領土問題
領土問題(りょうど もんだい)とは、ある地域が、特に陸地である領土が、どの国家の領域に属するかをめぐって、国家間での争いが起きることである。
Contents
概説
国境の線引きに関するわずかな見解の相違や小さな無人島の帰属といったレベルから、主権国家を自称している地域全体を別の国家が自国領土と主張する場合(台湾問題など)まである。
領土問題を抱える国家同士の関係も様々である。係争地域の実効支配をめぐる深刻な対立・衝突がなく、友好的に外交や貿易、国民の往来が続く場合もあれば(カナダとデンマーク領グリーンランドの間にあるハンス島など)、植民地独立運動を含めて戦争やテロのきっかけになることも多い(ノモンハン事件、印パ戦争など)。これら領土問題を戦争に発展させないために、国連は国際法によって、一国が他国の領土を武力によって占有することを禁じている。実際には、無人の係争地を占拠したり、係争地にいる 他国の軍隊・警備隊や住民の抵抗を実力で排除して軍事占領したりする例は多い。
よく領土問題の原因になるのが、その土地にある石油などの天然資源や農地、重要建造物、国境付近にある川とその流路変更である。また離島はそれ自体に経済的価値がほとんどなくても、本土から離れた軍事拠点として有用だったり、周囲に広大な領海や排他的経済水域(EEZ)、大陸棚が付属する可能性が高かったりするため、係争対象になりやすい。各国・民族のナショナリズムが高まった近現代では、人が住むには厳しい絶海の孤島や砂漠や高山であっても領土問題の対象となる(南沙諸島など)。
また、その土地を最初に占有した国家が領有を明確にしていなかったり、付近に他の国家がありながらもその国家の了解を得ていなかったり、居住民族が移動を繰り返して複数の民族が混住していたりするといった歴史的経緯も、領土問題の原因になりやすい。
各国政府は、係争地の実効支配を確実にしたり、その領有や返還を実現したりするため、国内外世論への訴えかけ、法的な理論武装、外交交渉や国際司法裁判所への付託、戦争など様々な手段をとる。領土問題について、個人が自国政府と異なる見解を示した場合、世論の批判を受けるだけでなくロシア連邦のように法的な罪に問われる国もある(2014年3月の刑法改正による)[1]。
領土の権原
領土権を主張する根拠(権原)として、歴史的には以下のようなものがある
- 譲渡
- 征服(国連憲章下で現在認められない)
- 先占(無主地を国家が領有意思を持ち実効的に占有すると当該土地がその国の領土になる)
- 添付(自然現象や埋め立て等で土地が拡張する場合)
- 時効(土地を領有の意思を持って相当期間平穏公然に統治することで領有権を取得する場合)
がある[2]。
国際領土紛争では、「国家権能の平穏かつ継続した表示[3]」という権原を基準に判定される場合が多い。
消極的領土問題
領土問題、領土紛争となるには2つ以上の国家間で領域に対する領土権の主張(要求)が必要であるが、一方で国際関係上、当該領域に対する領土権は主張しないが、国家承認の文脈において「その領域の領有は認めない」とする立場を表明する事がある。
国際司法裁判所への付託
領土問題は当事国同士での外交で解決されるのが望ましいが、当事国間で解決することが困難な場合には、国際司法裁判所 (ICJ) への付託ができる。もっとも国際司法裁判所への付託は、紛争当事国の一方が拒否すれば審判を行うことができず、つまり強制管轄権はない[4]。ただし、双方の当事国が義務的管轄権受託宣言を事前に行っている場合には例外的に付託される[5]。
しかしながら、当事国間で解決することが困難な場合には、ICJは客観的に判定することを推奨している。
例えば、
- ICJ
- 常設国際司法裁判所判決
などの判決が客観的判定の推奨を確認されている[6]。
国際判例による規則
塚本孝によれば、これまでのICJ国際判例から次の様な規則が得られる[7]。
- 中世の事件に依拠した間接的な推定でなく、対象となる土地に直接関係のある証拠が優位。中世の権原は現代的な他の権原に置き換えられるべき。
- 徴税・課税、法令の適用、刑事裁判、登記、税関設置、人口調査、亀・亀卵採捕の規制、鳥の保護区設定、入域管理、難破事件の捜査などが、国家権能の表示・実効的占有の証拠となる。
- 紛争が発生した後の行為は実効的占有の証拠とならない。
- 住民による行為は国家の主権者としての行為ではない。
- 条約上の根拠がある場合にはそれが実効的占有に基づく主張に優越する。
- 国は、相手国に向かって行った発言と異なる主張はできない。
- 相手国の領有宣言行為に適時に抗議しないと領有権を認めたことになる。
- 歴史的、原初的権原があっても相手国が行政権行使を重ね、相手国の主権者としての行動に適時に抗議しなければ主権が移ることがある。
- 発見は未完の権原である(実効的占有が行われなければ領有権の根拠にならない)。
- 地理的近接性は領有根拠にならない。領海内の無人島が付属とされることはある。
- 地図は国際法上独自の法的効力を与えられることはない。公文書付属地図が法的効力を持つ場合や信頼に足る他の証拠が不足するときに一定の証拠価値を持つ場合はある。
世界各地の領土問題
東アジア
- 北方領土(日本・ロシア):千島列島(クリル諸島)のうち、北海道に隣接する「国後島・択捉島・色丹島・歯舞群島」(南クリル及び小クリル)の主要四島。実効支配しているのはロシア側であるが、日本とロシア連邦の間で、今なお領有権の主張が続いている。明治期の蝦夷開拓以来、アイヌ民族と日本人が共に暮らしていた地であった。
- 第二次世界大戦末期の1945年、ソビエト社会主義共和国連邦によって武力介入、占領した。その後、1992年ソビエト崩壊により同地域はロシアに引き継がれたが、現在に至るまで同地域の実効支配は続いている。日本は、北方四島は1951年に締結したサンフランシスコ平和条約にて「放棄した地域」に含まれないとして、日本側の領有権、及びロシア側の不法占拠を主張。現在に至るまで返還要求は継続している[8]。なお、ロシア側によれば「南クリル(北方四島)は第二次世界大戦の結果ソビエト連邦が獲得した正当な領土で、ロシア連邦サハリン州の不可分の領土」と主張している[9]。"「北方領土問題」"
- 第二次世界大戦末期の1945年、ソビエト社会主義共和国連邦によって武力介入、占領した。その後、1992年ソビエト崩壊により同地域はロシアに引き継がれたが、現在に至るまで同地域の実効支配は続いている。日本は、北方四島は1951年に締結したサンフランシスコ平和条約にて「放棄した地域」に含まれないとして、日本側の領有権、及びロシア側の不法占拠を主張。現在に至るまで返還要求は継続している[8]。なお、ロシア側によれば「南クリル(北方四島)は第二次世界大戦の結果ソビエト連邦が獲得した正当な領土で、ロシア連邦サハリン州の不可分の領土」と主張している[9]。
- 南樺太:第二次大戦の戦後処理として、1951年に連合国側と締結したサンフランシスコ平和条約(第2条C項)により、日本政府は千島列島[10]、南樺太及びこれに近接する諸島の権利・権原及び請求権を放棄する事を認めたが、1945年以降北方四島を含む同地域を実効支配していたソビエト連邦は同条約に調印しなかった。また、中華人民共和国はサンフランシスコ講和会議に招聘されていない。同条約に基づき日本政府は、「国際法上、南樺太及び千島列島(得撫島以北の北千島)の最終的な帰属は未定である」、「その後の最終的な帰属は将来の国際的解決手段に委ねられる」という立場を一貫して取っている。アメリカ合衆国なども、ソ連および継承するロシアによる南樺太の領有は認めていない立場[11]であるが、北方四島ほどには明確な国家としての態度は取っていない。ロシアが実効支配し、他に南樺太に対する領土権の主張をする国家は存在せず、帰属問題(承認問題)だけが未解決という状態が継続している[12]。
- 沖ノ鳥島(日本・東京都):日本が島を領有し、その島を基点に排他的経済水域を設定しているが、大韓民国と中華人民共和国は、日本の領有権について異議は唱えていないが、沖ノ鳥島は島ではなく「岩」として、海洋法に関する国際連合条約の第121条第3項(人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない)を根拠に、沖ノ鳥島のEEZ主張は認められないと主張している。
- 竹島(日本・島根県):日本海の南西部、北緯37度15分、東経131度52分に位置する島。日本、大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国がそれぞれ領有権を主張している。「竹島」は日本における呼称で、韓国・北朝鮮では「独島(獨島、トクト、독도、Dokdo)」、第三国では「リアンクール岩礁(Liancourt Rocks)」と呼ばれている。現在は韓国が、「軍国主義時代の日本が強制的に編入した島」であったとの主張の下、領有権を主張し、実効支配している。日本側は過去に何度か国際司法裁判所 (ICJ) への付託を提案しているが、韓国側は「独島に領土問題は存在しない」との見解により、その都度これを拒否している。なお、韓国が日本の保護国となる以前の1889年発行の大韓帝国の教科書には「竹島(独島)は韓国領でない」記述が記され、韓国側の主張には根拠が薄いことが指摘されている[13]。こちらも参照
- 尖閣諸島(日本・沖縄県):中華人民共和国、中華民国(台湾)が領有権を主張しているが、日本国政府は尖閣諸島に領有権問題は存在しないとの立場である。"「尖閣諸島問題」"
- 1969年 - 1970年に、国際連合が「尖閣諸島一帯には石油、レアメタルなどが埋蔵されている」などの石油資源がある文章を発表のち、「ふたつの中国」が領有権を主張し始めている。
- 日本では尖閣諸島(魚釣島、大正島、南小島、北小島)と呼んでいるが、中華人民共和国では釣魚島、中華民国は釣魚台と呼んでいる。
- 北方限界線(NLL)(韓国):韓国と北朝鮮の朝鮮半島西側海上における軍事境界線。1953年の朝鮮戦争休戦に際し、陸上の38度線(軍事境界線)と共に西側海上に設けられた休戦ライン。これは休戦協定において韓国側は同意したものの、北朝鮮側は国連とアメリカが一方的に決めたものだとして、いっさい認めなかった。この海上には延坪島をはじめとする多くの島嶼を韓国側が実効支配している。1999年には北朝鮮側が一方的に自らの主張する軍事境界線を設定し、これを根拠として韓国側と海上において軍事衝突を繰り返した。2010年には延坪島で砲撃事件があり多数の死傷者や難民を出した。
- 白頭山(北朝鮮):大韓民国と中華人民共和国が領有権を主張している(大韓民国は朝鮮半島全土の領有を主張しているため、同国の主張では飛び地とはならない)。中国側は「長白山」と呼んでいる。
- 蘇岩礁(韓国・中国):暗礁であるが、韓国中国間でEEZの確定していない海域の暗礁へ大韓民国が海洋調査施設を建設している。
- 可居礁:東シナ海にある暗礁。韓国政府は可居礁と命名し、中韓二国間で黄海の排他的経済水域を巡る紛争の1つ。
- 丁岩礁:東シナ海にある暗礁。1999年から2002年にかけて中華人民共和国が調査し発見。韓国海洋水産部は波浪礁と命名し領有を主張。
- 間島(中国):旧満州国で北朝鮮との国境の町。歴史問題(高句麗史)を巡って大韓民国が領有権を主張している。
東南アジア
- (南シナ海の領有権問題)中国は、南シナ海に、他国の海岸線ぎりぎりまで含む「九段線」(または「U字線」「牛舌線」ともいう)を引いて、南シナ海の大部分とその中の島は中国のものだと主張している。
- スプラトリー諸島(中国名:南沙諸島):中華人民共和国、中華民国(台湾)、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を主張している。
- パラセル諸島(中国名:西沙諸島):中華人民共和国が実効支配中。中華民国、ベトナムが領有を主張。
- ボルネオ島北部のサバ州:マレーシアの一つの州であるが、フィリピンがスールー王国を根拠に領有を主張。
南アジア
- ブータンと中華人民共和国との領土問題:主張する国境線に食い違いが大きく、2010年時点において交渉中[14]。2011年時点で、ブータンと中華人民共和国とは国交が樹立していない[15]。ブータンの面積は、従来は約46500km2だったが、2006年に発表した新国境線で北部の多くが中華人民共和国領とされたため、約38400km2に減少した[16]。
- 中国・インド国境紛争:下記をはじめとした諸領土を巡って、中華人民共和国とインドが紛争を起こしている。
- アクサイチン:現在、中華人民共和国が実効支配中。インドが領有権を主張している。
- アルナーチャル・プラデーシュ州:現在、インドが実効支配中。中国が領有権を主張している。
- カシミール:インドとパキスタン、中華人民共和国が領有権を主張。特にインドとパキスタンは激しく対立し、武力衝突に発展したこともある(印パ戦争)。
中央・西アジア
- ヴォズロジデニヤ島(アラル海):カザフスタンとウズベキスタン
- ゴラン高原:シリアが領有してきたが、第三次中東戦争以降はイスラエルが占領、併合した。しかし、イスラエルの併合は国際社会から一切認められていない。この地は第四次中東戦争の引き金にもなっている。
- パレスチナ問題:国連のPKO介入を経てパレスチナ自治政府が暫定共和国として樹立しているが、いまだに解決されていない。
- チャゴス諸島(ディエゴガルシア島ほか):イギリスの属領(海外領土)として実効支配。米国の軍事拠点の置かれていることで知られる[17]。かつて同じ植民地として統治されていたモーリシャスが諸島全域の領有権を主張。
東ヨーロッパ
- クリミア半島:元はソ連のロシア・ソビエト連邦社会主義共和国に属する州だったが、1954年にソ連の最高指導者でウクライナ出身だったニキータ・フルシチョフによりウクライナ・ソビエト社会主義共和国に移管された。移管当時はソ連国内での管轄の変更に過ぎなかったため大きな問題にはならなかったが、1991年のウクライナ独立の際にもロシアに戻されなかったことから多数派のロシア人が反発、1992年にはウクライナからの独立を宣言するもかなわず、ウクライナ国内の「クリミア自治共和国」として残留することとなった。しかし、2014年ウクライナ騒乱が起こると、ロシア軍がクリミアに展開し、ロシアの支援のもと独立を宣言した。その後、ロシア編入を問う2014年クリミア住民投票が行われ、圧倒的多数でロシア編入に賛成する結果が出たことから、ロシアと編入条約を結び、ロシアに編入された。2014年現在、ウクライナはクリミアのロシア編入を認めていない。2014年クリミア危機も参照。
- トゥーズラ島:ケルチ海峡に浮かぶ同島を巡り、ウクライナとロシアとの間にトゥーズラ岬の紛争と呼ばれる領土・領海問題が発生した。2005年にロシアが同島と海域がウクライナに所属することを認めて解決したが、先述のクリミア編入に伴い事実上再燃している。
- コソボ:コソボが独立を宣言した後も、ミトロヴィツァなどセルビア人が多数派を占める一部の地域はセルビアの統治下にある。セルビアはコソボの独立を認めておらず、コソボは自国の一部であるとする立場である。
- シャレングラード島、ヴコヴァル島(ともにドナウ川の中洲):セルビアが実効支配しており、クロアチアが領有を主張している。
- トルコとアルメニアとの国境:トルコはアルメニア人虐殺によってアルメニア人の精神的象徴であるアララト山を含む大アルメニアの西部からアルメニア人を強制追放し、以後、同地を実効支配している。この為、アルメニアはトルコとソ連によって設定された現在の国境線を認めていない。
- ナゴルノ・カラバフ:アゼルバイジャン領だがアルメニアが領有を主張(ちなみにアルメニア名は “アルトサフ”)。
- 南ベッサラビア、北ブコビナ:現在、ウクライナが実効支配しているが、ルーマニアとモルドバがそれぞれ領有権を主張。
- ピラン湾:クロアチアとスロベニアの間で領有権の主張に食い違いがある。
- ブルチコ行政区(ボスニア・ヘルツェゴビナ):デイトン合意によってボスニア・ヘルツェゴビナ連邦とスルプスカ共和国の双方に属するとされたが、実質的にどちらの統治権も排除されている。
南ヨーロッパ
南アメリカ
- フォークランド諸島(マルビナス諸島):現在イギリスが領有。アルゼンチンが返還要求している(フォークランド戦争を参照のこと)。
- ガイアナ西部にあるエセキボ地域:ガイアナとベネズエラ
- ガイアナとスリナムとの国境
- スリナムと仏領ギアナとの国境
- アマゾナス:エクアドルとペルー
- ナヴァッサ島:アメリカ合衆国の領土の島だがハイチが領有を主張。
- アベス島:カリブ海に浮かぶ、ベネズエラの管理下にある孤島、ドミニカ国が領有を主張。
- セラナ・バンク、セラニャ・バンク、バホヌエボ、ロンカドル・バンク、キトスエニョ:いずれの島々は1980年代初期にアメリカの占領下からコロンビアに返還し、現在コロンビアの管理下にあるカリブ海の島々だが、ホンジュラス、ニカラグア、ジャマイカからアメリカも一部の島々の領有を主張している。
アフリカ
- セウタ、メリリャ:アフリカ北西端にあるスペイン領。モロッコが領有権を主張し、返還を要求している。
- バドメ (Badme):エリトリアが1993年にエチオピアから分離独立した際、境界を不明確にしたためエリトリアが領有権を主張。1998年にエチオピア・エリトリア戦争が勃発。いまだに解決を見ない。
- ハライブ・トライアングルおよびビル・タウィール(エジプト・スーダン国境):ハライブ・トライアングルは、エジプトとスーダンの間の紅海に面した地域。エジプトとスーダンが領有を主張。ビル・タウィールはハライブ・トライアングルの真西にある一帯だが、ここの領有権を主張するとハライブ・トライアングルの領土問題で不利になることから、エジプト・スーダンのいずれも領有権を主張していない、世界的にも珍しい無主地である。
- アビエイ (スーダン・南スーダン国境):スーダンと南スーダンの国境付近にある油田地帯。
- イレミ・トライアングル(三角地帯):南スーダン南東部、エチオピアとケニアにまたがる地域。過去、スーダン政府の弾圧から逃れて来たキリスト教徒の難民が住むこの土地は現在ケニアが管理しているが南スーダンとエチオピアも領有権を主張している。
- パセリ島 (Isla Perejil):スペインとモロッコが領有を主張。
- マヨット島:フランスとコモロが領有を主張。コモロ諸島全域がフランスから独立した際、住民投票でフランス残留派の多かったとされるマヨット島だけが、フランスの施政下に残った。
- 西サハラ(リオ・デ・オロ):モロッコとサハラ・アラブ民主共和国亡命政府(ポリサリオ戦線)が領有権を主張。(西サハラ問題)
- サナーグ、スール:ソマリアの自治国プントランドが実効支配しているが、かつての英領ソマリランドの領土内で分離独立活動を続けるソマリランド陣営も領有を主張している。但し、国際法上の領土問題ではない。
- ミギンゴ (Migingo Island):ヴィクトリア湖にある島。ケニアとウガンダが領有を主張。
北アメリカ
オセアニア
- ウェーク島:現在アメリカ合衆国が軍事拠点として領有。マーシャル諸島共和国が領有を主張している。
- スウェインズ島(オロセンガ島):アメリカ領サモアに属する島だが、地理的にも、ニュージーランド領トケラウ諸島にあり、トケラウの自治政府が同島の返還を主張している。
既に解決された領土問題
ヨーロッパ
- オーデル・ナイセ線(ドイツ・ポーランド):1950年のズゴジェレツ条約により暫定的に承認。1990年に国境線に関する最終確認条約により解決。
- ドイツ:1989年のベルリンの壁崩壊により後日、東ドイツが西ドイツに吸収される形で東西統一。
- ロッコール島:イギリス領であり、アイルランドやアイスランドが領有権を主張していたがイギリスが島としての主張を取り下げ、岩であると認めることによって紛争を解決。
- オーランド諸島:元はスウェーデン領であったが、紆余曲折を経て1922年にフィンランドへの帰属が確定。島民らはスウェーデン帰属を強く訴えていたが、大幅な自治権が認められたため現状維持の意見が多数となる。スウェーデンへの復帰も認められている。
南アメリカ
- コーン諸島:カリブ海にあるニカラグアの島だが、1914年のブライアン・チャモロ条約により、アメリカが99年間の租借権を獲得した。しかし、何時しかアメリカは島を放置し、1971年にブライアン・チャモロ条約を破棄し、ニカラグアに返還した。
- スワン諸島:1856年にグアノ島法により、アメリカが領有した。1920年にホンジュラスが領有を主張し、1971年にアメリカはホンジュラスにこの島を譲渡した。
- サンアンドレス島とプロビデンシア島:コロンビアに属する島だがニカラグアが領有を主張していた。1991年にコロンビアの憲法改正により、ニカラグアは両島のコロンビアの統治権を認めた。
アジア
- 北海道(日本・ソ連) :1798年から1807年にかけて江戸幕府が天領蝦夷地とし併合(併合範囲には樺太、千島列島をも含む)。1869年には明治政府が北海道として編入した。第二次世界大戦末期、ヤルタ会談での極東密約(ヤルタ協定)により、ルーズベルトはスターリンに千島列島と樺太の領有を認める見返りにソ連の参戦を促す。広島、長崎への原爆の投下成功を背景として、ポツダム宣言受諾の際に後任のトルーマンは翻言して千島列島のソ連による領有を認めない事とし、それに対抗してスターリンは千島列島と北海道の北半分の割譲を要求し南樺太と千島列島から侵攻を開始。停戦は兵力不足と、スタフカからの指令による。背景には、ソ連自身が(日ソ中立条約を一方的に破棄し)ポツダム宣言へ参加し攻撃を開始した事があり、侵攻は日本の降伏文書調印まで継続された。なお、日ソ共同宣言により表面上は戦争状態の終結が謳われた一方で南樺太や北方領土含む千島列島の領有を既成事実化する動きは、ソ連解体後のロシア連邦に至るまで一貫して見られている。
- ペドラ・ブランカ島(マレーシア名、バトゥ・プティ島)(Pedra Branca):シンガポールとマレーシアが領有を主張していたが、2008年、国際司法裁判所がシンガポールに帰属すると判断した。
- 休戦オマーン土侯国(イギリス保護国)とマスカット・オマーンの境界線問題:休戦オマーン側がアラブ首長国連邦 (UAE) として独立することとなり、一応は決着をみた。但し、互いが内地で隣り合うサウジとの境界線は依然として未確定の状況。
- イエメン:冷戦崩壊の影響を受け、南北イエメンが統一。
- ラフハジュイマ:イラクとサウジアラビアとの間にかつてあった中立地帯。
- アウジャ:イスラエルとエジプトとの間にかつてあった中立地帯。
- ベトナム:1975年、北ベトナムに支援された南ベトナム解放民族戦線が南ベトナムを武力制圧し、翌年南が北に吸収される形で南北統一。
- カッチ大湿地:インド、グジャラート地方の湿地。かつて、インドとパキスタンがそれぞれ領有を主張していたが、第二次印パ戦争後の1968年にインドが90%、パキスタンが10%を領有することで解決[18]。
- 中ソ国境紛争:中華人民共和国とソビエト連邦の間を流れるウスリー川の中州である珍宝島(ロシア名は「ダマンスキー島」)及び黒瞎子島(ロシア名は「大ウスリー島」)などの領有をめぐる紛争。2008年に最終解決した。
アフリカ
国際司法により解決した領土紛争
特設仲裁裁判所
- 「クリッパートン島事件」(フランス対メキシコ1931年判決)
常設仲裁裁判所
- 「パルマス島事件」(アメリカ対オランダ1928年判決)
常設国際司法裁判所
- 「東部グリーンランド事件」(デンマーク対ノルウェー1933年)
国際司法裁判所
- 「マンキエ・エクレオ諸島事件」(イギリス対フランス、判決1953年)
- 「国境地区の主権に関する事件」(ベルギー対オランダ1959年)
- 「プレア・ビヘア寺院事件」(カンボジア対タイ1962年)
- 「国境紛争事件」(ブルキナファソ対マリ1986年)
- 「陸地、島および海の境界紛争に関する事件」(エルサルバドル対ホンジュラス1992年)
- 「領土紛争事件」(リビア対チャド1994年)
- 「カシキリ/セドゥドゥ島事件」(ボツワナ対ナミビア1999年)
- 「カタールとバーレーンとの間の海洋境界画定及び領土問題に関する事件」(2001年)
- 「カメルーン・ナイジェリア間の領土・海洋境界画定事件」(2002年)
- 「リギタン島およびシパダン島の主権に関する事件」(インドネシア対マレーシア2002年)
- 「国境紛争事件」(ベニン対ニジェール2005年)
- 「ニカラグアとホンジュラスの間のカリブ海における領土及び海洋紛争」(2007年)
- 「ペドラブランカ/プラウバトゥプテ、中央岩及び南暗礁に対する主権」(マレーシア対シンガポール2008年)
- 「黒海海洋境界画定事件」(ルーマニア対ウクライナ2009年)
凍結している領土問題
- 南極大陸:南極における領有権主張の一覧を参照。 フランス、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、イギリス、ノルウェー、ニュージーランド、ブラジル、ドイツ等が南極大陸における領有権主張(特に英仏爾3国は海外領土の属領として領有主張)を行っていたが、南極条約によって領有権は凍結された。ただし領有権自体を否定したわけではないので、将来的に領土問題が再燃する可能性はある。また、オーストラリアやアルゼンチンのように今も南極における領土主張に意欲を見せている国もある。
「県境」の領土問題
日本国内において、県境が定まらずもめることも、「領土問題」ということがある。蔵王連峰(蔵王県境裁判)や中海など[19]。
富士山の山頂は静岡県と山梨県が所有を争った末、「県境を定めない」と、敢えて未確定としている[20][21]。
脚注
- ↑ 【プーチン支配】「露のクリミア」誇示/一体化へ陸空路を整備「領土」否定発言で服役『読売新聞』朝刊2018年2月25日(国際面)。
- ↑ 塚本 孝 『国際法から見た竹島問題』(PDF)、2008-10-26、pp. 3-9.。アクセス日 2008-11-09。
- ↑ title of peaceful and continuous display of State authority
- ↑ 塚本 孝 『国際法から見た竹島問題』(PDF)、2008-10-26、pp. 3-9.。アクセス日 2008-11-09。
- ↑ 日本に対しオーストラリアが提訴した南極海における捕鯨事件など
- ↑ 高野雄一編『判例研究 国際司法裁判所』東京大学出版会 1965、横田喜三郎『国際判例研究 第一』有斐閣 1933
- ↑ 塚本 孝 『国際法から見た竹島問題』(PDF)、2008-10-26、pp. 3-9.。アクセス日 2008-11-09。
- ↑ 外務省:パンフレット「われらの北方領土2012年版」
- ↑ ロシア側の主張:日本語パンフレット「クリル列島(千島列島)はロシアの領土である」 国後島ユジノクリリスク郷土博物館発行。
- ↑ 日本の立場は、放棄対象は「得撫島以北の北千島」に限るとしている。
- ↑ 1952年(昭和27年)3月20日、アメリカ合衆国上院
- ↑ 外務省:「北方領土に関するQ&A(関連質問)」
- ↑ 『週刊ポスト』2012年10月26日号
- ↑ Ugyen Penjore (2010年1月14日). “Joint field survey next on agenda” (英語). Kuensel Newspaper. . 2011閲覧.
- ↑ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bhutan/kankei.html 最近のブータン情勢と日本・ブータン関係 日本外務省
- ↑ 河添恵子「中国に侵蝕されるブータン王国」、『月刊WiLL』、ワック・マガジンズ、2010年11月。
- ↑ 詳細はイギリス領インド洋地域を参照。
- ↑ Indo-Pakistan international border₋[1]
- ↑ 「日本全国『県境』の謎」ISBN 978-4-408-10712-7
- ↑ なぜ富士山頂に境界がないのか? - 富士山NET(山梨日日新聞社)
- ↑ 富士山頂の住所は静岡県? 山梨県知事が国土地理院に「誤解与える」と是正求める - J-CASTニュース(2014/6/4)
文献情報
- 「国際法から見た竹島問題」塚本孝(国立国会図書館参事、平成20年度「竹島問題を学ぶ」講座第5回講義録2008.10.26) (PDF)