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{{基礎情報 武士 | 氏名 = 近藤勇 | 画像 = Kondo Isami02.jpg | 画像サイズ = 250px | 画像説明 =近藤勇（[[国立国会図書館]]蔵） | 時代 = [[江戸時代]]末期（[[幕末]]） | 生誕 = [[天保]]5年[[10月9日 (旧暦)|10月9日]]（[[1834年]][[11月9日]]） | 死没 = [[慶応]]4年[[4月25日 (旧暦)|4月25日]]（[[1868年]][[5月17日]]） | 改名 = 勝五郎、勝太（[[幼名]]）、宮川勝五郎 → 嶋崎勝太 → 嶋崎勇 → 近藤勇 → 近藤昌宜 | 別名 = 変名：大久保剛、大久保大和 | 戒名 = 貫天院殿純義誠忠大居士 | 墓所 = [[#墓所|下記参照]] | 幕府 = [[江戸幕府]] | 主君 = [[松平容保]] | 藩 = 会津藩預[[新選組]]局長、幕臣[[甲陽鎮撫隊]]隊長 | 氏族 = [[宮川氏]]→[[嶋崎氏]]→[[近藤氏]] | 父母 = 父：宮川久次郎、母：宮川みよ<br />養父：''[[近藤周斎]]''、養母：[[近藤ふで]] | 兄弟 = [[宮川リエ]]、[[宮川音五郎]]、[[宮川粂次郎]] | 妻 = '''[[松井つね]]''' | 子 = [[近藤たま]]、お勇（お考との子）、[[#子孫|ほか]] | 特記事項 = }} '''近藤 勇'''（こんどう いさみ）は、[[江戸時代]]末期の[[武士]]。[[新選組]]局長。後に[[幕臣]]に取り立てられ、[[甲陽鎮撫隊]]隊長。勇は[[仮名 (通称)|通称]]で、[[諱]]は'''昌宜'''（まさよし）という。[[慶応]]4年（[[1868年]]）からは'''大久保剛'''を名乗り、後にさらに'''大久保大和'''と改めた。[[家紋]]は丸の内に三つ引。[[天然理心流]]、豪傑の剣の使い手。 == 生涯 == [[ファイル:Isami Kondo.jpg|200px|left|thumb|[[壬生寺]]にある近藤勇の像]] [[image:Kondo-jinja.jpg|200px|left|thumb|生家の隣にある近藤神社<ref group="注釈">在・東京都調布市野水。</ref>]] === 出生から試衛場入門 === [[天保]]5年（1834年）、[[武蔵国]][[多摩郡]]上石原村（現在の[[東京都]][[調布市]]野水）に[[百姓]]・'''宮川'''久次郎と母みよ（ゑい）の三男として生まれる<ref name="p21" />。[[幼名]]は'''勝五郎'''、後に勝太と改める<ref name="p21" />。久次郎には勝五郎の他に、長女・リエ（天保3年（[[1832年]]）に死去）、長男・[[宮川音五郎|音五郎]]（音次郎）、次男・[[宮川粂次郎|粂蔵]]（くめぞう、粂次郎、惣兵衛）がいる。ほか、祖父の源次郎がいる<ref name="p22" />。天保9年の上石原村の[[宗門人別改帳]]に拠れば、宮川家は多摩郡大沢村（[[三鷹市]]）の龍源寺の[[檀家]]で、高七石一升二合の6人家族<ref name="p2122" />。石高から中流クラスの上層の家庭環境であったと判断される<ref name="p22" />　。 [[嘉永]]元年（[[1848年]]）11月11日、勝五郎は[[江戸]][[牛込]]（東京都[[新宿区]]）に所在する[[天然理心流剣術]]道場・[[試衛館|試衛場]]に入門する。勝五郎が入門した道場は「試衛館」として知られるが、多摩郡蓮光寺村（[[多摩市]]）の名主・富沢政恕日記および[[小島鹿之助]]『両雄士伝』に拠れば「試衛」は号で、「試衛場」と記されている<ref name="p6" />。 翌嘉永2年6月には目録を受ける<ref name="p22" />。同年10月19日には近藤周助（[[近藤周斎]]）の養子となり、周助の実家である嶋崎家へ養子に入り、'''嶋崎勝太'''と名乗る<ref name="p22" />。のちに正式に近藤家と[[養子縁組]]し、'''嶋崎勇'''と名乗ったのちに、'''近藤勇'''を名乗った。[[安政]]5年（1858年）には[[日野宿]]（[[日野市]]）の牛頭天王社（八坂神社）の奉納額に「島崎勇藤原義武」と記している<ref name="p22" />。 [[万延]]元年（[[1860年]]）3月29日に御三卿・[[清水徳川家]]の家臣である松井八十五郎の長女である[[松井つね]]と結婚<ref name="p24" />。 翌年8月27日には[[府中市 (東京都)|府中]][[大國魂神社|六所宮]]にて、天然理心流宗家四代目襲名披露の野試合を行い、晴れて流派一門の宗家を継ぎ、その重責を担うこととなった<ref name="p24" />。また、[[文久]]2年（[[1862年]]）には、つねとの間に長女・[[近藤たま|たま]]（瓊子）が誕生した。勇の死後、[[明治]]9年（1876年）に勇の長兄である音五郎の次男・[[近藤勇五郎|勇五郎]]を近藤家の養子に迎え、娘・たまは[[近藤勇五郎|勇五郎]]の妻となった<ref name="p24" />。 勇は天然理心流の門人同士で独自の交流を持ち、上京後も江戸や多摩の有力門人と[[書簡]]を介して交流し、金策の要請などを行っている<ref name="p3435" />。 中でも勇が密接に交流した人物に兄の音五郎や惣兵衛、寺尾安次郎、[[佐藤彦五郎]]、小島鹿之助、[[沖田林太郎]]、粕谷良循らがいる<ref name="p4244" />。佐藤彦五郎は日野宿の名主で、天然理心流の門人となり屋敷内に稽古場も持っていた<ref name="p41" />。小島鹿之助も多摩郡小野路村（町田市）の名主の家庭に生まれ、同じく門人となり屋敷に道場を持っていた<ref name="p42" />。時期は不明であるが、勇、彦五郎、鹿之助の三人は『[[三国志演義]]』にならい[[義兄弟]]の契りを結んだという<ref name="p42" />。また、鹿之介は漢学を修める教養人で、勇への思想的影響があったとも言われる<ref name="p42" />。佐藤彦五郎や小島鹿之助は[[農兵隊]]を組織し、一部は後に甲陽鎮撫隊と名を改めた新選組に合流した<ref name="p42" />。 === 浪士組参加から清河派との決裂 === [[ファイル:Matudaira Katamori.jpg|thumb|200px|松平容保（写真）]] [[文久]]3年（[[1863年]]）正月、[[江戸幕府]]は旗本の[[松平忠敏]]、[[出羽国]][[庄内藩]]出身の[[清河八郎]]の献策を容れ、14代将軍・[[徳川家茂]]の[[上洛]]警護をする浪士組織「[[浪士組]]」への参加者を募った<ref name="p65" />。永倉新八『新撰組顛末記』に拠れば、浪士募集を受け[[斎藤一]]を除く近藤ら試衛館の8人はこれに参加することを決める。正月16日に近藤は小野路村の小島家で[[鎖帷子]]を借りている<ref name="p65" />。2月8日、浪士組一行と共に[[京都]]に向けて出発した。一行は江戸小石川（東京都[[文京区]]）の[[伝通院]]を発して[[中山道]]を進み、子母澤寛『新選組始末記』に拠れば近藤は取締付・[[池田徳太郎]]の手伝役として道中の宿割りを命じられ、本隊より先行して出立したという<ref name="p66" />。また、『新撰組顛末記』では2月9日に[[本庄宿]]（[[埼玉県]][[本庄市]]）に止宿した際に宿の手配に漏れが生じ、[[水戸藩]]の[[芹沢鴨]]が激怒して大篝火を焚き、近藤と池田が詫びたとする逸話を伝えている<ref name="p66" />。一行は同年2月23日に[[京都]]に到着すると、[[壬生村]]（[[京都府]][[京都市]][[中京区]]）の民家や寺社に分宿した<ref name="p66" />。近藤は壬生村の[[郷士]]・[[八木源之丞]]邸や周辺の寺社に分宿した<ref name="p66" />。 一行が京都に到着した23日夜、清河は[[新徳寺 (京都市)|新徳寺]]（中京区）において浪士組上京の真の目的は[[朝廷]]に尊皇攘夷の志を建白することであると宣言し、浪士組の[[江戸]]帰還を提案した<ref name="p66" />。翌24日に清川は学習院国事参政掛に建白書を提出した<ref name="p66" />。これにより浪士組は清河ら江戸帰還派と近藤・芹沢ら京都残留派に分裂し、異議を唱えた近藤や芹沢ら24人は京に残留する<ref name="p66" />。文久3年3月の近藤勇書簡に拠れば、近藤は清河と同じ尊皇攘夷派に属しつつも、清河が幕府よりも朝廷を優先する思想であるのに対し、近藤は朝廷と幕府を一体化させ政局を安定させる[[公武合体]]論的な思想であったことが指摘される<ref name="p72" />。 === 壬生浪士組の発足と芹沢鴨暗殺 === [[image:Kondo Isami.jpg|200px|thumb|近藤勇（写真）]] 同年3月10日、[[二条城]]において[[京都守護職]]を務める[[会津藩]]主・[[松平容保]]は幕府老中から京都の治安維持のため浪士を差配することを命じられ、近藤・芹沢ら17名の京都残留組は会津藩に嘆願書を提出し、3月12日に受理され会津藩預かりとして将軍在京中の市中警護を担う「[[壬生浪士組]]」が結成された<ref name="p73" />。浪士組24名のうち試衛場出身者は近藤ら8名が占めている<ref name="p74" />。 結成当初の壬生浪士組は運営がスムーズに行かず、近藤は3月25日に[[四条大橋]]（京都市[[下京区]]・[[東山区]]）において下総浪士の[[殿内義雄]]を暗殺した<ref name="p77" />。殿内らは幕府から伝達を受け浪士組の探索を行っていたが、殿内の暗殺、[[根岸友山]]の一派と[[粕谷新五郎]]は脱退し、[[阿比類鋭三郎]]は病死（暗殺説あり）し、[[家里次郎]]は[[切腹]]した。殿内派3人のグループはこれにより瓦解し、浪士組は近藤派と芹沢派5名の二派閥体制となった<ref name="p77" />。 『世話集聞記』に拠れば、3月25日に近藤・芹沢ら浪士組は壬生屯所の裏手で狂言を見物し、この際にはすでに会津藩の手付金で揃いの羽織を着ていたという<ref name="p78" />。文久3年2月、将軍家茂の上洛に随行して上京していた井上源三郎の兄・[[井上松五郎]]は4月17日に壬生屯所で土方・沖田・井上源三郎から「近藤天狗になり候」とする相談を受けている<ref name="p80" />。この「天狗」に関しては近藤の慢心と見る説と、天狗=[[水戸天狗党]]と解し芹沢鴨の同類と理解する説がある<ref name="p80" />。同年3月5日頃には近藤、芹沢、新見らは隊内の法度を定めている<ref name="p81" />。 文久3年[[8月18日 (旧暦)|8月18日]]、[[長州藩]]を京都政局から排するために[[久邇宮朝彦親王|中川宮朝彦親王]]（尹宮）、会津藩、[[薩摩藩]]主導の[[八月十八日の政変]]が起こると、壬生浪士組は御花畑門の警護担当となるが、目立った活躍もなく長州勢の残党狩りに出動する。その後、働きぶりが認められ、[[武家伝奏]]より「[[新選組]]（新撰組）」の隊名を下賜された。近藤・土方らはまず、副長の[[新見錦]]を自殺させた<ref>松村巌『近藤勇』、内外出版協会 p32</ref>。また、新見錦は水戸浪士新家粂太郎と同一人物で、長州で死亡したとする説も存在している<ref>『京都新聞』、2015年2月19日 「壬生浪士幹部？の借用証発見　同一人物説の新家粂太郎連署」</ref>。9月13日には近藤の意に応じないとして田中伊織を暗殺した<ref>西村兼文「新撰組始末記」、維新史料野史台30</ref>。さらに9月16日に芹沢らを暗殺すると<ref>『風説都の錦　八』、[[早稲田大学図書館]]蔵</ref>、近藤勇主導の新体制が構築された。10月10日には祇園料亭「一力」（京都市東山区）」において会津藩が主催して諸藩を招いた集会が開かれ、近藤もこれに招かれている<ref name="p91" />。 この頃に養父の近藤周斎の病状が悪化し、長兄の宮川音五郎から江戸帰還を求められているが、近藤は京の政情不安を理由にこれを断っている<ref name="p90" />。 === 池田屋事件と禁門の変における活動 === 八月十八日の政変により京都政局は公武合体派が掌握し、一橋慶喜・松平容保（会津藩主）・[[松平定敬]]（[[桑名藩]]主）の三者による「[[一会桑政権]]」が形成され、新選組はその一角を担った<ref name="p95" />。[[元治]]元年（[[1864年]]）正月15日には将軍[[徳川家茂]]が入京し二条城へ入った<ref name="p93" />。松平容保は陸軍総裁職・軍事総裁職となり、2月25日には福井藩主・[[松平慶永]]が京都守護職に就任している<ref name="p94" />。幕府では新選組を松平慶永に預ける案が浮上したが、近藤はこれを断っている<ref name="p94" />。5月7日に将軍家茂は江戸へ帰還するが、近藤は将軍の在留を求めて憤激する書簡を残している<ref name="p9697" />。 同年5月末頃、近藤の養父周斎宛の書簡に拠れば、近藤は備中国松山藩主・[[板倉勝静]]の家来で新選組隊士の[[谷三十郎]]から弟の[[近藤周平|昌武]]（周平）を養子に迎えたことを伝えている<ref name="p101102" />。なお、周平は慶応3年（1867年）に養子関係を解消し旧姓に戻り、翌年に江戸へ戻る途中で脱走している<ref name="p102"/>。 6月1日、新選組は[[熊本藩]]士・[[宮部鼎蔵]]下僕である忠蔵を捕縛し、ほか不審者二名を捕縛した<ref name="p102"/>。拷問により謀反の計画を知り、6月5日に四条通小橋西入ル真町（京都市[[下京区]]）で薪炭商・枡屋喜右衛門（[[古高俊太郎]]）を捕縛した<ref name="p103" />。古高の供述から中川宮邸放火計画を知った新選組は直ちに探索を開始し、一味が潜伏していた池田屋に突入して宮部一派を壊滅させた（[[池田屋事件]]）。この働きにより、新選組は[[朝廷]]と幕府から感状と褒賞金を賜った。 [[禁門の変]]出動を経て、近藤は隊士募集のために帰郷する。ここで[[伊東甲子太郎]]ら新隊士の補充に成功した。 === 京都政局と近藤の広島出張 === [[慶応]]元年（[[1865年]]）9月16日、将軍・[[徳川家茂]]は[[上洛]]して[[二条城]]に入り、9月21日には[[京都御所]]へ参内して長州再征の勅許を得る<ref name="p150" />。再征勅許の獲得により幕府では大目付・[[永井尚志]]を長州訊問使として派遣することを決定し、長州側との会見場所が[[安芸国]]広島の[[国泰寺 (広島市)|国泰寺]]（[[広島県]][[広島市]][[中区 (広島市)|中区]]）に決定した<ref name="p152" />。近藤は会津藩を通じて訊問使への同行を願い出て許可された<ref name="p152" />。なお、同年11月4日付の佐藤彦五郎宛書簡では訊問使随行のことなどが記されているほか、天然理心流の後継者を沖田総司とすることなども記されている<ref name="p152153" />。 近藤は[[武田観柳斎]]、[[伊東甲子太郎]]ら隊士8名とともに11月7日に大坂を立ち、11月16日に広島へ到着する<ref name="p153" />。11月20日に永井は近藤らを自らの家臣として長州派遣を要請するが長州側にこれを拒否され、さらに11月22日には永井は近藤らを長州側との折衝役とし、近藤らは長州藩側の宿舎に赴いているが面会を拒否されている<ref name="p153154" />。近藤らは11月23日に長州藩士との面会を果たし、12月11日には長州入りを要請するが、再び拒否されている<ref name="p154" />。12月15日に近藤らは長州藩の[[支藩]]・[[岩国藩]]領の新湊（[[山口県]][[岩国市]]新港町）において岩国藩との会談を要請するが、これも拒否されている<ref name="p154" />。近藤らは長州入りを断念し、12月22日に京都に帰還している<ref name="p154" />。 慶応2年（[[1866年]]）正月22日、幕府は長州藩に対する処分を決定し、老中・[[小笠原長行]]を広島へ派遣する<ref name="p155" />。正月27日に近藤は伊東、[[篠原泰之進]]、[[尾形俊太郎]]とともにこれに随行し、2月3日に広島へ到着した。2月16日に近藤は広島藩士と交流のある伊東を介して岩国藩士・塩谷鼎助との会談を要請するが、これを拒否されている<ref name="p155" />。同年6月7日には第二次[[幕長戦争]]が勃発するが、7月20日に将軍家茂が大坂城で急死したため、8月21日に勅命で長州征伐が停止される<ref name="p156157" />。 === 新選組の幕臣化と伊東甲子太郎の分離・暗殺 === 同年9月26日、伊東甲子太郎と篠原泰之進が近藤の妾宅を訪れ、近藤と時局を論じたという<ref name="p158" />。篠原の日記によれば伊東が勤王を説き孝明天皇（同年12月25日に死去）の衛士になることを主張したのに対し、近藤は徳川幕府の趨勢を論じ議論は平行線となり、近藤は伊東らの分離を警戒したという<ref name="p158" />。 慶応3年（[[1867年]]）正月18日、伊東らは九州遊説のため[[太宰府]]へ赴き、そのまま新選組から分離した[[御陵衛士]]（高台寺党）となった<ref name="p159" />。伊東らは3月12日に帰京、翌13日に近藤・土方らに分離を申し出て、了承された<ref name="p159" />。この際に[[藤堂平助]]・[[斎藤一]]（近藤派の間者との説あり）らがこれに加わった。 同年6月10日、新選組は会津藩預かりから隊士全員が[[幕臣]]となる<ref name="p160" />。近藤は御目見得以上の格（三百俵旗本）となる<ref name="p160" />。これにより近藤は幕府代表者の一員として各要人との交渉を行い、同年6月17日には幕府親藩の集会で演説を行っている<ref name="p161" />。近藤は征長論を主張し、6月24日には近藤の[[建白書]]が[[議奏]]の[[柳原前光]]、[[正親町三条実愛]]に提出される<ref name="p161263" />。土佐藩士の日記によれば、この時期、近藤は永井尚志の紹介で[[土佐藩]]の参政である[[後藤象二郎]]を紹介され、さらに同年9月27日には[[岡山藩]]家老の[[日置帯刀]]を紹介され、長州征伐について会談したという<ref name="p163164" />。同年6月15日には屯所を西本願寺から[[不動堂村]]（京都市[[下京区]]）に移転しており、新選組の任務には要人警護も加わった<ref name="p161164" />。 同年8月8日には伊東ら御陵衛士も建白書を提出し、近藤の征長論に対し長州寛容論を主張した<ref name="p163" />。同年10月13日・14日に薩摩藩、長州藩に対して討幕の密勅が下ると、14日に将軍徳川慶喜は大政奉還を行いこれを回避する<ref name="p165" />。近藤は14日に正親町三条実愛を訪ね、大政奉還を尾張・越前の策謀として批判したという<ref name="p165" />。 同年10月18日夜、近藤は国事議論を目的に醒ケ井通木津屋橋（京都市下京区）に伊東甲子太郎を呼び、酒宴の後に七条油小路（下京区）において[[大石鍬次郎]]らに伊東を暗殺させた<ref name="p167" />。さらに他の御陵衛士たちを誘い出して夜襲し、藤堂らを殺害した（油小路の戦闘）<ref name="p167" />。 同年12月9日には[[王政復古]]の号令が発せされ、京都の旧幕府勢は撤退を命じられた<ref name="p172" /> 。新選組は将軍不在の[[二条城]]警護を命じられていたが、12月13日に近藤は水戸藩士と二条城警護を巡り対立したという<ref name="p172173" />。 12月18日、近藤は伏見の陣から二条城へ出向き、公卿らに薩長・尊王派を除こうと上京する<ref name="p174" />。篠原泰之進の日記に拠れば、御陵衛士の[[鈴木三樹三郎]]・篠原ら8名は[[竹田街道]]・[[墨染]]（京都市[[伏見区]]）において近藤を待ちぶせ、馬上の近藤を銃撃する<ref name="p175" />。近藤は肩を負傷し、島田魁日記に拠れば[[伏見城]]へ逃れたという<ref name="p175" />。近藤は新選組の検診医でもあった幕府典医・[[松本良順]]の治療を受けるため、沖田総司とともに[[大坂城]]で療養している。<ref name="p177" /> 。 慶応4年（/[[明治]]元年、[[1868年]]）1月3日には旧幕府軍と新政府軍の間で[[鳥羽・伏見の戦い]]が発生する。新選組は会津兵らと伏見奉行所におり、近藤負傷のため土方が隊を指揮した<ref name="p178" />。 === 戊辰戦争から処刑まで === [[image:KoshuKatsunuma.jpg|thumb|220px|[[錦絵]]「勝沼駅近藤勇驍勇之図」（1880年、東京江戸博物館蔵）]] [[image:KondoIsami.jpg|thumb|220px|三条河原での晒し首の様子]] 鳥羽・伏見の戦いにおいて敗れた新選組は、幕府軍艦で江戸に戻る。近藤・土方は[[富士山 (スループ)|富士山丸]]に乗艦している。江戸鍛冶橋門外（東京都[[千代田区]]）の[[秋月種樹]]邸を屯所とする<ref name="p188" />。永倉新八「浪士文久報国記事」『新選組日記』に拠れば、近藤は江戸帰還後に徳川慶喜に対して[[甲斐国]]甲府の[[甲府城]]（山梨県[[甲府市]]）の委任を要請する建白書を提出した<ref name="p188" />。 2月28日、近藤は幕府から「甲陽鎮撫」を命じられ、幕府から武器弾薬を、幕府や会津藩から資金を与えられると3月、近藤は「'''大久保剛'''」の変名を用いて新選組は[[甲陽鎮撫隊]]と改名した<ref name="p190" />。また、日野宿では佐藤彦五郎が一行に加わっている<ref name="p192" />。一行は3月1日に江戸鍛冶橋屋敷を出立すると[[甲州街道]]を甲府へ向かうが、一方の新政府軍も[[岩倉具定]]が東山道先方総督軍を率いて信濃国諏訪から[[中山道]]・[[甲州街道]]に分かれて江戸へ進軍していた<ref name="p192" />。近藤は3月4日に花咲宿（山梨県[[大月市]]）において東山道先鋒総督参謀・[[板垣退助]]の率いる[[迅衝隊]]が甲府を制圧したことを知り<ref name="p193" />、3月6日に[[甲州市]]勝沼町において勃発した[[甲州勝沼の戦い]]（柏尾戦争）で[[迅衝隊]]と戦うが敗れて敗走する<ref name="p196199" />。 近藤らは敗走し、3月8日には[[八王子宿]]（東京都[[八王子市]]）において江戸引き上げを宣言した<ref name="p199" />。この頃、[[永倉新八]]、[[原田左之助]]らは勢力を結集して会津において再起を図る計画を立て、3月11日には江戸和泉橋医学所において近藤と面会するが、近藤は永倉・原田らの計画に対して近藤の家臣となる条件を提示したため両者は決裂し、永倉・原田は離脱した<ref name="p202" />。近藤・土方は会津行きに備えて隊を再編成し、旧幕府歩兵らを五兵衛新田（現在の[[東京都]][[足立区]][[綾瀬 (足立区)|綾瀬四丁目]]）で募集し、隊士は227名に増加した。近藤は変名をさらに「大久保大和」と改めた<ref name="p201202" />。 4月には[[下総国]]流山（[[千葉県]][[流山市]]）に屯集するが、新政府軍は3月13日にすでに[[板橋宿]]（東京都[[板橋区]]）に入っていた<ref name="p202" />。新選組は4月1日・2日には流山の光明院・流山寺に分宿し、近藤・土方は長岡七郎兵衛宅を本陣としていた<ref name="p202" />。新政府軍は総督内参謀の[[香川敬三]]が大軍監となり、[[下野国]]宇都宮の[[宇都宮城]]占拠を企てる会津・桑名勢に対抗するため日光街道を進軍し、4月2日には糟壁（[[埼玉県]][[春日部市]]）に至っている<ref name="p202" />。新政府軍は流山に集結した新選組が背後を襲う計画を知り、4月3日には近藤を捕縛する<ref name="p203" />。近藤捕縛は史料により状況が異なり、[[越谷市|越谷]]の政府軍本営に出頭したとする記録もある。 しかし、大久保が近藤勇と知る者が政府軍側におり、そのため総督府が置かれた[[板橋宿]]まで連行される。近藤は大久保の名を貫き通したが、元隊士で[[伊東甲子太郎]]率いる[[御陵衛士]]だった[[加納鷲雄]]、[[清原清]]に近藤であると看破され、結局捕縛された。その後、土佐藩（[[谷干城]]）と薩摩藩との間で、近藤の処遇をめぐり対立が生じたが、結局土佐藩（[[谷干城]]）が押し切り、4月25日、中仙道板橋宿近くの[[板橋刑場]]で[[横倉喜三次]]、[[石原甚五郎]]によって斬首された。享年35（満33歳没）。首は京都の三条河原で[[獄門|梟首]]された。その後の首の行方は不明である。 == 墓所 == 東京都[[三鷹市]]の'''龍源寺'''（先述の出身地、現・[[調布市]]野水のすぐ近く）や処刑場の近隣であるJR[[板橋駅]]前（'''[[寿徳寺 (東京都北区)|寿徳寺]]'''）にも旧同士だった[[永倉新八]]により建立された墓所がある。[[福島県]][[会津若松市]]の'''[[天寧寺 (会津若松市)|天寧寺]]'''には[[土方歳三]]が遺体の一部を葬ったとされる墓があり、[[山形県]][[米沢市]]の'''高国寺'''にも近藤勇の従兄弟 近藤金太郎が首をひそかに持ち帰り埋葬したとされる墓がある。毎年、民間団体が近藤勇を弔う為に「近藤勇忌」を[[流山市]]や[[会津若松市]]等で行っている。[[戒名]]は貫天院殿純義誠忠大居士。 [[辞世]]の句は[[漢詩]]（七言[[律詩]]）で作られており、この句が刻まれた句碑が龍源寺境内の墓所にある。 {{Quotation|: 孤軍援絶作囚俘　顧念君恩涙更流 : 一片丹衷能殉節　睢陽千古是吾儔 ;; （書き下し文） :: 孤軍　援（たす）け絶えて俘囚となる　顧みて君恩を思へば涙　更に流る :: 一片の丹衷　能（よ）く節に殉ず　睢陽（すいよう）は千古是れ吾が儔（ともがら） : :　其二 : 靡他今日復何言　取義捨生吾所尊 : 快受電光三尺劔　只將一死報君恩 ;; （書き下し文） :: 他に靡き今日復た何をか言はん　義を取り生を捨つるは吾が尊ぶ所 :: 快く受けん電光三尺の剣　只に一死をもって君恩に報いん}} == 子孫 == 近藤の刑死後である[[1876年]]（明治9年）に近藤の長兄である宮川音五郎の次男・[[近藤勇五郎|勇五郎]]が近藤家の養子に迎えられる<ref name="p24" />。近藤と妻・つねとの間に生まれた娘・たまは勇五郎に嫁し<ref name="p24" />、後に長男・久太郎を産み、25歳で亡くなっている。その久太郎も明治38年（[[1905年]]）に[[日露戦争]]で戦死したため、近藤の嫡流子孫は絶えている。 しかしながら、子はたまの他に、妾の駒野との間に男子（後に僧籍）、同じく妾のお考との間に娘のお勇、同じく妾のおよしとの間に男子がいる。孫は久太郎の他に、お勇が朝鮮人貿易商との間に儲けた男子3人がいる。 宮川家は代々農家を続けており、現在の末裔も都内で農家を営んでいる。一族の[[宮川清蔵]]は天然理心流9代宗家となっている（近藤勇は4代宗家）。 == 評価 == *[[江川太郎左衛門]] 「武勇と豪胆とは、麾下九万の士人中、勇ぞその第一位を占めたりける。されば、まだうら若き身をもって、新撰組の頭領として、海内同様の中心たりし京城鎮護の命を受け、一時その独力をもて、驚悍狂躁の浮浪ばらを打鎮め、幕廷鎮護の干将莫邪とは成りたりけり。勇は容貌魁偉にして、音吐さながら洪鐘の如く、紅顔あたかも棗を重ね、気躁あたりを沸ひしとぞ。去れども、その人寡黙にして能く辞譲の道をば守り、和気自ずから四筳に薫て、彼の武人一通りの弱点たる、峻厲人と犯すが如き事は絶えて無かりしとぞ。さればこそ、若冠にして多数の虎豹を引纏め、儼然として一敵国をば構えたりけれ」<ref>『活文字』明26.1</ref> == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} ===注釈=== {{Reflist|group="注釈"}} ===出典 === {{Reflist|3|refs=<ref name="p6">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.6}}</ref><ref name="p21">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.21}}</ref><ref name="p2122">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=pp.21-22}}</ref><ref name="p22">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.22}}</ref><ref name="p24">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.24}}</ref><ref name="p3435">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=pp.34-35}}</ref><ref name="p41">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.41}}</ref><ref name="p42">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.42}}</ref><ref name="p4244">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=pp.42-44}}</ref><ref name="p65">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.65}}</ref><ref name="p66">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.66}}</ref><ref name="p72">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.72}}</ref><ref name="p74">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.74}}</ref><ref name="p73">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.73}}</ref><ref name="p77">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.77}}</ref><ref name="p78">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.78}}</ref><ref name="p80">{{Harvnb|大石|2004|ref=af|loc=p.80}}</ref><ref 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*[http://www.ndl.go.jp/portrait/datas/269.html?c=16 近藤勇 | 近代日本人の肖像] {{先代次代|[[天然理心流|天然理心流宗主4代目]]|1834年 - 1868年|[[近藤周助]]|[[近藤勇五郎]]？}} {{新選組}} {{壬生浪士}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:こんとう いさみ}} [[Category:武蔵国の人物]] [[Category:調布市の歴史]] [[Category:天然理心流剣術]] [[Category:江戸時代の剣客]] [[Category:新選組隊士]] [[Category:江戸幕府幕臣]] [[Category:戊辰戦争の人物]] [[Category:刑死した人物]] [[Category:1834年生]] [[Category:1868年没]]

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