野沢尚
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野沢 尚(のざわ ひさし、1960年5月7日 - 2004年6月28日)は、日本の脚本家・推理小説家である。愛知県名古屋市出身。愛知県立昭和高等学校、日本大学芸術学部映画学科卒業。テレビドラマの脚本で高い評価を受ける一方、ミステリー小説にも幅を広げた。北野武の映画監督デビュー作の脚本を手掛けたことでも知られている。1998年、『眠れる森』『結婚前夜』で第17回向田邦子賞受賞。
Contents
人物像
- シナリオライターになろうとしたきっかけは、中学時代から映画監督志望で、8ミリカメラで自主映画を作っていたが「映画はまずシナリオありき」と思い立ち、独学で始めたことであるという。
- シナリオの書き方は、月刊シナリオで書き方を覚え、倉本聰のシナリオ集を読み、そっくり文体を真似して勉強することから始めた。
- 実際にプロになろうとしたきっかけは、第9回の城戸賞に佳作入選したことと、鶴橋康夫と奥山和由との出会い。
- 遭遇したトラブルとして、『その男、凶暴につき』と『ラッフルズホテル』製作時に脚本を現場で大きく変えられたことがある。北野武の『その男、凶暴につき』は完成された映画が傑作だったので許しているが(ただし、2004年に『烈火の月』として自身で改稿前の脚本を元に小説化した)、村上龍に直された『ラッフルズホテル』は日本映画史上の汚点のような大駄作にされたと述べていた。
- 父親は、京都大学名誉教授で京都大学霊長類研究所の所長も務めた生物学者・野澤謙。作品中には父親をモデルとした学者が登場する。叔父にフランス文学者で元都立大教授の野沢協、祖父の兄弟に京都学派の哲学者の田辺元がいる。
- TBSのプロデューサー貴島誠一郎とは、『この愛に生きて』(1994年、フジテレビ系)、『恋人よ』(1995年、フジテレビ系)が『長男の嫁』シリーズと競合するなどライバル関係であったため、「彼からは絶対声がかからない」と思っていたという。だが、逆に貴島は以前から野沢に注目していたといい、後に彼の依頼で脚本を執筆した『青い鳥』(1997年)が放送された。
- 自殺の2か月前に放送された『砦なき者』には、自殺をほのめかすかのようにテレビ業界への絶望が描かれている。
- 自殺した際には知人に「夢はいっぱいあるけど、失礼します」との遺書が残された。
略歴
- 1983年 『V・マドンナ大戦争』で第9回城戸賞準入賞。
- 1997年 小説『破線のマリス』で第43回江戸川乱歩賞を受賞。
- 1997年 小説『恋愛時代』で第4回島清恋愛文学賞を受賞。
- 1999年 脚本『眠れる森』『結婚前夜』で第17回向田邦子賞を最年少(当時)で受賞。
- 2001年 小説『深紅』で第22回吉川英治文学新人賞を受賞。
- 2002年 『反乱のボヤージュ』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
- 2004年 事務所マンションで首吊り自殺。44歳没[1]。
自身のベスト作品
99年に『キネマ旬報』が行ったアンケートによると、邦画では『砂の器』や降旗康男『駅 STATION』など、洋画ではドン・シーゲル『ダーティハリー』やロナルド・ニーム『ポセイドン・アドベンチャー』、ウィリアム・フリードキン『エクソシスト』、シドニー・ルメット『狼たちの午後』、アーサー・ペン『俺たちに明日はない』、ジョゼ・ジョヴァンニ『暗黒街のふたり』、サム・ペキンパー『わらの犬』『ゲッタウェイ』等を選んでいる[2]。
作品
脚本
連続ドラマ
- 親愛なる者へ(フジテレビ、1992年)
- 素晴らしきかな人生(フジテレビ、1993年)
- この愛に生きて(フジテレビ、1994年)
- 恋人よ(フジテレビ、1995年)
- おいしい関係(フジテレビ、1996年) - 原作:槇村さとる ※プロデューサーと意見が合わず、降板。
- 青い鳥(TBS、1997年)
- 結婚前夜(NHK、1998年)
- 眠れる森(フジテレビ、1998年)
- 氷の世界(フジテレビ、1999年)
- リミット もしも、わが子が…(読売テレビ、2000年)
- 喪服のランデヴー(NHK、2000年) - 原作:コーネル・ウールリッチ『喪服のランデヴー』
- 水曜日の情事(フジテレビ、2001年)
- 眠れぬ夜を抱いて(テレビ朝日、2002年)
- 緋色の記憶〜美しき愛の秘密〜(NHK、2003年) - 原作:トマス・H・クック
- 川、いつか海へ 6つの愛の物語(NHK、2003年) - 倉本聰、三谷幸喜との共作によるリレードラマ。全6話で野沢は1・5話を担当。
- 坂の上の雲(NHK、2009年 - 2011年) - 原作:司馬遼太郎。野沢の自殺により未完となったが、池端俊策と岡崎栄の監修のもとでNHKの製作スタッフが完成させた。
単発ドラマ
- 殺して、あなた…(読売テレビ、1985年)
- 手枕さげて(読売テレビ、1987年)
- 最後の恋(読売テレビ、1988年)
- 愛(めぐみ)の世界(読売テレビ、1990年)
- 恋愛本線、駆ける(TBS、1990年)
- 灰の降るイブ(フジテレビ、1990年)
- 夢みた旅(NHK、1991年)
- 朝日のあたる家(読売テレビ、1991年)
- 小指の思い出(読売テレビ、1991年)
- 東京ららばい(読売テレビ、1991年)
- あと1時間の恋(日本テレビ、1991年)
- 女優たち(フジテレビ、1991年)
- 10年目のクリスマス・イブ(テレビ朝日、1991年)
- 性的黙示録(読売テレビ、1992年)
- 雀色時(読売テレビ、1992年)
- 誰よりも君のこと(テレビ朝日、1994年)
- 恋人みたいに泣かないで(テレビ朝日、1995年)
- その男の恐怖(フジテレビ、1998年)
- ネット・バイオレンス〜名も知らぬ人々からの暴力〜(NHK、2000年) - 出演:夏川結衣、北村一輝
- 反乱のボヤージュ(テレビ朝日、2001年)
- 砦なき者(テレビ朝日、2004年)
ほか多数
ドラマ原案
映画
- V.マドンナ大戦争(松竹富士/ジョイパックフィルム/キャニオンレコード/三船プロダクション、1985年)
- マリリンに逢いたい(松竹富士、1988年)
- STAY GOLD(バンダイ、1988年)
- その男、凶暴につき(松竹富士、1989年)
- ラッフルズホテル(松竹富士、1989年)
- さらば愛しのやくざ(東映、1990年)
- 殺人がいっぱい(アルゴ、1991年)
- ジェームス山の李蘭(東映、1992年)
- 赤と黒の熱情(東映、1992年) - 監督:工藤栄一
- 課長島耕作(東宝、1992年) - 原作:弘兼憲史、監督:根岸吉太郎
- ラストソング(フジテレビ/東宝、1994年)
- 集団左遷(東映、1994年) - 原作:江波戸哲夫、監督:梶間俊一
- 私たちが好きだったこと(東映、1997年) - 原作:宮本輝、監督:松岡錠司
- 不夜城 SLEEPLESS TOWN(「不夜城」製作委員会、1998年) - 原作:馳星周、監督:李志毅
- 破線のマリス(「破線のマリス」製作委員会、2000年)
- 名探偵コナン ベイカー街の亡霊(東宝、2002年) - 原作:青山剛昌、監督:こだま兼嗣
- 深紅(2005年)
舞台
著書
- V.マドンナ大戦争(集英社文庫コバルトシリーズ 1985年)
- ステイゴールド(角川文庫、1988年) - 2006年に幻冬舎文庫
- マリリンに逢いたい(小学館、1988年)
- 親愛なる者へ(フジテレビ出版、1992年)- 2012年に韓国でドラマ化
- 素晴らしきかな人生(フジテレビ出版、1993年)
- ラストソング(扶桑社文庫、1994年) - 2008年に講談社文庫
- 恋人よ(扶桑社、1995年)のち文庫、幻冬舎文庫
- 映画館に、日本映画があった頃(キネマ旬報社 1995年)
- 恋愛時代(幻冬舎、1996年) - 2006年に韓国でドラマ化、2015年に連続ドラマ化
- 破線のマリス(講談社、1997年)のち文庫
- 青い鳥(幻冬舎、1997年)のち文庫
- リミット(講談社、1998年)のち文庫
- 結婚前夜(読売新聞社、1998年)
- 呼人(講談社、1999年)のち文庫
- 眠れる森(幻冬舎、1999年)のち文庫
- 氷の世界(幻冬舎、2000年)のち文庫
- 深紅(講談社、2000年)のち文庫
- 野沢尚のミステリードラマは眠らない あなたにこの物語は書けない!(日本放送出版協会 2000年)
- 反乱のボヤージュ(集英社、2001年)のち文庫
- 水曜日の情事(新潮社、2001年)
- 眠れぬ夜を抱いて(幻冬舎、2001年)のち文庫
- 龍時シリーズ(文藝春秋)のち文庫
- 龍時01-02(2002年)
- 龍時02-03(2003年)
- 龍時03-04(2004年)
- 砦なき者(講談社、2002年)のち文庫
- 魔笛(講談社、2002年)のち文庫
- 殺し屋シュウ(幻冬舎、2003年)のち文庫
- ふたたびの恋 文藝春秋 2003 のち文庫
- 烈火の月(小学館、2004年)のち文庫
- ひたひたと(講談社、2004年)のち文庫
漫画原作
エッセイ
- 映画館に、日本映画があった頃(キネマ旬報社、1995年)
脚注
外部リンク
- 野沢尚公式サイト - 野沢オフィスによるサイト
典拠レコード: