等,スペクトル型 G2。ヘルツスプルング=ラッセル図上で主系列晩期に属する。輝く光球の表面を,厚さ数千 kmの彩層すなわち大気層が覆い,その上に高さ数百万 kmまでコロナが広がっている。光球面には約 11年周期で盛衰する黒点群が観測され,それによって太陽は約 26.90日周期で自転していることがわかる。太陽中心部の温度は 1500万K (ケルビン ) に近いが,太陽表面の温度は約 6000Kに過ぎない。これは恒星の温度としてみると平均的な値である。太陽の光球表面に現れる放射の分光分析により,光球表面の組成は,90%が水素,9.9%がヘリウム,残りは鉄,カルシウム,ナトリウムなどの少量の重元素混合物で構成されることが明らかになっている。内部の核融合により構成物質をある程度変化させているはずではあるが,表面の組成比率は太陽を形成する素材の化学的構成を反映していると考えられる。太陽は太陽系の主要な物体であり,太陽系全体の質量の 99%以上を占めている。

太陽は質量が非常に大きいため,重力により構成物質が強く圧縮され,中心部では圧縮された気体が高温になって核融合が引き起こされている。太陽内部における核融合反応は熱核反応のうちのp-p連鎖で,激しい熱と圧力により水素原子核陽子は次々と別の陽子と衝突して結合し,より安定したヘリウム原子核を形成する。このヘリウム原子核の質量は,もとになった陽子の質量の合計よりもわずかに小さく,減少した分の質量がエネルギーとして放出される。そのエネルギーは毎秒 3.86× 1033エルグにも達する。エネルギーは最初にγ線として放出されるが,この電磁放射は中心から光球表面へ達するまでに途中に存在する物質と何度も相互作用を繰り返し数十万年以上経た後,おもに可視光線赤外線といったかたちで表面へ出てくる。太陽のp-p連鎖の副産物の一つに質量がきわめて小さく電荷をもたないニュートリノがある。この反応で放出されるニュートリノを地球で検出するための実験結果によれば,予測されるニュートリノの数の3分の1しか見つかっていない。この結果は,最終的な確認はまだなされていないが,質量の違う3種類のニュートリノの間で振動を起こしている可能性が強く示唆されている。

光球の外観は,太陽黒点の数を増減させながら,継続的に変化し続けている。太陽表面の黒点領域はさしわたし5万 kmほどの大きさがあり,そこでは強力な局所的磁場が光球の通常の対流運動を阻害している。黒点内の気体温度は周囲より約 1500K低く,黒点は太陽円盤を背景に暗く見える。光球表面の黒点観測から太陽はゆっくりと自転していることが示されているが,太陽の実体は気体状態なので赤道領域を最速として緯度ごとに異なる角速度で回転している。極では1回転に 36日かかるが,赤道では 25日である。さらに詳細な研究から光球は一定の運動をしていることが判明している。これは,1000kmの幅をもつ粒状斑がさらに網状構造になって超粒状斑として現れてくるというもので,エネルギーの出現に伴い文字どおり泡立ちを起こしている。磁気活動は太陽の内層大気である彩層内および外層大気のコロナの中へ広がっている。強い磁場のある超粒状斑の周縁からスピキュールと呼ばれるジェット流が,光球表面から上方へ約7000kmの高さにまで達している。太陽を包む明るい被覆であるコロナの中では局所的な磁場の突然の変化により紅炎 (プロミネンス) が形成されるが,これは原子イオン電子を捕捉して光を発しているコロナ物質が炎のような突出構造をとったものである。黒点領域における磁場の急激な発達に伴った激しい噴出現象であるフレアにより,ガスがコロナの中へ噴射されることで,環状紅炎と呼ばれる別の現象が生じる。こうした噴出現象では初めに高速の電子と原子核の流れが放出され,次いで二次的な,紫外線,γ線,X線の放射が起こる。フレアはコロナからの継続的な荷電粒子の流出物である太陽風の強さを増加させる。太陽風は毎秒 350kmから 700kmの速度で惑星間空間を動き,少なくとも太陽系内の海王星の軌道まで達している。

太陽の活動周期は,太陽黒点,紅炎,フレアの数が最少から最多まで増加し再び減少するまでの期間のことで,約 11年間の周期長がある。この周期は数万年もの間,規則正しく繰り返されており,太陽が実質的に不変であったことが判明している。今後 50億年の間,太陽は寿命の後半にさしかかり赤色巨星へと膨張するときがくるまで,劇的な変化もなく経過すると予想される。