辻原登
辻原 登(つじはら のぼる、本名は村上 博、1945年12月15日 - )は、日本の小説家。横浜市保土ヶ谷区在住。神奈川近代文学館館長・理事長。
来歴・人物
1945年和歌山県印南町に生まれる。父は村上六三(1916-1971)で、日本社会党の政治家。参議院選挙で落選したことがあり、左派に属して日中友好協会を運営した[1]。大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎卒業後上京、文化学院文科卒業。同人誌「第2次文学共和國」に参加、1967年田辺市に戻り、家事に従事、1970年再上京し、中国関係の貿易会社に就職。電算機会社コスモ・コンピュータ・ビジネスに勤務する傍ら、1985年に中編小説『犬かけて』で作家デビュー。1986年、同作品で第94回(昭和60年下半期)芥川賞候補。
1990年に、中国の奥地を舞台とし、生まれ育った和歌山県の面影もモチーフとした、中編小説『村の名前』で第103回(平成2年上半期)芥川賞を受賞。主人公の名、橘博の橘は、辻原が生まれ育った土地の名家から取ったもの。橘は和歌山県に比較的多い姓である。
1992年会社を総務部長で退職、執筆に専念。1999年長編小説『飛べ麒麟』で第50回読売文学賞受賞。2000年短編連作小説集『遊動亭円木』で第36回谷崎潤一郎賞受賞。2001年東海大学文学部文芸創作学科教授。
2005年、後に合併球団となるトンボ・ユニオンズ(1956年に消滅)に所属する選手を描いた短編小説『枯葉の中の青い炎』で第31回川端康成文学賞受賞。本作品が収録された同題の作品集には、1963年(昭和38年)の夏の甲子園大会に初出場した、和歌山県立南部高等学校選手をモデルとした『野球王』も収められている。2006年長編小説『花はさくら木』で第33回大佛次郎賞受賞。2008年三島由紀夫賞選考委員。2010年長編小説『許されざる者』で第51回毎日芸術賞受賞。同年東海大学を定年退任。2011年長編小説『闇の奥』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2012年 『韃靼の馬』で第15回司馬遼太郎賞受賞。同年春の叙勲にて、紫綬褒章を受章。2013年長編小説『冬の旅』で伊藤整文学賞受賞。
関西大学客員教授(2008年など)も務めた。 2012年より神奈川近代文学館館長・理事長を務める。
2016年現在、三島由紀夫賞、川端康成文学賞、日経小説大賞、司馬遼太郎賞、読売文学賞、群像新人文学賞、金魚屋新人賞選考委員。2010年に織田作之助賞を主催する大阪文学振興会会長に就任。
賞歴
- 1990年 『村の名前』(第103回(1990年上半期)芥川賞)
- 1999年 『飛べ麒麟』(第50回(1998年度)読売文学賞)
- 2000年 『遊動亭円木』(第36回谷崎潤一郎賞)
- 2005年 『枯葉の中の青い炎』(第31回川端康成文学賞)
- 2006年 『花はさくら木』(第33回大佛次郎賞)
- 2010年 『許されざる者』(第51回毎日芸術賞)
- 2011年 『闇の奥』(芸術選奨文部科学大臣賞)
- 2012年 『韃靼の馬』(第15回司馬遼太郎賞)
- 2013年 『冬の旅』(第24回伊藤整文学賞)
- 2013年 『新版 熱い読書 冷たい読書』(第67回毎日出版文化賞書評賞)
- 2016年 日本芸術院賞・恩賜賞
栄典
- 2012年 紫綬褒章
作品一覧
- 『村の名前』(文藝春秋、1990)のち文庫
- 村の名前 (『文學界』1990年6月)
- 犬かけて (『文學界』1985年11月)
- 『百合の心』(講談社、1990)のち文庫「百合の心・黒髪その他の短編」
(百合の心、はらんきょ、野の寂しさ、黒髪)
- 『森林書』(文藝春秋、1994)
- マノンの肉体 (講談社・1994 のち文庫)
- 片瀬江ノ島(『群像』1992年9月)
- マノンの肉体(『群像』1994年4月)
- 戸外の紫(『群像』1989年5月)
- 『家族写真』(文藝春秋、1995)のち河出文庫
- (わが胸のマハトマ、谷間、光線の感じ、緑色の経験、塩山再訪、松籟)
- 『だれのものでもない悲しみ』(中央公論社、1995)のち文庫
- 『創業者は七代目―ジャスコ会長、岡田卓也の生き方』(毎日新聞社、1995)
- 『黒髪』(講談社・1996)
- 黒髪 (『群像』1996年2月)
- 十三月 (『文學界』1987年6月)
- 『退屈している暇はない ―コスモ・コンピュータ・ビジネスという会社の場合』(日本デザインクリエーターズカンパニー・1996)
- 『翔べ麒麟』(読売新聞社・1998 のち文春文庫、角川文庫)
- 『遊動亭円木』(文藝春秋・1999 のち文庫)
- 遊動亭円木(『文學界』1997年8月)
- 大切な雰囲気(『文學界』1998年4月)
- 短夜の雨(『文學界』1998年8月)
- 夜が安莉に駆けこむ(『文學界』1998年9月)
- 探偵(『文學界』1998年10月)
- 金魚(『文學界』1998年11月)
- 強きうなし(『文學界』1998年12月)
- 笑いの郷(『文學界』1999年1月)
- 足にさわった女(『文學界』1999年3月)
- べけんや(『文學界』1999年4月)
- 『熱い読書冷たい読書』(マガジンハウス・2000年 のちちくま文庫)
- 『発熱』(日本経済新聞社・2001年 のち文春文庫)
- 発熱 (『日本経済新聞』2000年4月4日~01年4月24日)
- 『約束よ』(新潮社・2002年)
- (約束よ、青葉の飛翔、かみにさわった男、窓ガラスの文字、河間女、かな女への牡丹、この世でいちばん冴えたやりかた)
- 『ジャスミン』(文藝春秋・2004年 のち文庫)
- 『枯葉の中の青い炎』(新潮社・2005年 のち文庫)
- ちょっと歪んだわたしのブローチ(『新潮』2004年2月)
- 水いらず(『小説新潮』2003年11月)
- 日付のある物語(『群像』1997年1月)
- ザーサイの甕(『新潮』2003年1月)
- 野球王(『新潮』2002年1月)
- 枯葉の中の青い炎(『新潮』2004年8月)
- 『花はさくら木』(朝日新聞社・2006年 のち文庫)
- (『朝日新聞』2005年4月17日~11月27日)
- 『夢からの手紙』(新潮社・2006年 のち文庫で『恋情からくり長屋』に改題)
- 『円朝芝居噺 夫婦幽霊』(講談社・2007年 のち文庫)
- 『許されざる者』(毎日新聞社・2009年 のち集英社文庫)
- (『毎日新聞』2007年7月11日~09年2月28日)
- 『抱擁』(新潮社・2009年)
- 『闇の奥』(文藝春秋・2010年 のち文庫)
- 『東京大学で世界文学を学ぶ』(集英社・2010年 のち文庫)
- 『韃靼の馬』(日本経済新聞社・2011年 のち集英社文庫)
- (『日本経済新聞社』2009年11月1日~2011年1月21日)
- 『熊野でプルーストを読む』ちくま文庫、2011
- 『父、断章』(新潮社・2012年)
- 『冬の旅』(集英社・2013年 のち文庫)
- (『すばる』2011年8月号~2012年8月号)
- 『寂しい丘で狩りをする』(講談社、2014年 のち文庫)
- (『群像』2013年1月号~11月号)
- 『東大で文学を学ぶ ドストエフスキーから谷崎潤一郎まで』(朝日選書・2014年)
- 『Yの木』(文藝春秋、2015年)
- 『籠の鸚鵡』(新潮社・2016年)
- 『辻原登の「カラマーゾフ」新論 ドストエフスキー連続講義』(光文社・2017年)
共著・編
- 『退屈している暇はない コスモ・コンピュータ・ビジネスという会社の場合』編 JDC 1996
- 『新聞小説の魅力』飯塚浩一,堀啓子,尾崎真理子,山城むつみ共著 東海大学出版会 2011
- 『丸谷才一全集』池澤夏樹,三浦雅士,湯川豊と編纂委員 文藝春秋、2013-14
註
- ↑ 『父、断章』新潮社
関連項目
外部リンク