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利用者の投稿記録
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スクールカースト
2018-08-03T14:18:05Z
<p>218.180.214.32: Category:和製英語</p>
<hr />
<div>'''スクールカースト'''(または'''学校カースト'''<ref name="school">森口朗『[http://d.hatena.ne.jp/moriguchiakira/20070604 スクールカーストとは何か〜その3〜]』森口朗公式ブログ(2007年6月4日)</ref><ref name="gakkou">「学校カーストが「キモメン」生む」『[[AERA]]』2007年11月19日号、62-63頁</ref>)とは、現代の[[日本]]の[[学校]]空間において生徒の間に自然発生する人気の度合いを表す序列を、[[カースト制度]]のような[[身分制度]]になぞらえた表現。もともとアメリカで同種の現象が発生しており<ref group="注">[[ジョック#階層構造の図象]]を参照。</ref>、それが日本でも確認できるのではないかということからインターネット上で「スクールカースト」という名称が定着した<ref name="school" />。<br />
<br />
2006年11月16日の衆議院「青少年問題に関する特別委員会」で参考人となった[[教育学者]]の[[本田由紀]]が言及したあと<ref>[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/165/0073/16511160073003c.html 衆議院会議録情報 第165回国会 青少年問題に関する特別委員会 第3号]</ref>、[[教育評論家]]の[[森口朗]]も著書『いじめの構造』で2007年に紹介し、その後[[教育]]や[[文芸批評]]の文脈で議論の対象とされるようになった。ただし、スクールカーストという言葉が流通するようになる前の1990年代から学校内に序列があること自体は研究者から指摘されており<ref>[[松谷創一郎]] 『ギャルと不思議ちゃん論: 女の子たちの三十年戦争』 [[原書房]]、2012年、285頁ISBN 978-4562048588。</ref>、欧米などでは、およそ1990年代初期頃からヒエラルキー化が意識されるようになった<ref>『ギャルと不思議ちゃん論: 女の子たちの三十年戦争』289頁</ref>。雑誌『[[AERA]]』2007年11月19日号にはスクールカーストという言葉を初めてインターネット上に登録したと述べている当時29歳の男性への取材記事が掲載されているため、この記事を信じるならば、これがスクールカーストという語の初出といえる<ref>『教室内カースト』30-33頁</ref>。<br />
<br />
== スクールカーストの構造 ==<br />
現代の学校空間では、クラス内にいくつかの友達同士のグループが形成され、それらの内部で活発に交流が行われるだけで人間関係が完結する現象がみられる。[[社会学者]]の[[宮台真司]]は、教室内に限らず若者の[[コミュニケーション]]空間全般で発生しているこの変容を「島宇宙化」と呼び、分断された各グループ(島宇宙)は優劣のつけられない横並びの状態になっており(フラット化)、異なるグループ間でのつながりが失われたと論じた<ref>宮台『制服少女たちの選択』[[講談社]]、1994年。ISBN 978-4062053549。</ref>。これについて[[本田由紀]]や[[評論家]]の[[荻上チキ]]は、分断化自体は認めながらも<ref group="注">ただし本田は、[[#統計調査|後述]]するアンケート調査で「いつも一緒の友だちグループ以外の人とは、特に仲良くしたいと思わない」という質問への否定的な回答が全体の3/4を超えたことを根拠として、自身の所属するグループの外へのコミュニケーション接続の志向も残ってはいることを指摘している。荻上は、([[インターネット]]環境の普及を背景として)全体としてある程度の棲み分けが進行する一方で、個人は単一の島宇宙にとどまるのではなく複数の島宇宙に帰属して常時接続することが求められるとして、これを「コミュニケーションの網状化」と呼んでいる。</ref>、教室内の各グループは等価な横並び状態にあるのではなく序列化(上下関係の付与)が働いていると述べている<ref>『学校の「空気」(若者の気分)』41-45頁</ref><ref>『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』 199-202頁</ref>。この序列はスクールカーストと呼ばれ、[[精神科医]]の[[和田秀樹]]は、現代の若者は思春期頃に親から分離した人格を得て親友をつくっていくという発達プロセスを適切に踏むことができていないため、同じ価値観を持つ親友同士からなる教室内グループを形成することができず代わりにスクールカーストという階層が形成されたのだとしている<ref>『なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか』172-173頁</ref>。スクールカーストでは、上位層・中位層・下位層をそれぞれ「一軍・二軍・三軍」「A・B・C」などと表現する<ref name="ijime43">『いじめの構造』43頁</ref>。<br />
<br />
一般的なイメージとしては、以下のようになる<ref>『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』20頁</ref>。<br />
* [[恋愛]]・[[性愛]]経験 - 豊富なほど上位<br />
* [[容姿]] - 恵まれているほど上位<br />
* [[ファッション]]センス - 優れているほど上位<br />
* [[場の空気]] - 読めたり支配できたりするほど上位<br />
* [[趣味]]・文化圏 - [[ヤンキー (不良少年)|ヤンキー]]・[[ギャル]]系([[繁華街]]で遊び慣れているなど)は上位<ref name="net-152">『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』152頁</ref>、[[オタク]]系は下位<br />
* 自己像<ref group="注">精神科医の[[斎藤環]]は、若者の傾向をコミュニケーション能力は低いが自己像が安定的な「引きこもり系」とコミュニケーション能力は高いが自己像が不安定な「自分探し系」に大別した。</ref> - 自分探し系は上位、[[引きこもり]]系は下位<ref>『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』24頁</ref><br />
<br />
[[森口朗]]によれば、スクールカースト上での位置決定に影響する最大の特性は[[コミュニケーション能力]]である<ref group="注">一般に社会で人間に対する評価指標がコミュニケーション能力・人間力といった抽象的なものにシフトしているということは、例えば[[ハイパー・メリトクラシー]]という用語でも論じられている。</ref>。クラス内でのステータスの上下関係自体は以前からあったものの、それは運動神経や学力が大きく関係したものであり、そうではなく判断基準がほとんどコミュニケーション能力に依存している点がスクールカーストの新しい点であるといえる<ref name="ijime43" />。ここでいうコミュニケーション能力とは、具体的には「自己主張力([[リーダーシップ]]を得るために必要な能力)」「[[共感|共感力]](人望を得るために必要な能力)」そして「同調力([[場の空気]]に適応するために必要な能力)」の3つを指す<ref>『いじめの構造』44頁</ref>。和田によれば、コミュニケーション能力の有無に偏重したスクールカーストという序列が発生した背景には、学業成績の相対評価を廃止するなど生徒に対する序列付け自体を否定するような過剰な平等主義があり、「学業成績」「運動能力」といった(努力で挽回可能な)特性によるアイデンティティを失った子供たちは「人気(コミュニケーション能力)」という(努力で挽回不可能な)特性に依存した序列付けを発生させてしまったのだという<ref>『なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか』65頁・86-87頁</ref>。カーストの規定要因については、本田が統計分析を用いて具体的に研究している([[#統計調査|後述]])。スクールカーストとコミュニケーション能力の関係について、中高生の交友関係を研究している[[鈴木翔]]は、「自分の意見を押し通す」能力とスクールカーストの高低には相関関係があるものの、「友達の意見に合わせる」能力とスクールカーストの高低にはあまり相関がみられないという統計に注目している。この事実からは、コミュニケーション能力があるからカースト上位になるのではなく、カースト上位にいるからそれを利用して他人に自分の意見を押し付けることができるようになり、コミュニケーション能力があると判断されているという解釈も可能となる<ref>『教室内カースト』130-132頁</ref>。<br />
<br />
スクールカーストの格差は小学校段階で発生するもののまだ目立たないが、[[思春期]](中学校ぐらい)からは顕著にみられるようになる<ref>『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』 19頁</ref>。大学に入ると高校までのように常に同じ教室内で生徒同士で時間を過ごすのではなく自由に講義を履修するようになるためスクールカーストのような人間関係は薄れていくと考えられるが、実際には([[#いじめとの関係|後述]]するようないじめに発展するような熾烈な事態にはならないにせよ)場の空気を読むことが強制され[[コミュニケーション能力]]が過大評価されるような高校までの環境の延長線上にあるような大学も相当数あり<ref>『なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか』186-187頁</ref>、SNSでの交友関係の広さや恋人の社会的地位などによって決まるとされる「女子大生カースト」の特集が女性向け[[ファッション雑誌]]で組まれたこともある<ref>「[http://www.j-cast.com/2013/07/14179371.html 自分が好かれているかが気になって仕方がない 女子大生悩ます「カースト」問題の深刻]」J-CASTニュース (2013年7月14日)</ref>。<br />
<br />
鈴木は自身の行ったインタビュー調査に基づき、小学校時代のスクールカーストと中学・高校時代のスクールカーストでは、それがどの程度強く意識されるかという程度の差だけではない異なった様相がみられると論じている。それによると、小学校の段階では生徒の地位の高低が特定の生徒の名前と結びつけて認識されているのに対し、中学以降では「(地位の高い)ギャル系」「(地位の低い)オタク系」というようなグループ単位で認識されている傾向があるという<ref>『教室内カースト』96頁</ref>。<br />
<br />
和田によれば、スクールカーストによる階層化には地域差が存在するという<ref>『なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか』73-77頁</ref>。スクールカースト化は人間関係の流動性が低く閉鎖的な場(いざというときに逃げられない状況)で起こりやすい現象であるため、具体的には以下のような地域ではカースト化が進みにくいと考えられる。<br />
* [[学習塾]]への通塾率が高い地域 - 塾という学校とは別の場が用意されているため<br />
* [[中学受験]]への意識が高い地域 - 受験によって別々の学校に進学し友人関係がリセットされるため<br />
* (公立中学校の)[[学校選択制]]がある地域 - 受験しなかったとしても、友人関係のリセットが行われるため<br />
小中一貫校(9年制)や中高一貫校(6年制)のような一貫教育は、スクールカーストの条件が整いやすい。<br />
<br />
=== いじめとの関係 ===<br />
場の空気を読んで摩擦・衝突を回避しながらポジションをさぐりあうという教室内における生徒たちの人間関係に対する緊張感は、しばしば[[戦場]]に喩えられる<ref>「空気の戦場――あるいはハイ・コンテクストな表象=現実空間としての教室」『サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ』348頁</ref>。荻上は([[#キャラ的コミュニケーション|後述]]するようなキャラをコントロールしながら行うコミュニケーションの闘争を)「(終わりなき)キャラ戦争」と呼び<ref>『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』206頁</ref>、評論家の[[宇野常寛]]も「[[ケータイ小説]]好きの女子」と「[[美少女ゲーム]]好きの男子」というように文化的トライブを異にする者同士が(場合によっては互いに軽蔑しあいながら)共存する学校教室を、[[ポストモダン]]化の進行によって複数の異なる価値観が乱立する「バトルロワイヤル状況」のミクロな意味での象徴だとしている<ref>『ゼロ年代の想像力』97頁</ref>(詳しくは[[#スクールカーストもの|後述]])。また、[[社会学者]]の[[土井隆義]]は中学生が創作した「教室はたとえて言えば[[地雷原]]」という[[川柳]]をスクールカースト的な一触即発の環境を端的に表現したものとして紹介している<ref>『友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル』9頁</ref>。<br />
<br />
こうしたシビアなコミュニケーション環境{{#tag:ref|これらは「優しい関係」<ref>『友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル』8頁</ref><ref>『キャラ化する/される子どもたち―排除型社会における新たな人間像』12頁</ref>・「マサツ回避の世代」<ref>[[千石保]]『マサツ回避の世代―若者のホンネと主張』[[PHP研究所]]、1994年。ISBN 978-4569544892。</ref>と表現されたりするもので、[[哲学者]]の[[アルトゥル・ショーペンハウアー]]の寓話である[[ヤマアラシ#哲学用語|ヤマアラシのジレンマ]]に相当するともいえる<ref>[[児美川孝一郎]]『若者とアイデンティティ』[[法政大学出版局]]、2006年、114頁ISBN 978-4588680038。</ref>。|group="注"}}は、場合によっては[[いじめ]]を誘発して生徒を[[自殺]]に追い込むなどの深刻な事態を引き起こす背景にもなっており<ref>「空気の戦場――あるいはハイ・コンテクストな表象=現実空間としての教室」『サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ』320-321頁</ref>、もともと森口が著書『いじめの構造』にてスクールカーストを紹介したのは、[[教育社会学]]者の[[藤田英典]]による理念的ないじめの分類<ref group="注">いじめを「モラルの低下・混乱によるもの」「社会的偏見・差別による排除的なもの」「閉鎖的な集団内で発生するもの」「特定の個人への暴行・恐喝を反復するもの」の4つに分類した。詳細は[[いじめ#いじめの分類]]を参照。</ref>に当事者間で使用されている概念を組み合わせてリアリティを補強することが目的であった<ref>『いじめの構造』41頁</ref>。<br />
<br />
いじめは基本的にはスクールカーストが下位のものを対象として行われるが、最上位のカーストの者が最下位のカーストの者をいじめるといった落差の大きいものはあまりなく、同一カースト内か隣接するカーストの者が対象となることが多い<ref>『キャラ化する/される子どもたち―排除型社会における新たな人間像』21頁</ref>。生徒が形成している各グループ内部で行われるいじめについては、グループ間の移動の可能性はカースト上位ほど容易であることから<ref group="注">これは森口の著述による。[[#統計調査|後述]]する本田の統計調査によれば、一緒に行動する友人の固定性が強いことはカースト上位を得ることにプラスの影響があるとされる。</ref>、カースト下位のグループほどいじめが発生しやすい(自分がいじめの対象となりそうな兆候があっても別グループへ離脱できないため)<ref>『いじめの構造』49頁</ref>。<br />
<br />
いじめとカーストの関係は、いじめの加害者(被害者)になることによってカーストが上昇(下降)するという面もあり、両者は相互に干渉しあっている<ref>『いじめの構造』59頁</ref>。いじめには示威行為としての側面があるため、特にもともと多くの生徒が内心では嫌っていた相手に対して先陣を切っていじめを始めた場合などは人気の獲得によってカーストが上昇する<ref>『いじめの構造』79頁</ref>。他方、加害者側と同等以上にカーストの高い別の生徒あるいは教師などの介入によってクラスのモラルが回復した場合(いじめが恥ずべき行為であるとの意識が共有された場合)、いじめ加害者のカーストが下降することもある<ref>『いじめの構造』82頁</ref>。中立者(いじめの直接的な加害者でも被害者でもない人)が被害者の救済を試みた場合、成功すればヒーローとしてカーストの上昇が期待できるが、失敗した場合はカーストの下降の危険性(さらにそれと付随して次は自分がいじめの新たな対象となる可能性)がある<ref name="ijime53">『いじめの構造』53頁</ref>。また、年少者の間ではいじめが発生していることを教員に密告する(チクる)ことは、不名誉なことであるとされているため、そのことが知られればカーストは下降することになる<ref name="ijime53" />。<br />
<br />
和田は、スクールカーストに依拠したいじめの発生を精神分析家の[[ウィルフレッド・ビオン]]による[[集団心理]]の理論によって説明している。それによれば、集団における無意識(基底想定グループ)には、集団内に自己が位置づけられることによる不安を解消するための手段として「[[依存]]グループ(リーダーに全責任をゆだねて不安から逃れる)」「つがいグループ(幸福なカップルへの期待感によって不安から逃れる)」「闘争・逃避グループ(共通敵を想定して不安から逃れる)」という3つのパターンがあるが、スクールカーストの構造は「カースト下位者」という共通の敵を設定していじめの対象とするという意味で「闘争・逃避グループ」の反応であると考えられる<ref>『なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか』80-85頁</ref>。<br />
<br />
[[携帯電話]]や[[インターネット]]環境の普及によって、例えば[[学校裏サイト]]や[[プロフ (モバイルサイト)|プロフ]]などを舞台とした[[ネットいじめ]]が[[社会問題]]化しているが、荻上チキによればネット上で誹謗中傷などの対象となるのも(通常のいじめと同様に)概ねスクールカーストの下位者だという<ref name="net-152" />。メディア社会論を専門とする[[岡田朋之]]は、加害者の特定が難しい「ネットいじめ」では「リアルいじめ」<ref group="注">インターネット上ではなく現実の空間で行われるいじめのこと。</ref>と違って、「少数側が多数側を攻撃する」「弱者が強者を攻撃する」といったことが可能であり、現実世界でのカースト上位者の支配に納得のいかない下位者側が、反動としてネットいじめの加害者側になるケースが存在することは珍しくないとしている<ref>[[岡田朋之]]「ネットいじめとスクールカースト」『ネットいじめはなぜ「痛い」のか』 [[ミネルヴァ書房]]、2011年、106-109頁ISBN 978-4623060535。</ref>。<br />
<br />
いじめとスクールカーストが関連して論じられることについて鈴木は、両者は同じものではなく、スクールカーストが存在することの弊害のひとつとしていじめの問題があるという関係であると整理し、いじめという文脈を外してスクールカーストを検証することも必要であると述べている<ref>『教室内カースト』40-41頁</ref>。<br />
<br />
=== キャラ的コミュニケーション ===<br />
現代の日本の若者は、各自の実際の性格だけではなく場合によっては[[場の空気]]による暗黙の圧力で配分される「[[キャラ (コミュニケーション)|キャラ]]」を演じてコミュニケーションをとるというスタイルが定着しており、教室内は例えば「[[不思議ちゃん]]キャラ」「[[毒舌]]キャラ」のような様々なキャラがひしめきあう状態となっている<ref>『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』18-20頁</ref>。こうした環境はスクールカーストの形成やいじめの発生と密接に関係しており<ref>『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』28・31頁</ref>、スクールカーストという序列は各々の「キャラ」に対して行われる格付けであるともいえる<ref>『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』152頁</ref>。<br />
<br />
うまくキャラを確立できた者が勝利するという構造は日本の芸能界における[[お笑い芸人]]・[[雛壇芸人]]の生存競争にみられるものであり<ref>[[荻上チキ]]『社会的な身体〜振る舞い・運動・お笑い・ゲーム』[[講談社]]、2009年、122頁ISBN 978-4062879989。</ref>、与えられたキャラを演じる若者の作法は日本の[[お笑い番組]]・[[バラエティ番組]]・[[トーク番組]]における彼らのやりとりの影響を強く受けている<ref>『キャラ化する/される子どもたち―排除型社会における新たな人間像』11頁</ref><ref>『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』18頁</ref>。ほかにも、[[2000年代|ゼロ年代]]末から急速に支持を集めた[[女性アイドルグループ]]である[[AKB48]]の運営戦略と受容の構造<ref group="注">「[[AKB48選抜総選挙|選抜総選挙]]」と呼ばれる人気投票(序列化)によって、「おっさんキャラの[[大島優子]]」「[[ギャル]]キャラの[[板野友美]]」といったキャラの分化が促進され、実質的には(個々のアイドルの身体性というより)それらキャラクター性がファンから消費の対象となっている。詳細は[[AKB48#キャラクター消費]]を参照。</ref>も、「コミュニケーション能力(≒人気獲得力)によって決定される序列」が「キャラの分化を促進する」という意味でスクールカーストの持つ構造と一致するものである<ref>『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』182-183頁</ref>。<br />
<br />
荻上は、スクールカーストによるキャラの序列化を「コミュニケーションの[[地形効果]]」として説明している。地形効果とは、[[ウォー・シミュレーションゲーム]]において戦闘キャラクター自身の属性とそれが位置している場所(地形)の属性の相性に良し悪しによって戦闘能力にプラスまたはマイナスの修正が与えられるということであるが、これと同じように現実世界のコミュニケーション空間でもどのような場にどのようなキャラの人が存在しているかによってその位置づけは変わるのであり、例えば「学校空間」という場では「根暗キャラ([[インキャラ]])な人はマイナスの修正を受ける」というような地形効果の影響を受けていると考えられる<ref>『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』214-218頁</ref>。<br />
<br />
キャラおよびスクールカーストの可変性について、森口は([[#いじめとの関係|前述]]したようにいじめの発生に付随した行動によってカーストの上昇/下降がみられることを指摘しながらも)新しい学年の始まる4月〜5月頃のポジション取り(カーストの決定)が基本的には次のクラス替えまで1年間保存されるとしている<ref>『いじめの構造』44頁</ref>。鈴木は2010年から2011年に大学1年生を対象としてインタビューを行っているが、その結果ではカーストが下降することはあっても自力で上昇するのはほとんど不可能であるとの意見が多かったとしている。それによると、部活動をはじめとするクラス間をまたぐ交友関係によって個々の生徒の情報は共有されることになるため、クラス替えなどを契機に人間関係がある程度リセットされたとしても過去のカーストが新年度もそのまま維持されてしまいがちなのだという<ref>『教室内カースト』190-194頁</ref>。[[土井隆義]]や[[精神科医]]の[[斎藤環]]、[[荻上チキ]]らは学校空間でのカーストの固定性が強いことや固定化がいじめへつながる危険性を持つことを認めながらも<ref>『キャラ化する/される子どもたち―排除型社会における新たな人間像』24頁など。</ref><ref>『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』20-21頁</ref><ref>『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』 205頁</ref>、キャラ自体は周囲の状況に応じて切り替えられていく可変的なものであることを指摘しており<ref group="注">[[キャラ (コミュニケーション)#キャラとアイデンティティ]]を参照。</ref>、[[宇野常寛]]{{#tag:ref|[[宇野常寛]]によると、いわゆる[[場の空気|空気]]の読めない人は自己の[[アイデンティティ]]を「…である」という固定的な自己像に対する承認によって獲得しようとするが、現実には「…した」という具体的な行動によって他者からの人物像が形成されるのであり、現代社会の流動性の高いコミュニティにおいてキャラクターは自身のコミュニケーションによって書き換え可能であるという<ref>『ゼロ年代の想像力』310-315頁</ref>。|group="注"}}や荻上{{#tag:ref|荻上チキは、一般に個人が複数のキャラを持っており場面に応じてそのどれかひとつを決めてそれを演じる「キャラ分け」が行われているとしている<ref>『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』 225頁など。</ref>。|group="注"}}はこのキャラの可変性に注目した論考を行っている。それらを踏まえた評論家の[[海老原豊]]の論<ref>「空気の戦場――あるいはハイ・コンテクストな表象=現実空間としての教室」『サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ』343-346頁</ref>によれば、カースト/キャラが可変性と不変性を併有しているのは、その位置決定にかかわるコミュニケーション能力そのものが、具体的な対人関係の中で成長させることが可能ではあるが、家庭環境のような(当人にはコントロール不可能な)外的要因の影響も受けるという二面性を持っているからであるとしている。そして、そもそもカースト/キャラの可変性の前提となっているのは現代におけるメディア・テクノロジー環境の変化をもたらした個人の固定的な身体性(階級・生育環境など)の抑圧であり、その箍が外れたときに(あたかも本物のカースト制度のように)「本来あるべきカースト」への固定化が働くと考えられる<ref group="注">例えば、中学時代にいじめられていた子供が、中学卒業・高校入学を機会にキャラを変更して(いわゆる「高校デビュー」)カーストの上昇を試みて成功したかに見えても、ひとたび過去の自分の姿を暴露されれば(抑圧が解放されれば)再びカースト最下層への転落を余儀なくされる、ということ。</ref>。<br />
<br />
=== 統計調査 ===<br />
本田は、2009年〜2010年に[[神奈川県]]の[[公立中学校]]の生徒2874名に対して[[アンケート]]調査を行った。そのデータを元に分析すると、「高位・中位・低位・いじられ{{#tag:ref|「人気がある」「馬鹿にされている」という一見すると相反する評価を周囲が受けている「いじられキャラ」のことで、[[道化]]のように、からかわれる(=いじられる)ことによって人気を得ている<ref>『学校の「空気」(若者の気分)』49-50頁</ref>。「いじり」はコミュニケーション操作系いじめにつながりかねない否定的な側面も持っており、例えばスクールカーストものとして頻繁に引用される[[小説]]『りはめより100倍恐ろしい』のタイトルにある“りはめ”は、意味不明の単語ではなく、「いじ'''り'''」は「いじ'''め'''」よりも恐ろしいという意味である<ref name="net-165">『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』165頁</ref>。森口朗は、スクールカーストを規定するコミュニケーション能力の3要素のうち、「同調力は高いが共感力と自己主張力が低い」ものがいじられキャラのポジションにおさまるとしている<ref>『いじめの構造』45頁</ref>。|group="注"}}」の比率が「10:60:25:5」になったという<ref>『学校の「空気」(若者の気分)』68頁</ref>。<br />
<br />
さらに、[[性別]]・[[学力]]・[[生きる力]](自主性・主体性・論理性)・(家庭の)[[経済資本]]・(家庭の)[[文化資本]]・クラス内友人数・(普段一緒に行動する)友人の固定性・部活動(運動系か文化系か)といった要素がカーストの位置決定にどう影響しているかを[[ロジスティック回帰|ロジスティック]][[回帰分析]]によって調べている。それによれば、(「中位」を基準として)「高位」に位置する典型的な生徒像は「友人数が多くてかつ固定的で生きる力が高く学力も高め」、「低位」に位置する生徒像は「文化資本は豊富だが学力は低めで友人数は少なく文化部所属の男子」、「いじられ」に属する生徒像は「友人数が多くてかつ固定的で生きる力と文化資本が豊富かつ学力は低めの男子」となる<ref>『学校の「空気」(若者の気分)』50-53頁</ref>。<br />
<br />
また、本田はカーストが「(学校での)友人関係」「教師との関係」「将来像(進路希望)」と関係しているかどうかも調査している。友人関係について、学校生活で自分の本心に反して求められているキャラを演出したりするかという質問への肯定的な回答は、「上位」と「中位」が同程度で、それより「低位」が高く、さらにそれより「いじられ」が高くなっている<ref>『学校の「空気」(若者の気分)』54-55頁</ref>。教師との関係については、「上位」「いじられ」の生徒が他と比べて教師と積極的にコミュニケーションをとっている<ref>『学校の「空気」(若者の気分)』79-80頁</ref>。将来像については、「高位」「中位」「低位」の順に大学進学の希望率が下がる<ref>『学校の「空気」(若者の気分)』100-101頁</ref>。<br />
<br />
== スクールカーストもの ==<br />
教室内での人間関係をめぐる駆け引きを描いた物語([[小説]])は、スクールカーストもの(スクールカースト小説)と呼称され、[[2000年代|ゼロ年代]]頃から日本では若手作家による[[純文学]]や[[ライトノベル]]の分野で存在感を保っている<ref>『ゼロ年代の想像力』114頁</ref>。中には著者自身が実際に学校空間で体験したことが反映されていると考えられるものもあり、[[ドキュメンタリー]]的な面もある<ref>『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』 25頁</ref>。<br />
<br />
[[宇野常寛]]は、[[21世紀]]に入った頃から[[アメリカ同時多発テロ事件]]や[[小泉内閣]]主導の[[新自由主義]]路線([[聖域なき構造改革]])といった社会状況の影響により、それまで([[1990年代]]後半頃)の日本のポップカルチャーで優勢だった[[引きこもり]]がちな自意識の葛藤を描く作風(いわゆる[[セカイ系]])から「価値相対的な過酷な状況を自分の力で生き延びる」という「サヴァイヴ系/バトルロワイヤル系」の作風に物語のパラダイムシフトが起こっていると論じており、一連のスクールカースト小説も後者の想像力のひとつに位置づけている<ref name="zero">『ゼロ年代の想像力』111-114頁</ref>。宇野の議論によれば、大きな物語(社会全体に共有されるような特権的な価値観)が失墜し[[ポストモダン]]化の進行した現代社会では個人が自力で拠り所とする小さな物語を決断的に選び取らなければならない状況に陥っており、無数に散在する小さな物語(島宇宙)の内部において、自分がその共同体に帰属していることを確認するための自己目的化したコミュニケーション([[社会学者]]の[[北田暁大]]がいう[[つながりの社会性]])が繰り返されているという。そして、それを現実認知として描けばスクールカーストものも属するバトルロワイヤル系の想像力となり、逆に消費者の欲望に合わせて理想化させて描けば(スクールカーストものと同様にしばしば教室空間を舞台としてつながりの社会性が顕在化したコミュニケーションの連鎖が描かれる)[[空気系]]の想像力になると考えられる<ref>宇野常寛『リトル・ピープルの時代』 [[幻冬舎]]、2011年、297-298頁ISBN 978-4344020245。</ref>。<br />
<br />
[[社会学者]]の[[中西新太郎]]は、主に小説([[ライトノベル]])などを参照した上で日常圏に侵食する社会圏の困難を描く想像力を「シャカイ系」と呼んでいるが、若者にとって日常の大半の時間をすごすことになる学校空間も、人間関係からの隔離という危険と隣り合わせの「社会」に変貌しつつあるとしている<ref>『シャカイ系の想像力(若者の気分)』38頁・131頁</ref>。<br />
<br />
=== スクールカーストに言及した論考などで参照されたことのある作品 ===<br />
==== 小説・ライトノベル ====<br />
* [[山田詠美]]『[[風葬の教室]]』(1988年)<ref name="kuki">「空気の戦場――あるいはハイ・コンテクストな表象=現実空間としての教室」『サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ』324-349頁</ref><br />
* [[重松清]]「ナイフ」『[[ナイフ (小説)|ナイフ]]』(1997年)<ref name="kuki" /><br />
* 重松清『[[エイジ (小説)|エイジ]]』(1999年)<ref>『学校の「空気」(若者の気分)』52-53頁</ref><br />
* [[次良丸忍]]『[[大空のきず]]』(1999年)<ref>『教室内カースト』24頁</ref><br />
* [[佐藤友哉]]『[[エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室]]』(2001年)<ref>[[前島賢]] 『セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史』 [[ソフトバンククリエイティブ]]、2010年、189-190頁ISBN 978-4797357165。</ref><br />
* [[綿矢りさ]]『[[蹴りたい背中]]』(2003年)<ref name="zero" /><ref name="kuki" /><br />
* [[桜庭一樹]]『[[推定少女 (小説)|推定少女]]』(2004年)<ref name="zero" /><br />
* [[白岩玄]]『[[野ブタ。をプロデュース]]』(2004年)<ref name="zero" /><ref name="chara">『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』25-27頁</ref><ref>『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』207頁</ref><ref name="kyoushitsu-25">『教室内カースト』25頁</ref><br />
* [[日日日]]『[[ちーちゃんは悠久の向こう]]』(2005年)<ref name="zero" /><ref name="kuki" /><br />
* [[三並夏]]『[[平成マシンガンズ]]』(2005年)<ref name="zero" /><ref name="chara" /><br />
* [[木堂椎]]『[[りはめより100倍恐ろしい]]』(2006年)<ref name="net-165" /><ref name="zero" /><ref name="kuki" /><ref name="chara" /><br />
* [[辻村深月]]『[[ぼくのメジャースプーン]]』(2006年)<ref name="kuki" /><br />
* [[田中ロミオ]]『[[AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜]]』(2008年)<ref name="kuki" /><br />
* 木堂椎『[[12人の悩める中学生]]』(2008年)<ref name="kuki" /><ref name="kyoushitsu-23">『教室内カースト』23頁</ref><br />
* [[大樹連司]]『[[ほうかごのロケッティア School escape velocit]]』(2009年)<ref>『シャカイ系の想像力(若者の気分)』38頁</ref><br />
* [[朝井リョウ]]『[[桐島、部活やめるってよ]]』(2010年)<ref name="kyoushitsu-23" /><ref>『学校の「空気」(若者の気分)』45頁</ref><br />
<br />
==== 漫画 ====<br />
* [[大島永遠]]『[[女子高生 (漫画)|女子高生 GIRLS-HIGH]]』(2001年 - 2007年連載)<ref name="kyoushitsu-23" /><br />
* [[安野モヨコ]]『[[花とみつばち]]』(2000年 - 2003年連載)<ref name="kyoushitsu-23" /><br />
* [[竹内文香]]『[[ある日突然ハブられた]]』(2007年)<ref name="kyoushitsu-25" /><br />
<br />
=== スクールカーストを取り入れた作品 ===<br />
==== 実写 ====<br />
* [[仮面ライダーフォーゼ]](2011年) - 主人公である如月弦太朗が通う天ノ川学園高校において、主人公を取り巻く登場人物が[[ジョック]]やクイーンを頂点とするなど学園[[ヒエラルキー]]といった形でスクールカーストが描かれている。<br />
* [[35歳の高校生]](2013年) - 典型的な学園ヒエラルキーとしてのスクールカーストが描かれている。<br />
* [[幽かな彼女]](2013年) - 教諭の窪内満が作成した学級内のシミュレーションソフトにおいて、スクールカーストが要素として項目にある。<br />
* [[野ブタ。をプロデュース]](2005年)<br />
* [[桐島、部活やめるってよ]](2012年)<br />
* [[学校のカイダン]](2015年)<br />
* [[表参道高校合唱部!]](2015年)<br />
* [[先に生まれただけの僕]](2017年)<br />
* [[ブレックファスト・クラブ]](1985年)<br />
* [[スパイダーマン:ホームカミング]](2017年)<br />
* [[パワーレンジャー (映画)|パワー・レンジャー]](2017年)<br />
* [[ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル]](2017年)<br />
<br />
==== アニメ ====<br />
==スクールカーストを題材としたゲーム==<br />
[[BULLY]](2008年) - 海外産のゲームで、欧米におけるスクールカーストを題材としたアクションアドベンチャーゲーム。主人公のいたずらっ子ジミーを操作して様々なミッションや出来事をクリアし、スクールカーストの頂点を目指す。<br />
<br />
== 脚注 ==<br />
=== 注釈 ===<br />
{{Reflist|group=注}}<br />
<br />
=== 出典 ===<br />
{{Reflist|2}}<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
* [[海老原豊]]「空気の戦場――あるいはハイ・コンテクストな表象=現実空間としての教室」『サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ』[[南雲堂]]、2010年。ISBN 978-4523264972。<br />
* [[土井隆義]]『キャラ化する/される子どもたち―排除型社会における新たな人間像』[[岩波書店]]、2009年。ISBN 978-4000094597。<br />
* [[斎藤環]]『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』[[筑摩書房]]、2011年。ISBN 978-4480842954。<br />
* [[森口朗]]『いじめの構造』[[新潮社]]、2007年。ISBN 978-4106102196。<br />
* [[宇野常寛]]『ゼロ年代の想像力』[[早川書房]]、2008年。ISBN 978-4152089410。<br />
* [[本田由紀]]『学校の「空気」(若者の気分)』岩波書店、2011年。ISBN 978-4000284516。<br />
* [[荻上チキ]]『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』[[PHP研究所]]、2008年。ISBN 978-4569701141。<br />
* [[中西新太郎]]『シャカイ系の想像力(若者の気分)』岩波書店、2011年。ISBN 978-4000284530。<br />
* [[和田秀樹]]『なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか』[[祥伝社]]、2010年。ISBN 978-4396613679。<br />
* [[鈴木翔]]『教室内カースト』[[光文社]]、2012年。ISBN 978-4334037192。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
* [[ママカースト]]<br />
* [[ジョック]](本項に[[アメリカ合衆国の社会]]のスクールカーストに関する詳細な記事を掲載)<br />
* [[雛壇芸人]]<br />
* [[いじり]]<br />
* [[いじめ]]<br />
<br />
{{デフォルトソート:すくうるかあすと}}<br />
[[Category:学校文化]]<br />
[[Category:身分制度]]<br />
[[Category:社会集団]]<br />
[[Category:社会問題]]<br />
[[Category:日本の教育問題]]<br />
[[Category:日本の社会]]<br />
[[Category:日本のいじめ]]<br />
[[Category:カースト]]<br />
[[Category:和製英語]]</div>
218.180.214.32
簡体字
2018-07-31T01:26:37Z
<p>218.180.214.32: /* 現況 */ 国際漢字会議の内容を修正。国による合意ではない。</p>
<hr />
<div>{{特殊文字|説明=簡体字、[[繁体字]]、[[JIS X 0213]]、[[拡張漢字|CJK統合漢字拡張B・C]]}}<br />
{{Infobox WS<br />
| name = 簡体字<br />
| type = <br />
| typedesc = <br />
| time = <br />
| languages = [[中国語]]<br />
| fam1 = <br />
| unicode =<br />
| iso15924=Hans<br />
| sample = Hanzi (simplified).svg<br />
| imagesize = 100px<br />
| caption = 簡体字による「漢字」<br />
}}<br />
{{漢字}}<br />
'''簡体字'''(かんたいじ、{{lang-zh|简体字}}、{{ピン音|jiǎntǐzì}})または'''規範字'''(きはんじ、'''{{Lang|zh-hans|规范字}}'''、{{ピン音|guīfànzì}})は、[[1950年代]]に[[中華人民共和国]]で制定された、従来の[[漢字]]を簡略化した[[字体]]体系である。簡体字という呼称は通称・俗称であり、正式には'''簡化字'''(かんかじ、'''{{Lang|zh-hans|简化字}}'''、{{ピン音|jiǎnhuàzì}})と言う。<br />
<br />
[[中国大陸]]のほか、[[シンガポール]]や[[マレーシア]]などでも採用されている。<br />
<br />
== 概要 ==<br />
複雑な漢字の簡略化に際して、楷書化した草書の要素を多く取り入れ、また画数の少ない部品に置き換える手法も多く使っている。現在の『簡化字総表』は[[偏旁]]に使用できない簡体字350字(第1表)、偏旁に使用できる簡体字132字と簡化偏旁14個(第2表、下記参照)、第2表を適用した簡体字1753字(第3表)からなっている。総数は2235字になる。これらの漢字は『簡化字総表』にまとめられている。<br />
<br />
== 歴史 ==<br />
[[清]]末の[[1909年]]、[[陸費逵]]が『教育雑誌』創刊号に「普通教育当採用俗体字(普通教育に俗字を採用すべきだ)」という論文を発表したことが簡化運動の始まりとされる。[[五四運動]]時代の[[1920年]]、[[銭玄同]]は『[[新青年 (中国)|新青年]]』に「減省漢字筆画的提議(漢字の筆画を減少させる提案)」を発表し、[[1922年]]には陸費逵らと連名で国語統一籌備会に常用の漢字すべての筆画を減少させる提案をしている。[[1934年]]にも国語統一籌備会に簡略された字体の収集を提案し、翌[[1935年]]には2400字余りの『簡体字譜』の草案が編まれた。一方で、[[国民政府]]教育部でも324字の「第一批簡体字表」を公布したが、1936年に「不必推行」(普及の必要なし)の命令が出され実施されることはなかった。その後、簡略字体の収集が盛んになり[[1937年]]には字体研究会が1700字の「簡体字表第一表」を発表している。<br />
<br />
[[中華人民共和国]]が[[建国]]された3年後の[[1952年]]、簡略字体の議論を受けて、漢字研究の機関として「中国文字改革研究委員会」が設立された。1954年に憲法が制定され、[[中華人民共和国国務院|政務院]]が改組されるなど新体制への変化の中で、中国文字研究改革委員会も中国文字改革委員会に改名し、[[1955年]]に『漢字簡化方案草案』を発表した。翌年の[[1956年]]1月、この草案を基に『漢字簡化方案』('''簡''':{{Lang|zh|汉字简化方案}})が[[中華人民共和国国務院|国務院]]より公布され<ref>[http://www.edu.cn/20011114/3009782.shtml {{lang|zh|国务院关于公布汉字简化方案的决议}}]{{lang|zh|中国教育和科研计算机网}}(中国教育研究ネットワーク)2013年9月</ref>、514字の簡体字と54の簡略化された偏や旁が採用された。数年の使用実験を経て、簡化字は[[1959年]]までの4度改訂公布され、[[1964年]]に『簡化字総表』にまとめられた。<br />
<br />
[[1977年]]、中国文字改革委員会は新たに「[[第二次漢字簡化方案]]草案」を発表し、さらなる漢字の簡略化を目指した。しかしこの試みは[[文化大革命]]直後ということもあって、あまりにも拙速なもので、字体が簡略化され過ぎて「読みにくい」、「見苦しい」と猛烈に批判され、社会に混乱を催した。その結果8年間の試行で廃止された。これらの簡化字は俗に'''二簡字'''と呼ばれる。この後、若干の漢字の取り扱いに変更があったものの、新たに大規模な文字改革は行われておらず、公式に定められた規範としての簡体字は安定期に入っていると言える。<br />
<br />
== 東南アジアでの受容 ==<br />
{{see|シンガポールにおける漢字}}<br />
[[華人]]が多い[[シンガポール]]では、[[1968年]]に簡化漢字委員会を設置し漢字の簡略化の検討を始め、翌[[1969年]]に教育省が502字を収録した『簡体字表』を発表した。この表により、シンガポールは中国大陸とは異なる独自の簡略化を進めた。その後1974年に中国大陸の簡体字を取り入れ、シンガポール特有の簡体字との併用が行われた。1976年に発表された『簡化字総表』で、シンガポールの簡体字は中国大陸のものと基本的に一致するようになった。<!-- 参考:http://www.csc.mti-mofcom.gov.sg/csweb/csc/info/Article.jsp?a_no=192685&col_no=132 -->[[マレーシア]]では1981年に『簡化漢字総表』を発表し、中国大陸と同じ簡体字が実施されている。<!-- 参考:[[:zh:漢字簡化]] 2011年7月22日(五)14:54 --><br />
<br />
== 現況 ==<br />
[[ファイル:Dengxiaoping lianhuashan.JPG|thumb|{{JIS2004フォント|深圳に立つ鄧小平像。}}台の[[江沢民]]の揮毫は繁体字で書いていた。]]<br />
簡体字は殆ど見られない[[台湾]]と対照的に中国大陸では規範的な簡体字とともに繁体字との混用が見られることも少なくなく<ref>{{cite news|url=http://zhenjiang.leju.com/news/2013-01-24/08401878937.shtml|title=网友质疑“云台阁”题字繁简混用|date=2003-01-24|accessdate=2018-03-09}}</ref><ref>{{cite news|url=http://www.qstheory.cn/culture/2015-10/26/c_1116929227.htm|title=这些字你用对了吗?|date=2017-10-26|accessdate=2018-03-09}}</ref>、2000年に成立した「{{仮リンク|語言文字法|zh|中华人民共和国国家通用语言文字法}}」においては繁体字の使用は文物古跡、書道・篆刻などの芸術作品、揮毫題辞・看板の手書き文字、出版・教育・研究上必要な場合を中国政府は認めている<ref name="prclaw">[http://www.moe.edu.cn/publicfiles/business/htmlfiles/moe/moe_619/200409/3131.html {{lang|zh|中华人民共和国国家通用语言文字法}}] 第17条(簡体字中国語)</ref>。<br />
<br />
一方、台湾、中国内の[[マカオ]]や香港、北米の華僑社会などは繁体字を使い続けており、簡体字があまり読めないという人々も少なくない。台湾で行われた電話世論調査によると、45%が簡体字を完全に読めない、41%が少し読めると答え、完全に読めると答えたのは残りの14%にとどまった<ref>{{cite news|url=http://forums.chinatimes.com/survey/9504a/index.htm|title=中時電子報民調:正體字VS.簡體字大調査|date=2005-04-07}}</ref>。こういった事情と政治的・社会的要因によりしばしば同じ本について、中国向けに「簡体字版」、台湾・香港向けに「繁体字版」の2種類が出版されることがある。<br />
<br />
[[2007年]]11月に中国の[[北京市|北京]]で開かれた第8回[[国際漢字会議]]では、簡体字を維持しながらも5000 - 6000字の字体を繁体字中心に統一した「標準字」を定めていくことで中国・台湾・日本・韓国などの学者が合意したと報じられた<ref>{{cite news |title=韓・中・日・台が漢字の字体統一へ |publisher=[[朝鮮日報]] |date=2007-11-03 |url=http://www.chosunonline.com/article/20071103000035|archiveurl=http://web.archive.org/web/20081120104604/http://www.chosunonline.com/article/20071103000035|archivedate=2013-09-28|accessdate=2018-03-09}}}</ref><ref>{{cite news |title=日・韓・中・台が漢字の字体統一を決定、主体は繁体字に―北京市 |publisher=[[Record China]] |date=2007-11-12 |url=http://www.recordchina.co.jp/a12549.html|accessdate=2018-03-09}}</ref>。ただし、[[中華人民共和国教育部]](教育省)は「そのような事実はない」と否定しているとも報道された<ref>Record China: [http://web.archive.org/web/20171210132703/http://www.recordchina.co.jp:80/b12742-s0-c30.html 「中・日・韓・台の漢字統一」報道を否定!簡体字使用の変更は不可能] 2007-11-11</ref>。<br />
<br />
== 用語について ==<br />
本来は「簡体字」とはもとの字より画数を減らすなどして簡単にした字体、つまり日本語で言う「[[略字]]」に相当する語であり、例えば「{{Lang|zh|泽}}」と「沢」はいずれも「澤」の簡体字である。しかし現在の日本では、中国で使われている字のうち日本とは違う字体の文字を総称して、「簡体字」と呼ぶことが広まっている。<br />
<br />
例えば、日本では以下の字(括弧内は日本で使用されている字体)を全てまとめて「簡体字」と呼ぶことが多いが、<br />
* 【{{Lang|zh|广}}(広)】【{{Lang|zh|乐}}(楽)】は「簡化字総表」に含まれる'''簡化字'''である。<br />
* 【{{Lang|zh|决}}(決)】【{{Lang|zh|异}}(異)】は「簡化字総表」に含まれないので簡化字ではない。ただし、「第一批異体字整理表」において選ばれた字体なので'''選用字'''と呼ばれる。【{{Lang|zh|异}}(異)】に関しては「簡化字総表」の附録の項にも注釈がある。<br />
* 【{{Lang|zh|换}}(換)】【{{Lang|zh|骨}}(骨)】は「簡化字総表」と「第一批異体字整理表」のどちらにも含まれないので簡化字でもなく選用字でもない。ただし、特に印刷業関係者の間では康煕字典体の【換】【骨】と対比して[[新字形]]と呼ばれる。<br />
簡化字は全て簡体字に含まれるが、選用字と新字形はもとの字と比べ画数の減っていない字も含むため全てが簡体字とは言い難い。<br />
<br />
以下の字(括弧内は旧字体あるいは繁体字)は日本で「簡体字」と呼ばれることが少ないが、れっきとした簡体字である。<br />
* 【几(幾)】【斗(鬭・鬥)】は同音の別字を借りたいわゆる「代用字」であるが、代用字も簡体字の一種である。<br />
* 【图(図、圖)】【传(伝、傳)】は簡化字として採用されなかったが、[[新字体]]に採用された簡体字。<br />
* 【体(體)】【国(國)】は簡化字と新字体の両方に採用された簡体字。<br />
* 【{{補助漢字フォント|&#32826;}}(職)】【囗(國)】は簡化字にも新字体にも採用されなかった簡体字。<br />
<br />
== 簡化の方法 ==<br />
[[ファイル:Simplified Chinese Method Overview Euler Diagram in Japanese.svg|thumb|right|300px|漢字の簡略化手法を示す[[オイラー図]]。]]<br />
<br />
簡体字の簡略化方法にはいくつか種類がある。<br />
* 参考までに、日本の新字体が簡体字・[[繁体字]]のいずれとも異なる場合【 】内に記する。<br />
; 同音代替字:同じ音または近い音の簡単な字を借りる。<br />
:; [[通仮字]]を固定化する。<br />
:: 例:{{Lang|zh|余(餘)}}、{{Lang|zh|后(後)}}、{{Lang|zh|里(裏、裡)}}<br />
:; 大多数は[[普通話]]に準じる。<br />
:: 例:{{Lang|zh|丰(豐)}}【豊】、{{Lang|zh|谷(穀)}}、{{Lang|zh|丑(醜)}}、{{Lang|zh|斗(鬥・鬭)}}【鬪・闘】、{{Lang|zh|面(麺)}}、{{Lang|zh|制(製)}}、{{Lang|zh|征(徵)}}【徴】、{{Lang|zh|划(劃)}}【画】、{{Lang|zh|干(乾、幹、榦)}}、{{Lang|zh|台(臺、檯、颱)}}、{{Lang|zh|冲(衝、沖)}}、{{Lang|zh|种(種)}}、{{Lang|zh|郁(鬱)}}、{{Lang|zh|沈(瀋)}}、{{Lang|zh|淀(澱)}}、{{Lang|zh|范(範)}}、{{Lang|zh|筑(築)}}、{{Lang|zh|晒(曬)}}、{{Lang|zh|回(迴)}}、{{Lang|zh|旋(鏇)}}、{{Lang|zh|准(準)}}、{{Lang|zh|几(幾)}}、{{Lang|zh|卷(捲)}}【巻】、{{Lang|zh|愿(願)}}、{{Lang|zh|据(據)}}、{{Lang|zh|表(錶)}}、{{Lang|zh|云(雲)}}、{{Lang|zh|佣(傭)}}<br />
:; 少数は[[方言]]に準じる。<br />
:: 例:{{Lang|zh|叶(葉)}}、{{Lang|zh|柜(櫃)}}、{{Lang|zh|价(價)}}【価】<br />
; 草書楷化字:草書体・行書体を楷書化する。<br />
: 例:{{Lang|zh|当(當)}}、{{Lang|zh|书(書)}}、{{Lang|zh|门(門)}}、{{Lang|zh|长(長)}}、{{Lang|zh|乐(樂)}}【楽】、{{Lang|zh|车(車)}}、{{Lang|zh|兴(興)}}、{{Lang|zh|头(頭)}}、{{Lang|zh|实(實)}}【実】、{{Lang|zh|东(東)}}、{{Lang|zh|专(專)}}【専】、{{Lang|zh|过(過)}}【過】、{{Lang|zh|报(報)}}、{{Lang|zh|为(為)}}、{{Lang|zh|寿(壽)}}、{{Lang|zh|会(會)}}<br />
; 半記号字:一部分を簡単で記号的な字に替える。<br />
: 例:{{Lang|zh|对(對)}}【対】、{{Lang|zh|邓(鄧)}}、{{Lang|zh|观(觀)}}【観】、{{Lang|zh|欢(歡)}}【歓】、{{Lang|zh|权(權)}}【権】、{{Lang|zh|劝(勸)}}【勧】、{{Lang|zh|难(難)}}、{{Lang|zh|汉(漢)}}、{{Lang|zh|戏(戲)}}【戯】、{{Lang|zh|圣(聖)}}、{{Lang|zh|凤(鳳)}}、{{Lang|zh|风(風)}}、{{Lang|zh|区(區)}}、{{Lang|zh|义(義)}}、{{Lang|zh|这(這)}}、{{Lang|zh|怀(懷)}}【懐】、{{Lang|zh|乱(亂)}}、{{Lang|zh|辞(辭)}}、{{Lang|zh|继(繼)}}【継】、{{Lang|zh|动(動)}}、{{Lang|zh|应(應)}}【応】、{{Lang|zh|献(獻)}}、{{Lang|zh|仓(倉)}}、{{Lang|zh|币(幣)}}<br />
; 省去字:一部分のみを残して省略する。<br />
:; 省略して、そのまま簡体字としたもの。<br />
:: 例:{{Lang|zh|广(廣)}}【広】、{{Lang|zh|习(習)}}、{{Lang|zh|亲(親)}}、{{Lang|zh|业(業)}}、{{Lang|zh|乡(郷)}}、{{Lang|zh|开(開)}}、{{Lang|zh|关(關)}}【関】、{{Lang|zh|医(醫)}}、{{Lang|zh|声(聲)}}、{{Lang|zh|号(號)}}、{{Lang|zh|虫(蟲)}}、{{Lang|zh|标(標)}}、{{Lang|zh|压(壓)}}【圧】、{{Lang|zh|务(務)}}、{{Lang|zh|宝(寶)}}、{{Lang|zh|飞(飛)}}、{{Lang|zh|类(類)}}、{{Lang|zh|竞(競)}}、{{Lang|zh|触(觸)}}、{{Lang|zh|浊(濁)}}、{{Lang|zh|独(獨)}}<br />
:; 省略した後、再度変形したもの。<br />
:: 例:{{Lang|zh|丽(麗)}}、{{Lang|zh|兽(獸)}}【獣】、{{Lang|zh|县(縣)}}【県】、{{Lang|zh|处(處)}}【処】、{{Lang|zh|杂(雜)}}【雑】、{{Lang|zh|节(節)}}<br />
; 改換形声字:一部分を同音の字に替える。<br />
: 例:{{Lang|zh|毙(斃)}}、{{Lang|zh|钟(鐘、鍾)}}、{{Lang|zh|肤(膚)}}、{{Lang|zh|胜(勝)}}、{{Lang|zh|优(優)}}<br />
; 輪廓字:一部分を省略する。<br />
: 例:{{Lang|zh|夺(奪)}}、{{Lang|zh|粪(糞)}}、{{Lang|zh|妇(婦)}}、{{Lang|zh|盘(盤)}}、{{Lang|zh|寻(尋)}}<br />
; 会意字:意味から新たな会意文字をつくる。<br />
: 例:{{Lang|zh|队(隊)}}、{{Lang|zh|体(體)}}、{{Lang|zh|阳(陽)}}、{{Lang|zh|阴(陰)}}、{{Lang|zh|灶(竈)}}<br />
; 帰原古字:康熙字典等に掲載されている古字を復活する。<br />
: 例:{{Lang|zh|从(從)}}【従】、{{Lang|zh|网(網)}}、{{Lang|zh|电(電)}}、{{Lang|zh|凭(憑)}}、{{Lang|zh|踊(踴)}}、{{Lang|zh|达(達)}}、<br />
; この他、上記の複合や特殊なもの。<br />
: 例:{{Lang|zh|帮(幫)}}(形声+輪廓)、{{Lang|zh|尘(塵)}}(特徴+草書)、{{Lang|zh|惊(驚)}}(形声+会意)<br />
<br />
日本における簡略化漢字である現行の[[新字体]]とは全く別に実施されたが、結果的に、簡略化された一部の字は日本の新字体や日本で俗に行われる略字と同一のものもある。その一方で、下表のとおり簡体字が日本の別の漢字と衝突することもある。たとえば、「机」は日本では「つくえ」だが、中国では「機」の簡体字である。「叶」という字は日本語では「かな-う」と読むが、「葉」の簡体字であるため、日本語では一般に「葉」と書き改める。簡体字で「叶」 ({{Unicode|yè}}) と表記する姓<!-- 簡化以前からあるxiéと読む叶姓は《漢語大字典》などの資料では確認できない -->があるが、繁体字では「葉」となる。日本にも「叶」姓は存在しているが、別姓である(「かなえ」または「かのう」と読む)。<br />
<br />
{| class="wikitable"<br />
|-<br />
!簡体字<br />
!繁体字<br />
|-<br />
| 几 || 幾<br />
|-<br />
| 叶 || 葉<br />
|-<br />
| 机 || 機<br />
|-<br />
| 后 || 後<br />
|-<br />
| 里 || 裏<br />
|-<br />
| 制 || 製<br />
|-<br />
| 征 || 徵<br />
|-<br />
| 面 || 麺<br />
|-<br />
| 郁 || 鬱<br />
|-<br />
| 筑 || 築<br />
|-<br />
| 着 || 著<br />
|}<br />
<br />
このように、簡体字が繁体字や日本の新字体と混同されるケースは少なくない。簡体字で書かれた中国の固有名詞を日本語の文章で使用する際には日本の「新字体」に書き直すのが通例<!-- 報道各社用字用語集はその旨明記、『新地名表記の手引』で付記される漢字は日本字 -->であり、日本の報道各社の用字用語集には簡体字と日本漢字の対照表を掲載しているものがある<!-- 共同通信社『記者ハンドブック』、『読売新聞用字用語の手引』、『毎日新聞用語集』など -->。<br />
<br />
== 繁体字と簡体字と新字体との差異 ==<br />
{| class="wikitable" style="text-align:center;"<br />
!colspan="2"|[[繁体字]]!!簡体字!!rowspan="2"|[[新字体]]!!rowspan="2"|解説<br />
|-<br />
!!!colspan="2"|[[新字形]]<br />
|-<br />
|colspan="2" Lang="zh-tw" xml:lang="zh-tw"|對||Lang="zh-cn" xml:lang="zh-cn"|对||対||rowspan="3" style="text-align:left;"|記号化の僅かな差<br />
|-<br />
|colspan="2" Lang="zh-tw" xml:lang="zh-tw"|寫||Lang="zh-cn" xml:lang="zh-cn"|写||写<br />
|-<br />
|colspan="2" Lang="zh-tw" xml:lang="zh-tw"|處||Lang="zh-cn" xml:lang="zh-cn"|处||処<br />
|-<br />
|colspan="2" Lang="zh-tw" xml:lang="zh-tw"|圓||Lang="zh-cn" xml:lang="zh-cn"|圆||円||style="text-align:left;"|簡:部分の簡化、新字体:記号化<br />
|-<br />
|colspan="2" Lang="zh-tw" xml:lang="zh-tw"|澤||Lang="zh-cn" xml:lang="zh-cn"|泽||沢||style="text-align:left;"|簡:簡化(草書より)、新字体:複雑部の置換<br />
|-<br />
|Lang="zh-tw" xml:lang="zh-tw"|廣||Lang="zh-cn" xml:lang="zh-cn"|廣||Lang="zh-cn" xml:lang="zh-cn"|广||広||style="text-align:left;"|新字形:減画、簡:削除、新字体:記号化<br />
|-<br />
|Lang="zh-tw" xml:lang="zh-tw"|過||Lang="zh-cn" xml:lang="zh-cn"|過||Lang="zh-cn" xml:lang="zh-cn"|过||過||style="text-align:left;"|新字形:減画+筆画交換、簡:記号化、新字体:減画<br />
|-<br />
|Lang="zh-tw" xml:lang="zh-tw"|龜||Lang="zh-cn" xml:lang="zh-cn"|龜||Lang="zh-cn" xml:lang="zh-cn"|龟||亀||style="text-align:left;"|残存部(日)の数<br />
|}<br />
<br />
== 異体字の整理 ==<br />
1955年、中国文字改革委員会は「簡化方案」に先立ち「第一批異体字整理表」を公布して[[異体字]]の整理を行っている。そこでは810組1865個の漢字を扱った。例えば「并・並・併・竝」を「{{zh|并}}」とし、「屍・尸」を「{{zh|尸}}」とした。<br />
<br />
== 簡繁対照表 ==<br />
=== 簡化偏旁14種 ===<br />
([[偏旁]]単独で表示できないもの、一部の環境でその可能性のあるものは、その偏旁が含まれる漢字2字を記し、併記した)<br />
{| class="wikitable" lang="zh" xml:lang="zh"<br />
|- lang="ja" xml-lang="ja"<br />
!簡化字!!繁体字!!簡化字!!繁体字<br />
|-<br />
|讠||訁||只||戠<br />
|-<br />
|饣||飠||钅||釒<br />
|-<br />
|{{拡張漢字|B|&#131283;}}(汤扬)||昜(湯揚)||学觉||{{拡張漢字|B|&#158063;}}(學覺)<br />
|-<br />
|纟||糹||{{拡張漢字|B|&#133924;}}(泽译)||睪(澤譯)<br />
|-<br />
|竖贤||臤(竪賢)||{{拡張漢字|B|&#x22016;}}(经径)||巠(經徑)<br />
|-<br />
|{{拡張漢字|C|&#x2b1e6;}}(劳荣)||{{拡張漢字|B|&#x241fe;}}(勞榮)||亦(恋变)||䜌(戀變)<br />
|-<br />
|览鉴||覽鑒||呙||lang="zh-tw" xml:lang="zh-tw"|咼<br />
|}<br />
<br />
=== 偏旁に使うことができる簡化字132字 ===<br />
{| class="wikitable" lang="zh" xml:lang="zh"<br />
|+<br />
|-<br />
!A<br />
|rowspan="38"| ||风〔風〕||rowspan="38"| ||卢〔盧〕||rowspan="38"| ||属〔屬〕<br />
|-<br />
|爱〔愛〕<br />
!G<br />
|虏〔虜〕||双〔雙〕<br />
|-<br />
!B<br />
|冈〔岡〕||卤〔鹵、滷〕||肃〔肅〕<br />
|-<br />
|罢〔罷〕||广〔廣〕||录〔録〕||岁〔歲〕<br />
|-<br />
|备〔備〕||归〔歸〕||虑〔慮〕||孙〔孫〕<br />
|-<br />
|贝〔貝〕||龟〔龜〕||仑〔侖〕<br />
!T<br />
|-<br />
|笔〔筆〕||国〔國〕||罗〔羅〕||条〔條〕<br />
|-<br />
|毕〔畢〕||过〔過〕<br />
!M!!W<br />
|-<br />
|边〔邊〕<br />
!H<br />
|马〔馬〕||万〔萬〕<br />
|-<br />
|宾〔賓〕||华〔華〕||买〔買〕||为〔爲〕<br />
|-<br />
!C<br />
|画〔畫〕||卖〔賣〕||韦〔韋〕<br />
|-<br />
|参〔參〕||汇〔匯、彙〕||麦〔麥〕||乌〔烏〕<br />
|-<br />
|仓〔倉〕||会〔會〕||门〔門〕||无〔無〕<br />
|-<br />
|产〔産〕<br />
!J<br />
|黾〔黽〕<br />
!X<br />
|-<br />
|长〔長〕||几〔幾〕<br />
!N<br />
|献〔獻〕<br />
|-<br />
|尝〔嘗〕||夹〔夾〕||难〔難〕||乡〔鄉〕<br />
|-<br />
|车〔車〕||戋〔戔〕||鸟〔鳥〕||写〔寫〕<br />
|-<br />
|齿〔齒〕||监〔監〕||聂〔聶〕||寻〔尋〕<br />
|-<br />
|虫〔蟲〕||见〔見〕||宁〔寧〕<br />
!Y<br />
|-<br />
|刍〔芻〕||荐〔薦〕||农〔農〕||亚〔亞〕<br />
|-<br />
|从〔從〕||将〔將〕<br />
!Q<br />
|严〔嚴〕<br />
|-<br />
|窜〔竄〕||节〔節〕||齐〔齊〕||厌〔厭〕<br />
|-<br />
!D<br />
|尽〔盡、儘〕||岂〔豈〕||尧〔堯〕<br />
|-<br />
|达〔達〕||进〔進〕||气〔氣〕||业〔業〕<br />
|-<br />
|带〔帶〕||举〔擧〕||迁〔遷〕||页〔頁〕<br />
|-<br />
|单〔單〕<br />
!K<br />
|佥〔僉〕||义〔義〕<br />
|-<br />
|当〔當、噹〕||壳〔殻〕||乔〔喬〕||艺〔藝〕<br />
|-<br />
|党〔黨〕<br />
!L<br />
|亲〔親〕||阴〔陰〕<br />
|-<br />
|东〔東〕||来〔來〕||穷〔窮〕||隐〔隱〕<br />
|-<br />
|动〔動〕||乐〔樂〕||区〔區〕||犹〔猶〕<br />
|-<br />
|断〔斷〕||离〔離〕<br />
!S<br />
|鱼〔魚〕<br />
|-<br />
|对〔對〕||历〔歷、曆〕||啬〔嗇〕||与〔與〕<br />
|-<br />
|队〔隊〕||丽〔麗〕||杀〔殺〕||云〔雲〕<br />
|-<br />
!E<br />
|两〔兩〕||审〔審〕<br />
!Z<br />
|-<br />
|尔〔爾〕||灵〔靈〕||圣〔聖〕||郑〔鄭〕<br />
|-<br />
!F<br />
|刘〔劉〕||师〔師〕||执〔執〕<br />
|-<br />
|发〔發、髮〕||龙〔龍〕||时〔時〕||质〔質〕<br />
|-<br />
|丰〔豐〕||娄〔婁〕||寿〔壽〕||专〔專〕<br />
|}<br />
<!--<br />
== 台湾でも使用されている簡体字 ==<br />
[[繁体字]]を用いる台湾でも一部簡体字と同様の略字(たいてい既存の漢字)の使用が認められている。<br />
=== 正式に使用されているもの ===<br />
* {{Lang|zh-tw|台}}({{Lang|zh-tw|臺}})<br />
<br />
=== 正式ではないもの ===<br />
==== 既存で本来別の漢字 ====<br />
* {{Lang|zh-tw|机}}({{Lang|zh-tw|機}})<br />
* {{Lang|zh-tw|几}}({{Lang|zh-tw|幾}})<br />
* {{Lang|zh-tw|面}}({{Lang|zh-tw|麵}})<br />
* {{Lang|zh-tw|干}}({{Lang|zh-tw|乾}}・{{Lang|zh-tw|幹}})<br />
* {{Lang|zh-tw|听}}({{Lang|zh-tw|聽}})<br />
==== 異字体 ====<br />
台湾のサーチエンジンで用いると文字化けするような機種依存文字もある)<br />
* {{Lang|zh-tw|烟}}({{Lang|zh-tw|煙}}、{{Lang|zh-cn|菸}})<br />
* {{Lang|zh-tw|双}}({{Lang|zh-tw|雙}})<br />
* {{Lang|zh|压}}({{Lang|zh-tw|壓}})<br />
<br />
なお、台湾では、簡体字とは異なる略し方をした俗字も使用されている。<br />
* {{Lang|zh-tw|塩}}({{Lang|zh-tw|鹽}}。簡体字は{{Lang|zh-cn|盐}})<br />
--><br />
<br />
== 見直し論 ==<br />
[[File:發展現代郵政.jpg|thumb|中国の最高指導者[[江沢民]]の揮毫:「発展現代化郵政、満足社会需要」。「{{Lang|zh-cn|发}}(発・發)」は簡体字で、「{{Lang|zh|現(现)}}・{{Lang|zh|郵(邮)}}・{{Lang|zh|滿(满)}}・{{Lang|zh|會(会)}}・{{Lang|zh|澤(泽)}}」は繁体字である。]]<br />
2009年3月3日、[[中国人民政治協商会議|全国政治協商会議]]の[[潘慶林]]委員が、簡体字は中国の伝統文化の継承を妨げるとして、10年間で繁体字に段階的に戻すよう提案した<ref name="sankei">{{cite news<br />
|author = [[河崎真澄]]<br />
|url = http://sankei.jp.msn.com/world/china/090420/chn0904200928001-n1.htm<br />
|title = 中国で旧字体復活? 漢字の行き過ぎた簡略化めぐり論議<br />
|publisher = [[産経新聞]]<br />
|date = 2009-04-20<br />
|accessdate = 2009-07-16<br />
}}</ref><ref name="record">{{cite news<br />
|url = http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=29134<br />
|title = &lt;中台&gt;漢字字体の統一を!繁体字の世界遺産化の動きも論議促進?…全国政協会議<br />
|publisher = [[Record China]]<br />
|date = 2009-03-05<br />
|accessdate = 2009-07-21<br />
}}</ref>。潘は、簡体字は簡略化し過ぎていて漢字本来の芸術性や表意文字としての成り立ちを破壊している、書くのが面倒とされてきた繁体字は今ではキーボードで簡単に入力できると理由を挙げ、繁体字復活は[[台湾問題|中国と台湾の統一]]にも有利と政治的な理由も挙げている。繁体字復活とは別に、行き過ぎた簡略化を修正する見直し論もあるという<ref name="sankei"/><ref name="record"/><ref>{{cite news<br />
|url = http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=30330<br />
|title = どうなる?繁体字復活論、新しい「規範漢字」近く発表か…中国<br />
|publisher = Record China<br />
|date = 2009-04-08<br />
|accessdate = 2009-07-21<br />
}}</ref>。潘の提案に対し、中華人民共和国教育部は、簡体字継続は現行法で保護されていると反論している<ref name="sankei"/>。<br />
<br />
2009年6月19日、[[馬英九]][[中華民国総統]]は中華人民共和国にもっと繁体字を使用してほしいとする異例の提案を行った<ref>{{cite news|url = http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=32777|title =日本の漢字改革を手本に!中国と台湾の字体論争…香港メディア|publisher = Record China|date = 2009-06-24|accessdate = 2018-03-09}}</ref>。<br />
<br />
== 脚注 ==<br />
{{Reflist}}<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
{{Wiktionary|簡体字}}<br />
* [[字体]]<br />
* [[ゲバ字]]<br />
* [[繁体字]] - 日本でいう[[字体#旧字体|旧字体]]にあたる<br />
* [[第二次漢字簡化方案]]<br />
* [[新字形]]<br />
* [[通用規範漢字表]]<br />
* [[漢字の簡化によって変更された中国の地名の一覧]]<br />
* [[GB 2312]] - 簡体字中国語の[[文字コード]]([[文字集合|文字セット]])<br />
* [[s:zh:简化字总表|{{Lang|zh|简化字总表}}]] - [[ウィキソース]]中国語版にある簡化字総表の項目<br />
<br />
<br />
{{文字}} <br />
{{デフォルトソート:かんたいし}}<br />
[[Category:漢字]]<br />
[[Category:中華人民共和国]]<br />
[[Category:言語政策]]<br />
[[Category:中国語]]</div>
218.180.214.32
Warning : Cannot modify header information - headers already sent by (output started at /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/extensions/HeadScript/HeadScript.php:3) in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/WebResponse.php on line 46