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ロベルト・ジェラール
2016-03-26T11:00:20Z
<p>112.248.6.107: /* 外部リンク */</p>
<hr />
<div>{{Portal クラシック音楽}}<br />
'''ロベルト・ジェラール'''（'''Roberto Gerhard''' [[カタルーニャ語]]：Robert Gerhard [[国際音声記号|IPA]]：[ruˈβɛrd ʒəˈɾart] ルベルド・ジェラルト, [[1896年]][[9月25日]] [[バルセロナ]]近郊の[[バリュス]] - [[1970年]][[1月5日]] [[ケンブリッジ]]）は[[スペイン]]の[[現代音楽]]の[[作曲家]]・[[音楽学者]]。[[第二次世界大戦]]中に祖国を追われて[[イングランド]]に亡命し、そのまま英語圏で過ごした。近年になってその実績が国際的に知られるようになり、[[マヌエル・デ・ファリャ|ファリャ]]以後の世代で最もすぐれた[[スペイン|スペイン人]]作曲家の一人として再評価されるようになった。<br />
<br />
==生涯==<br />
本名はルベルド・ジュアン・レネ・ジェラルト・オッテンヴェルデー（Robert Juan Rene Gerhard Ottenwaelder）といい、[[アルザス]]出身の母親と、ドイツ系スイス人の父親との間に生まれた（Roberto というスペイン語の綴りは、亡命後に採用したものである）。生まれる前から国際的で多言語になじむ環境にあったといえるが、ジェラールは生まれも育ちも[[カタルーニャ州|カタルーニャ]]であった。<br />
<br />
ピアノを[[エンリケ・グラナドス|グラナドス]]に、作曲を、スペイン国民楽派の父というべき[[フェリペ・ペドレル]]に師事。したがってジェラールは、[[イサーク・アルベニス|アルベニス]]、グラナドス、ファリャの弟弟子ということになる。[[1922年]]にペドレルが没すると、ジェラールはファリャに弟子入りしようとして果たせず、[[パリ]]に行って[[シャルル・ケクラン]]に入門しようとも検討したが、結局[[アルノルト・シェーンベルク]]に指導を打診した。するとシェーンベルクは、数少ない初期作品を手がかりに、唯一のスペイン人の弟子をとることにしてくれた。<br />
<br />
数年の間[[ウィーン]]と[[ベルリン]]でシェーンベルクの薫陶を受けた後、[[1928年]]にバルセロナに里帰りし、演奏活動や[[ジャーナリズム]]を通じて、全精力を現代音楽のために傾け、カタルーニャの文壇・画壇における前衛運動とも手を携えた。[[ジョアン・ミロ]]や[[パブロ・カザルス]]とも親しく、シェーンベルクや[[アントン・ヴェーベルン|ヴェーベルン]]をバルセロナに招いて[[1936年]]に[[国際現代音楽協会]]バルセロナ大会を実現させる。いっぽうでスペイン[[民謡]]や、[[ルネサンス]]から[[18世紀]]に至るスペインの[[古楽]]を収集・校訂し、演奏した。<br />
<br />
ジェラールは、[[カタルーニャ政府]]芸術省の音楽顧問や、[[スペイン|スペイン共和国]]政府の社会音楽委員会の委員を務めていたように、[[スペイン内戦]]の間もずっと共和派に肩入れしていたため、[[1939年]]になるとフランスを経てイギリスへ逃れざるを得なくなり、その年の内にケンブリッジに落ち着いた。<br />
<br />
フランコは、カタルーニャ人の民族主義的な希望をくじくことを生業としていたため、そのフランコが没するまでの間、ジェラール作品は実質的にスペインではご法度となり、ジェラール自身も、休日以外に帰国することが出来なくなった。[[英国放送協会|BBC]]や劇場向けのたくさんの作品を別にすれば、ジェラールの[[1940年代]]の作品は、[[1940年]]の「ペドレル追悼の交響曲」を手始めに、バレエ音楽「ドン・キホーテ」初稿に至るまで、まさにスペイン文化やカタルーニャ文化の諸相に関係していた。これらの頂点が、[[リチャード・ブリンズリー・シェリダン]]原作の[[スペイン語]]オペラ ''The Duenna'' である。<br />
<br />
[[1950年代]]を通じて、シェーンベルクの遺産の[[音列主義]]は、これらのあからさまに国民主義的な作品の影となって存在していたが、次第にジェラールの筆致を過激なものにしていき、[[1960年代]]までにジェラールは急進的な作風によって、前衛音楽の担い手としてしっかり位置付けられるようになった。世界的な音楽祭やBBCによる演奏を通じて、その名が[[大西洋]]の両側に知れ渡ると、ジェラールは1960年代初頭に[[アメリカ合衆国]]で教鞭を執るようになった。<br />
<br />
[[1950年代]]より、宿痾の病となった[[心臓病]]に悩まされる。[[1970年]]に[[イギリス]]に客死。[[1992年]]に、長年先延ばしされてきた「 ''The Duenna'' 」の初演が[[マドリッド]]とバルセロナで行われ、祖国における名声を取り戻す前触れとなった。<br />
<br />
==作品==<br />
ジェラールの最も重要な作品は、上記の作品を除くと、4つの[[交響曲]]、[[管弦楽のための協奏曲]]、[[ヴァイオリン協奏曲]]、[[アルベール・カミュ]]による[[カンタータ]]「ペスト」、バレエ音楽「パンドラ」「バルセロナの夜会」のほか、各種の[[室内楽曲]]や、地元カタルーニャの流しの楽団（コブラ）のための[[サルダーナ]]がある。ジェラールは、おそらくイギリス最初の重要な電子音楽の作曲家である。[[1955年]]に[[ストラトフォード・アポン・エイヴォン]]で上演された「リア王」のための[[付随音楽]]は、イギリスの演劇界で初めて電子楽器が使われた例である。<br />
<br />
==様式の進展==<br />
最初の20年間（[[バルセロナ]]時代と[[イングランド]]亡命後）は、垢抜けていて極めて豊かな、近代的な音楽語法をスペインの民族音楽に結びつけた。その一方はペドレルからファリャに至るスペイン[[国民楽派]]の伝統であり、もう一方は[[バルトーク・ベーラ|バルトーク]]や[[イーゴリ・ストラヴィンスキー|ストラヴィンスキー]]のような同時代の巨匠からの影響であった。このような音楽言語は、“カタルーニャ風バレエ”と呼ばれた「バルセロナの夜」や、バレエ音楽「ドン・キホーテ」、ヴァイオリン協奏曲やオペラ「 ''The Duenna'' 」に見出しうる。<br />
<br />
ジェラールの個人様式の複雑な形成に影響力を及ぼしたうちで、シェーンベルクが最も偉大な巨匠であったが、その影響力は傍流にとどまったかに見え、ほとんど押さえ込まれているかのようである。しかしながらシェーンベルクの指導力は、きまってジェラールの職人芸の水準の高さのうちに認められるのである。そしてある種の高度に[[半音階]]的な、半ば[[無調]]風のパッセージが、上記の作品などに言うなればこっそりと浮かび上がって、ウィーンやベルリンにおけるジェラールの研究の成果を裏書しているのである。実のところ、ジェラールはシェーンベルクを尊敬することを止めなかったし、[[新ウィーン楽派]]のたいていの関係者と心のこもったやり取りを続けていた。そしてシェーンベルクの[[十二音技法]]の意義について、研究と実行を深め続けた。<br />
<br />
歌劇「 ''The Duenna'' 」以降ジェラールは、よりきっぱりと[[音列技法]]を恃みとし、それを吸収し我が物とした。一連の注目すべき作品のうち、真の国際的名声を初めて勝ち得た「交響曲 第1番」や「弦楽四重奏曲 第1番」のような作品は、十二音技法が原則的な書法とされている。また同時に、ジェラールは、個性的で新たな進路のうちに音列技法を発展させた。[[音高]]の[[セリー]]と[[音価]]のセリーを結びつけ、響きと[[テクスチュア]]を大胆に探究している。<br />
<br />
ある意味において、これは[[抽象性]]に向かおうとする一つの傾向であった。しかしながら「スペイン風の」、民族音楽の要素を必ずしも斥けてしまったというわけではない。むしろそれらの要素は、新たな見通しにおいて、より象徴的に、効果においてより実質的に表れている。ちょうど絵画において、ジェラールと同郷のピカソやミロの作品に民族的要素がモチーフとして表れているように。<br />
<br />
このような過渡期は、つまるところジェラールの最晩年の驚くほど独創的な作品群の萠芽だったのである。最晩年になると、音列技法それ自体が、自由に連想された音色やリズムの連続体に溶け込んでおり、スペイン風の装飾音をもつフレーズは、突然のノスタルジーや夢見ごこちの幻想を誘なって聴く者を仰天させかねない。<br />
<br />
ジェラールはしばしば、自分は音楽の「響き」を待ちわびているのだとして、このように述べた。「意味をなしているのは響きであるに違いない。」<br />
<br />
だが、ジェラール最後の作品群は、譜面がたとえ感嘆すべきものであるとしても、発生する響きのただの寄せ集めなどでは全然ない。その形式は細心の注意を持って設計され、音列技法がいくらか独特に発展されている。その方法によると、音程関係を支配する12音の[[ピッチクラス]]が、作品の長さと規模を支配する、12の[[音価]]のセリーと相互に関係付けられる。<br />
<br />
たとえば「第3番」・「第4番」の交響曲においてこれらの作曲技法は、音楽に荘厳で激しいドラマを実らせるのに対し、「管弦楽のための協奏曲」では、度を越した超絶技巧がとにもかくにも誇示されて、遊戯の要素を目立たせている。<br />
<br />
==主要作品一覧==<br />
<br />
===舞台音楽===<br />
*バレエ音楽「風の精」''Ariel'' (1934)<br />
*3景のバレエ「バルセロナの夜会」''Soirées de Barcelone'' (1937-39 校訂・補筆は[[マルコム・マクドナルド]]、1996)<br />
*「ドン・キホーテ」 ''Don Quixote'' (初稿：1940-41 改訂稿：1947-49)<br />
*フラメンコ風ディヴェルティスマン「アレグリア」 ''Alegrias'', Divertissement flamenco (1942)<br />
*「パンドラ」 ''Pandora'' (1943-44, 管弦楽化：1944-45)<br />
*歌劇「 ''The Duenna'' 」(1947-49、[[リチャード・シェリダン|シェリダン]]原作)<br />
* ''El barbarillo de Lavapies'' （フランシスコ・バルビエリの[[サルスエラ]] (1874) の校訂・編曲）<br />
*[[ジングシュピール]]「 ''Lamparilla'' 」（ ''El barbarillo de Lavapies'' の独語版。ジェラールは序曲と楽曲を追加。） (1955-56)<br />
<br />
===交響曲===<br />
*[[交響曲]]「ペドレルを称えて」 ‘''Homenatje a Pedrell''’ (1941)<br />
*第1番 (1952-53)<br />
*第2番 (1957-59) 「メタモルフォーゼ」 ''Metamorphosis'' として改作するも未完 (1967-68)<br />
*第3番「コラージュ」 ''Collages'' （管弦楽とテープのための） (1960)<br />
*第4番「ニューヨーク」 ‘''New York''’ (1967)<br />
*（第5番、断片のみ) (1969)<br />
*[[室内交響曲]]「レオ」‘''Leo''’ (1969)<br />
<br />
===協奏曲===<br />
*弦楽合奏のための[[協奏曲]] (1929)<br />
*[[ヴァイオリン協奏曲]] (1942-43)<br />
*ピアノと弦楽合奏のための協奏曲 (1951)<br />
*チェンバロ、弦楽合奏と打楽器のための協奏曲 (1955-56)<br />
*[[管弦楽のための協奏曲]] (1965)<br />
<br />
===管絃楽曲=== <br />
* オーバード、間奏曲と舞曲 ''Albada, Interludi i Dansa'' (1936)<br />
* 祝婚歌 Epithalamium (1966)<br />
* 舞台音楽による組曲<br />
** 「バルセロナの夜会」<br />
** 「ドン・キホーテ」<br />
** 「アレグリアス」<br />
** 「パンドラ」<br />
<br />
===室内楽===<br />
[[1928年]]までに3つの[[弦楽四重奏曲]]を手懸けたが、すべて紛失した。このうち1928年に完成された3曲目は、後に「弦楽合奏のための協奏曲」へと改作された。<br />
<br />
*[[ピアノ三重奏曲]] ロ長調 (1918) <br />
*ピアノ三重奏曲 第2番 (1918)<br />
*[[クラリネット・ソナタ]] (1928、[[バス・クラリネット]]版あり)<br />
*木管五重奏曲 (1928)<br />
*クラリネット、ヴァイオリンとピアノのための「アンダンティーノ」 (1928-9)<br />
*弦楽四重奏曲 第1番 (1950-55)<br />
*[[ヴィオラ・ソナタ]] (1948、チェロ・ソナタ版は1956)<br />
*無伴奏フルートのための「[[カプリッチョ]]」 (1949)<br />
*クラリネット、ヴァイオリン、ピアノのための「 ''Secret People'' 」(1951-52、[[映画音楽]]の試作)<br />
*九重奏曲 (1956-57)<br />
*弦楽四重奏曲 第2番 (1961-62) <br />
*8人のためのコンセール ''Concert for 8'' (1962)<br />
*無伴奏ヴァイオリンのための「シャコンヌ」 (1959)<br />
*木管合奏、2台のピアノと打楽器のための「 」 ''Hymnody'' (1963)<br />
*ヴァイオリンとピアノのための二重奏曲「ふたご座」 ''Gemini'' (1966)<br />
*六重奏曲 ''Libra'' (1968)<br />
<br />
===ピアノ曲===<br />
*カルロスのための[[ソナチネ]] ''Sonatine a Carlos'' (1914)<br />
* ''Dos Apunts'' (1921-22)<br />
*3つの[[即興曲]] (1950)<br />
<br />
===ギター曲===<br />
*[[幻想曲]] (1957)<br />
<br />
===声楽曲===<br />
*[[連作歌曲]]「''L'infantament meravellós de Shahrazada'' 」 op.1 (1916-18)<br />
*ピアノ伴奏歌曲「''Verger de les galanies'' 」 (1917-18)<br />
*歌手とアンサンブルのための「7つの俳句 ''7 Haiku'' 」 (1922/改訂1958)<br />
*ピアノ伴奏歌曲集「14のカタルーニャ民謡 ''14 Cancons populars catalanes'' 」 (1928-29)<br />
** オーケストラ伴奏歌曲集「6つのカタルーニャ民謡 ''6 Cancons Populars Catalanes'' 」(1931、「14の……」より抜粋・編曲)<br />
*ソプラノ、バリトン、合唱、管弦楽のためのカンタータ「 ''L'alta naixenca del Rei en Jaume'' 」 (1932)<br />
* ''Cancionero de Pedrell'' for voice and piano or chamber orchestra (1941)<br />
* オーケストラ伴奏歌曲「 ''3 Canciones Toreras'' 」 (c.1943) 偽名フアン・セラロンガによる作品]<br />
* ピアノ伴奏歌曲集「6つのフランス民謡 ''6 Chansons populaires françaises'' 」 (1944)<br />
* 声と打楽器のための「 ''The Akond of Swat'' 」 (1954)<br />
* 声とギターのための「唄」 ''Cantares'' for voice and guitar (1962; ギター曲「幻想曲」に挿入)<br />
* 語り手、合唱と管弦楽のための「ペスト ''The Plague'' 」 (1963-64、[[アルベール・カミュ|カミュ]]原作)<br />
<br />
===電子音楽===<br />
「交響曲第3番」にもラジオやテープなどの電子機器が利用されている。<br />
<br />
* ''Audiomobiles I-IV'' (1958-59)<br />
*語り手とテープのための「死せる闘犬への哀歌」 ''Lament for the death of Bullfighter'' for speaker and tape (1959)<br />
*テープのための「10の小品」 ''10 Pieces'' (c.1961)<br />
* ''Sculptures I-V'' (1963)<br />
* ''DNA in Reflection'' (1963)<br />
<br />
===[[サルスエラ]]にもとづく幻想曲===<br />
小オーケストラのための作品。フアン・セラロンガ（Juan Serralonga）名義による。<br />
*[[フェデリコ・チュエカ|チュエカ]]とバルベルデによる「カディス」''Cadiz'' (c.1943)<br />
*カバジェーロによる「[[ヒガンテスとカベスドス]]」''Gigantes y Cabezudos'' (c.1943)<br />
*カバジェーロによる「ラ・ビエヘシタ」''La Viejecita'' (c.1943)<br />
<br />
==参考文献==<br />
*Joaquin Homs, ''Robert Gerhard i la seva obra'' (Biblioteca de Catalunya, 1996)<br />
*Meirion Bowen, ed. ''Gerhard on Music: Selected Writings'' (Aldershot, 2000)<br />
*London Sinfonietta Programme Book for The complete Instrumental and Chamber Music of Arnold Schoenberg and Roberto Gerhard (London, 1974)<br />
<br />
== 外部リンク ==<br />
* {{imdb|0314281}}<br />
{{DEFAULTSORT:しえらあと ろへると}}<br />
[[Category:1896年生]]<br />
[[Category:1970年没]]<br />
[[Category:近現代の作曲家]]<br />
[[Category:現代音楽の作曲家]]<br />
[[Category:カタルーニャの作曲家]]<br />
[[Category:イギリスの作曲家]]<br />
[[Category:カタルーニャ系イギリス人]]<br />
[[Category:スペイン系イギリス人]]<br />
[[Category:スイス系スペイン人]]<br />
[[Category:アルザス系人]]</div>
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