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(近世以前)
 
(内容を「'''識字'''(しきじ)(literacy文字の読み書きができること。特定の国や地域における識字者の割合を識字率 l…」で置換)
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'''識字'''(しきじ)([[:en:literacy|literacy]])とは、[[文字]]([[書記言語]])を読み書きし、理解できること、またその能力。
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'''識字'''(しきじ)([[:en:literacy|literacy]]
  
文字に限らずさまざまな情報の読み書き、理解能力に言及する際には、日本語では'''[[リテラシー]]'''という表現が利用される。
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[[文字]]の読み書きができること。特定の国や地域における識字者の割合を識字率 literacy rateと呼び,[[国際連合教育科学文化機関]] UNESCOは成人識字率を 15歳以上の識字者の,人口に占める割合と定義している。どの程度の能力をもって識字とみなすべきかは,対象となる[[社会]]や[[言語]]などによって異なり,専門家の間でも見解が分かれる。自分の名前を書けるか,ある程度実用的な読み書きができるかなど,多様な基準がとられる。識字は[[教育]]の基礎となり,[[経済発展]]や社会の発展と密接に結びついているため,識字率は重要な経済社会指標として[[人間開発指数]]の要素ともなっている。
  
== 概説 ==
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[[中世]]以前は,庶民には教育を受ける機会や日常で接する文字や[[書物]]の量が乏しく,識字による便益も少なかったため,識字者は官吏や聖職者,学者などにかぎられた。ヨーロッパでは[[近代]]に[[印刷]]技術が発展,[[宗教改革]]と相まって大衆に書物が普及し,[[市民社会]]の成熟とともに近代的な[[公教育]]制度が整備され,識字が広まった。日本では[[近世]]に文書の流通が増加し,また[[寺子屋]]が庶民の教育に寄与したため識字率は同時代の世界で比較的に高水準だったとされるが,地域間や男女間,階層間での差が大きく,能力の程度はまちまちだったとする説もある。明治期,学校教育の確立([[学制]]),[[就学率]]の向上により識字率は飛躍的に高まった。今日,日本では公的な識字率の調査は実施しておらず,[[義務教育]]の就学率をもって識字率としている。
[[File:World illiteracy 1970-2010.svg|thumb|1970年から2015年にかけての45年間の全世界の非識字率の推移。この45年間に非識字率は半減した]]
 
[[File:Figure 5 Literacy has rapidly spread Reading the past writing the future.svg|thumb|1990年から2015年にかけての25年間における世界各地域の識字率の推移。発展途上国において急速な識字率の上昇が認められる]]
 
識字は[[日本]]では'''読み書き'''とも呼ばれる。'''読む'''とは文字に書かれた[[言語]]の一字一字を正しく[[発音]]して[[理解]]できる([[読解]]する)ことを指し、'''書く'''とは文字を言語に合わせて正しく記す([[筆記]]する)ことを指す。
 
 
 
何をもって識字とするかには様々な定義が存在するが、[[国際連合教育科学文化機関|ユネスコ]]では、「日常生活で用いられる簡単で短い文章を理解して読み書きできる」状態のことを識字と定義している<ref>https://www.accu.or.jp/jp/activity/education/02-01d.html 公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター (ACCU)  2017年12月16日</ref>。
 
 
 
この識字能力は、現代社会では最も基本的な教養のひとつで、[[初等教育]]で教えられる。生活のさまざまな場面で基本的に必要になる能力であり、また[[企業]]などで正式に働くためには必須である。これまで識字能力がなくとも生活することのできた地域においても、近代以後の急速な産業化によって識字能力が必須となり、識字能力は生存に欠かせないものとなりつつある。また識字能力は生活水準と直結し、また国家の産業力とも連動するため、[[人間開発指標]]など多くの開発指標において識字率は重要な要素の一つとなっている<ref>「生きるための読み書き 発展途上国のリテラシー問題」pv 中村雄祐 みすず書房 2009年9月10日発行</ref>。またこの理解のため、[[開発経済学]]などにおいても識字率は重要な指標の一つとして用いられる。
 
 
 
また、この項目を読み、内容が理解でき、何らかの形式にて書き出すことができる者は、少なくとも日本語に対する識字能力を持ち合わせているとみなすことができる。
 
 
 
文字を読み書きできないことを「'''非識字'''」(ひしきじ)または「'''文盲'''」(もんもう)ないし「'''明き盲'''」(あきめくら)といい、そのことが、本人に多くの不利益を与え、国や地域の発展にとっても不利益になることがあるという考えから、'''識字率'''の高さは基礎教育の浸透状況を測る指針として、広く使われている(「識字率が低い」場合は「文盲率が高い」とも言い換えられる)。
 
 
 
なお、「文盲」や「明き盲」は[[視覚障害者]]に対する差別的ニュアンスを含むことから、現在は公の場で使用することは好ましくないとされている<ref>[http://www.houko.com/00/01/S25/100.HTM 公職選挙法48条]で「文盲」が使われていたが、平成25年法律第21号で表現が「心身の故障その他の事由」に改められた。</ref>。
 
 
 
[[光学文字認識]](OCR)の読み取り精度を指して識字率と呼称するのは全くの誤りである。
 
 
 
== 識字状況 ==
 
{| border=0 cellspacing="2" cellpadding="2"
 
| colspan=3 align="center" bgcolor="#b5b5b5" | '''識字率(推定)'''<br /><small>([[OECD]])</small>
 
|-
 
| align="center" bgcolor="#cfcfcf" | &nbsp;
 
| align="center" bgcolor="#cfcfcf" | 1970年
 
| align="center" bgcolor="#cfcfcf" | 2000年
 
|-
 
| &nbsp;世界全体&nbsp;
 
| align="center" | &nbsp;63 %&nbsp;
 
| align="center" | &nbsp;79 %&nbsp;
 
|-
 
| bgcolor="#e8e8e8" | &nbsp;先進国および[[新興工業国]]&nbsp;
 
| align="center" bgcolor="#e8e8e8" | &nbsp;95 %&nbsp;
 
| align="center" bgcolor="#e8e8e8" | &nbsp;99 %&nbsp;
 
|-
 
| &nbsp;[[後発開発途上国]]&nbsp;
 
| align="center" | &nbsp;47 %&nbsp;
 
| align="center" | &nbsp;73 %&nbsp;
 
|-
 
| bgcolor="#e8e8e8" | &nbsp;[[内陸開発途上国]]&nbsp;
 
| align="center" bgcolor="#e8e8e8" | &nbsp;27 %&nbsp;
 
| align="center" bgcolor="#e8e8e8" | &nbsp;51 %&nbsp;
 
|}
 
[[18世紀]]以降、ヨーロッパや北アメリカにおいては識字率の上昇が続いてきた。これは[[産業革命]]の進展と[[近代国家]]の成立に伴い、国民の教育程度の向上が必須課題となり、国家によって[[義務教育]]が行われるようになったためである。この傾向は[[20世紀]]に入り、産業化の遅れたアジアやアフリカ、南アメリカなどの諸国が国民の教育に力を入れるようになったことでさらに加速した。[[第二次世界大戦]]後、世界の識字率は順調に向上しており、[[1970年]]には全世界の36.6%が非識字者だったものが、[[2000年]]には20.3%にまで減少している<ref name="千葉監修、寺尾・永田編、2004年、p38">「国際教育協力を志す人のために 平和・共生の構築へ」p38 千葉杲弘監修 寺尾明人・永田佳之編 学文社 2004年10月10日第1版第1刷</ref>。しかし、まだ世界の全ての人がこの能力を獲得する教育機会を持っているわけではない。また、男性の非識字率よりも女性の非識字率の方がはるかに高く、2000年には男性の非識字者が14.8%だったのに対し、女性の非識字者は25.8%にのぼっていた<ref name="千葉監修、寺尾・永田編、2004年、p39">「国際教育協力を志す人のために 平和・共生の構築へ」p39 千葉杲弘監修 寺尾明人・永田佳之編 学文社 2004年10月10日第1版第1刷</ref>。ただしこの男女間格差は縮小傾向にあり、1970年に比べて2000年には5%ほど格差が縮小していた<ref name="千葉監修、寺尾・永田編、2004年、p39" />。地域的にみると、識字者の急増は全世界的に共通しており、どの地域においても非識字率は急減する傾向にあるが、なかでも[[東アジア]]や[[オセアニア]]において識字率の向上が著しい。識字率は北アメリカやヨーロッパにおいて最も高いが、東アジア・オセアニア・[[ラテンアメリカ]]の識字率もそれに次いで高く、この3地域における非識字者は1割強に過ぎない。それに対し、[[アフリカ]]・[[中東]]・[[南アジア]]の非識字率はいまだに高く、4割程度が文字を利用することができない。最も世界で非識字率が高いのは南アジアであり、2000年のデータでは約45%が非識字者である<ref name="千葉監修、寺尾・永田編、2004年、p40" >「国際教育協力を志す人のために 平和・共生の構築へ」p40 千葉杲弘監修 寺尾明人・永田佳之編 学文社 2004年10月10日第1版第1刷</ref>。アフリカにおいては2001年のデータで非識字率は37%となっている<ref>「アフリカ経済論」p270 北川勝彦・高橋基樹編著 ミネルヴァ書房 2004年11月25日初版第1刷</ref>。また、非識字率は急減を続けているものの、非識字者の実数は減少せず、むしろやや増加している地域も存在する<ref name="千葉監修、寺尾・永田編、2004年、p40" />。
 
 
 
=== 発展途上国における識字運動 ===
 
発展途上国、特に第二次世界大戦後に独立したアジアやアフリカの新独立国においては識字率が非常に低いところが多かったが、識字および教育は国力に直結するとの認識はすでに確立されていたため、これらの発展途上国の多くは初等教育に力を入れ、識字率の向上に努めた。途上国政府のみならず、先進各国の政府も識字能力の向上のため多額の援助を行い、多数の[[NGO]]も積極的な支援を行った。これらの努力により前述のように途上国の識字率は急上昇をつづけているが、教員や予算の不足によって国内のすみずみまで充実した公教育を提供することのできない政府も多く、アフリカの一部においてはいまだ識字率が50%を切っている国家も存在する。
 
 
 
第二次世界大戦後に設立された[[国際連合教育科学文化機関|ユネスコ]]は識字率の向上を重要課題の一つと位置付けており、様々な識字計画を推進している。その一環として[[1966年]]には毎年[[9月8日]]が[[国際識字デー]]と定められ<ref>http://www.afpbb.com/articles/-/2515456 『「国連識字デー」インドの寺子屋で学ぶ子どもたち』AFPBB 2017年12月27日閲覧</ref>、[[1990年]]は国際識字年として様々な取組が行われた。そして識字への取り組みをより強化するために、[[2003年]]には「国連識字の10年」が開始され、[[2012年]]まで10年にわたって行われた<ref>http://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/1144/ 「国連識字の10年(2003-2012年)」国連本部で開始 「すべての人に識字を」をスローガンに、国連副事務総長が提唱」国際連合広報センター 2017年12月27日閲覧</ref>。
 
 
 
=== 機能的非識字 ===
 
{{出典の明記|date=2016年1月|section=1}}
 
文字を読み書きできない'''非識字'''(illiteracy)と読み書きを'''流暢'''にできる段階(full fluency)の間には、初歩的な読み書きを行えても、社会参加のための読み書きを満足に使いこなせない段階が存在する。これが'''[[機能的非識字]]'''(functional illiteracy)である。[[1956年]]にウィリアム・グレイ([[:en:William S. Gray|William S. Gray]])は識字教育に関する調査研究報告書の中で、「'''機能的識字'''(functional literacy)」の概念を明確にして、識字教育の目標を機能的識字能力を獲得することに設定すべきと提言した。
 
 
 
== 国別の識字率 ==
 
{{Main|識字率による国順リスト}}
 
識字率は、初等教育を終えた年齢、一般には15歳以上の人口に対して定義される。一般的には識字率を計算する場合、[[母語]]における日常生活の読み書きができることを識字の定義とするが、識字の定義はその国によって異なっている<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=259 「世界の統計2017」p259 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>。全世界の識字率は2000年時点で約80%で<ref name="千葉監修、寺尾・永田編、2004年、p38">「国際教育協力を志す人のために 平和・共生の構築へ」p38 千葉杲弘監修 寺尾明人・永田佳之編 学文社 2004年10月10日第1版第1刷</ref>、母語と[[公用語]]が異なる場合(公用語が2言語以上存在する場合)や、[[移民]]が多い国ほど識字率は低下する傾向がある。この点で、識字率を国際的に比較するには大きな注意を払う必要がある。
 
 
 
 一般に、識字率の調査は、角(2012)の研究で詳述されているように、実施方法・費用調達の点において、設計と実施が極めて困難であり、流布されている数値の信頼性はかなり低いと考えなければならない。この識字率の信頼性の低さは先進国・途上国を問わない。途上国の多くにおいては国勢調査時の回答または初等教育の就学率がそのまま識字率として流用されるケースが多く、一方先進国においてはほとんどすべての人が識字能力を持っていると推定され、非識字者があまりにも少なく必要性が疑わしいため調査を行わず、「ほぼ全員が識字能力を持つ」という意味で識字率99%と回答することが多いためである<ref>「生きるための読み書き 発展途上国のリテラシー問題」p13 中村雄祐 みすず書房 2009年9月10日発行</ref>。日本においても識字率調査は近年行われていない<ref>http://www.stat.go.jp/library/faq/faq27/faq27n03.htm 「各国の識字率」総務省統計局 2017年12月28日閲覧</ref>。このため、[[アメリカ]]や[[日本]]といった多くの先進国の識字率は99%以上と推定されてはいるものの、[[国連開発計画]]の調査データにおいては調査が行われていないためにデータは空欄となっている<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p190 2017年12月28日閲覧</ref>。
 
 
 
[[2015年]]時点で最も識字率の低い国家は[[アフリカ大陸]]の[[ニジェール]]であり、識字率は19.1%にとどまっている。以下、識字率が低い順に[[ギニア]]、[[ブルキナファソ]]、[[中央アフリカ]]、[[アフガニスタン]]、[[ベナン]]、[[マリ]]、[[チャド]]、[[コートジボワール]]、[[リベリア]]の順となっており、これらの国家の識字率はいずれも50%を割っている<ref>http://www.stat.go.jp/naruhodo/c3d0908.htm 「9月8日  国際識字デー」総務省 統計局 なるほど統計学園 2017年12月27日閲覧</ref>。
 
 
 
=== アジア ===
 
[[ファイル:Analfabetismo2013unesco.png|600px|thumb|2013年の識字率一覧]]
 
* {{AFG}} - 38.2%(男性52.0%、女性24.2%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{IRQ}} - 79.7%(男性85.7%、女性73.7%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{IRN}} - 86.8%(男性91.2%、女性82.5%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{INA}} - 93.9%(男性96.3%、女性91.5%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{IND}} - 71.2%(男性81.3%、女性60.6%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{OMA}} - 91.1%(男性93.6%、女性85.6%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{KAZ}} - 99.7%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p191 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{QAT}} - 94.7%(男性89.1%、女性88.6%)(2005-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p190 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{CAM}} - 77.2%(男性84.5%、女性70.5%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{CYP}} - 97.9%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p190 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{KGZ}} - 99.2%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p192 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{KUW}} - 93.9%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p191 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{KSA}} - 94.7%(男性97.0%、女性91.1%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{SYR}} - 84.2%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p192 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{SIN}} - 94.7%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p190 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{SRI}} - 92.6%(男性93.6%、女性91.7%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{THA}} - 93.5%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p191 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{TJK}} - 99.7%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p192 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{TUR}} - 95.0%(男性98.4%、女性91.8%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{CHN}} - 94.0%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p191 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{PAK}} - 57.9%(男性69.5%、女性45.8%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{BAN}} - 61.5%(男性64.6%、女性58.5%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
 
 
=== アフリカ ===
 
* {{NGR}} - 59.6%(男性69.2%、女性49.7%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{LES}} - 79.4%(男性70.1%、女性88.3% 男女の値の比率が逆転している)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
* {{NIG}} - 19.1%(男性27.3%、女性11.0%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
*{{GIN}} - 30.4%(男性38.1%、女性22.8%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
*{{BUR}} - 36.0%(男性43.0%、女性29.3%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
 
 
=== 北アメリカ ===
 
* {{CUB}} - 99.8%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p192 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{DOM}} - 91.8%(男性91.2%、女性92.3%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
 
 
=== 南アメリカ ===
 
* {{BRA}} - 90.0%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p191 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{URU}} - 98.3%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p190 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{PER}} - 94.5%(男性97.3%、女性91.7%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
 
 
=== ヨーロッパ ===
 
* {{RUS}} - 99.6%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p191 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{EST}} - 99.8%(2006-2010年)<ref>http://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2011/UNDP_Tok_HDR%202011Statistics_20140211.pdf 「統計別表 - 国連開発計画(UNDP)」p190 2017年12月28日閲覧</ref>
 
* {{POR}} - 95.7%(男性97.1%、女性94.4%)(2015年)<ref>http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2017al.pdf#page=266 「世界の統計2017」p266 総務省統計局 2017年12月27日閲覧</ref>
 
 
 
== 歴史 ==
 
=== 総論 ===
 
その歴史において文字を持たなかった文明においては識字という概念が存在しないのは当然であるが、文字を発明または導入した文明においても古代から中世における識字率はどこも非常に低いものだった。文字を記し保存する媒体、およびそれを複製する手段に制限があったため、文字自体の重要性が低く、社会の指導層を除いて識字能力を獲得する必要性が少なかったためである。こうした状況は、[[紙]]の発明によって媒体の制限がやや緩んだものの、どの社会においても中世にいたるまでほとんど変わらなかった。
 
 
 
こうした状況は、[[ヨハネス・グーテンベルク]]による[[活版印刷]]の発明によって大きく変化した。活版印刷によって[[本]]が大量に供給されるようになり、それまで非常に高価だった書籍が庶民でも手に入るようになったため、識字の必要性が急激に高まったのである。また印刷によって書籍に整った文字が並ぶようになったことは、それまでの手書き本に比べて読解を容易なものとし、識字の有用性をより高めることとなった。こうした書籍の氾濫は、貴重な本を一人の人間が読み上げそれを周囲の大勢の人間が拝聴するという形で行われていた知識の伝達システムを変化させ、聴覚に代わり視覚が優位に立つ新しい方法が主流となった<ref>「印刷・スペース・閉ざされたテキスト」ウォルター・オング(「歴史の中のコミュニケーション メディア革命の社会文化史」所収)p135 デイヴィッド・クロウリー、ポール・ヘイヤー編 林進・大久保公雄訳 新曜社 1995年4月20日初版第1刷</ref>ため、識字能力の重要性はさらに増大した。
 
 
 
全ての文化で文字があるわけではなく、いわゆる無文字社会も多かったが、19世紀以降こうした民族においても[[ラテン文字]]による[[正書法]]を定めることが多くなった。これは、ヨーロッパから送り込まれた[[カトリック]]や[[プロテスタント]]の[[宣教師]]が布教のために現地諸言語のラテン文字化を推進したためである<ref>「図説 アジア文字入門」p102 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所編 河出書房新社 2005年4月30日初版発行</ref>。
 
 
 
=== メソポタミア ===
 
世界最古の文明のひとつである[[メソポタミア]]ではすでに文字が発明されており、各都市では学校が設立され[[書記]]が養成されて行政文書の作成にあたっていた。しかし文字の読み書きは特殊技能であり、書記以外のほとんどの人は文字の読み書きができず、識字率は非常に低かったと考えられている。各都市の[[王]]でさえ識字能力は求められず、まれに識字能力を持つ王が現れた場合、記録にはそのことが高らかにうたわれていることがある<ref>小林登志子 『シュメル 人類最古の文明』p200-203 中央公論新社〈中公新書〉、2005年。</ref>。
 
 
 
=== ヨーロッパ ===
 
[[中世]]も後期に入ると知識階級の間ではローマ教会の公用語であったラテン語の読み書きが広まり、ヨーロッパ内で知識人たちは自由にやり取りをすることが可能となっていったが、一般民衆には全く縁のないものであった。教育、特に高等教育はすべてラテン語で行われ、書物もラテン語で書かれ、[[聖書]]もラテン語で書かれるものであり、一般民衆がこれらを読むことは困難だった。これはすなわち、各地方の言語で行われる一般市民による音声言語の文化と、知識人たちによる文章言語の文化が断絶していたことを示している<ref>「新版 子どもの教育の歴史 その生活と社会背景を見つめて」p22 江藤恭二監修 篠田弘・鈴木正幸・加藤詔士・吉川卓治編 2008年3月31日初版第1刷 名古屋大学出版会</ref>。
 
 
 
この状況が変化するのは、[[マルティン・ルター]]によって[[宗教改革]]が開始されてからである。[[プロテスタント]]諸派は聖書を信仰の中心に据えたため、一般市民も聖書を読むことができるよう聖書の各国語への翻訳と民衆への教育を積極的に行い始めた<ref>「新版 子どもの教育の歴史 その生活と社会背景を見つめて」p23 江藤恭二監修 篠田弘・鈴木正幸・加藤詔士・吉川卓治編 2008年3月31日初版第1刷 名古屋大学出版会</ref>。同様の理由でこの時期プロテスタント圏においては[[義務教育]]が提唱されるようになり、17世紀前半には[[ワイマール公国]]・[[ゴータ公国]]・[[マサチューセッツ植民地]]などで義務教育が導入されるようになった。その後もプロテスタント圏における義務教育推進や母国語識字教育は続き、18世紀には周辺地域に比べ新教地域の識字率は高かったとされている<ref>「新版 子どもの教育の歴史 その生活と社会背景を見つめて」p11 江藤恭二監修 篠田弘・鈴木正幸・加藤詔士・吉川卓治編 2008年3月31日初版第1刷 名古屋大学出版会</ref>。こうした教育の普及努力により、17世紀以降西ヨーロッパ諸国において識字率は徐々に上昇を始めた。しかしこの時期においても知識階級の文章言語はラテン語のままであった。
 
 
 
17世紀と18世紀を通じ上昇を続けた識字率は、19世紀に入るとより一層上昇するようになった。これは産業革命の開始によって識字能力が業務上多くの職種において必須となり、国力を増進させたい国家と生活水準を上昇させたい市民がともに識字能力を強く求めるようになったからである。ほとんどの国で義務教育が導入されるようになり、またラテン語にかわって各国語において高度な知識が記述され出版されるようになり、知識階級と一般市民の文章言語の断絶が解消したのもこの時期のことである。19世紀末には、イギリスやフランスなど当時の最先進国においては識字率が9割を越え、ほとんどの人々が文字を読み書きすることが可能となっていた<ref>「新版 子どもの教育の歴史 その生活と社会背景を見つめて」p24 江藤恭二監修 篠田弘・鈴木正幸・加藤詔士・吉川卓治編 2008年3月31日初版第1刷 名古屋大学出版会</ref>。
 
 
 
=== 日本 ===
 
==== 近世以前 ====
 
[[1443年]]に[[朝鮮通信使]]一行に参加して日本に来た[[申叔舟]]は、「日本人は男女身分に関わらず全員が字を読み書きする」と記録し、また幕末期に来日した[[ヴァーシリー・ゴローニン]]は「日本には読み書き出来ない人間や、祖国の法律を知らない人間は一人もゐない」<ref>『日本幽囚記』(井上満訳、岩波文庫 p.31 </ref>と述べている。日本の識字率は極めて高く、[[江戸時代]]に培われた高い識字率が[[明治]]期の発展につながったとされる。
 
 
 
近世の識字率の具体的な数字について明治以前の調査は存在が確認されていないが、江戸末期についてもある程度の推定が可能な明治初期の文部省年報によると、[[1877年]]に[[滋賀県]]で実施された一番古い調査で「6歳以上で自己の姓名を記し得る者」の比率は男子89%、女子39%、全体64%であり、[[群馬県]]や[[岡山県]]でも男女の自署率が50%以上を示していたが、[[青森県]]や[[鹿児島県]]の男女の自署率は20%未満とかなり低く、地域格差が認められる<ref name="jisho">八鍬友広, [http://ci.nii.ac.jp/naid/110001175731/ 「近世社会と識字 (<特集> 公教育とリテラシー)]」, 教育學研究, 70(4), 524-535, (2003).</ref>。
 
 
 
また、[[1881年]]に[[長野県]][[北安曇郡]][[常盤村 (長野県北安曇郡)|常盤村]](現・[[大町市]])で15歳以上の男子882人を対象により詳細な自署率の調査が実施されたが、自署し得ない者35.4%、自署し得る者64.6%との結果が得られており(岡山県の男子の自署率とほぼ同じ)、さらに自署し得る者の内訳は、自己の氏名・村名のみを記し得る者63.7%、日常出納の帳簿を記し得る者22.5%、普通の書簡や証書を白書し得る者6.8%、普通の公用文に差し支えなき者3.0%、公布達を読みうる者1.4%、公布達に加え新聞論説を解読できる者2.6%(当時の新聞論説は片仮名交じり漢文調で、非常に難しかった)となる。したがってこの調査では、自署できる男子のうち、多少なりとも実用的な読み書きが可能であったのは4割程度である<ref>小林恵胤, 「明治14年の識字調 ―当時の北安曇郡常盤村の場合―」, 長野県 近代史研究, (5), 51-57 (1973).</ref>。
 
 
 
{| class="wikitable" style="text-align:right; font-size:small"
 
|+'''明治期の各県の調査初年次の自署率<br>(文部省年報による)<ref name="jisho"/>'''
 
!府県!!調査初年次!!調査対象!!男子!!女子!!全体
 
|-
 
|{{flagicon|滋賀県}}滋賀県||[[1877年]]||rowspan="2"|満6歳以上||89.23||39.31||64.13
 
|-
 
|{{flagicon|群馬県}}群馬県||[[1880年]]||79.13||23.41||52.00
 
|-
 
|{{flagicon|青森県}}青森県||[[1881年]]||全住民||37.39||2.71||19.94
 
|-
 
|{{flagicon|鹿児島県}}鹿児島県||[[1884年]]||rowspan="2"|満6歳以上||33.43||4.00||18.33
 
|-
 
|{{flagicon|岡山県}}岡山県||1887年||65.64||42.05||54.38
 
|}
 
 
 
ただし、近世の正規文書は話し言葉と全く異なる特殊文体によって書かれ、かなりの習熟が必要であった。近世期「筆を使えない者」を意味する「無筆者」とは文書の作成に必要な漢字を知らない者を意味しており<ref name="ordinance_of_immigration_act_article55">2014年現在でも、[[出入国管理及び難民認定法]]施行規則第55条において、「'''無筆'''''、身体の故障その他申請書を作成することができない特別の事情がある者''」の口頭申請を認める規定があり、法令用語として「無筆」が使用されている。</ref>、簡単なかなを読めることはどの庶民の間でも常識に属し、大衆を読者に想定したおびただしい平仮名主体の[[仮名草子]]が発行されていた。
 
 
 
義務教育開始以前の文字教育を担ったのは[[寺子屋]]であり、かなと簡単な漢字の学習、および算数を加えた「読み書き算盤」は寺子屋の主要科目であった。寺子屋の入門率から識字率は推定が可能であるが、確実な記録の残る[[近江国]]神埼郡北庄村(現・[[滋賀県]][[東近江市]])にあった寺子屋の例では、入門者の名簿と人口の比率から、幕末期に村民の91%が寺子屋に入門したと推定される<ref name="jisho"/>。
 
 
 
==== 近代以後 ====
 
明治時代に[[義務教育]]が開始され、徐々にその普及が進んでいくにしたがって、識字率はますます上昇していった。この時期の識字率調査としては[[1899年]](明治32年)より第二次世界大戦直前まで、[[徴兵検査]]と同時に新成人男子に対し行われた「壮丁教育程度調査」があるが、これによれば調査開始の1899年においては成年男子の23.4%は文字を読むことができず、20歳識字率は76.6%にとどまっていたが、その後識字率は急速に上昇し、[[1925年]](大正14年)には20歳非識字率はわずか0.9%、機能的非識字者を合わせても1.7%にまで減少して、このころまでに新規の非識字者の出現はほぼ消滅したと考えられている。女性においても[[1935年]](昭和10年)ごろには新規非識字者の出現はほぼなくなったと考えられており、この時点で非識字者は、すでに成人したもののみに限られることとなった<ref>http://home.hiroshima-u.ac.jp/cice/wp-content/uploads/2014/02/15-1-04.pdf 「識字能力・識字率の歴史的推移――日本の経験」斉藤泰雄 広島大学教育開発国際協力研究センター『国際教育協力論集』第 15 巻 第 1 号(2012) 55 ~ 57頁 2017年12月28日閲覧</ref>。
 
 
 
第二次大戦終結後、[[1948年]](昭和23年)に「[[日本語]]は漢字が多いために覚えるのが難しく、識字率が上がりにくいために民主化を遅らせている」という偏見から、[[連合国軍最高司令官総司令部|GHQ]]の[[ジョン・ペルゼル]]<ref>[http://kotobank.jp/word/%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%82%BC%E3%83%AB ペルゼル とは - コトバンク]</ref>による発案で、日本語を[[ローマ字]]表記にしようとする計画が起こされた。そして正確な識字率調査のため[[民間情報教育局]]は国字[[ローマ字論]]者の言語学者である[[柴田武]]に全国的な調査を指示した(統計処理は[[林知己夫]]が担当)。[[1948年]]8月、文部省教育研修所(現・[[国立教育政策研究所]])により、15歳から64歳までの約1万7千人の老若男女を対象とした日本初の全国調査「日本人の読み書き能力調査」が実施されたが、その結果は漢字の読み書きができない者は2.1%にとどまり、日本人の識字率が非常に高いことが証明された。柴田はテスト後にペルゼルに呼び出され、「識字率が低い結果でないと困る」と遠回しに言われたが、柴田は「結果は曲げられない」と突っぱね<ref>[[朝日新聞]]2008年12月5日夕刊</ref>、日本語のローマ字化は撤回された<ref>『戦後日本漢字史』(新潮選書、阿辻哲次)p.40-</ref>。[[漢字廃止論]]も参照。
 
 
 
=== その他 ===
 
[[15世紀]]に[[ハングル]]を創製して[[表音文字]]を導入した朝鮮では、ハングルのみを知っている人間は庶民にも少なからずいたが、初歩的な漢字以上の漢字の知識を持つものは非常に少なく、知識人や富裕な商人に限られていた。
 
 
 
ベトナムでは、ついに[[表音文字]]を自力で開発しなかったため、複雑な[[チュノム]]と漢字を知ることができる層と、それ以外とに分かれ、庶民は文字を知っていても、少数の漢字とチュノムを書けるだけという例が多かった。中国本土では革命後、識字率を引き上げる目的で[[簡体字]]を採用し、多くの漢字を9画以内に収めた。
 
 
 
== 識字に関する基本文献 ==
 
* 日本社会教育学会編『国際識字10年と日本の識字問題』東洋館出版社、1991年
 
* 菊池久一『&lt;識字&gt;の構造-思考を抑圧する文字文化-』勁草書房、1995年
 
* 鈴木理恵「江戸時代における識字の多様性」『史学研究』209、1995年
 
* 角知行「「日本人の読み書き能力調査」(1948)の再検討」『天理大学学報』第208輯、2005年
 
* 角知行「文字弱者のプロフィール−日米のリテラシー調査から」『天理大学人権問題研究室紀要』第9号、2006年
 
* あべ・やすし「均質な文字社会という神話−識字率から読書権へ-」『社会言語学』VI、2006年
 
* あべ・やすし「漢字という障害」([[ましこ・ひでのり]]編著『ことば/権力/差別』三元社)、2006年
 
* 鈴木理恵「近世後期における読み書き能力の効用-手習塾分析を通して-」『社会言語学』VI、2006年
 
* かどや ひでのり、あべ やすし編著『識字の社会言語学』生活書院、2010年
 
* 角知行『識字神話をよみとく 「識字率99%」の国・日本というイデオロギー』明石書店、2012年
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
{{Reflist}}
 
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[国際識字デー]]
 
* [[リテラシー]] - [[機能的非識字]]
 
* [[識字運動]]
 
* [[夜間中学校]]
 
* [[パウロ・フレイレ]]
 
* [[部落問題]]
 
* [[口承文学]]
 
* [[伝承]]
 
* [[文化多元主義]]
 
* [[世界言語権宣言]]
 
* [[メディアリテラシー]]
 
* [[絵暦]]
 
* [[ユネスコ世宗識字賞]]
 
* [[読字障害]]
 
 
 
{{国の指標}}
 
  
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識字の定義は多様だが,21世紀初めにおいて,世界の男性の 8割,女性の 7割がおおむね識字者とされた。識字率は,欧米や日本など[[先進国]]では 100%に近いが,南アジアやサハラ以南のアフリカなどの[[発展途上国]]では低い。一地域内でも,社会経済的地位などにより格差があり,女性の教育が軽視される地域では性差が大きい。UNESCOの発表によると,1950年から 2000年までに世界の非識字率は 44%から 20%となったが,非識字者の数は 7億人から 8億6000万人へと増加した。[[国際連合]]は 1990年を国際識字年に,2003~12年を「国連識字の10年」と定め[[キャンペーン]]を展開した。今日,UNESCOをはじめとする[[国際機構]]や各国政府,[[非政府組織]] NGOなどが識字教育を推進している。
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2018/10/25/ (木) 17:46時点における最新版

識字(しきじ)(literacy

文字の読み書きができること。特定の国や地域における識字者の割合を識字率 literacy rateと呼び,国際連合教育科学文化機関 UNESCOは成人識字率を 15歳以上の識字者の,人口に占める割合と定義している。どの程度の能力をもって識字とみなすべきかは,対象となる社会言語などによって異なり,専門家の間でも見解が分かれる。自分の名前を書けるか,ある程度実用的な読み書きができるかなど,多様な基準がとられる。識字は教育の基礎となり,経済発展や社会の発展と密接に結びついているため,識字率は重要な経済社会指標として人間開発指数の要素ともなっている。

中世以前は,庶民には教育を受ける機会や日常で接する文字や書物の量が乏しく,識字による便益も少なかったため,識字者は官吏や聖職者,学者などにかぎられた。ヨーロッパでは近代印刷技術が発展,宗教改革と相まって大衆に書物が普及し,市民社会の成熟とともに近代的な公教育制度が整備され,識字が広まった。日本では近世に文書の流通が増加し,また寺子屋が庶民の教育に寄与したため識字率は同時代の世界で比較的に高水準だったとされるが,地域間や男女間,階層間での差が大きく,能力の程度はまちまちだったとする説もある。明治期,学校教育の確立(学制),就学率の向上により識字率は飛躍的に高まった。今日,日本では公的な識字率の調査は実施しておらず,義務教育の就学率をもって識字率としている。

識字の定義は多様だが,21世紀初めにおいて,世界の男性の 8割,女性の 7割がおおむね識字者とされた。識字率は,欧米や日本など先進国では 100%に近いが,南アジアやサハラ以南のアフリカなどの発展途上国では低い。一地域内でも,社会経済的地位などにより格差があり,女性の教育が軽視される地域では性差が大きい。UNESCOの発表によると,1950年から 2000年までに世界の非識字率は 44%から 20%となったが,非識字者の数は 7億人から 8億6000万人へと増加した。国際連合は 1990年を国際識字年に,2003~12年を「国連識字の10年」と定めキャンペーンを展開した。今日,UNESCOをはじめとする国際機構や各国政府,非政府組織 NGOなどが識字教育を推進している。




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