野村萬斎
二世野村 萬斎(のむら まんさい、本名・野村 武司〈のむら たけし〉、1966年(昭和41年)4月5日 - )は、狂言方和泉流の能楽師、俳優。能楽狂言方和泉流野村万蔵家の名跡である。二世野村万作と詩人阪本若葉子の長男として生まれる。野村裕基は萬斎の長男。
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概要
東京都生まれ。4人きょうだいの3番目で姉・姉・妹という女性に囲まれて育った。1979年に筑波大学附属小学校を卒業後、筑波大学附属中学校・高等学校を経て、1989年に東京藝術大学音楽学部邦楽科能楽専攻を卒業した。平成6年(1994年)萬斎を襲名。
伯父・初世野村萬(本名:太良)と父・二世野村万作(本名:二朗)の兄弟は、六世万蔵の息子だが、六世の死後名跡を分配することになった。長男・萬(太良)が七世野村万蔵を襲名し、次男・万作(二朗)は五世万造(六世万蔵の父)の隠居名・萬斎を相続することになった。しかし、万作は「万作」という名に愛着を持っていたために「萬斎」を自分では名乗らず、この名前を名乗ることを希望した長男・武司に譲ったものである。
父の兄弟には萬の他に、四男・野村四郎(観世流シテ方)、五男・野村万之介(狂言方)がいる。いとこに、九世野村万蔵および万蔵家の分家である万禄家を50年ぶりに復興した福岡在の野村万禄(本名:吉積史高)がいる。
母方の曾祖父は福井県知事・鹿児島県知事を務めた阪本釤之助、祖父は詩人・ドイツ文学者の阪本越郎。越郎の兄に阪本瑞男、異母弟に高見順、従兄に永井荷風がいる。
幼少より厳しい稽古が必要とされる伝統芸能の世界で育つ。狂言以外でも一般の俳優としてドラマ、映画、舞台などで活動を行っており、端整な容姿と気品ある物腰、独特の発声等で存在感を示す。NHKで1994年の大河ドラマ『花の乱』や、1997年の朝の連続テレビ小説『あぐり』、2000年のスペシャルドラマ『蒼天の夢』などに出演し、知名度を上げた。その後、2001年に映画『陰陽師』で主演し、また2008年に木曜時代劇『鞍馬天狗』で主演の鞍馬天狗(倉田典膳)を演じた。
NHK Eテレの子供向け番組『にほんごであそぼ』に2003年の放送開始時よりレギュラー出演している。
東京2020 開会式・閉会式 4式典総合プランニングチームの一員でもある。
また、著作や舞台イベントなどで狂言の普及に努めるかたわら、日本伝統芸能と現代劇との融合を目指して『藪の中』や『RASHOMON』、『敦 - 山月記・名人伝 - 』などを演出し、評価を得た。重要無形文化財「能楽」保持者に認定(総合認定)。
略歴
- 1970年:『靱猿』で初舞台。
- 1979年:筑波大附属小を卒業。
- 1981年:『千歳』を披く。
- 1982年:筑波大附属中を卒業。
- 1984年:『三番叟』を披く。
- 1985年:黒澤明監督作品『乱』で、鶴丸役(「野村武司」として出演)。
- 1985年:筑波大附属高を卒業。
- 1986年:『奈須与市語』を披く。
- 1987年:『ござる乃座』主宰(以後年2回)。
- 1988年:『釣狐』を披く。
- 1990年:『ハムレット』主演。
- 1994年:曾祖父・五世万造の隠居名、萬斎を襲名。NHK大河ドラマ『花の乱』で、細川勝元役。文化庁芸術家在外研修制度で渡英。
- 1996年:『花子』を披く。
- 1997年:NHK朝の連続テレビ小説 『あぐり』で、望月エイスケ役(吉行エイスケがモデル)。
- 2000年:司馬遼太郎原作『世に棲む日日』のNHKスペシャルドラマ『蒼天の夢』で、高杉晋作役。
- 2001年:『まちがいの狂言』演出・主演(シェイクスピア『間違いの喜劇』の翻案)。滝田洋二郎監督作品『陰陽師』で、安倍晴明役(映画初主演)。
- 2002年:世田谷パブリックシアター芸術監督に就任。
- 2003年:NHK子供番組 『にほんごであそぼ』出演開始。長男・野村裕基、『靱猿』で初舞台。ジョナサン・ケント演出『Hamlet』に主演し、「男優だけのハムレット」として日本公演のほかロンドン公演を行った。
- 2004年:ギリシャ・アテネの古代劇場で上演された蜷川幸雄演出のギリシャ悲劇『オイディプス王』に主演。9月2日、重要無形文化財「能楽」保持者に認定(総合認定役割:狂言方(和泉流))[1]。
- 2007年:世田谷パブリックシアター芸術監督(2期目)
- 2008年:東京大学教養学部非常勤講師。
- 2010年:『現代能楽集V〜「春独丸」「俊寛さん」「愛の鼓動」』で、企画・監修。
- 2011年:文部科学省日本ユネスコ国内委員会委員に就任。
- 2016年:映画『シン・ゴジラ』にてモーションキャプチャによるゴジラ役を担当。公開当日まで出演はシークレットとなっていた。
受賞歴
- エランドール特別賞
- 橋田賞新人賞
- 日刊スポーツ・ドラマグランプリ助演男優賞(『あぐり』)
- ベストドレッサー賞(文化部門)
- 文化庁芸術祭演劇部門新人賞(『藪の中』の演出)
- 文化庁芸術祭演劇部門優秀賞(『花子』の成果)
- 読売演劇大賞 優秀男優賞(『子午線の祀り』・『オイディプス王』)
- ブルーリボン賞 主演男優賞(映画『陰陽師』の主演)
- 第25回日本アカデミー賞 新人俳優賞・優秀主演男優賞(映画『陰陽師』の主演)
- 芸術選奨文部科学大臣新人賞(古典芸術部門 狂言『髭櫓』朗読『弟子』)
- 紀伊國屋演劇賞(『敦 - 山月記・名人伝 - 』の演出・構成)
- 朝日舞台芸術賞(『敦 - 山月記・名人伝 - 』の演出・構成・出演)
- モンブラン国際文化賞
- 第36回日本アカデミー賞 優秀主演男優賞(映画『のぼうの城』の主演)
- 2013年度ベスト・ファーザー イエローリボン賞
- 第20回千田是也賞(『子午線の祀り』の演出)
出演作
テレビドラマ
- 大河ドラマ『花の乱』(1994年、NHK) - 細川勝元 役
- あぐり(1997年4月7日 - 10月4日、NHK連続テレビ小説) - 望月エイスケ 役(吉行エイスケがモデル)
- 蒼天の夢(2000年1月3日、NHK) - 高杉晋作 役
- 鞍馬天狗(2008年1月17日 - 3月6日、NHK) - 主演・鞍馬天狗 役
- あの戦争は何だったのか 日米開戦と東条英機(2008年12月24日、TBS) - 昭和天皇 役
- 負けて、勝つ 〜戦後を創った男・吉田茂〜(2012年9月8日 - 10月6日、NHK土曜ドラマスペシャル) - 近衛文麿 役
- オリエント急行殺人事件(2015年1月11日・12日、フジテレビ) - 勝呂武尊 役(日本版エルキュール・ポアロ役)
- 黒井戸殺し(2018年4月14日、フジテレビ) - 主演・勝呂武尊 役
映画
主演は太字
- 乱(1985年、監督:黒澤明) - 鶴丸 役(「野村武司」名義)
- 陰陽師(2001年、監督:滝田洋二郎) - 安倍晴明 役
- 陰陽師II (2003年、監督:滝田洋二郎)- 安倍晴明 役
- のぼうの城(2012年[2]) - 成田長親 (のぼう様)役
- 風立ちぬ(2013年、製作:ジブリ) - カプローニ 役(声の出演)[3]
- GAMBA ガンバと仲間たち(2015年、製作:白組) - ノロイ 役(声の出演)[4]
- スキャナー 記憶のカケラをよむ男(2016年)- 仙石和彦 役[5]
- シン・ゴジラ(2016年) - ゴジラ 役(モーションアクター)[6]
- 花戦さ(2017年) - 初代池坊専好 役[7]
- 七つの会議(2019年) - 八角民夫 役[8]
舞台(伝統狂言以外)
- 子午線の祀り(1999年2月3日 - 20日、新国立劇場) - 新中納言知盛 役
- まちがいの狂言(2001年、世田谷パブリックシアター/イギリス・グローブ座公演/) - 演出・主演(シェイクスピア『間違いの喜劇』の翻案)
- オイディプス王(2002年・04年、 - 主演・オイディプス 役
- ジョナサン・ケント演出「ハムレット〜Hamlet」(2003年6月7日 - 7月26日、世田谷パブリックシアター/ロンドン公演)主演・ハムレット役
- 国盗人―W.シェイクスピア「リチャード三世」より(2009年12月05 - 12日、世田谷パブリックシアター) - 演出・主演
- 「敦 - 山月記・名人伝 -」(2005年) - 演出・主演
- わが魂は輝く水なり - 主演・斎藤実盛 役
- 蜷川幸雄演出「ファウストの悲劇」(2010年7月4日 - 25日、BUNKAMURAシアターコクーン) - 主演・ファウスト博士 役
- 三谷幸喜作演出「ベッジ・パードン bedge pardon」(2011年、世田谷パブリックシアター) - 夏目漱石 役
教育番組
- 課外授業 ようこそ先輩「狂言の笑いは「型」でござる!〜狂言師・野村萬斎〜」(1999年9月12日、NHK)
- にほんごであそぼ(2003年 - 、NHK教育)
- 100分de名著 名著39「ハムレット」第4回 「悩みをつきぬけて「悟り」へ」(2014年12月24日、NHK教育)
ドキュメンタリー
- ハイビジョンスペシャル いま裸にしたい男たち「野村萬斎〜35歳 飄々と現代(いま)に舞う」(2003年11月8日、NHK BS- hi)
- にんげんドキュメント「野村萬斎わが子を鍛える〜狂言三代の初舞台」(2003年11月29日、NHK)
- 第21回JNN共同制作番組 「夢は日本のハリウッド」(2011年2月11日、TBS)
- オデッサの階段「#15 野村萬斎のアイデンティティ」(2013年1月31日、フジテレビ)
- プロフェッショナル仕事の流儀「狂言師・野村萬斎」(2014年12月15日、NHK)
バラエティ
- たけしの誰でもピカソ「野村萬斎はスゴイ」(2001年2月16日、テレビ東京)
- スタジオパークからこんにちは(2006年6月29日・2007年5月30日・2008年1月24日・2012年10月22日、NHK) - ゲスト
- SmaSTATION!!(2010年2月13日・2010年6月12日、テレビ朝日) - ゲスト
- A-Studio(2012年11月9日、TBS) - ゲスト
- 笑っていいとも!(2012年10月29日、フジテレビ) - ゲスト(テレフォンショッキング)
- 心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU(2012年11月3日、日本テレビ) - ゲスト(先輩)
- 徹子の部屋(2013年2月7日、テレビ朝日) - ゲスト
- にじいろジーン(2013年2月23日、フジテレビ系列) - ゲスト(ぐっさんを連れて行くならこんなトコ!)
- ウチくる!? 「野村萬斎さんと行く羊もうなるウメェ〜グルメ」(2015年1月11日、フジテレビ)
- ライオンのごきげんよう(2015年1月09日、フジテレビ) - ゲスト
- サワコの朝「野村萬斎▽狂言は笑いの芸術!」(2015年6月6日、TBS)
CM
- 本田技研工業(2011年)「フィット10周年特別仕様車」篇、「ライフ特別仕様車」篇
- 公文(2014年2月1日 - ) - 2017年より長男の野村裕基と共演[9][10]
- ヤマサ醤油「鮮度の一滴」 “マイしょうゆ”篇(2015年9月23日 - )
著作物
書籍
- 野村萬斎『萬斎でござる』(朝日新聞社、1999年)
- 朝日文庫でも刊行。(朝日新聞社、2001年)
- 野村萬斎『狂言サイボーグ』(日本経済新聞社、2001年)
- 小野幸恵『日本の伝統芸能はおもしろい(3) 野村萬斎の狂言』(野村萬斎監修、岩崎書店、2002年)
- 野村萬斎・土屋恵一郎『狂言三人三様 第1回 野村萬斎の巻』(岩波書店、2003年)
- 『野村萬斎 What is 狂言?』(網本尚子監修・解説、檜書店、2003年)
- 野村萬斎『MANSAI◎解体新書』(朝日新聞出版、2008年)
映像資料
- 『万作・萬斎 狂言の世界』(NHKソフトウェア、2004年)
- 「狂言師 野村萬斎 初舞台から襲名まで」(VHS版、1995年)
- 「狂言師 野村萬斎 エイスケそしてニューヨーク」(VHS版、1998年)
脚注
- ↑ 文化庁「国指定文化財等データベース」
- ↑ 当初は2011年9月17日公開の予定だったが、「水攻め」のシーンがあることから東日本大震災による津波被害に配慮し、公開を2012年秋に延期している。
- ↑ “風立ちぬ”. 金曜ロードSHOW!. . 2016閲覧.
- ↑ “21世紀の「ノロイ」は野村萬斎 映画『GAMBAガンバと仲間たち』”. ORICON STYLE (2015年8月14日). . 2015閲覧.
- ↑ “野村萬斎、初の現代劇で宮迫博之とコンビ演じる「僕も漫才師になったよう」”. 映画ナタリー. (2015年7月27日) . 2015閲覧.
- ↑ “シン・ゴジラ役は野村萬斎だった 329人目のキャストが判明”. ORICON STYLE (2016年7月29日). . 2016閲覧.
- ↑ “野村萬斎と市川猿之助映画で初共演!”. デイリースポーツ online (株式会社デイリースポーツ). (2016年4月6日) . 2016閲覧.
- ↑ “萬斎主演で池井戸氏「七つの会議」映画化 香川&及川&愛之助“常連”勢ぞろい”. Sponichi Annex (スポーツニッポン新聞社). (2018年5月10日) . 2018閲覧.
- ↑ “「親も!子も!やっててよかった、公文式!」 CMで初の親子共演!”. 公文(プレスリリース) (2017年1月20日). . 2018閲覧.
- ↑ 最新TVCM公文
関連項目
- TBS「いのちの響」
外部リンク