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{{Redirectlist|パニックアタック|日本の漫画家|パニックアタック (漫画家)|日本のロックバンド[[UNICORN|ユニコーン]]のアルバム|PANIC ATTACK}}
 
{{Infobox disease
 
|Name          = パニック障害
 
| Image          = Panic attack.jpg
 
|Caption        =
 
| Field          = [[精神医学]]
 
|DiseasesDB    = 30913
 
|ICD10          = {{ICD10|F|41|0|f|40}}
 
|ICD9          = {{ICD9|300.01}}, {{ICD9|300.21}}
 
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|MeshID        = D016584 }}
 
'''パニック障害'''(パニックしょうがい、{{lang-en|Panic disorder ; '''PD'''}})とは、予期しない[[#パニック発作|パニック発作]](Panic attacks, PA)が繰り返し起こっており、1か月以上にわたりパニック発作について心配したり、行動を変えているという特徴を持つ[[不安障害]]に分類される[[精神障害]]である<ref name="dsm4パニック" />。
 
  
きっかけのないパニック発作は、4つ以上の特定の症状が急速に、10分以内に、頂点に達する<ref name="dsm4パニック発作">『DSM-IV-TR』§パニック発作</ref>。典型的な悪化の仕方では最終的に[[広場恐怖症]]へと進展する{{sfn|アレン・フランセス|2014|pp=79-82}}。まれに幻聴や幻覚が起こることで知られるが、統合失調症ではない。
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'''パニック障害'''(パニックしょうがい、{{lang-en|Panic disorder ; '''PD'''}}
  
『[[精神障害の診断と統計マニュアル]]』第2版(DSM-II)における'''[[不安神経症]]'''は、1980年の第3版のDSM-IIIでは本項のパニック障害と、パニックがなく[[不安]]―心配―だけが持続している[[全般性不安障害]]へと分離された<ref name="medscape431268">{{Cite journal |author=Catherine L. Woodman, MD|date=1997|title=The Natural History of Generalized Anxiety Disorder: A Review|url=http://www.medscape.com/viewarticle/431268|journal=Medscape Psychiatry &amp; Mental Health eJournal|volume=2|issue=3}}</ref>。1992年には、[[世界保健機関]](WHO)の『[[疾病及び関連保健問題の国際統計分類|国際疾病分類]]』(ICD-10)にも記載された。DSM-5では'''パニック症'''の診断名も併記されている。
+
パニック発作を頻繁に引き起こす疾患のこと。恐慌性障害ともいう。アメリカの精神科診断分類(DSM)第4版(1994)では不安障害の一つとしている。従来は不安神経症といわれた。急に強い不安や恐怖にかられ、激しい動悸(どうき)、息切れ、発汗、吐き気やめまい、胸苦しさなどを感じるのがパニックの症状である。逃げられない場所にいるという「広場恐怖」を伴うことが多い。混雑した駅やデパート、電車、バス、エレベーターの中などで突然、極度の不安や恐怖にかられる。頻度は人によりまちまちで、1日に何度も起こることもある。症状から、最初は心臓の病気を疑うが、検査では異常がなく、パニック障害と診断されるケースが多い。まじめできちょうめんな性格の人に多いとされる。心理的、身体的なストレスが引き金となり、交感神経が興奮し、神経伝達物質ノルアドレナリンが過剰に分泌されて起こる、とみられている。人込みにでるのが不安になり、行動や生活が狭められる可能性があり、うつ症状がでたりすることもある。治療は、抗不安薬、抗うつ剤SSRI(セロトニン再取り込み阻害剤)などの薬を用いる一方、呼吸法や精神療法などで心身をリラックスさせる。
 
 
近年の研究によってその多くは心理的葛藤によるものではなく、脳機能障害として扱われるようになってきている。具体的には、脳内のノルアドレナリン系の核にあたる青斑核におけるGABA系システムの制御機能障害である。<ref>精神医学ハンドブック改訂版、163頁、2005年、創元社</ref>
 
 
 
治療には認知行動療法や薬物療法が推奨されている<ref name=NIH />。治療には[[抗うつ薬]]が有効だが、[[ベンゾジアゼピン系]]抗不安薬が多用されているという2008年の指摘がある{{sfn|『パニック障害ハンドブック』|2008|p=14}}。45歳以降の発症では、身体疾患や薬物が原因である可能性がある<ref name="dsm4鑑別診断">『DSM-IV-TR』§パニック障害-鑑別診断</ref>。カフェインを中止することが良い結果をもたらすことがある{{sfn|アレン・フランセス|2014|pp=79-82}}。
 
 
 
== 定義 ==
 
{{See also|精神障害#定義}}
 
精神医学的障害の一種である。
 
 
 
== 症状 ==
 
定型的なパニック障害は、突然生じるパニック発作によって始まる<ref name="NIH">{{Cite report|title=Panic Disorder: When Fear Overwhelms |publisher=[[アメリカ国立衛生研究所]] |url=http://www.nimh.nih.gov/health/publications/panic-disorder-when-fear-overwhelms/index.shtml |date=2013 }}</ref>。本能的な危険を察知する[[扁桃体]]が活動しすぎて、必要もないのに戦闘体制に入り、呼吸や心拍数を増やしてしまう<ref name=NIH />。続いてその発作が再発するのではないかと恐れる「[[#予期不安|予期不安]]」と、それに伴う症状の慢性化が生じる。さらに長期化するにつれて、症状が生じた時に逃れられない場面を回避して、生活範囲を限定する「[[#広場恐怖|広場恐怖]]症」が生じてくる。
 
 
 
=== パニック発作 ===
 
パニック障害患者は、日常生活に[[ストレス (生体)|ストレス]]を溜め込みやすい環境で暮らしていることが多く、発作は、満員電車などの人が混雑している閉鎖的な狭い空間、車道や広場などを歩行中に突然、強いストレスを覚え、動悸、息切れ、めまいなどの自律神経症状と空間認知(空間等の情報を収集する力)による強烈な不安感に襲われる。症状や度合は、患者によって様々だが軽度と重度の症状がある。しかし軽・重度患者ともに発作が表れる時に感じる心理的(空間認知など)印象としては、同じような傾向が見られ、漠然とした不安と空間の圧迫感や[[動悸]]、呼吸困難等でパニックに陥り、「倒れて死ぬのではないか?」などの恐怖感を覚える人が少なくない。先に挙げた自律神経症状以外にも手足のしびれやけいれん、吐き気、胸部圧迫のような息苦しさなどがあるが、それ自体が生命身体に危険を及ぼすものではない。
 
 
 
=== 予期不安 ===
 
患者は、パニック発作に強烈な恐怖を感じる。このため、発作が発生した場面を恐れ、また発作が起きるのではないかと、不安を募らせていく<ref name=NIH />。これを「予期不安」という。そして、患者は神経質となりパニック発作が繰り返し生じるようになっていく。
 
 
 
=== 広場恐怖 ===
 
{{Seealso|広場恐怖症}}
 
パニック発作の反復とともに、患者は発作が起きた場合にその場から逃れられないと妄想するようになる。さらに不安が強まると、患者は家にこもりがちになったり、一人で外出できなくなることもある。このような症状を「広場恐怖(アゴラフォビア)」という<ref name="MHA" />。広場恐怖の進展とともに、患者の生活の障害は強まり、社会的役割を果たせなくなっていく。そして、この社会的機能障害やそれに伴う周囲との葛藤が、患者のストレスとなり、症状の慢性化を推進する。
 
 
 
== 原因 ==
 
原因についてはそれぞれ異なるが、当人のそれまでの経験から心理的あるいは身体的に危険だと察知した状態の場合、潜在意識が発作を起こす事で、顕在意識に再認識させるために起こす症状とされる。
 
 
 
従来は[[精神分析]]的な葛藤が根本にあると思われてきた。しかし近年、認知行動療法の有効性が明確となり、そうした原因よりも、症状に対する患者の対処が症状が進展していくメカニズムとしては重視されるようになった。
 
 
 
また薬物療法の有効性も確認されており、生物学的因子があるという意見も強くなっている。その要因としては、思い込みや思い違いによる発作であるために投薬では寛解までは可能でも完治する事は不可能な慢性疾患だと言える。
 
 
 
原因についてはまだ完全に解明されていないが、脳内不安神経機構の異常によって起きるものだと考えられている。パニック発作や予期不安、恐怖などもこの脳の機能のあらわれで、そこに何らかの誤作動が生じるために起こっていると考えられている。
 
 
 
;心理社会的仮説
 
:直接の原因ではないが、ストレスや過労が最初の発作の原因になると考えられている。<ref>齋藤英二監修(築地サイトウクリニック院長)『心の病気』</ref>。
 
:パニック発作が起きた状況が条件づけられ、しばしばその状況を避けるようになり、積み重なって最終的に広場恐怖が形成される{{sfn|アレン・フランセス|2014|pp=79-82}}。
 
;生物学的仮説
 
:脳の[[ノルアドレナリン]]により引き起こされる不安感がいきすぎないように抑える働きのある[[セロトニン]]という神経伝達物質が不足したり、または受容体が鈍くなっているためではないか、という説。また、セロトニンの過剰によるという説もある。選択的にセロトニン系に作用する新しい抗不安薬(SSRI)が開発され、不安障害の治療に中枢セロトニン系が関与していることが明らかとなった。SSRIはほとんどの不安障害亜型に有効であることが明らかになり、古典的な抗不安薬であるベンゾジアゼピンよりも広い適応を有する。セロトニン系抗不安薬は扁桃体に投射するセロトニン系の機能を増強して不安・恐怖を減弱すると考えられる。
 
 
 
===薬物による原因===
 
==== 喫煙 ====
 
[[喫煙]]はパニック障害の発症リスクを増加させ、これは[[広場恐怖症]]や[[パニック発作]]を持っているかどうかに関わらない<ref name="pmid16980119">{{cite journal |author=Roy-Byrne PP, Craske MG, Stein MB |title=Panic disorder |journal=[[The Lancet]] |volume=368 |issue=9540 |pages=1023–32 |date=September 2006 |pmid=16980119 |doi=10.1016/S0140-6736(06)69418-X }}</ref><ref name="pmid19961810">{{cite journal |author=Cosci F, Knuts IJ, Abrams K, Griez EJ, Schruers KR |title=Cigarette smoking and panic: a critical review of the literature |journal=Journal of Clinical Psychiatry |volume=71 |issue=5 |pages=606–15 |date=May 2010 |pmid=19961810 |doi=10.4088/JCP.08r04523blu }}</ref>。また若年時の喫煙はパニック発作の形成リスクを著しく高める<ref name="Johnson00">{{cite journal |author=Johnson JG, Cohen P, Pine DS, Klein DF, Kasen S, Brook JS |title=Association between cigarette smoking and anxiety disorders during adolescence and early adulthood |journal=JAMA |volume=284 |issue=18 |pages=2348–51 |date=November 2000 |pmid=11066185 |doi=10.1001/jama.284.18.2348}}</ref><ref>{{cite journal |author=Isensee B, Wittchen HU, Stein MB, Höfler M, Lieb R |title=Smoking increases the risk of panic: findings from a prospective community study |journal=Arch. Gen. Psychiatry |volume=60 |issue=7 |pages=692–700 |date=July 2003 |pmid=12860773 |doi=10.1001/archpsyc.60.7.692 }}</ref><ref>{{cite journal |author=Goodwin RD, Lewinsohn PM, Seeley JR |title=Cigarette smoking and panic attacks among young adults in the community: the role of parental smoking and anxiety disorders |journal=Biological Psychiatry |volume=58 |issue=9 |pages=686–93 |date=2005-11-01 |pmid=16018987 |doi=10.1016/j.biopsych.2005.04.042 }}</ref>。一方でその機序は十分には解明されておらず、一部に異論もある。喫煙は呼吸器に影響を与えるため、発作を引きおこす可能性がある。<ref name="Johnson00" /><ref>{{cite journal |author=Breslau N, Klein DF |title=Smoking and panic attacks: an epidemiologic investigation |journal=Archives of General Psychiatry |volume=56 |issue=12 |pages=1141–7 |date=December 1999 |pmid=10591292 |doi=10.1001/archpsyc.56.12.1141 }}</ref>。
 
 
 
==== カフェイン ====
 
[[カフェイン]]のような[[覚醒剤|覚醒作用]]を持つ物質の摂りすぎは、パニック発作の一般的な原因である<ref name="pmid21797659">{{cite journal |author=Vilarim MM, Rocha Araujo DM, Nardi AE |title=Caffeine challenge test and panic disorder: a systematic literature review |journal=Expert Rev Neurother |volume=11 |issue=8 |pages=1185–95 |year=2011 |month=August |pmid=21797659 |doi=10.1586/ern.11.83 }}</ref>。パニック障害を持つ人は、カフェインの不安誘導作用に敏感である<ref name="pmid20164571">{{cite journal |author=Lara DR |title=Caffeine, mental health, and psychiatric disorders |journal=J. Alzheimers Dis. |volume=20 Suppl 1 |issue= |pages=S239–48 |year=2010 |pmid=20164571 |doi=10.3233/JAD-2010-1378 }}</ref>。
 
 
 
====アルコールと鎮静薬====
 
米国のデータでは、パニック障害患者の30%がアルコールを摂取し、17%がその他の向精神薬を使用している<ref name="MHA">{{cite web|url=http://www.mentalhealthamerica.net/conditions/panic-disorder |title=Panic Disorder|publisher=Mental Health America|accessdate=2007-07-02}}</ref>。これは米国では一般的に61%がアルコールを使用し<ref>{{cite web|url=http://www.cdc.gov/nchs/fastats/alcohol.htm|title=FastStats - Alcohol Use |publisher=CDC |accessdate=2015-10-22}}</ref>、7.9%がその他の向精神薬を使用していること<ref>{{cite web|url=http://www.cdc.gov/nchs/fastats/drug-use-illegal.htm |title=FactStats - Illegal Drug Use |publisher=CDC |accessdate=2015-10-22}}</ref>と比較してである。娯楽薬物の使用やアルコールの使用は、症状を悪化させる<ref>{{cite journal |title=Practice guideline for the treatment of patients with panic disorder. Work Group on Panic Disorder. American Psychiatric Association |journal=Am J Psychiatry |volume=155 |issue=5 Suppl |pages=1-34 |year=1998 |month=May |pmid=9585731 }}</ref>。カフェイン、ニコチン、コカインなどの覚醒作用を持つ薬物は心拍数などのパニック症状を増加させるので症状を悪化させる。
 
 
 
アルコールは初期のパニック症状を緩和させる一方、中長期のアルコール使用はパニック障害を引き起こしたり悪化させ、とりわけ[[アルコール離脱症候群]]では顕著である<ref name="pmid15361983">{{cite journal |author=Terra MB, Figueira I, Barros HM |title=Impact of alcohol intoxication and withdrawal syndrome on social phobia and panic disorder in alcoholic inpatients |journal=Rev Hosp Clin Fac Med Sao Paulo |volume=59 |issue=4 |pages=187-92 |year=2004 |month=August |pmid=15361983 |doi=10.1590/S0041-87812004000400006 |url=http://www.scielo.br/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S0041-87812004000400006&lng=en&nrm=iso&tlng=en }}</ref>。この現象はアルコールに限らず、同様の作用機序を持つ薬物でも同じである。とくに[[ベンゾジアゼピン]]はアルコール問題のある患者に対し、精神安定剤として多く処方されている<ref name="pmid15361983" />。慢性的なアルコール乱用が症状を悪化させるのは、脳内化学機能の変化のためである<ref>{{cite journal |author=Wetterling T |coauthors=Junghanns K |date=|year=2000 |month=Dec |title=Psychopathology of alcoholics during withdrawal and early abstinence|journal=Eur Psychiatry |volume=15 |issue=8 |pages=483-8 |pmid=11175926 |doi=10.1016/S0924-9338(00)00519-8}}</ref><ref>{{cite journal|author=Cowley DS |date=1992年1月24日 |title=Alcohol abuse, substance abuse, and panic disorder|journal=Am J Med |volume=92 |issue=1A |pages=41S-8S |pmid=1346485 |doi=10.1016/0002-9343(92)90136-Y}}</ref><ref>{{cite journal |author=Cosci F |coauthors=Schruers KR, Abrams K, Griez EJ |date=|year=2007 |month=Jun |title=Alcohol use disorders and panic disorder: a review of the evidence of a direct relationship|journal=J Clin Psychiatry |volume=68 |issue=6 |pages=874-80 |pmid=17592911 |doi=10.4088/JCP.v68n0608}}</ref>。
 
 
 
ベンゾジアゼピンの断薬時に患者の10%が[[遷延性離脱症候群]]を経験し、それにはパニック障害も含まれる。遷延性離脱症候群は、離脱時の最初の数ヶ月間の間に見られるものと似ている傾向にあり、たいてい離脱当初の2-3ヶ月の間に見られる症状に比べて亜急性の水準の重症度である
 
<!--
 
It is not known definitively whether such symptoms persisting long after withdrawal are related to true pharmacological withdrawal or whether they are due to structural [[neuronal]] damage as result of chronic use of benzodiazepines or withdrawal. Nevertheless such symptoms do typically lessen as the months and years go by eventually disappearing altogether.
 
-->
 
<ref>{{cite journal |journal=J Subst Abuse Treat |year =1991 |volume=8 |issue=1-2 |pages=19-28 |title=Protracted withdrawal syndromes from benzodiazepines |author=Ashton H |pmid=1675688 |url=http://www.benzo.org.uk/ashpws.htm |publisher=benzo.org.uk |doi=10.1016/0740-5472(91)90023-4 }}</ref>。
 
 
 
精神保健サービスに参加する患者においては、彼らのパニック障害や社会恐怖などの不安障害は、アルコール乱用または鎮静薬乱用によるものであった。アルコールや鎮静薬は、元来の不安を継続させたり悪化させる。アルコール乱用者や慢性的な鎮静薬使用者は、そういった薬物乱用が根底にあるため、症状の根本原因に対応しなければ、その他の治療や薬物によって利益を得られていない可能性がある。鎮静状態からの回復は、アルコール離脱症候群や[[ベンゾジアゼピン離脱症候群]]のため一時的に悪化する<ref>{{cite journal |author=Cohen SI |title=Alcohol and benzodiazepines generate anxiety, panic and phobias |journal=J R Soc Med |volume=88 |issue=2 |pages=73-7 |year=1995 |month=February |pmid=7769598 |pmc=1295099 }}</ref><ref>{{cite journal |author=Belleville G, Morin CM |title=Hypnotic discontinuation in chronic insomnia: impact of psychological distress, readiness to change, and self-efficacy |journal=Health Psychol |volume=27 |issue=2 |pages=239-48 |year=2008 |month=March |pmid=18377143 |doi=10.1037/0278-6133.27.2.239 |url=}}</ref><ref>{{cite journal |author =Professor C Heather Ashton |url =http://www.benzo.org.uk/ashbzoc.htm |year =1987 |title =Benzodiazepine Withdrawal: Outcome in 50 Patients |journal =British Journal of Addiction |volume =82 |pages =655-671 }}</ref><ref>{{cite journal |author=Onyett SR |title=The benzodiazepine withdrawal syndrome and its management |journal=J R Coll Gen Pract |volume=39 |issue=321 |pages=160-3 |year=1989 |month=April |pmid=2576073 |pmc=1711840 }}</ref>。世界不安評議会は、ベンゾジアゼピンによる長期の不安治療については、耐性、精神機能障害、認知や記憶障害、身体的依存、ベンゾジアゼピン離脱症候群のために推奨していない<ref>{{cite journal |author=Allgulander C, Bandelow B, Hollander E, ''et al.'' |title=WCA recommendations for the long-term treatment of generalized anxiety disorder |journal=CNS Spectr |volume=8 |issue=8 Suppl 1 |pages=53-61 |year=2003 |month=August |pmid=14767398 }}</ref>。
 
 
 
== 診断 ==
 
診断基準には、[[アメリカ精神医学会]]の『[[精神障害の診断と統計マニュアル]]』第4版(DSM-IV)が用いられることが多い<ref name="dsm4パニック">『DSM-IV-TR』§パニック障害</ref>。
 
 
 
パニック発作の基準は、動悸、心拍の増加、発汗、震え、息苦しさ、窒息感、胸の不快感、嘔気や腹部の不快感、めまい、現実感の喪失、自制できない恐怖、死への恐怖、感覚麻痺やうずきのような異常感覚、冷感や熱感といった4つ以上が発症し10分以内にピークとなることを要求している。
 
 
 
DSM-IVでは、パニック障害の診断基準Aが、予期しないパニック発作が繰り返して起こっており、発作についての心配が1か月以上続いていることを要求している。診断基準Bは、広場恐怖の有無である。
 
 
 
実際の臨床場面では、パニック障害は、広場恐怖を伴う慢性化したものと、広場恐怖を伴わない軽症例の2つに区分される。突然のパニック発作で始まり、予期不安を生じ、症状が持続するようになり、広場恐怖に進んでいくという経過の確認も、臨床診断においては、重要であるとされる。
 
 
 
診断基準Cが、他の薬物や身体疾患によるものでないことを、診断基準Dが他の精神障害ではないことを要求している。
 
 
 
===鑑別診断===
 
正常なパニックには著しさがない{{sfn|アレン・フランセス|2014|pp=79-82}}。健康な人の10%が著しくないパニック発作を経験しているが、パニック障害ではない{{sfn|アレン・フランセス|2014|pp=79-82}}。45歳以降の発症では、身体疾患や薬物が原因である可能性がある<ref name="dsm4鑑別診断">『DSM-IV-TR』§パニック障害-鑑別診断</ref>。
 
 
 
医学的疾患の原因には[[甲状腺機能亢進症]]や[[褐色細胞腫]]などがある{{sfn|アレン・フランセス|2014|pp=79-82}}。
 
 
 
車の事故など、実際の危険にさらされた場合にはパニック症状は生じうるし、銃をつきつけられるなどして起こるパニック発作は精神障害ではない{{sfn|アレン・フランセス|2014|pp=79-82}}。それらの体験を思い出すことによってパニック症状が起きている場合には、[[急性ストレス障害]]や[[心的外傷後ストレス障害]]の可能性がある{{sfn|アレン・フランセス|2014|pp=79-82}}。
 
 
 
薬物の生理作用によって、コカインや過剰なカフェインの摂取はパニック症状を誘発することがあり、物質誘発性不安障害である{{sfn|アレン・フランセス|2014|pp=79-82}}。また、アルコール、抗うつ薬や抗不安薬といった医薬品の[[離脱]]が症状を起こしたり悪化させることがある{{sfn|アレン・フランセス|2014|pp=79-82}}。
 
 
 
きっかけが特定できる場合には[[特定の恐怖症|限局性恐怖症]]である{{sfn|アレン・フランセス|2014|pp=79-82}}。それが社交である場合には、[[社交不安障害]]である{{sfn|アレン・フランセス|2014|pp=79-82}}。
 
 
 
=== 併発疾患 ===
 
50〜65%に生涯のいつの時点かにうつ病が併存し、また全般性不安障害25%、社交恐怖15〜30%、特定の恐怖症10〜20%、強迫性障害8〜10%の併存があるといわれている。パニック障害の初診患者100名中86名は、何らかの睡眠障害を有する<ref>{{cite web |url=http://www.fuanclinic.com/ronbun2/r_37.htm|title=不安障害による不眠|author=貝谷久宣|accessdate=2015-09-17}}</ref>。
 
 
 
== 治療 ==
 
治療的には、心理療法と薬物療法があり、様々な治療が有効性を認められている<ref name=NIH />。
 
 
 
[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)の2011年のガイドラインは、[[薬物乱用]]を併発している場合、その治療が優先されねばならないとしている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.2.8}}。
 
 
 
=== 心理療法 ===
 
{{Seealso|心理療法|心理療法アクセス改善}}
 
最も基礎的で重要なものが、「障害に対する医師の説明」「心理教育」である{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.4.12-18}}。パニック障害は、発作の不可解さと、発作に対する不安感によって悪化していく障害であり、医師が明確に症状について説明し、心理教育を行うことが全ての治療の基礎となる<ref name=NIH />。そこでは、パニック発作は実際には身体に何の危険もないことなどが伝えられる<ref>ホフマン,S.G. 伊藤 正哉・堀越 勝(訳)(2012).現代の認知行動療法――CBTモデルの臨床実践―― 診断と治療社,67頁.</ref>。
 
 
 
心理療法の中で有効性について最もよく研究されているのが、[[認知行動療法]]である<ref name=NIH />。認知行動療法では「恐れている状況への暴露」「身体感覚についての解釈の再構築」「呼吸法」などの訓練・練習が行われ、基本的には不安に振り回されず、不安から逃れず、不安に立ち向かう練習を行う。
 
 
 
NICEは、パニック障害に対しては認知行動療法を用いなければならない(should be used){{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.4.12-18}}、その治療期間は妥当なものでなければならない(総計7〜14時間){{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.4.12-18}}、多くの人では毎週一回1〜2時間のセッションを最大4か月になると勧告している{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.4.12-18}}。
 
 
 
; 暴露反応妨害法(暴露療法)
 
: 不安が誘発される状況に想像的、または体験的に身を置き、回避しないことで徐々に慣れる。不安や恐怖のために避けている場所・状況に回避せず身を置くことで、そのような場所・状況と不安感に自分自身を少しずつ慣らし、克服した経験を積んで自信をつけていく方法。「自分が避けている場所はパニック発作とは関係がない」・「不安場面に直面しても、実際には(事実としては)自分が考えていたような恐ろしい結末が起こらない<ref>坂野 雄二 (1998). パニック障害の認知行動療法 貝谷 久宣・不安・抑うつ臨床研究会(編) パニック障害(p.156) 日本評論社</ref>」・「不安場面に直面しても、時間の経過とともに、不安やパニック発作は自然に消えてなくなる<ref>坂野 雄二 (1998). パニック障害の認知行動療法 貝谷 久宣・不安・抑うつ臨床研究会(編) パニック障害(p.156-167) 日本評論社</ref><ref>鍵本 伸明・井上 和臣 (2003). パニック発作のイメージのグラフ化を用いた認知行動療法の一症例 井上 和臣(編)認知療法ケースブック (p. 30) 星和書店</ref>」・「暴露反応妨害法(暴露療法)の実施を重ねるごとに、不安やパニック発作が少なくなり、やがてなくなる<ref name=":0">前林 佳朗・西藤 直哉・井上 和臣・福居 顯二 (2003). 服薬アドヒアランスの不良により症状の遷延化をきたしていたパニック障害の一症例 井上 和臣(編)認知療法ケースブック (p. 39) 星和書店</ref><ref>鍵本 伸明・井上 和臣 (2003). パニック発作のイメージのグラフ化を用いた認知行動療法の一症例 井上 和臣(編)認知療法ケースブック (pp.24-29) 星和書店</ref>」ということを身をもって確かめていく。最初の目標がクリアできたら、少しずつ段階的に目標のレベルを上げていく。これらが治療者の援助のもと繰り返し実施されることで、症状が消失していく<ref>坂野 雄二 (1998). パニック障害の認知行動療法 貝谷 久宣・不安・抑うつ臨床研究会(編) パニック障害(pp.167-168) 日本評論社</ref>。
 
: また上記に加えて、[[暴露療法|暴露反応妨害法(暴露療法)]]の実施前に、不安やパニック発作が時間の経過とともに(もしくは実施を重ねるごとに)自然となくなっていくことを治療者がグラフによって示したり、実施後に、不安やパニック発作が時間の経過とともに(もしくは実施を重ねるごとに)自然となくなっていったことを患者にグラフや表にして記録してもらったりして、不安やパニック発作が必ず収まるという確信を持つこと・パニック発作を客観視し認知を修正することができるよう患者をサポートし、効果的な治療を行った事例も報告されている<ref>鍵本 伸明・井上 和臣 (2003). パニック発作のイメージのグラフ化を用いた認知行動療法の一症例 井上 和臣(編)認知療法ケースブック (p. 31) 星和書店</ref><ref name=":0" />。
 
 
 
なお、[[呼吸法]]や[[漸進的筋弛緩法]]などの[[リラクゼーション|リラクセーション法]]も有効であり、治療者はそれらの技法を身につけられるよう患者をサポートする<ref>アーサー・ネズ, クリスティン・ネズ, エリザベス・ロンバルト(著)伊藤 絵美(監訳)(2008). 認知行動療法における事例定式化と治療デザインの作成――問題解決アプローチ―― 星和書店, 124-125頁. </ref>。ただし、主となる治療法は上記の暴露反応妨害法(暴露療法)であり、リラクセーション法は、暴露反応妨害法の構成要素である外的曝露(避けている場所・状況に対する曝露。そのような場所・状況に身を置いても何も恐れている出来事が起こらないことを体感する)と内的曝露(不安感やパニック発作に対する曝露。不安感やパニック発作が時間経過とともに減少していくことを体感する)を妨げる形で行われてはならないとされ、暴露反応妨害法の実施を促進するための補助的な技法として用いられる<ref>伊藤 絵美 (2008). 事例で学ぶ認知行動療法 誠信書房, 125-126頁. </ref>。
 
 
 
==== セルフヘルプ ====
 
NICEのガイドラインでは、患者に対し[[認知行動療法]]理論に基づく[[読書療法]]を提案しなければならない{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.4.32-34}}、利用可能な[[自助グループ]]の情報を提供しなければならない{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.4.32-34}}、また[[フィジカルトレーニング|エクササイズ]]の一般的な有効性について情報提供しなければならないとしている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.4.32-34}}。
 
 
 
さらに、リー (2016) は、パニックに対応するための自助手段として次のようなものを提示している<ref>リー, D.  竹本 毅(訳)(2016). 10分でできる認知行動療法入門 日経BP社, 192頁. </ref>。
 
* 「パニックの感覚は、不安に関連した正常な身体感覚であり、無害である点を思い出す(リー,2016,192頁20-21行)」
 
* 「不安はきわめて不快なものではあるが、本当に危険なわけではない(リー,2016,192頁23行)」
 
* 「十分に待ってみると、恐怖は去ってゆくだろう。こうすることによって、将来同じことが起こる可能性は少なくなるだろう(リー,2016,192頁27-28行)」
 
* 「不快な不安症状を減らすために、注意転換や呼吸制御法のような対処手段を活用する(リー,2016,192頁29行)」
 
 
 
=== 薬物療法 ===
 
 
 
====治療ガイドライン====
 
[[アメリカ精神医学会]](APA)の2009年の治療ガイドラインでは、薬物治療は、認知行動療法が利用できないとか薬物療法を希望する場合の選択である{{Sfn|アメリカ精神医学会|2009}}。[[ベンゾジアゼピン系]]抗不安薬はパニック障害の治療に対し有効であり、ベンゾジアゼピンと抗パニック作用のある抗うつ薬、心理療法のうち、どれを使うかは患者の病歴と体質を元に決めるべきであり、特定の治療法を推奨するには証拠が乏しいと報告している。またAPAではベンゾジアゼピンには即効作用という利益があるが、[[ベンゾジアゼピン依存症]]の危険性が存在すると付記している{{Sfn|アメリカ精神医学会|2009}}。
 
 
 
[[英国国立医療技術評価機構]](NICE)の2011年のガイドラインでは、薬物療法を選択する場合はSSRIであり、その第一選択肢は[[セルトラリン]]を推奨し、それが効果を示さない場合は他のSSRI/SNRIを検討するとしている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.2.22-32}}。[[ベンゾジアゼピン]]は長期的には予後の悪化に関連するため(短期間を除いて{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.2.22-32}})処方すべきでない(should not){{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.4.7}}、[[抗ヒスタミン薬]]および[[抗精神病薬]]は処方してはならない{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.2.22-32, 1.4.8}}と勧告している。また薬物療法を行う前には必ず、患者に利益・危険性・副作用について書面および口頭にて説明するよう{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.2.22-32}}、30歳以下の患者へのSSRI/SNRI処方には自殺リスクについて警告するよう勧告している{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2011|loc=Chapt.1.2.22-32}}。
 
 
 
2008年までの国内外の治療ガイドラインは、抗うつ薬とベンゾジアゼピンは有効性の差がないことと、第一選択としては副作用や忍容性からSSRIを推奨している{{sfn|『パニック障害ハンドブック』|2008|p=23}}。ベンゾジアゼピンの使用は、欧米のガイドラインは使用に慎重であり、第2選択以下か、初期の短期間に限定している{{sfn|『パニック障害ハンドブック』|2008|p=23}}。
 
 
 
アイルランド、オーストラリア、オランダ、カナダ、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドなどでは、ベンゾジアゼピンを第一選択肢として推奨せず、投与は短期間に留めるべきだとしている([[ベンゾジアゼピン薬物乱用#各国の状況]]を参照)。
 
 
 
====有効性====
 
2014年の[[出版バイアス]]を除外した[[メタアナリシス]]から、抗うつ薬のパロキセチンの{{日本語版にない記事リンク|効果量|en|Effect size}}は、パニック障害に対して0.36であり、偽薬をわずかに上回ることが見いだされた<ref name="pmid25162656">{{cite journal|last1=Thombs|first1=Brett|last2=Sugarman|first2=Michael A.|last3=Loree|first3=Amy M.|last4=Baltes|first4=Boris B.|last5=Grekin|first5=Emily R.|last6=Kirsch|first6=Irving|title=The Efficacy of Paroxetine and Placebo in Treating Anxiety and Depression: A Meta-Analysis of Change on the Hamilton Rating Scales|journal=PLoS ONE|volume=9|issue=8|pages=e106337|year=2014|pmid=25162656|pmc=4146610|doi=10.1371/journal.pone.0106337|url=http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0106337}}</ref>。
 
 
 
ベンゾジアゼピン系薬を、規則的に服用するのではなく、必要な時にだけ飲むという方法は、認知行動療法の結果を悪くするという研究結果に基づき、さらに研究したところ薬物療法を行わない群が最も認知行動療法の利益を得ていた<ref name="pmid12214810">{{cite journal|last1=Westra|first1=Henny A|last2=Stewart|first2=Sherry H|last3=Conrad|first3=Brent E|title=Naturalistic manner of benzodiazepine use and cognitive behavioral therapy outcome in panic disorder with agoraphobia|journal=Journal of Anxiety Disorders|volume=16|issue=3|pages=233–246|year=2002|pmid=12214810|doi=10.1016/S0887-6185(02)00091-9}}</ref>。
 
 
 
=== イノシトール ===
 
[[イノシトール]]は、パニック障害や[[強迫性障害]]の患者が服用することで、その症状を緩和する作用が報告されており、不安の発生頻度やその程度を、顕著に低下させる効果があるとされる。また、イノシトールの高用量摂取が、抗うつ薬の[[フルボキサミン]]より症状の軽減に効果があったとする論文報告もある<ref>{{cite journal |author= Fux M, Levine J, Aviv A, Belmaker RH|title= Inositol treatment of obsessive-compulsive disorder|journal= American Journal of Psychiatry|year= 1996|volume= 153|issue= 9|pages= 1219&ndash;21|pmid=8780431 }}</ref><ref name="Palatnik">{{cite journal|author= Palatnik A, Frolov K, Fux M, Benjamin J|title= Double-blind, controlled, crossover trial of inositol versus fluvoxamine for the treatment of panic disorder|journal= Journal of Clinical Psychopharmacology|year= 2001|volume= 21|issue= 3|pages= 335&ndash;339|pmid=11386498 |doi= 10.1097/00004714-200106000-00014}}</ref>。
 
 
 
== 疫学 ==
 
[[File:Panic disorder world map - DALY - WHO2002.svg|thumb|upright=1.2|パニック障害の人口10万あたり[[障害調整生命年]](2002年){{refbegin|2}}
 
{{legend|#b3b3b3|データなし}}
 
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{{refend}}]]
 
 
 
何らかのパニック発作(PA)は、人口の22.7%が生涯に一度以上経験する<ref name="pmid16585471">{{cite journal |vauthors=Kessler RC, Chiu WT, Jin R, Ruscio AM, Shear K, Walters EE |title=The epidemiology of panic attacks, panic disorder, and agoraphobia in the National Comorbidity Survey Replication |journal=Arch. Gen. Psychiatry |volume=63 |issue=4 |pages=415–24 |year=2006 |pmid=16585471 |pmc=1958997 |doi=10.1001/archpsyc.63.4.415 |url=}}</ref>。うちパニック障害(PD)と診断される者の生涯有病率は1.6%–2.2%と言われ<ref name=pmid16585471 />、これは英国では1.4%<ref name="nicecg123">{{Cite report|title=CG123 - Common mental health disorders: Identification and pathways to care |publisher=[[英国国立医療技術評価機構]] |at=Introduction |date=2011-04 |url=http://www.nice.org.uk/guidance/CG123/ }}</ref>、日本でのサンプリング調査では0.8%(World Mental Health Japan Survey, 2002-2006)であった<ref>{{Cite report|title=こころの健康についての疫学調査に関する研究研究報告 |author=川上憲人 |author2=竹島正 |publisher=[[国立精神・神経センター]]精神保健研究所 |date=2005-03 |id={{NCID|BA91626981}} |url=http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/epi/Reports/H18WMHJR/H18WMHJR01.pdf }}</ref>。
 
 
 
未治療率については、WHOは2004年に55.9%と推定している<ref>{{cite journal |author=Kohn R, Saxena S, Levav I, Saraceno B |title=The treatment gap in mental health care |journal=Bull. World Health Organ. |publisher=[[世界保健機関]] |volume=82 |issue=11 |pages=858–66 |year=2004 |pmid=15640922 |pmc=2623050 |url=http://www.who.int/bulletin/volumes/82/11/khon1104abstract/en/}}</ref>。日本の患者数の少なさについては、受診率の低さが上げられる<ref>[http://qq.kumanichi.com/medical/2008/11/post-1094.php うつ病、不安障害..「経験」25%、受診は3割未満 川上 熊本日日新聞2008年3月8日付朝刊]</ref>。
 
 
 
[[広場恐怖症]](AG)と関連があり、パニック障害とAGが併発する生涯有病率が1.1%、パニック発作とAGが併発する併発は0.8%とされる<ref name=pmid16585471 />。PD-AGではPD重症度スケールも高い<ref name=pmid16585471 />。
 
 
 
パニック障害にうつ病、人格障害、アルコール依存症を併発する場合が多く、日本では約5–6割<ref name="kousei">[http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic.html パニック障害・不安障害 厚生労働省]</ref>、欧米では約5–6割といった統計も出されている。
 
 
 
==歴史==
 
『[[精神障害の診断と統計マニュアル]]』第2版、DSM-IIにおける[[不安神経症]]は、1980年のDSM-IIIにて、パニック発作を持つパニック障害と、パニック発作がなく不安が持続している[[全般性不安障害]]へと分離された<ref name="medscape431268">{{Cite journal |author=Catherine L. Woodman, MD|date=1997|title=The Natural History of Generalized Anxiety Disorder: A Review|url=http://www.medscape.com/viewarticle/431268|journal=Medscape Psychiatry &amp; Mental Health eJournal|volume=2|issue=3}}</ref>。
 
 
 
1968年のDSM-IIは不安神経症について、パニックにまで至る過剰な不安の特徴があるとしていたが、1964年にはドナルド・クラインが、実際にはパニックは不安とは別であるとした論文を発表した<ref name="精神医学の歴史パニック">{{Cite book|和書|author=エドワード・ショーター|others=木村定(翻訳)|title=精神医学の歴史|publisher=青土社|date=1999-10|isbn=978-4791757640|pages=378-379}}、A History of Psychiatry: From the Era of the Asylum to the Age of Prozac, 1997</ref>。クラインは、DSM-IIIの製作のメンバーであった<ref name="精神医学の歴史パニック" />。
 
 
 
1980年にDSM-IIIが登場すると、パニック障害は強烈な心配が突然始まり、発汗や失神のような特徴を持つ独自のものに変わった<ref name="精神医学の歴史パニック" />。[[ベンゾジアゼピン系]]の抗不安薬は乱用が問題となったことから販売数が低下していた<ref name="精神医学の歴史パニック" />。アップジョン社は、[[アルプラゾラム]]をザナックスの商品名で市場に出したところであり、このベンゾジアゼピン系薬をこの新しいパニック障害に結びつけようと、試験に資金提供を行い強く信頼できる結果は出なかったにもかかわらず、1990年までにはパニック障害に対する最新の薬となった<ref name="精神医学の歴史パニック" />。内部のものは冗談でアップジョン病と呼んだ<ref name="精神医学の歴史パニック" />。
 
 
 
[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]](SSRI)である[[パロキセチン]]は、1991年にイギリスでセロキサットの名で、1992年にアメリカでパキシルの名で発売され、不安障害の治療をターゲットにし、医師はベンゾジアゼピン系と同様、依存性を懸念した<ref name="抗うつ薬の功罪44">{{Cite book |和書|author=デイヴィッド・ヒーリー|translator=田島治監訳、谷垣暁美|date=2005-08|title=抗うつ薬の功罪|publisher=みすず書房|isbn=4-622-07149-5|pages=44-46}}、Let Them Eat Prozac, 2003</ref>。販売後、有害事象報告システムから離脱症状の報告がはじまり、半減期の短さが考えられた<ref name="抗うつ薬の功罪44" />。
 
 
 
英米の治療ガイドラインは現在では、SSRIを第一選択として、ベンゾジアゼピン系薬は第2選択以下か短期間の使用に限るという位置づけに置かれている<ref name="不安障害の薬物療法とベンゾジアゼピン依存">{{Cite journal |和書|author=田中聡|date=2013|title=不安障害の薬物療法とベンゾジアゼピン依存―特に全般性不安障害とパニック障害に注目して|journal=臨床精神薬理|volume=16|issue=6|pages=841-848}}</ref>
 
 
 
なお、アップジョン社は、[[アルプラゾラム]]をザナックスの商品名で市場に出したところであり、このベンゾジアゼピン系薬をこの新しいパニック障害に結びつけようと、試験に資金提供を行った。強く信頼できる結果は出なかったにもかかわらず、1990年までにはパニック障害に対する最新の薬となった<ref name="精神医学の歴史パニック" />。内部のものは冗談でアップジョン病と呼んだ<ref name="精神医学の歴史パニック" />。
 
 
 
== 著名人一覧 ==
 
* [[バズ・オルドリン|''バズ''・''オルドリン'']]
 
* ''[[ブルック・シールズ]]''
 
* [[エルトン・ジョン]]
 
* [[ビリー・ジョエル]]
 
* [[マイク・タイソン]]
 
* [[アンジェリーナ・ジョリー]](女優業に転じて回復)
 
* [[リンダ・ハミルトン]]
 
* [[スカーレット・ヨハンソン]]
 
* [[エマ・ストーン]]
 
* [[ジョニー・デップ]]
 
* [[マーディ・フィッシュ]](現在、闘病中)
 
* イギリスの自然科学者[[チャールズ・ダーウィン]]は若い頃からパニック障害を患っていたとされている<ref>貝谷久宣編著、不安・抑うつ臨床研究会編『パニック障害』日本評論社、ISBN 9784535981539、pp.3-22. </ref>。
 
*[[KinKi Kids]]の[[堂本剛]]は、自身の苦しんだ過去を公表している。ライブ中に[[過呼吸]]等で突然倒れたり、控え室に戻ったりしている。また、1stソロアルバムの中には「Panic Disorder」という楽曲を本人作詞作曲で収録している。
 
* [[中川剛 (お笑い芸人)|中川剛]]([[中川家]])は1997年頃にパニック障害を患い仕事を休んでいた時期があり、このことについてたびたび番組で発言している。
 
* 女優の[[田中美里]]が、2002年8月28日放送の『[[わたしはあきらめない]]』 ([[日本放送協会|NHK]]) で、2000年末に発作に襲われパニック障害と診断されたと語った<ref>{{cite web|url=http://archives.nhk.or.jp/chronicle/B10002200090208290030116/ |title=NHKアーカイブス保存番組|work=[[日本放送協会|NHK]](Japan Broadcasting Corporation)|accessdate=2010-01-12}}</ref>。
 
* 上記2002年8月28日の放送で、番組司会者の[[長嶋一茂]]が、自身も1996年以来、パニック障害を患っていると明かした。後の記事では当時から自殺衝動を告白している。
 
* タレントの[[安西ひろこ]]は著書「バルドーの告白」の中で、2001年から2008年まで休業した理由がパニック障害であったことを明らかにした。
 
* 演歌歌手の[[大江裕]]は、2010年11月の中頃に突発的体調不良から2012年2月まで休業していたが、2012年3月7日の新曲発表を兼ねた復帰会見でパニック障害を発症していたことを明らかにした。
 
* プロ野球選手の[[小谷野栄一]]は「同病者を勇気づけたい」とパニック障害であったことを公表<ref>{{cite web|url=http://hokkaido.nikkansports.com/baseball/professional/fighters/p-hf-tp0-20070504-193716.html|title=日本ハム小谷野が病魔克服の快気祝砲|work=[[日刊スポーツ]]|author=高山通史|date=2007-05-04|accessdate=2009-12-18}}。</ref>。現在も疾患を抱えながらプレーを続けている。
 
* 作家の[[宮本輝]]はパニック障害に苦しんだことで作家になることを決意したが、家の中でもパニック障害を起こすまで悪化したこともある<ref>文化放送[[大竹まこと ゴールデンラジオ!]][http://www.joqr.co.jp/blog/main/2015/06/04.html 大竹まことメインディッシュ] 、2015年6月10日、ゲスト宮本輝。</ref>。
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
{{Reflist|2}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
;診療ガイドライン
 
* {{Cite report |author=[[アメリカ精神医学会]] |title= APA Practice Guideline for the Treatment of Patients With Panic Disorder, Second Edition |coauthors=Work Group on Panic Disorder |date=2009-01 |url=http://www.guideline.gov/content.aspx?id=14230 |ref=harv }}
 
* {{Cite report |publisher=[[英国国立医療技術評価機構]] |date=2011-01 |title=CG113 Anxiety : Generalised anxiety disorder and panic disorder (with or without agoraphobia) in adults |url=http://www.nice.org.uk/CG113 |ref={{SfnRef|英国国立医療技術評価機構|2011}} }} - 成人の全般性不安障害とパニック障害(対人恐怖の有無を含む)
 
*{{Cite book|和書|author=(編集)熊野宏昭、久保木富房、(編集協力)貝谷久宣|title=パニック障害ハンドブックー治療ガイドラインと診療の実際|publisher=医学書院|date=2008|isbn=978-4-260-00537-1|ref={{sfnRef|『パニック障害ハンドブック』|2008}} }}
 
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[パニック]]
 
* [[ヒステリー]]
 
* [[過換気症候群]]
 
* [[不安障害]]
 
**[[全般性不安障害]]
 
* [[広場恐怖症]]
 
* [[不安]]
 
* [[風邪]]、[[肺炎]]、[[インフルエンザ]]
 
 
 
== 外部リンク ==
 
*{{脳科学辞典|記事名=パニック症}}
 
* [http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic.html パニック障害](厚生労働省)
 
* [http://merckmanual.jp/mmhe2j/sec07/ch100/ch100d.html パニック発作とパニック障害](メルクマニュアル家庭版)
 
* {{Mpedia|英語版記事名=Panic_Disorder|英語版タイトル=Panic Disorder}}
 
 
 
{{精神と行動の障害}}
 
  
 +
{{テンプレート:20180815sk}}
 
{{DEFAULTSORT:はにつくしようかい}}
 
{{DEFAULTSORT:はにつくしようかい}}
 
[[Category:不安障害]]
 
[[Category:不安障害]]
 
[[Category:神経症性・ストレス関連及び身体表現性障害]]
 
[[Category:神経症性・ストレス関連及び身体表現性障害]]
 
[[Category:恐怖]]
 
[[Category:恐怖]]

2019/6/12/ (水) 12:15時点における最新版

パニック障害(パニックしょうがい、英語: Panic disorder ; PD

パニック発作を頻繁に引き起こす疾患のこと。恐慌性障害ともいう。アメリカの精神科診断分類(DSM)第4版(1994)では不安障害の一つとしている。従来は不安神経症といわれた。急に強い不安や恐怖にかられ、激しい動悸(どうき)、息切れ、発汗、吐き気やめまい、胸苦しさなどを感じるのがパニックの症状である。逃げられない場所にいるという「広場恐怖」を伴うことが多い。混雑した駅やデパート、電車、バス、エレベーターの中などで突然、極度の不安や恐怖にかられる。頻度は人によりまちまちで、1日に何度も起こることもある。症状から、最初は心臓の病気を疑うが、検査では異常がなく、パニック障害と診断されるケースが多い。まじめできちょうめんな性格の人に多いとされる。心理的、身体的なストレスが引き金となり、交感神経が興奮し、神経伝達物質ノルアドレナリンが過剰に分泌されて起こる、とみられている。人込みにでるのが不安になり、行動や生活が狭められる可能性があり、うつ症状がでたりすることもある。治療は、抗不安薬、抗うつ剤SSRI(セロトニン再取り込み阻害剤)などの薬を用いる一方、呼吸法や精神療法などで心身をリラックスさせる。



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