JSR
JSR株式会社(ジェイエスアール、英: JSR Corporation)は、日本の化学メーカーである。
1957年、合成ゴムの国産化を目指して政府および関連民間企業の出資(出資比率は政府40%、民間企業60%)によって設立された国策会社・日本合成ゴム株式会社を前身とする。1969年に完全民営化し、事業の多角化を進める。創立40周年を迎えた1997年、現社名(日本合成ゴム株式会社の英文社名 Japan Synthetic Rubber Co.,Ltd.に由来)に商号変更した。高分子化学分野で培った研究開発力を活かして技術革新を進め、ファインケミカル、ライフサイエンスを第二、第三の収益柱としている。信越化学、日東電工と並び、化学業界屈指の高収益企業である。 企業理念は"Materials Innovation"。
Contents
概要
合成ゴムで世界5位、日本国内首位(2004年の国内シェア31.5%。第2位は20.1%の日本ゼオン)。既存の石油化学系材料ではなく、半導体系材料や液晶表示系材料などの情報電子材料に注力し収益を伸ばしている。液晶ディスプレイ(LCD)用材料で世界トップシェアの製品が数種あるほか、半導体関連ではフォトリソグラフィ工程に用いるフォトレジストが世界トップ、シリコンウェハーを加工する CMP(化学機械研磨)工程に用いる CMPスラリー、CMPパッドも新たな収益源に成長しつつある。また、優れた光学特性を有する樹脂を開発し、光ファイバー用コーティング材や光学接着剤、透明樹脂などでも高いシェアを持つ。2006年1月には本田技研工業との燃料電池用材料共同開発の進展を発表、同年2月には米IBMとの半導体製造技術共同研究による最先端の成果を発表するなど、次代の材料開発を推進し、2017年度にはライフサイエンス分野を第3の収益の柱と位置付けている。[1]
拠点
- 本社 : 東京
- ブランチ:名古屋
- 工場:四日市、千葉、鹿島
- 研究所:四日市研究センター(機能高分子研究所・ディスプレイソリューション研究所・精密電子研究所・先端材料研究所・エッジコンピューティング研究所)、筑波研究所、東京信濃町(JSR・慶應義塾大学医学化学イノベーションセンター)、福岡(近畿大学分子工学研究所-JSR機能材料リサーチセンター)
- 海外:カリフォルニア(シリコンバレー、サンディエゴ)・デトロイト・シンシナティ・オハイオ・ダーラム・コロラド・ボストン・オレゴン・テキサス(アメリカ)、メキシコ、ブダペスト(ハンガリー)、ルーバン(ベルギー)、ワリセレン(スイス)、デュッセルドルフ(ドイツ)、ソウル・オーチャン(韓国)、台北・虎尾・新竹(台湾)、香港、北京・上海・天津(中国)、バンコク(タイ)、シンガポール、インドなど約40ヶ所
沿革
- 1957年(昭和32年)12月10日、「合成ゴム製造事業特別措置法」により日本合成ゴム株式会社設立。
- 1958年(昭和33年)4月、「日本合成ゴム株式会社に関する臨時措置に関する法律」公布。
- 1960年(昭和35年)4月、四日市工場(三重県四日市市)稼動開始、合成ゴム生産開始。
- 1961年(昭和36年)3月、合成ゴムラテックス生産開始。
- 1964年(昭和39年)10月、合成樹脂生産開始。
- 1968年(昭和43年)4月、千葉工場(千葉県市原市)稼動開始。
- 1969年(昭和44年)4月、「日本合成ゴム株式会社に関する臨時措置に関する法律を廃止する法律」により民営化。
- 1970年(昭和45年)10月、株式を東証2部・大証2部に上場。
- 1971年(昭和46年)1月、鹿島工場(茨城県鹿島郡神栖町、現:神栖市)稼動開始。
- 1971年(昭和46年)8月、株式を東証1部・大証1部に指定替え。
- 1979年(昭和54年)4月、フォトレジスト販売開始。
- 1984年(昭和59年)4月、光ファイバーコーティング材料販売開始。
- 1987年(昭和63年)3月、液晶ディスプレイ(LCD)材料販売開始。
- 1989年(平成元年)4月、筑波研究所(茨城県つくば市)完成。
- 1997年(平成9年)12月10日、JSR株式会社に社名変更。
- 1998年(平成10年)、四日市工場がISO14001登録認証取得。
- 1999年(平成11年)、千葉工場・鹿島工場がISO14001登録認証取得。
- 2002年(平成14年)、中期計画「JSRevolution」をスタート。
- 2004年 (平成16年)10月、韓国の液晶ディスプレイ材料工場(JSR Micro Korea Co.,Ltd)が竣工し、商業生産を開始。
- 2006年(平成18年)
- 1月、燃料電池用電解質幕の開発に成功。
- 4月、セイコーエプソンと共同で、液体プロセスによる高品質なシリコン膜の形成に成功。
- 2007年(平成19年)
- 2008年(平成20年)
- 5月、JMエナジー株式会社を完全子会社化。
- 9月、シンガポール駐在員事務所開設。
- 2009年(平成21年)3月、テクノポリマー株式会社を完全子会社化。
- 2011年(平成23年)12月、合弁会社「捷和泰(北京)生物科技有限公司」を設立。
- 2012年(平成24年)
- 1月、JMエナジーのリチウムイオンキャパシタ「ULTIMO」が、中部電力株式会社・株式会社明電舎共同開発の「リチウムイオンキャパシタ式短時間停電補償装置」に採用。
- 2月、台湾でも液晶ディスプレイ用材料の研究開発センターが稼働開始。メディカル事業会社・JSRライフサイエンス株式会社を設立。
- 2013年(平成25年)
- 1月、JSRグループ、米Capstone Metering(キャップストーン メータリング)に戦略的投資。
- 2月、エラストミックスがPT. Prospect Motorとの間で合弁会社のPT. ELASTOMIX INDONESIAを設立。スイスのバイオ医薬品精製プロセス技術企業に戦略投資。
- 3月、株式会社 医学生物学研究所と資本業務提携契約を締結。持分法適用関連会社化。
- 2015年(平成27年)
- 3月、株式公開買付けにより、株式会社医学生物学研究所に対する出資比率を引き上げ。米国バイオ医薬品開発・製造受託会社KBI Biopharma Inc.を産業革新機構・シミックホールディングスと共同で買収。
- 10月、株式会社医学生物学研究所を連結子会社化。
- 12月、日本アイ・ビー・エム、千住金属工業と300mmウェハ対応の半導体高密度実装用バンプ形成技術Injection Molded Solderを開発
- 2016年(平成28年)
- 2月、ベルギーIMECとEUVリソグラフィ用フォトレジスト製造合弁会社EUV Resist Manufacturing & Qualification Center N.V.(ベルギー)を設立
- 8月、全日本空輸等と3Dプリント義足を共同開発。
- 9月、3Dプリンティング技術会社のCarbon 3D, Inc. (米国)に出資
- 12月、株式会社ジーンテクノサイエンスと資本業務提携に合意
事業内容
エラストマー事業
- 汎用合成ゴム(自動車タイヤ、ベルト、各種工業用ゴム製品など)
- 特殊合成ゴム(耐油・耐摩耗・耐熱・耐候ゴムなどの各種機能性ゴム)
- 熱可塑性エラストマー(自動車制振材、高機能靴底材、各種改質材など)、等
エマルジョン事業
機能化学品事業
- 多機能・高性能分散剤(乳化安定剤、帯電防止剤、親水性付与コート剤、インクジェット材料など)
- 高機能ゾルゲル材料(光触媒コート材、外壁コート材など)
- 高機能・工業用粒子(各種添加剤、フィルム用ブロッキング剤、光拡散材など)
- 電池材料(電池用バインダーなど)、等
合成樹脂事業
電子材料事業
ディスプレイ材料事業
光学材料事業
- 光機能材料(光ファイバーコート材など)
- 光造型システム
精密材料事業・加工事業
メディカル材料事業
蓄電デバイス事業
主な関連企業
日本国内
- テクノUMG株式会社 - ABS樹脂国内シェア1位
- JMエナジー株式会社
- 株式会社エラストミックス - マスターバッチ国内首位
- JSRライフサイエンス株式会社
- 日本カラリング株式会社
- JSRマイクロ九州株式会社
- JSRオプテック筑波株式会社
- 株式会社ディーメック
- 日本ブチル株式会社 – エクソンモービルとのブチルゴム事業合弁会社(50%出資)
- ジェイエスアール クレイトン エラストマー株式会社 - クレイトンポリマーズ(旧シェルグループ)との熱可塑性エラストマー事業合弁会社(50%出資)
- 東部ブタジエン株式会社 – 住友化学とのブタジエン事業合弁会社(50%出資)
- 日本特殊コーティング株式会社 - 蘭DSMとの光ファイバー用コーティング材事業合弁会社(50%出資)
- 株式会社トリケミカル研究所
- SCIVAXライフサイエンス株式会社
- シミックJSRバイオロジックス株式会社
- 株式会社医学生物学研究所
- 株式会社聖路加医学生物学研究所 - 聖路加財団と医学生物学研究所との臨床検査及び研究・治験受託サービス事業合弁会社
- 株式会社イーテック
- JSRロジスティクス&カスタマーセンター株式会社
- ジェイトランス株式会社
- JSRトレーディング株式会社
- JSRエンジニアリング株式会社
- JSRビジネスサービス株式会社
- JNシステムパートナーズ株式会社
- 株式会社サイクレックス
- 株式会社抗体研究所
- エムビーエルベンチャーキャピタル株式会社
- G&Gサイエンス株式会社
- 株式会社グライエンス
- 株式会社新組織科学研究所
- 株式会社ライフテック
- 株式会社食の科学舎
- 株式会社GEL-Design
- 株式会社プリベンテック
- Integrated DNA Technologies MBL 株式会社
- 株式会社Oncomics
- 株式会社クロモリサーチ
日本国外
- JSR (Shanghai) Co., Ltd.
- JSR Micro, Inc.(米国)
- JSR Micro N.V.(ベルギー)
- JSR Micro Korea Co., Ltd.
- JSR Micro Taiwan Co., Ltd.
- JSR Micro (Changshu) Co., Ltd.
- JSR Trading, Inc. (米国)
- JSR Trading Bangkok Co., Ltd.
- JSRT México S.A. de C.V.
- JSR BST Elastomer Co., Ltd.(タイ)
- JSR MOL Synthetic Rubber, Ltd.(ハンガリー)
- JSR Elastomer Korea Co., Ltd.
- JSR Elastomer Europe GmbH(ドイツ)
- JSR Elastomer India Private Limited
- Techno Polymer America, Inc.(米国)
- Techno Polymer Hong Kong Co., Ltd.
- Techno Polymer (Thailand) Co., Ltd.
- Techno Polymer Guangzhou Co., Ltd.
- Techno Polymer (Shanghai) Co., Ltd.
- Techno Europe N.V.(ベルギー)
- Elastomix (Thailand) Co., Ltd.
- PT. Elastomix Indonesia
- JSR Electronic Materials Korea Co., Ltd.
- EUV Resist Manufacturing & Qualification Center N.V.(ベルギー)
- KBI Biopharma, Inc.(米国)
- SCIVAX USA, Inc.(米国)
- MBL International Corporation(米国)
- Ribonomics Inc.(米国)
- BION Enterprises, Ltd.(米国)
- Selexis S.A. (スイス)
- Crown Bioscience International (英国領ケイマン諸島)
- 捷和泰(北京)生物科技有限公司
- 日密科偲橡膠(佛山)有限公司
- 上海虹彩塑料有限公司
- 上海立馳高化工有限公司
- 大科能樹脂(上海)有限公司
- 大科能樹脂(上海)技術発展有限公司
- 広州大科能樹脂有限公司
- 天津国成橡膠工業有限公司
- 錦湖ポリケム株式会社 - 韓国錦湖石油化学とのEPゴム事業合弁会社(50%出資)
- 北京博尔迈生物技术有限公司 (MBL Beijing Biotech Co., Ltd.)
- 恩碧乐(杭州)生物科技有限公司 (MBL Hangzhou Biotech Co., Ltd.)
脚注・出典
- ↑ JSR 新中期経営計画(2017年度-2019年度)-2018年1月11日閲覧
外部リンク
- JSR株式会社
- テクノUMG株式会社
- JSR Micro,Inc.
- JSR Micro N.V.
- 日本の合成ゴム《→YouTube版》 - 『科学映像館』より。当企業が”国策会社「日本合成ゴム」”として存在した1960年に企画し、製作された広報映画。