「隣接行列」の版間の差分
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隣接行列(りんせつぎょうれつ、英: adjacency matrix)とは、代数的グラフ理論における基本的な概念で、グラフの頂点と頂点の隣接関係を表わす正方行列である。
頂点集合を {1, …, n} とする有限無向グラフ G に対して、その隣接行列 A(G) = [aij] とは(頂点集合によって添字づけられた)n 次正方行列であって、その (i, j) 成分 aij は頂点 i と頂点 j を結ぶ枝の数で定義される。これによりグラフ G の固有多項式やスペクトルがそれぞれ隣接行列 A(G) の固有多項式やスペクトルとして定義される。これらはグラフの不変量である(隣接行列そのものは頂点集合上の置換を除いてしか定まらない)。
有向グラフの場合、i から j に向かう枝があるときのみ (i, j) 成分を 1 に、そうでないとき (i, j) 成分を 0 にする。また、枝に重みがついているグラフの場合は、 (i, j) 成分を重みとする。
例
6つの頂点と7つの枝から成るグラフの一例
例えば、上の(重みなし)グラフは、次の隣接行列で表現できる。
- [math]\begin{bmatrix} 0 & 1 & 0 & 0 & 1 & 0\\ 1 & 0 & 1 & 0 & 1 & 0\\ 0 & 1 & 0 & 1 & 0 & 0\\ 0 & 0 & 1 & 0 & 1 & 1\\ 1 & 1 & 0 & 1 & 0 & 0\\ 0 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0\\ \end{bmatrix}[/math]
性質
- 重みなしグラフ G の隣接行列を A = A(G) とすると、An で表される行列の (i, j) 成分は、i から j への相違なる長さ n の路の数と等しくなる。実際、Anの(i, j)成分をaij (n)とすると、
- [math]A^n = A^{n-1} A = \left( \sum_k {a_{ik}^{(n-1)} a_{kj}} \right)[/math]
- であり、aik (n-1) akjは、(i から k への相違なる長さ n-1 の路の数)×(k から j への相違なる長さ 1 の路の数)であることから、帰納的に従う。
- したがって、An の (i, i) 成分が 0 でないとき、頂点 i を通る長さ n のループが存在し、逆も成立する。この性質は、有向グラフでも無向グラフでも成り立つ。
- G が無向グラフでかつ自己ループを持たないとき、G に含まれる三角形の数は、G の隣接行列 A を用いて、
- [math]\frac{1}{6} \cdot {\rm tr}(A^3)[/math]
- で表せる。
関連項目
- 隣接リスト
- 接続行列(incidence matrix)—グラフの頂点と枝の接続関係を表す行列
- ラプラシアン行列
- スペクトラルグラフ理論