黒砂糖
黒砂糖(くろざとう)又は黒糖(こくとう)は、サトウキビの絞り汁を煮詰めて作る黒褐色の砂糖(含蜜糖)で、甘味料として用いる。
brown sugarは黒砂糖の英訳だが、日本語でのブラウン・シュガー(茶色の砂糖の総称)とは異なる。
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定義
日本においては、消費者庁が2010年(平成22年)にJAS法解釈通知の「食品表示に関するQ&A」を改定して黒糖の定義を明確化し、翌2011年(平成23年)には再改定により黒砂糖の定義を明確化した[1]。その定義によれば、黒砂糖及び黒糖は同義で、
さとうきびの搾り汁に中和、沈殿等による不純物の除去を行い、煮沸による濃縮を行った後、糖みつ分の分離等の加工を行わずに、冷却して製造した砂糖で、固形又は粉末状のもの — 食品表示に関するQ&A[2]
とされる。消費者庁は、黒砂糖の定義を明確化した理由として、黒糖と黒砂糖が同じもの、別のもの、わからないと答える消費者がほぼ3分の1ずつで、区別が分かりにくかったことを挙げている[1]。従来、加工黒糖や粗糖(ザラメ)に糖蜜を混ぜた再製糖が「黒糖」として販売されていたが、これにより、定義に当てはまらないものの表示に黒糖という表現が使えないようになった。この定義は日本黒砂糖協会でも採用されている[3]。
また、沖縄県黒砂糖協同組合では、黒糖を、沖縄県と鹿児島県の離島で主に生産される含みつ糖のうち、サトウキビの搾り汁だけを煮沸濃縮以外の加工をせずに製品化したものと、また、沖縄黒糖を、同組合に所属する4企業1団体の製糖工場(8つの離島工場)で生産されるものと定義している。「沖縄黒糖」は2006年(平成18年)4月に特許庁の地域団体商標の登録を受けた文字商標で、同年6月には財団法人食品産業センターの「本場の本物」認証制度に認定されており、独自のマークを印刷されたうえで販売されている[4][5]。
黒糖の歴史
沖縄では1623年(元和9年、琉球王朝尚豊3年)に、中国から儀間真常が製糖法を習得して普及させ、沖縄の生活や文化、農業や経済と深くかかわりながら発展した。現在では、沖縄県と鹿児島県の離島や他の農作物の生産が厳しい島々で生産され、特産品となっている。サトウキビのみから製造される黒糖は沖縄県の伊江島、粟国島、伊平屋島、多良間島、小浜島、与那国島、西表島、波照間島の8つの離島で生産され、総生産量は年間8 - 9千tである[4]。
成分
主成分である糖分以外にも、カリウム、鉄、カルシウム、亜鉛のほか、多くのミネラル成分を含み、特有の香味を持つ[4][6]。
製法
サトウキビの茎の絞り汁を加熱し、水分を蒸発させて濃縮したものを冷やし固めて作る。酸性を中和し、不純物を沈殿させやすくするために、絞り汁に石灰を混入するが、糖分の分離精製をしておらず、砂糖の分類としては「含蜜糖」にあたる。
流通
日本では沖縄県や鹿児島県などサトウキビ栽培が盛んな地域では一般的な甘味料として流通しているが、それら以外の地域ではミネラル分を豊富に含むことから健康食品として扱われることも多く、主に健康食品売り場や郷土産品売り場などで販売されている。
産地
海外では、バルバドス、フィリピン、ベトナム、フィジーなどが著名な産地であり、英語ではBarbados sugar(バルバドスシュガー)との呼び名もある。台湾もかつては大量に製造し、輸出していたが、近年は衰退している。
特徴や用途
その色から「黒」と形容されているが、これは型に流し込んだブロック状の塊の状態でのことであり、取り出して粉砕して粉末にすると褐色となる。蜜分を多く含むことから白砂糖と比べると固まりやすく、大抵はブロックを砕いた程度の状態で販売されている。これを砕いたりすり潰したりし、あるいは煮溶かして料理や菓子の材料にしたり、コーヒーや紅茶に入れる甘味料として使われるほか、飴のように直接口にして風味を楽しむ。
黒砂糖はサトウキビのアルカロイドなどの各種成分を含んでいるため、蔗糖などの糖分は80%強と砂糖の中で最も低い。本来は不純物であるカルシウムや鉄など各種のミネラル分が糖蜜に多く含まれているため、渋みや苦味といった雑味も多く、カラメルのように甘みも強く感じられることから、味わい深いがその独特さゆえに料理や菓子の材料としてはやや用途を選ぶ。
なお、昔からの産地である九州・沖縄地方では黒砂糖を使った郷土菓子や料理などが多い。
黒糖の安全性
土の中から栽培するサトウキビを黒糖にする工程でボツリヌス菌の芽胞が含まれてしまう可能性があるため、1歳未満の乳児が摂取すると中毒症状である乳児ボツリヌス症を引き起こし、最悪の場合には死亡することがあるため、警戒を要する[7]。
関連する製品
黒蜜
黒砂糖を水に溶かして煮詰め、とろみをもたせたもの、あるいは精糖の段階で出る糖蜜を黒蜜(くろみつ)という。みつまめ、わらびもち、くず餅、地方によってはところてんなどにかけて食べる。台湾ではかき氷や豆腐花と呼ばれる豆腐のデザートにも用いる。
加工黒糖
原料糖(粗糖)、糖蜜等に黒糖又はサトウキビの搾り汁を配合し、夾雑物の除去を行い、煮沸による濃縮を行った後、冷却して製造した砂糖で、固形又は粉末状のものをいう。また、加工黒糖の黒糖使用割合は、製品重量に対して5%以上とし、黒糖の代わりにサトウキビの搾り汁を使用する場合は、サトウキビの搾り汁中のしょ糖分重量にて読み替えるものとする。[8]従来、黒糖として販売されることがあったが、2012年4月1日から「黒砂糖」や「黒糖」と商品表示ができるのは、サトウキビの搾り汁を使った商品に限られ、黒糖に粗糖や糖みつを混ぜた商品は誤認を避けるために「加工黒糖」と呼ぶことになった。黒糖に原料糖(粗糖)、糖蜜をブレンドしているので、品質を一定に保つことができるため、加工食品の原料に適している。
テンサイ糖
テンサイについては糖分を高度に精製する必要があることから、サトウキビと同じような黒糖を作るのは難しいとされてきたが、2006年に北海道網走市の業者によって甜菜黒糖が製品化されて市販されており、食品材料としても供給されている。サトウキビ由来の黒糖とは異なる、オリゴ糖などの特徴的な成分を含有する。現在においても1社のみが生産している。
消費者庁が黒糖の製法に関して「サトウキビ」のみを原材料と定義したことで、2010年12月21日の網走市議会において、北海道の基幹作物の「甜菜」を原材料としたものも「黒糖」と表示することを認めるよう決議し、関係先に意見書を送達した。
黒砂糖を使うお菓子
日本
台湾
脚注
- ↑ 1.0 1.1 “黒糖等の表示の適正化について” (PDF) (プレスリリース), 消費者庁, (2011年3月30日) . 2018閲覧.
- ↑ “食品表示に関するQ&A”. 消費者庁食品表示企画課 (2011年3月). . 2018閲覧.
- ↑ “加工黒糖等の表示に関するガイドライン”. 日本黒砂糖協会. . 2018閲覧.
- ↑ 4.0 4.1 4.2 沖縄県黒砂糖協同組合について 沖縄県黒砂糖協同組合
- ↑ 黒糖について 沖縄県黒砂糖協同組合
- ↑ Smooth Life - 黒糖の栄養と効能がスゴイ!おすすめの活用法とは?
- ↑ 赤ちゃんに食べさせてはいけない食べ物は?
- ↑ “加工黒糖・黒糖・赤糖について| 日本黒砂糖協会” (日本語). japan-kurozatou-org.com. . 2018閲覧.