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バンドネオン | ||||||||||
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別称:タンゴ・コンサーティーナ | ||||||||||
各言語での名称 | ||||||||||
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バンドネオン ブエノスアイレスのバンドネオン奏者 | ||||||||||
分類 | ||||||||||
音域 | ||||||||||
機種によって異なる。一例:F3~F6[1] | ||||||||||
関連項目 | ||||||||||
バンドネオン(英: bandoneon、西: bandoneón)は、主にタンゴで用いられる楽器。
Contents
概説
アコーディオンに形が似ているため(同じ蛇腹楽器)、「アコーディオンの一種」という説明も見受けられるが、鍵盤は、ピアノのような形ではなく、ボタン型で、これが蛇腹を挟んで両側についている。バンドネオンは、アコーディオン族の一種であるコンサーティーナから生まれた。
1829年、ウィーンの楽器製作家デミアンはアコーディオンを発明した。ドイツのケムニッツ市の楽器製作家ウーリッヒは、ウィーンに旅したときにデミアンのアコーディオンを購入し、それをヒントにドイツ式のコンサーティーナを発明した。その後、同じドイツの楽器製作家ハインリヒ・バンドは、ケムニッツ市へ旅した際にウーリッヒのコンサーティーナを購入し[2]、これをもとに1847年にバンドネオンを考案した。ただしバンド自身は当初、自分の楽器を「アコーディオン」と呼び[3]、「バンドネオン」とは呼ばなかった。この楽器は野外での教会の儀式でパイプオルガンの代用として、またドイツの民俗音楽で使用された。
1880年代、アフリカ系アルゼンチン人のセバスティアン・パルドが、タンゴで用いたとする文献がある。アルゼンチンのタンゴ楽団は、最初はギター・フルート・ヴァイオリンという編成であり、バンドネオンの応用が徐々に広まったものの、しばらくバンドネオンなしが主流だった。20世紀になり、ドイツから大量のバンドネオンが輸出され、タンゴでよく用いられる楽器となった。バンドネオンの使用で、「タンゴ」の音楽の性質が大きく変化し、テンポも遅くなり、今の大衆のイメージたる「タンゴ」となった。
サンバやミロンガなどのフォルクローレで使われることもあり、アルゼンチンのご当地ワルツたるバルス・タンゴのバンドネオン入りのレコード録音も、フランシスコ・カナロ作曲の 「黄金の心」 などで聴ける。
また、バンドネオン独奏にこだわる演奏家もいる。映画『サンチャゴに雨が降る』でのアストル・ピアソラのバンドネオン独奏の録音は有名である。
日本の叙情歌を演奏したレコードもあり、武満徹作曲の作品にバンドネオンが使われるものがある。また、バッハなどのクラシック音楽の曲を演奏する演奏家もいる。
内部構造
調律などのメンテナンスは、専門の技術が必要である。
ボタン配列-ディアトニックとクロマチック
基本的なバンドネオン(ダイアトニック型:バイソニック型とも呼ぶ)は、蛇腹を押すときと引くときで別の音が出る、音階配置がほぼ不規則といった独特の構造を持つ。これは発展途上で不足した音階を建て増しした歴史に理由があるようである。このため習得が非常に難しいことから、「悪魔が発明した楽器」と呼ばれる。中央のボタンは、隣同士の特定のボタンを同時に押すと、ダイアトニック・コンサーティーナあるいはアコーディオンの左手と同じように和音が鳴るようになっている。
左33個・右38個・合計71個のボタンがあるライン式配列(Rheinische lage)のバンドネオン 142 voces が、タンゴの演奏で標準的に用いられるものである。このボタンの配列は、下の外部リンクにある図があるので、そちらを参考のこと。
それよりも多い左36個・右40個・合計76個のバンドネオン 152 voces もある。また、より少ない左31個・右34個・合計65個のバンドネオン 130 voces もある。近年は音域を拡張した 156 voces も生産されているが、一般的ではない。
ヨーロッパのアコーディオン奏者の要請に応えて構造を整理したPIGINI社のようなクロマチック型バンドネオンも作られ、こちらの鍵盤配列は規則的である。日本のタンゴ楽団も含め、アルゼンチン以外のタンゴ楽団で広く使用されてきた。アルゼンチンやウルグアイのタンゴ楽団ではダイアトニック型が使用されている。1950年代ぐらいから日本のタンゴ楽団でも、ダイアトニック型を使用するようになってきた。
タンゴの独特の音楽性は、複雑な構造を持つバンドネオンの運指、吸気リズムを自然に活かした演奏技術との相互発展の産物であり、単純に合理性で解釈できるものではない。
演奏法
蛇腹を引いたときの方が音が響く。蛇腹によく共鳴するためだと言われる。従って、バンドネオン奏者は蛇腹を引く音を多用し、蛇腹を引いて演奏しては空気抜きレバーを押しながら蛇腹を戻す、ということを繰り返すことが多い。特に、タンゴの鋭いスタッカートは、膝を使いながら蛇腹を瞬時に引くことによって出される。
標準的なバンドネオンの演奏としては、座ってバンドネオンを膝に置いて弾くのがごく一般的であるが、アストル・ピアソラは立ち膝で演奏することもあった。伝統的な演奏法は両足を閉じて弾くスタイルであり[4]、1920年代の細身の音色はこの奏法でしか出すことができない。現代の奏法は、楽器を片足のみに載せて弾くため、分厚く大きな音量が出るので、グランドピアノの蓋を全開にした音量とも互角で張り合える。
初期のオルケスタ・ティピカはコントラバスとバイオリンが全て立奏の後列、バンドネオン5人がぎっしり隙間なく詰められて横に座り、ピアノがダンススポット袖近くの左というのが一般的であった。上下関係も厳しく、バンドネオン第1が一番偉くマスターに近い。
製造元
製作元については、アルフレート・アルノルト社にこだわる演奏家がかなり多い。1911年にザクセン王国(現ザクセン州)南部のカールスフェルトに設立されたが、第二次世界大戦前後に製造中止した。AAブランドであり、ドブレA(Doble A)とも呼ばれている。
1861年に同じカールスフェルトで設立されたエルンスト・ルイス・アルノルト(Ernst Louis Arnold)社のバンドネオンも、演奏に用いられる。ELAブランドとして知られている。ちなみに、アルフレート・アルノルトは、エルンスト・ルイス・アルノルトの息子である。
同じくザクセンのクリンゲンタールに所在するマイネル&ヘロルト(Meinel & Herold)社製造のバンドネオンを、レオポルド・フェデリコは愛用している。3Bブランドで知られている。クリンゲンタールにはいくつかのバンドネオン・メーカー、博物館がある。
アコーディオン・メーカーで知られるホーナー社も、バンドネオンを製造していた。また、ベルリンのプレミア(Premier)社も、新品のバンドネオンを製造している。その他、製造元が10社ぐらいある。
バンドネオンについては、新しい楽器よりも、古くても調律・メンテナンスがしっかりしたものが演奏家から選ばれる傾向にある。ただし、ライブ中の故障、タンゴ演奏家・聴衆の高齢化という問題が大きく、近年はAAレプリカ[5]といった機種を再生産する方向へ変わっている。
製造元メーカー
- アルフレート・アルノルト (Alfred Arnold)
- エルンスト・ルイス・アルノルト (Ernst Louis Arnold)
- マイネル&ヘロルト (Meinel & Herold)
- ホーナー (Hohner)
- プレミア (Premier)
- バルタサール・エストル (Baltazar Estol) - アルゼンチン
著名なバンドネオン奏者
タンゴ楽団の代表が、バンドネオン奏者とは限らない。
アルゼンチン・ウルグアイ
- ビセンテ・グレコ
- エドゥアルド・アローラス
- ペドロ・マフィア
- パキータ・ベルナルド
- ペドロ・ラウレンス
- エクトル・バレラ
- アニバル・トロイロ
- アストル・ピアソラ
- ミゲル・カロー
- エドゥアルド・ロビーラ
- レオポルド・フェデリコ
- ダニエル・ビネリ
- ネストル・マルコーニ
- ルベン・フアレス
トルコ
- トルガ・サルマン (Tolga Salman)
日本
参考文献
書籍
- 舳松伸男『タンゴ―歴史とバンドネオン』(東方出版) ISBN:978-4885912573
- Hans-Peter Graf: Entwicklung einer Instrumentenfamilie: Der Standardisierungsprozeß des Akkordeons, Verlag Peter Lang 1998, ISBN 3-631-32841-9
- Peter Fries: Bandoneon-Schule. Studien und Etüden. Musikpartitur deutsch. Apollo Paul Lincke, Berlin/Mainz 1935, 1950, 1994 (Repr.).
- Klaus Gutjahr: Bandoneonspielen leicht gemacht. 2 Bde., Proyecto Bango, Berlin 1998.
- Walter Pörschmann: Schule des modernen Bandoneonspiels. 2 Bde., Nr. 1540, 3. Auflage, Spezialverlag Pörschmann & Sohn, Leipzig 1925.
映画
- Film zum Tanztheater Bandoneón. Pina Bausch en Buenos Aires. Argentinien 1995; 45 Minuten; Regie: Milos Deretich, Gabriela Schmidt, Gabriela Massuh. Produktion: Goethe-Institut Buenos Aires. Musik: Astor Piazzolla.
ディスコグラフィー
- Astor Piazzolla: Konzert für Bandoneon. Lothar Hensel, Johannes Goritzki u. Deutsche Kammerakademie Neuss. Capriccio 1996. CD 10565
- Tres movimientos tanguísticos porteños. Konzert für Bandoneon. Josep Pons und Orquestra de Cambra Teatre Lliure. Harmonia Mundi France 1996. HMC 901595 (CD)
脚注
関連項目
外部リンク
バンドネオンボタン配置
- Christian's Bandoneon Page - The keyboard system 142 voces - バンドネオン 142 voces のボタン配置
バンドネオンボタン配置掲載サイト
- バンドネオンメモランダム - 「ボタン」のリンクで鍵盤の配置も掲載
- Bandoneonbau Uwe Hartenhauer Germany - 鍵盤の配列(ドイツ語音名)も掲載
- Christian's Bandoneon Page (English)
- Proyecto Bandomecum Bandoneon's Portal Page (Spanish)
バンドネオン奏者のホームページ
バンドネオンを所蔵している博物館
- Musik-und Wintersportmuseum Klingenthal ドイツ・ザクセン州・クリンゲンタールにあるMusic & Wintersports博物館(アングロ・コンサーティーナ、バンドネオン)
- Harmonikamuseum Zwota ドイツ・ザクセン州・ズウォタ(クリンゲンタールの隣町)にあるhamonica博物館(アングロ・コンサーティーナ、バンドネオン)
- Horniman Museum and Gardens イギリス・ロンドンにあるホーニマン博物館(イングリッシュ・コンサーティーナ、アングロ・コンサーティーナ、バンドネオン)