転置行列
提供: miniwiki
2018/4/27/ (金) 00:48時点におけるja>ARAKI Satoruによる版 (+gif, +A')
転置行列(てんちぎょうれつ、英: transpose [of a matrix], transposed matrix)とは m 行 n 列の行列 A に対して A の (i, j) 要素と (j, i) 要素を入れ替えた n 行 m 列の行列、つまり対角線で成分を折り返した行列のことである。転置行列は tA, AT, Aテンプレート:Mtop, Atr, A′ などと示される。行列の転置行列を与える操作のことを転置(てんち、英: transpose)といい、「A を転置する」などと表現する。
例
行列
- [math] A = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 4 & 5 & 6 \\ 7 & 8 & 9 \end{pmatrix},\quad B = \begin{pmatrix} a & b & c \\ d & e & f \end{pmatrix} [/math]
に対して転置行列 Aテンプレート:Mtop, Bテンプレート:Mtop はそれぞれ
- [math] A^\top = \begin{pmatrix} 1 & 4 & 7 \\ 2 & 5 & 8 \\ 3 & 6 & 9 \end{pmatrix}, \quad B^\top = \begin{pmatrix} a & d \\ b & e \\ c & f \end{pmatrix} [/math]
である。
性質
A, B は行列、k, r はスカラーとして各演算が定義できる限りにおいて以下のことが成り立つ。
- 転置の転置は元の行列を与える(対合性):(Aテンプレート:Mtop)テンプレート:Mtop = A
- 和の転置は転置の和を与える(加法性):(A + B)テンプレート:Mtop = Aテンプレート:Mtop + Bテンプレート:Mtop
- 行列のスカラー倍の転置は転置行列のスカラー倍を与える(斉次性):(kA)テンプレート:Mtop = k(Aテンプレート:Mtop)
- 斉次性および加法性から線型性が成り立つ:(kA + rB)テンプレート:Mtop = k(A)テンプレート:Mtop + r(B)テンプレート:Mtop
- 積の転置は積の左右を入れ替えた転置の積を与える:(AB)テンプレート:Mtop = Bテンプレート:MtopAテンプレート:Mtop
- 逆行列の転置は転置の逆行列を与える:(A−1)テンプレート:Mtop = (Aテンプレート:Mtop)−1
- n 次正方行列 A のトレースを tr A とすると tr A = tr(Aテンプレート:Mtop)。
- n 次正方行列 A の行列式を det A とすると det A = det(Aテンプレート:Mtop)。
- 実の n 次正方行列 A と標準内積 テンプレート:Angbr に関して テンプレート:Angbr = テンプレート:Angbr が任意の n 次元ベクトル x, y に対して成り立つ。
転置が特別な性質を持つものとして次のような行列がある。
- 対称行列:転置が元の行列と等しい(Aテンプレート:Mtop = A)。
- 反対称行列:転置が元の行列に −1 をかけたものになる(Aテンプレート:Mtop = −A)。
- 直交行列:転置が元の行列の逆行列になる(Aテンプレート:Mtop = A−1)。
これらの行列はそれぞれ随伴行列(行列のエルミート共役)に対するエルミート行列、歪エルミート行列、ユニタリ行列に相当する。
線形写像との関係
"「転置写像」"
m × n 行列 A を n 次元ベクトル空間 V から m 次元ベクトル空間 W への線形写像 f : V → W とみなすとき、A の転置行列 Aテンプレート:Mtop には f の転置写像 fテンプレート:Mtop が対応する。これは W の双対空間 W* から V の双対空間 V* への線形写像 fテンプレート:Mtop : W* → V* で、y* ∈ W* に対して
- [math]f^\top(y^*) = y^* \circ f [/math]
によって定義される[1]。この定義は y ∈ W と y* ∈ W* の自然なペアリングを y*(y) = テンプレート:Angbr と表記すれば、x ∈ V に対して
- [math] \langle f(x), y^* \rangle = \langle x, f^\top(y^*) \rangle [/math]
という関係式によって書き直すこともできる[2]。
脚注
参考文献
- Bourbaki, N. [1970] (1998). Algebra I. Chapters 1–3, Elements of Mathematics. Springer-Verlag. ISBN 3-540-64243-9.
関連項目