2010年欧州ソブリン危機
2010年欧州ソブリン危機(2010ねんおうしゅうソブリンきき)または、欧州債務危機(おうしゅうさいむきき)、欧州経済危機(おうしゅうけいざいきき)、欧州危機(おうしゅうきき)、通称ユーロ危機(ユーロきき)は、2009年10月のギリシャ政権交代による国家財政の粉飾決算の暴露から始まる、経済危機の連鎖である[注釈 1]。スペイン、ポルトガルなどユーロ加盟諸国(PIIGS)、あるいはハンガリーやラトビアなど中東欧諸国へ波及した場合、世界的な金融危機に発展するかもしれないと懸念されている[1][2]。
Contents
概要
地中海周辺諸国の財政問題はオスマン債務管理局の時代から世界経済を左右してきた。そして現代においては、欧州連合(EU)による欧州通貨統合が南欧に広がるにつれ、PIIGSと呼ばれる国々の経済の弱さが浮き彫りになった[3]。問題は独仏のマネーがこれらの国に大量に投資されているため、欧州全体のマネーフローの問題になったことである[3]。また世界金融危機後のけん引役の1つである欧州経済の不調が、今なお脆弱なアメリカや日本の経済危機の引き金を引くのではないかという懸念がある[4][5][6][7]。
根本的には経済の規模、内容、政治が異なる国々による欧州通貨統合という実験が失敗に終わるのではないかという考え方が力を持ち始めていることにある[8]。またドイツやフランス国民には、自分たちの稼いだお金が放漫財政の救済のためにどぶに捨てられると考え始め、またPIIGSにとっては稼いだ金を金利などによって吸い取られていると考え、EU全体の遠心力の爆発という大きな政治危機の引き金になりかねないとされる[9]。
「欧州統合は戦争か平和かの問題であり、ユーロが平和を保証している」(コール独元首相)という考え方が根底にあり、英国のように通貨統合を単なる経済上の試みとはとらえず、安全保障上の政治的意思と大陸諸国は捉えている[10]。
主要10カ国(G7+スペイン、韓国、スイス)の2000年と2008年の数字を比較すると、名目GDPは22.5兆ドル(以下同じ単位)から33.8へと11.3の増加だったが、債務総額は70.8から111.5へと40.7増加しており、GDP増加の4倍債務が膨らんでいる。金融危機の度に多額の資金が供給され、それは国債という政府の負債としてたまっている。余剰資金は金利や期待利益率の高い新興国に流入する。ギリシャは欧州金融危機を米投資銀行のアドバイスで欧州中央銀行 (ECB) からの融資で乗り切ったと言われる。いつまでも多額の借金を背負ったままでいられないので「ソブリンリスク」として、国家のデフォルトの危険は増している。2011年9月現在でギリシャの長期国債の金利は20%を超えている[11]。
ロバート・フェルドマン(モルガン・スタンレーMUFG証券経済調査部長)や、稲葉延雄元日銀理事は、ストレステスト後の欧州は日本の1999年頃の感じであり、これから構造調整の痛みがあるだろうと説く[12]。
世界最大の投信(運用資産1.1兆ドル)「ピムコ」のビル・グロスは外国債の危険を表す「炎の輪」を唱え[13]、。
予測されていた危機
マネタリズムの祖であるミルトン・フリードマンはユーロの見通しの悪さを予見していた。適切な金融政策がとれるのは変動相場制があるからであり、統一通貨ではそれは不可能である。さらに悪いことに、ユーロ圏のように為替レート変動による経済の調整メカニズムを放棄している場合には国内の価格や賃金あるいは資本移動によってでしか調整メカニズムがはたらかないので、ユーロ圏各国が各自独立した文化や規制を有している状態のままユーロを導入すれば、ユーロ圏各国の政府が各々異なる政治的圧力にさらされ、それら政府同士での政治的軋轢が生じる[14]。。
通貨発行権限
PIIGS諸国などが抱える欧州債務問題の原因はユーロ圏ではドイツにあるECBだけがユーロ紙幣を発行する権限を有しているために、ユーロ圏の各加盟国が紙幣増刷によって自力で債務返済できない[15]
背景
- 1881年 - オスマン債務管理局が設置された。
- 1967年 - 欧州諸共同体が発足する。
- 1968年 - 12月、ベルギーのブリュッセルでICSDユーロクリアが設立される。
- 1970年9月 - ルクセンブルクでICSDセデルが設立される。
- 1973年 - ベルギーに国際銀行間通信協会が設立される。
- 1979年 - 欧州通貨制度始まる。イギリスは基本的に不参加だったが、マーストリヒト条約の前後にわたり参加。
- 1980年 - ベルギーで憲法改正。1970年に続く第二弾。地方分権にあたり、文化と経済の二元軸で、つまり地図上において異なる境界で自治体を区分。文化と経済の分離が進む。1988年と1993年にも同様の趣旨で改正される。
- 1981年4月 - ベルギーの公定歩合が15%を記録する。
- 1982年 - ロベルト・カルヴィが暗殺される。
- 1983年 - ジャック・ドロールが仏蔵相に就任し、フランソワ・ミッテランの社会主義政策を転換する。
- 1986年 - 2月、単一欧州議定書が調印される。10月、イギリスでビッグバン (金融市場)おこる。
- 1987年10月 - ブラックマンデー
- 1989年11月9日 - 東西ドイツを隔てていたベルリンの壁が崩壊。
- 1990年 - 東西ドイツ統一。各国は強大なドイツが欧州を支配することを恐れ、統一通貨への参加とECBの設立によりドイツが欧州の1つの国として生きることを選択。
- 1992年 - ポンド危機
- 1997-98年 - アジア通貨危機。
- 1998年 - ロシアのデフォルト、回収率50%。ロングターム・キャピタル・マネジメント破綻。
- 1999年1月 - ユーロ導入、1ユーロ=1.17ドル
- 2000年 - ギリシャのユーロ加盟。その条件は財政赤字を対GDP比3%以内に収めることであるが、この頃から粉飾は始まっていたと、2004年のEU財務相理事会において指摘があった[16]。しかし経済回復に伴い英独仏の銀行や保険会社は南欧ブームに乗って、貸し付けを行った(PIIGS合計2兆ドル)。
- 2001年 - アルゼンチンがデフォルト、820億ドル、回収率30%。
- 2002年1月 - ユーロ紙幣・硬貨が流通開始。
- 2004年 - アテネオリンピック開催。
- 2005年 - ギリシャの経常収支赤字が対GDP比5%に達する。2008年には8%。
- 2007年 - サブプライムローン危機が表面化。2008年9月のリーマン・ショック後の欧州経済危機について、各国政府がECBからの融資で切り抜ける一方、ISCD設立当初から関係していた金融機関は2007年12月から2010年6月にわたりFRBから16兆ドルのベイルアウトを受けた。
- 2008年1月 - SEPA(en:Single Euro Payments Area)稼動。
経緯
2009年
- 2009年10月 - ギリシャでゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ新政権への交代が起こり、それまで対GDP比3.7%とされた財政赤字が実際には12.5%であると発表する(2010年4月には13.6%に修正された)。国債規模の"粉飾"にはゴールドマン・サックスとの"不適切な"デリバティブ取引が関係していたとされる。ギリシャは小さい国(人口1,100万人、GDP3,600億ドル)で自力での解決は不可能である。そこで、2001年のアルゼンチンのデフォルトが思い出され、ソブリン・リスクが意識された。
- 12月16日 - スタンダード&プアーズ(S&P)がギリシャの長期格付け「A-」を「BBB+」に1段階引き下げ、ユーロ売りが始まる。
2010年1-6月
- 1月 -ため、
- 1月28日 - クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場にて、ギリシャのCDSスプレッド(5年物)が400.5bp(ベーシスポイント)にまで拡大[注釈 2]。10年物のギリシャ国債と独連邦債との利回り格差も393bp[17]。
- 3月24日 -
- 4月 -
- 4月20日 - メキシコ湾の深海油田「マコンド・プロスペクト」において、国際石油資本・BPの掘削リグ「ディープウォーター・ホライゾン」が爆発炎上、その後沈没。史上最大規模の原油が流出(「2010年メキシコ湾原油流出事故」も参照)。
- 4月22日 - 欧州連合統計局(ユーロスタット)がギリシャの財政赤字を13.6%に上方修正し、さらに14%になる可能性があるとした。アイルランドは14.3%でギリシャを上回る[18]。
- 4月27日 -
- 5月6日 -
- 5月7日 - ギリシャ問題に加え、ニューヨーク株式市場でダウ平均株価が急落(現地では6日)。一時998ドル下がり、過去最大の下落となった。終値で347ドル安の大幅続落。また、欧州圏でのソブリンリスクの高まりと株価急落を受け、ドル資金市場ではドル不足が顕著になり欧州財政危機が、世界規模の金融危機に再び転化する兆候が現れている[19](「世界金融危機 (2007年-)」も参照)。
- 5月9日
- ECBは今までの政策を変更し、ギリシャ、スペイン、ポルトガル国債の買い切りオペを実行し、救済した[20]。
- 5月12日 - スペインが150億ユーロの追加歳出削減発表。公務員給与の削減、子ども手当や介護基金などの社会支出削減[21]。
- 5月18日 - 中国の温家宝首相は、北京を訪問したドイツのホルスト・ケーラー連邦大統領との会談の席上で、世界経済が危機的な状況であると認識している旨を発言した[22]。
- 6月2日 -
- 6月3日 -
- 6月8日
- 6月10日 -
- 6月14日 -
- 6月17日
- EU、IMF、米財務省がスペインに2,500億ユーロの資金繰り援助を策定との報道[25]。
- 6月18日 -
- 6月22日
- フランスの大手銀行クレディ・アグリコールは、ギリシャ子会社エンポリキ銀行関連での4億ユーロの評価損の計上を発表した。またエンポリキ銀行の2010年における純損失が当初の予想の2倍を超える7億5,000万ユーロとなる見通しを示した[26]。
- 6月24日
- 6月25日
- 6月29日 -
2010年7月-10月
- 7月1日
- NYで円相場が前年12月以来7ヶ月ぶりとなる86.98を付ける[31]。
- 7月2日
- 7月8日 - フィナンシャル・タイムズの報道によれば、National Bank of Greece(ギリシャ)、Postbank(ドイツ)、bar Alpha Bank(ギリシャ)、Monte dei Paschi(イタリア)が特に多額の資本注入が必要という[34]。
- 7月11日 - 国際決済銀行(BIS)が6月28日に発行した年次報告書の脚注とその後の電子メールから、欧州のある匿名の民間銀行(あるいは中央銀行)が346トンの金を担保にBISから140億ドルの融資(SDRスワップ)を受けたことが明らかになった。融資期間は1年以内で返済できない場合金は市場で売却される可能性があり金相場は弱含みになった。焦点とみられる各国中央銀行の金保有高はギリシャ112.2、スペイン281.6、ポルトガル382.5トンであり思惑を呼んでいる[35][36][37][38]。
- 7月13日 - ムーディーズは、ポルトガルの格付けを「AA2」から「A1」に2ノッチ引き下げ、見通しを「安定的」とした[39]。
- 7月14日 - スペイン中央銀行によれば、同国銀行のECBからの借り入れが、6月は1263億€と、5月の856.2億€から48%急増し、1999年以降最大になった[40]。
- 7月16日 - EU関係筋がストレステストの基準案を明らかにした。第1にコアTier 1(狭義の自己資本比率)を6%とする。ソブリンリスク(外国投資の危険度)へのエクスポージャー(負債)を第2とした[41]。成長率の想定は甘いが、国債価格を5月下旬より下げる[42]。
- 7月19日 - ムーディーズはアイルランドの格付けを「Aa1」から「Aa2」へ1ノッチ下げる。見通しは安定的。アイルランドの赤字は14%と欧州最大級[43]。
- 7月23日 -
2010年11月-
- 11月15日 - EU統計局はギリシャの対GDP赤字比率を2009年は15.4%(前回13.6%)、2008年は9.4%(同7.7%)と拡大修正した。目標は8.1%なので歳出削減追加を求められている。2009年度のユーロ圏16カ国の赤字は6.3%(前年2%)、EU全体では6.8%(前年2.3%)と拡大している[44]。
- 11月21日 - アイルランドの報道機関が、アイルランドがEUとIMFに対して数百億€の金融支援を要請することを同日中に閣議に諮る旨を伝えた。支援の財源には、EUとIMFが2010年5月に設立した総額7,500億€(約85兆円)の「ユーロ防衛基金」が活用される見込みであるという[45](「#アイルランド問題」も参照)。
- 11月22日 - フィナンシャル・タイムズはバークレーズ・キャピタルの発表として、バーゼル3の適用(自己資本比率コアTier1規制7%+余裕1%)で米国の上位銀行が資本不足となり、リスク資産の売却を迫られるだろうとした。バーゼル2(欧州は適用済み)の米国への適用の影響は予測が付かないとした[46]。
- 12月8日 - IMFの専務理事ドミニク・ストロス=カーンが国連欧州本部での講演において、ヨーロッパがなおも厳しい情勢にあり経済・財政危機へのより効果的な対応策が必要であるとの見解を示した[47][48]。
- 12月17日 - ムーディーズはアイルランドの格付けを「Aa2」から「Baa1」に5段階引き下げ、見通しも「ネガティブ」とした。金融機関救済、経済見通し、国家の財政力といった問題があることが理由である[49]。
ギリシャ問題
スペイン問題
- 「欧州の最大の問題はギリシャではなくスペインの金融問題」(クレディ・スイス証券の丸山俊ストラテジスト)とされる。スペインの住宅バブルが今後の引き締めで大打撃を受ける。1998年から2008年の10年間で住宅価格は3倍になった。マドリッド郊外では空室率は40%を超えている(大手銀行サンタンデールとBBVA(ビルバオ銀行)のCDS料率は6月に2%を超えた[50])。
- 。
2012年以降は、スペイン経済危機 (2012年)、クリスティナ・デ・ボルボーン・イ・デ・グレシアも参照
オーストリア・ハンガリー問題
ハンガリーでは、2010年4月に発足したオルバン新政権が6月3日に前政権の粉飾決算を公表したことから、財政破綻の可能性が語られるようになった。与党フィデス(ハンガリー市民同盟)のコーシャ副党首は、ハンガリーの財政がギリシャ同様の危機的状況に陥るのを避けるのは容易でない旨を語っている[53]。
また2008年の世界的な金融危機の煽りを受け同10月28日から11月7日にかけてIMFやEUおよび世界銀行からの緊急融資がおこなわれており[54]、大幅な金利引き上げや財政支出の厳しい削減を含んだ「構造改革」を要求されている。IMFは一般財政収支の赤字は2008年のGDP比3.4%を2009年に2.6%にするよう迫ったが、現実には2009年5月時点で3.9%とむしろ拡大するような状況であった[55]。2010年は財政赤字幅をGDP比で3.8%に抑える計画だったが、それが7%超と大きく上回る見通しである[56]。
投資家は安定した通貨に投資する。しかし危機が起きたときに中央銀行は外貨準備が少ないため、相場を維持できない。それを見越して投資家などはフォリントを売って外貨を買うためますます外貨が少なくなり、相場は暴落する。そうすると外貨建て債務が(中味は同じなのに)急増し、危機がより一層深刻化するのである[57]ハンガリーでは金融機関による企業向け融資と個人向け融資ともに大半をユーロやスイスなどの外貨建て融資が占めており、その中でもスイスフラン建て融資は2009年末時点で61.5%にのぼっていた。2008年の金融危機以降、ECBやスイス中央銀行によるスワップによる流動性補填が実施されている。フォリントの下落がスイスフラン買いを加速し、ユーロ/スイスフラン下落をもたらしスイス中央銀行のユーロ買い介入の原因のひとつを占めるとの観測もある[56]。
アイルランド問題
リーマン・ショック以降、不動産市場を基点に重篤な経済危機に陥ったが、公的資金の導入と国営化などにより銀行救済が行われ経済は小康状態を保っていた。しかし、不動産市場は低迷したままであり銀行の救済コストが上昇、巨額の追加支援が必要なことが明らかになり、2010年9月30日には最大5.7兆円規模の金融システム修復策を発表、同国の2010年の財政赤字はGDPの32%に拡大する見通しとなった[58][59]。これらを受けムーディーズは2010年7月19日にアイルランド国債の格付けを「Aa1」から「Aa2」に引き下げ、2010年10月5日にはさらなる格下げの検討を発表[60]、フィッチは2010年10月6日「AA-」から「A+」に引き下げ、見通しはネガティブとし今後さらに引き下げられる可能性を示唆した[61]。11月10日、アイルランド中央銀行のホノハン総裁は外資系銀行を含む国内金融機関の融資損失は少なくとも同国GDPの55%に相当する850億ユーロになるとの推計を発表した[62][63]。
アイルランドの財政危機のきっかけは、国が金融機関の損失を救済しすべての債務を保証したことだと言われている。金融機関を救済したため、財政赤字がGDPの30%以上(32%)となり、公債がGDPの176%になった。アイルランド向けエクスポージャーはギリシャ向けの3倍以上である5,000億ドル(約42兆円)と推定されている。イギリスはアイルランドへの数十億ポンドの融資を表明した[64]。リーマン・ショック後から金融機関に投入された公的資金は約330億€であったが、アイルランド政府は最終的に500億€にのぼると試算した。金融機関へのECBからの支援は2010年10月末現在で1300億€にのぼり、アイルランド中央銀行からも350億€の支援を受けていた[65]。アイルランド経済がここまで悪化したのは、1990年代前半から2007年までの間、12.5%の低い法人税率で企業を呼び込み、不動産バブルが起き、その後崩壊したためである。住宅着工件数は2006年のピークの1/8である。2008年まで4%台だった失業率が、2010年9月には14.1%に上昇している[66]。
12月15日、アイルランド議会はEU-IMF主導の救済策受け入れを承認した[67]。しかし金融機関支援策では、預金者だけでなく優先債権者や劣後債権者まで保証しており、モラルハザードのおそれと巨額の公的債務を生んでいる。この救済事例は「債権者に優しい」最後のものになるのではないかと言われている[68]。
12月17日、ムーディーズはアイルランドの格付けを「Aa2」から「Baa1」に5段階引き下げ、見通しも「ネガティブ」とした。金融機関救済、経済見通し、国家の財政力といった問題があることが理由である[49]。
2011年1月27日の欧州債権市場において、ギリシャやスペインとともにアイルランドの国債相場にも下落がみられた。アイルランド10年債は利回り9.13%、ドイツ債とのスプレッドは5.92ポイントとなった(ロンドン時間27日午後4時現在)[69]。
主な基礎データ
世界の外貨準備に占める通貨シェア
- 米ドル42%、ユーロ36%、英ポンド6%、日本円3%、その他13%[70]
各国の負債
2010年総債務残高対GDP比(%)、財政赤字対GDP比(%)[71]
- ポルトガル - 84.6、8.0
- アイルランド - 82.9、14.7
- イタリア - 116.7、5.3
- ギリシャ - 124.9、12.2
- スペイン - 66.3、10.1
- イギリス(UK) - 80.3、12.9
- ベルギー - 101.2、5.8
- ドイツ - 76.7、5.0
- フランス - 82.5、8.2
- オランダ - 65.6、6.1
投融資残高
債権国 | ||||||||||
債務国 | ドイツ | スペイン | フランス | イタリア | その他ユーロ圏 | イギリス | 日本 | アメリカ | その他 | 計 |
ギリシャ | 65.4 | 1.3 | 83.1 | 6.8 | 31.6 | 17.0 | 2.3 | 36.2 | 8.5 | 252.1 |
アイルランド | 186.4 | 17.7 | 77.3 | 24.7 | 64.2 | 187.5 | 22.0 | 108.3 | 58.8 | 746.8 |
ポルトガル | 44.3 | 98.3 | 48.5 | 7.6 | 21.2 | 29.0 | 2.6 | 35.6 | 5.5 | 292.6 |
スペイン | 216.6 | … | 201.3 | 37.2 | 164.1 | 136.5 | 25.1 | 172.8 | 36.2 | 989.8 |
計 | 512.7 | 117.3 | 410.2 | 76.3 | 281.1 | 370.0 | 52.0 | 352.9 | 109.0 | 2281.3 |
(BIS発表、単位は億ドル、集計日は若干異なる[73])
主な債務国(借手)
- ギリシャ - フランス788、ドイツ450、米国166ほか、(日本67)ほか、合計2170
- ハンガリー - オーストリア370、ドイツ319、フランス111、(日本17)ほか、合計1398
- スペイン - ドイツ2380、フランス2112、オランダ1197、イギリス1110、アメリカ580、(日本284)、ほか合計9257
- ポルトガル-ドイツ474、フランス449、イギリス256、(日本43)ほか、合計2509
- イタリア - フランス5078、ドイツ1897、イギリス765、日本544、アメリカ532ほか、合計11451
- アイルランド-ドイツ1838、イギリス1727、アメリカ571、(日本217)ほか、合計6477
主な債権国(貸手)
- フランス - イタリア5078、スペイン2112、ギリシャ788、アイルランド521、ポルトガル449
- ドイツ - スペイン2380、イタリア1897、アイルランド1838、ギリシャ450
- イギリス - アイルランド1727、スペイン1100、イタリア765、ポルトガル256
- オランダ - スペイン1197、イタリア691、ポーランド352
- アメリカ - スペイン580、アイルランド571、イタリア532、ギリシャ166
- 日本 - イタリア544、スペイン284、アイルランド217、ギリシャ67
日本への影響
日本の輸出企業には10円の円高ユーロ安が2%の減益要因になると言われている。欧州への輸出は全体の約1-2割程度である。PIIGSへの日本の融資残高は1000億ドル程度。ギリシャにとどまらず、スペイン、ポルトガルへ飛び火すれば、英独仏だけでは処理が難しく、世界金融危機にさらされるとされる。豪ドル相場は4月中旬以来13%下げ、国内株も15%安になっている[75]。
欧州での営業利益が多い上場企業
(利益額・億円、かっこ内は営業利益、売上高の割合(%)[76])()
- 2位 アステラス製薬 439(25.0、24.9)
- 3位 武田薬品 309(4.3、8.3)
- 4位 リコー 302(45.9、18.2)
- 5位 オリンパス 222(26.6、18.0)
- 6位 ダイキン 206(47.8、21.3)
- 7位 東芝 206(18.4、8.4)
- 8位 任天堂 180(5.1、19.9)
- 9位 出光 140(31.7、2.1)
- 10位 マキタ 129(54.4、32.9)
脚注
注釈
出典
- ↑ “[FT]ユーロ圏を救うには同盟強化しかない”. 日本経済新聞. . 2010閲覧.
- ↑ 清水俊介 (2010年6月22日). “ソブリンリスク 財政危機 悪循環招く”. 東京新聞. 2010年6月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2010閲覧. “ギリシャ国債は、四分の三を海外の金融機関などが保有しており、もしギリシャが財政破綻すれば、損失は世界に拡大する。ギリシャのソブリンリスクが世界的な金融危機の第二弾になりかねないと警戒されるゆえんだ。”
- ↑ 3.0 3.1 九州大学経済学部 経済・経営学科 岩田ゼミナール ※氏名略. “EUの深化を目指して - ギリシャ危機に学ぶ構成国の在り方 (PDF)”. 九州大学. 2012年1月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2011閲覧.
- ↑ “ギリシャ問題、来月のG20までに一定の前進みないと世界経済の失速感は免れない=安住財務相”. ロイター. (2011年9月24日) . 2011閲覧.
- ↑ “金融市場に悲観まん延、混乱長引けば足元堅調な実体経済にも悪影響”. ロイター. (2011年10月4日) . 2011閲覧.
- ↑ “IMFが世界成長見通し下方修正、米欧の二番底リスク警告”. ロイター. (2011年9月21日) . 2011閲覧.
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- ↑ クラウス, ヴァーツラフ (2010年6月2日). “【寄稿】ユーロ圏は失敗した=クラウス・チェコ大統領”. ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 . 2011閲覧.
- ↑ “欧州との結びつきを考え直すドイツ”. ウォール・ストリート・ジャーナル日本版. (2011年9月29日) . 2011閲覧.
- ↑ ロンドン・センター「英国のユーロ参加問題 - 最も重要なテストは世論 (PDF) 」 、『ユーロトレンド』、JETRO、2003年3月、 191-194頁、. 2010閲覧. ジェトロ・ロンドンによるイアン・ベッグ(王立国際問題研究所)へのインタビュー要旨(2003年1月)。
- ↑ 三橋貴明のもう経済記事にはだまされない klug 2011年9月14日
- ↑ 日本経済新聞 2010年8月3日 13面「キンドルバーガーの価値」
- ↑ Investment Outlook ビル・グロース | 2010年2月 炎の輪
- ↑ Happy birthday, Milton Friedman, The European crisis is your latest vindication Forbes 2012年8月1日
- ↑ ECBの量的緩和実施が欧州の危機救う=カレツキ氏 Reuter 2012年7月23日
- ↑ 羽森 2013, p. 102.
- ↑ 17.0 17.1 “ギリシャ国債のCDSプレミアムが過去最高水準を更新=CMA”. ロイター. (2010年1月28日) . 2010閲覧.
- ↑ ギリシャ09年財政赤字:対GDP比13.6%、14%超に修正も-EU
- ↑ ドル不足が深刻化、欧州財政危機が金融危機に転化する兆候
- ↑ 日本経済新聞2010年6月22日 やさしい経済学 竹森俊平
- ↑ JETRO:住宅バブルの清算、労働市場・産業構造改革が大命題−金融危機後の成長モデルを探る(15)−(スペイン)
- ↑ “世界経済危機は想定以上に深刻=温家宝・中国首相”. ロイター. (2010年5月19日) . 2010閲覧.. "「欧州のソブリン債危機は欧州の回復の足かせとなっており、世界の金融危機の深刻さや複雑さはわれわれの想定を超えた」と語った。"
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- ↑ ロイター:ルーマニア憲法裁、緊縮財政措置の一部を違憲と判断
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- ↑ 日経ヴェリタス 7月1日p14
参考資料
書籍・論文・雑誌
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- 白井さゆり 『欧州迷走 - 揺れるEU経済と日本・アジアへの影響』 日本経済新聞社、2009年12月。ISBN 978-4-532-35394-0。
- 白井さゆり 『欧州激震 - 経済危機はどこまで拡がるのか』 日本経済新聞社、2010年9月、ISBN 978-4-532-35394-0。
- 羽森, 直子「ユーロ危機の原因 (PDF) 」 、『流通経済大学論集-経済・情報・政策編』第22巻第1号、流通経済大学、2013年4月5日、 pp. 99-123、 NAID 120005327959、. 2015閲覧.
- 「スペイン沈没」、『週刊エコノミスト』第89巻第8号、毎日新聞社、2011年2月8日、 pp. 18-35, 76-85、 NAID 40017648190。
- 「危機の第2幕が上がったのか? 世界経済大乱」、『週刊東洋経済』第6265号、東洋経済新報社、2010年6月5日、 pp. 34-65, 68-75, 78-89、 NAID 40017108281。
- 「CDSは危機のカナリア」、『日経ヴェリタス』第121号、日本経済新聞社、2010年7月4日。
- 「ヨーロッパを蝕む銀行危機」、『ニューズウィーク』第25巻第28号、阪急コミュニケーションズ、2010年7月21日、 18-21頁、 NAID 40017194152。
ウェブサイト
- 日本貿易振興機構(JETRO)
- ギリシャ財政危機問題--現状と今後の展望-- (PDF) JETRO海外調査部 欧州ロシアCIS課 デュッセルドルフ・センター 2010年4月
- 住宅バブルの清算、労働市場・産業構造改革が大命題−金融危機後の成長モデルを探る(15)−(スペイン)2010年06月21日
- 「ハンガリー危機に見る「ギリシャがユーロを離脱できない」理由〜「欧州財政危機の深層」を白井さゆり・慶大教授に聞く」、『週刊ダイヤモンド』 プリズム+one【第104回】、2010年6月11日
- Newsweekアーカイブ&スペシャルリポート「ソブリンリスク危機 - アメリカや日本にも忍び寄るギリシャ型「政府債務信用不安」の実相」、『ニューズウィーク日本版』、2010年7月5日
報道
- 「欧州ソブリン危機」 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版特集
- 日本経済新聞
- 1面連載「通貨混沌 ユーロ不安と世界」2010年6月15日〜
- 1面連載「通貨危機 金融危機は終わるのか」2010年8月1日〜
- 経済教室 連載「ユーロ危機 くすぶる金融不安」
- 経済教室 連載「岐路の世界景気 広がる緊縮財政」2010年7月26日-28日
- 不定期連載「ユーロ危機 専門家に聞く」2010年5月19日〜
- 日本経済新聞・マネー・マーケットonline・緊急特集(会員限定)
- (7/9夕刊)(十字路)「やはり必要なEU財政統合」 文教大学国際学部教授 足立 茂」
- らいふプラス 電子版から ユーロ危機「緊急特集」眠らぬ市場 深掘り解説(2010年6月3日7面)
- 金の最高値更新が映す「病巣」(NY特急便)NQNニューヨーク 川勝充郎2010/6/19
- 日経平均今年最大の下げ、ハンガリー問題は過剰な受け止め?(10/6/7)
- ユーロ危機、なぜスペインに飛び火? やさしくQ&A=編集委員 藤田和明(10/5/31)
- なぜ続くユーロ問題、やさしくQ&A=編集委員 藤田和明(10/5/19)
- 止まらぬ欧州不安 日本株への影響をどうみる(10/5/17)
- 世界連鎖株安、市場は「危機」再来に身構え、安全資産への逃避が加速(10/5/8)
- マネー・マーケットonline・スクランブル ギリシャを超えるスペインの難題とは=土居倫之(10/6/17)
- “「ユーロ危機」折見世記氏に聞く ギリシャ、スペイン、ポルトガル… 欧州財政危機「第二のリーマン」か?”. J-CASTニュース. (2010年6月12日) . 2011閲覧.
- 「ユーロ危機 試練の欧州 スペイン、ギリシャ離脱も」、『読売新聞』、2010年7月7日、朝刊6面
- NHK
- NHKスペシャル「狙われた国債〜ギリシャ発・世界への衝撃〜」松平定知キャスター、2010年7月2日(金) 午後10時00分〜10時49分総合テレビ
- 視点・論点 「ギリシャの財政危機」慶應義塾大学教授 白井さゆり2010年05月10日 (月)
- テレビ東京
- 「日高義樹のワシントン・リポート」2010年7月11日「ユーロ崩壊か長期低落か〜IMFリプスキー筆頭副専務理事、オックスフォード大学経済学者 アーウイン・ステルツァー」[1]
- 日経スペシャル「ガイアの夜明け」(2010年7月20日放送)マネー動乱 第5幕 世界マネー 次の標的
関連資料
- 「世界経済危機白書」、『週刊エコノミスト』 第88巻第48号、毎日新聞社、2010年8月17・24日合併号、pp. 18-43、NAID 40017217192。