SWOT分析
SWOT分析(-ぶんせき、SWOT analysis)とは、目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人のプロジェクトやベンチャービジネスなどにおいて、外部環境や内部環境を強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) の4つのカテゴリーで要因分析し、事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図る経営戦略策定方法の一つである[1]。組織や個人の内外の市場環境を監視、分析している。 フォーチュン500のデータを用いて1960年代から70年代にスタンフォード大学で研究プロジェクトを導いた、アルバート・ハンフリーにより構築された。
Contents
SWOT分析の戦略的・創造的使用方法
SWOT分析は、1920年代からハーバードビジネススクールのビジネスポリシーコースの一部として開発されてきた、ハーバードポリシーモデルの一部である。企業や個人の目標が明確である場合、SWOT分析は戦略計画ツールとして有用である。この場合、SWOTは以下のように表される。
- 強み:目標達成に貢献する組織(個人)の特質。
- 弱み:目標達成の障害となる組織(個人)の特質。
- 機会:目標達成に貢献する外部の特質。
- 脅威:目標達成の障害となる外部の特質。
的確な意思決定にはSWOTの正しい理解が必要である。意思決定者は与えられたSWOTを元に目標が達成可能であるかを判断し、達成が不可能であると判断した場合、別の目標を元に、再度SWOT分析をやり直す必要がある。達成が可能であると判断した場合、以下の質問に対する回答を考えることで、創造的な戦略につなげることができる。
- どのように強みを活かすか?
- どのように弱みを克服するか?
- どのように機会を利用するか?
- どのように脅威を取り除く、または脅威から身を守るか?
SWOT分析は、会計、営業、経営者、エンジニアなどの構成チームにより行われることが理想的
内的および外的要因
SWOT分析の目的は、目標を達成することにとって重要な内外の要因を特定することである。このため、重要な要因を以下の2つに分類する。
- 内的要因 - 強みと弱み
- 外的要因 - 機会と脅威
内的要因は、目標への影響により強みまたは弱みとなる。ある目標についての強みは、別の目標についての弱みとなる可能性がある。内的要因には、人材、財務、製造力などのほか、マーケティングの4P(Production(商品)、Price(価格)、Promotion(販売促進)、Place(立地・物流))が含まれる。外的要因には、マクロ経済、技術革新、法令・社会環境・文化の変化が含まれる。これらの分析結果はマトリックス形式で表されることが多い。
なお、SWOT分析はあくまで1つの手法であり、弱点も存在する。例えば、目標を達成する際に本質的に重要であることを考えずに、単なるSWOTリストの編集に注力してしまう可能性がある。また、弱い「機会」と強い「脅威」を釣り合わせるために、明確な優先順位や批判なしに分析が行われる可能性がある。
慎重に分析を行うためには、いかなるSWOT項目も早期に取り除かないことが重要である。個々のSWOT項目の重要性は、それが生み出す戦略の価値によって決まる。すなわち、価値ある戦略を生み出すSWOT項目は重要であり、生み出さないSWOT項目は重要ではないと判断される。
SWOT項目の例
強み・弱み
- 資源(財務・知的財産・立地)
- 顧客サービス
- 効率性
- 競争上の優位
- インフラ
- 品質
- 材料
- 経営管理
- 価格
- 輸送時間
- コスト
- 容量
- 主要顧客との関係
- 市場における知名度・評判
- 地域言語の知識
- ブランド
- 企業倫理
- 環境
機会・脅威
- 政治・法令
- 市場トレンド
- 経済状況
- 株主の期待
- 科学技術
- 公衆の期待
- 競合他社の行為
回避すべき誤り
SWOT分析に関して以下のような誤りが観察されたことがあり、注意が必要である。
- 目標を定めて同意をとる前にSWOT分析を行う。そのような分析結果には意味がない。
- 外部の「機会」と内部の「強み」を混同する。これらは別々にしておく必要がある。
- SWOT項目を戦略と混同する。戦略は行動を定めるのに対して、SWOT項目は状況を説明するものである。この誤りは「機会」の分析に関して特に発生する。この誤りを避けるためには機会を「見通しが明るい状況」と解釈しておくことも有用であろう。
SWOT分析の更なる使途
SWOT分析の有用性は、営利組織に限らない。目標さえ定められれば、SWOT分析はどのような意思決定状況でも使用できる(非営利組織、政府自治体、個人等)。SWOT分析は、危機管理においても使用される。これらの場合でも上述のステップに従うことにより、問題の解明と目標指向の発展につながる。
脚注
- ↑ 板倉宏昭 『経営学講義』 勁草書房、2010年、40頁。ISBN 978-4-326-50334-6。