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miniwiki - 利用者の投稿記録 [ja]
2024-05-20T22:29:55Z
利用者の投稿記録
MediaWiki 1.31.0
嗅覚
2018-07-27T14:03:21Z
<p>42.147.53.166: /* 嗅覚をメインテーマとする作品 */</p>
<hr />
<div>[[File:Makart hans die funf sinne geruch.jpg|thumb|right|120px|[[ハンス・マカルト|マカルト]]『{{仮リンク|五感 (マカルト)|label=五感|fr|Les Cinq Sens (Makart)}}』より『嗅覚』]]<br />
'''嗅覚'''(きゅうかく)とは、[[におい]]の[[感覚]]のこと<ref name="ko5">広辞苑 第5版 p.676</ref>。<br />
<br />
== 概説 ==<br />
いわゆる「[[におい]]」や「[[香り]]」の感覚である。<br />
<br />
[[揮発性物質]]が[[嗅覚器]]の[[感覚細胞]]を化学的に[[刺激]]することで生じる感覚である<ref name="ko5" />。別の言い方をすると、[[化学物質]]を受容器で受け取ることで生じる感覚のこと。陸上動物においては[[空気]]中の、[[水中動物]]においては[[水]]中の化学物質を感知している。<br />
<br />
[[ヒト]]においては[[鼻腔]]の奥にある[[嗅細胞]]により電気信号に変換し、[[脳]]でそれを認識する。いわゆる[[五感]]の1つ。なお嗅覚は、日本語では時に「臭覚(しゅうかく)」と言われることもある。一応「臭覚」も言葉としては存在し、同じ意味ではあるが、嗅覚が正しいとされている。<br />
<br />
嗅覚は、特定の化学物質の分子を[[受容体]]で受け取ることで生ずる感覚の1つであり、[[五感]]の1つに数えられている<br />
<ref group="注釈"><br />
「[[五感]]」は、古くは[[アリストテレス]]によって記述されたものであり、<br />
また現在でも一般的に使用されている言葉ではある。<br />
しかし、現在では、分類の仕方にもよるが、9〜23の感覚があるともされている。<br />
</ref><br />
。<br />
ところで、化学物質の受容による感覚としては、もう1つ[[味覚]]がある。両者の違いは、味覚が特定の対象に接触し、その接触面で受容が行われるのに対し、嗅覚はその動物の周辺に散らばっているものを受け取る点である。したがって、遠くにある対象からも匂いを受け取れるし、対象を遠くから知るためにも使われる。また、特定の対象のそれを知るために、わざと対象に近づき、さらにそれに受容器を近づけるということが行われることもある。[[哺乳類]]においてその受容器は[[鼻]]であるから、この対象の匂いを詳しく調べるための行動は、対象に近づいてゆき、さらにその対象に鼻を近づけて短く立て続けに[[鼻孔]]から空気を吸い込むという行為になる。この行為を特に'''嗅ぐ'''(かぐ)と言うこともある。<br />
<br />
このように嗅覚は遠隔的に受け取る感覚なので、例えば、食品が腐敗していないか、つまり、目の前にあるものが食用になるかどうかを、[[口]]に入れる前に確認するといった安全確認にも利用される。また、土に埋もれて見えないものを探したり、遠くの様子を知ろうとしたり、気象のようにとらえどころのないものを知ろうとするのにも使われる。転じて、物事の雰囲気やそこに何らかの予感がすることを「匂いがする」とか「臭う」など、嗅覚に関わる言葉で表すこともよくある。<br />
<br />
他に、嗅覚は周辺に散らばっているものを受け取る感覚であることを利用したある種の警報も存在する。例えば、ヒトには無色無味無臭で感知できないLPガスや都市ガスに、燃料としては不要な硫黄化合物([[テトラヒドロチオフェン]]や[[ジメチルスルフィド]])を加えることで、ガス漏れに気が付いてもらえるようにするといったものである。<br />
<br />
== 機構 ==<br />
嗅覚の機構については[[嗅覚受容体]]の正体が明らかになる以前から4つの説が提唱されていた。<br />
<br />
; 振動説 : 分子から放出された[[電磁波]]あるいは分子の機械的振動で受容体を活性化する。<br />
; 化学説 : 分子が受容体と化学反応することで受容体を活性化する。<br />
; 酵素説 : 分子が[[補酵素]]として働き受容体酵素を活性化する。<br />
; 立体説 : 分子が受容体のポケットにきれいにはまると受容体を活性化する。<br />
<br />
1980年代以降、[[分子生物学]]的な手法の導入により嗅覚受容体の正体が明らかとなっていった。2004年の[[ノーベル生理学・医学賞]]は[[リチャード・アクセル]]と[[リンダ・バック]]の[[嗅覚受容体]]の研究に対して与えられた。<br />
<br />
[[File:Olfactory system.svg|thumb|300px|ヒトの嗅覚系<br />1. [[嗅球]]<br />2. [[僧帽細胞]]<br />3. 骨([[篩骨]]の篩板)<br />4. 鼻粘膜上皮<br />5. 嗅糸球<br />6. [[嗅覚受容細胞]]]]<br />
<br />
空気中の化学物質は[[鼻腔]]の天蓋、[[鼻中隔]]と'''上鼻甲介'''の間にある[[粘膜]](嗅上皮)の嗅細胞によって感知される。この嗅細胞の細胞膜上には嗅覚受容体である[[受容体|Gタンパク共役受容体]] (GPCR) が存在し、これに分子が結合して感知される。受容体を活性化する分子が結合すると、嗅細胞の[[イオンチャネル]]が開き、[[脱分極]]して電気信号が発生する。この電気信号は嗅神経を伝わり、まず一次中枢である[[嗅球]]へと伝わる。さらにここから'''前梨状皮質'''、[[扁桃体]]、[[視床下部]]、[[大脳皮質]]嗅覚野([[眼窩前頭皮質]])などに伝わり、色々な情報処理をされて臭いとして認識される。<br />
<br />
ヒトでは396種類(正常に機能しないタンパク質をコードする[[偽遺伝子]]を含めると821)、マウスでは1,130種類の嗅覚受容体が発見されている<ref>Niimura Y, Matsui A, Touhara K (2014) Extreme expansion of the olfactory receptor gene repertoire in African elephants and evolutionary dynamics of orthologous gene groups in 13 placental mammals. ''Genome Res'' '''24''': 1485–1496.</ref>。それぞれの嗅細胞にはただ一種類の[[Gタンパク共役受容体]]が発現している。そして同じ種類の受容体を持つ嗅細胞からの嗅神経は嗅球内の同一の糸球体へと投射されている。嗅細胞の寿命は約20日から約30日である。嗅細胞が次々に補充されていることから、嗅細胞を適切な糸球体と結合させる何らかの機構があると考えられている。<br />
<br />
それぞれの嗅覚受容体は特定の一種類の物質のみが結合するわけではなく、いくつかの類似した分子が結合できる。また、複数の匂い分子の混合物から構成されるひとつの物質は数種 - 数十種の受容体と結合する。それゆえ、臭いの種類の認識は活性化された受容体の種類のパターンを脳が識別し、匂いを感じている現在の状況や期待をもとに、過去に学習された[[記憶]]と照合することでなされているものと考えられている<ref>ジェイミー・グッド『ワインの味の科学』伊藤伸子訳 エクスナレッジ 2018 ISBN 9784767823959 pp.69-75.</ref>。<br />
<br />
特定の臭いへの感覚は個々人によって異なるが、この差は場合によっては遺伝子配列にまでさかのぼる。例えば、[[アンドロステノン]]は人によって不快であったり、ほとんど感じなかったりすることが知られているが、この感覚の違いは OR7D4 と呼ばれる嗅覚受容体遺伝子の配列と相関していることが報告されている<ref>Keller et al., "Genetic variation in a human odorant receptor alters odour perception", ''Nature'' '''449''', 468 (2007). {{doi|10.1038/nature06162}}</ref>。<br />
<br />
水生生物では同様に水中の化学物質を認識する機構が存在する。<br />
<br />
== 嗅覚疲労 ==<br />
嗅覚疲労とは、嗅覚の感度が一時的に低下することである。嗅覚器は他の感覚器官に比べて著しく疲労しやすい。ある一種類の臭いを嗅ぎ続けると数分のうちに臭いに対する感度が著しく低下する。しかし、その状態でも別の種類の臭いへの感度は低下しないのが特徴である。<br />
<br />
== フェロモンの受容機構 ==<br />
[[両生類]]、[[爬虫類]]、[[哺乳類]]においては嗅上皮と異なる嗅覚に関する[[感覚器]]が知られている。これは[[鋤鼻器]](VNO)あるいは[[ヤコプソン器官]]といい、哺乳類では鼻腔の入り口近く、鼻中隔の下部に、トカゲやヘビでは口腔内に開口している管状の器官である。爬虫類の例えばヘビ等では嗅上皮よりも鋤鼻器が嗅覚の主体であり、ヘビやオオトカゲが頻繁に舌を出入りさせるのは、舌に空気中から吸着した臭い物質の分子を鋤鼻器に運び、外界の様子や獲物を探っているためである。<br />
<br />
しかし、ヘビやトカゲ以外の両生類、爬虫類、哺乳類では[[フェロモン]]の受容が鋤鼻器の主たる機能である。鋤鼻器にもGタンパク共役受容体が発現しており、これがフェロモンの受容体となっている。フェロモンを受容した信号は嗅球のすぐ上にある一次中枢の副嗅球を通じて脳の扁桃体や[[視床下部]]に送られて[[ホルモン]]などの分泌に影響を与えると考えられている。<br />
<br />
ヒトにも鋤鼻器が存在していることが知られているが、胎児期にそこに接続する神経系の大部分が退化してしまい一次中枢の'''副嗅球'''も存在しない。そのためヒトではこの受容機構が機能している可能性は低いと考えられていた<ref name="Suzuki">鈴木隆『匂いのエロティシズム』集英社〈集英社新書〉2002年、ISBN 9784087201291 pp.118-122.</ref>。<br />
近年のフェロモン研究では、鋤鼻神経系はふつうの匂いを感じる嗅覚神経とは独立した副嗅覚系(Accessory Olfactory System)と呼ばれている<ref name="Suzuki"/>。鋤鼻神経系で感知したフェロモンの信号は視床下部に直接つながっており、[[大脳新皮質]]には届かないため、何かの匂いを感じたという意識を生じる事が無いまま直接ホルモンなどに影響を与えると考えられている<ref name="Suzuki"/>。<br />
<br />
また、ヤギやヒトにおいて通常の嗅覚系でフェロモン受容体の遺伝子が発現していることが報告されている。現在までのところその受容体が正常に働いているかどうかは不明であるが、鋤鼻器だけでなく、通常の嗅覚系でもフェロモンを受容できる可能性があることが示唆されている。<br />
<br />
なお、フェロモンはタンパク質が揮発せず、上記のように匂いとして認識できないことから、フェロモンが匂いと呼べるかどうかという議論がある<ref name="Suzuki"/>。<br />
<br />
== 香りと記憶 ==<br />
嗅覚は視覚や聴覚に比べると、記憶を呼び起こす作用が強いとデブラ ゼルナー(Debra A zellner)らによって報告されている。また、イメージや色など記憶と調和する香りを知覚することによってその香りは強く作用することがしられている。<br />
<ref>Zellner, Debra A. (2005) Color Enhances Orthonasal Olfactory Intensity and Reduces Retronasal Olfactory Intensity http://chemse.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/30/8/643</ref><br />
<br />
== 人工嗅覚 ==<br />
'''人工嗅覚'''または'''電子鼻'''と呼ばれる嗅覚の計測装置の開発が進められる<ref>[http://wwwr.kanazawa-it.ac.jp/wwwr/seeds/data2015/KIT_seeds2015-3.pdf エレクトロニックノーズ(人工電子鼻)システムの開発とその応用]</ref><ref>杉本岩雄, et al. "[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jec1991/8/4/8_4_831/_pdf 水晶振動子式センサによる ppb レベルの石油留分ガスの検出.]" 環境化学 8.4 (1998): 831-840.</ref><ref>勝部昭明. "[https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejsmas/122/6/122_6_296/_pdf 味と匂いセンサの研究· 開発動向.]" 電気学会論文誌 E (センサ・マイクロマシン部門誌) 122.6 (2002): 296-299.</ref>。<br />
<br />
== 嗅覚をメインテーマとする作品 ==<br />
* 『香水―ある人殺しの物語』『[[パフューム ある人殺しの物語]]』([[パトリック・ジュースキント]])<br />
* 『オルファクトグラム』([[井上夢人]])<br />
* 『カニスの血を嗣ぐ』([[浅暮三文]])<br />
* 『[[おとり捜査官|女囮捜査官4 嗅覚]]』([[山田正紀]])<br />
* 『スメル男』([[原田宗典]])<br />
* 『[[スニッファー ウクライナの私立探偵]]』<br />
*『あせとせっけん』([https://twitter.com/KintetsuYMD 山田金鉄])<br />
<br />
== 出典 ==<br />
{{Reflist}}<br />
<br />
== 注釈 ==<br />
<references group="注釈"/><br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
{{Multicol}}<br />
* [[嗅細胞]]<br />
* [[嗅神経]]<br />
* 嗅覚野<br />
* [[フェロモン]]<br />
* [[嗅覚障害]]<br />
{{Multicol-break}}<br />
* [[香料]]<br />
* [[香道]]<br />
* [[アロマテラピー]]<br />
* [[香水]]<br />
* [[調香師]]<br />
{{Multicol-break}}<br />
* [[悪臭]]<br />
* [[臭気判定士]]<br />
* [[かおり風景100選]]<br />
* [[日本味と匂学会]]<br />
* [[日本官能評価学会]]<br />
{{Multicol-end}}<br />
<br />
== 外部リンク ==<br />
* {{commonscat-inline|Olfactory system}}<br />
* [http://www.orea.or.jp/ 社団法人 におい・かおり環境協会]<br />
* [http://bunseiri.michikusa.jp/kyuukaku.htm 嗅覚の伝導機構] ([http://bunseiri.michikusa.jp/ ビジュアル生理学] 内の項目)<br />
*{{脳科学辞典|副嗅覚系}} 特にフェロモン受容のに関わる脳構造に関する解説<br />
<br />
{{biosci-stub}}<br />
<br />
{{DEFAULTSORT:きゆうかく}}<br />
[[Category:感覚]]<br />
[[Category:嗅覚|*]]</div>
42.147.53.166
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