軽飛行機

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ファイル:Cessna 172 2.jpg
代表的な軽飛行機『セスナ 172

軽飛行機(けいひこうき)とは小型の飛行機を指す非公式なカテゴリーのひとつ。公式ないし明確な定義があるわけではないが、概ね自重1,500kg以下、レシプロ単発、プロペラ推進、発動機出力300hp以下、乗員8名程度以下の固定翼飛行機で、遊覧・移動・写真撮影などを目的とし、飛ぶこと以外の特別な装備を持たないものを指す。

同程度の大きさでも業務としての輸送、ビジネス、曲技飛行、農薬散布などの目的を持ち、そのための設計が行われている場合はそれぞれ輸送機(軽輸送機)、ビジネス機曲技機農業機などと呼ばれ、軽飛行機とは言わないのが普通である。また、軽飛行機は軍用に用いられることもあるが、その場合も「連絡機」「観測機」「練習機」等、その目的に沿った呼び方が行われる。

ただし、それらも外形的な印象から「軽飛行機」と呼ばれるものがあることに注意が必要である。

ICAO(国際民間航空機関)の航空機分類に「軽航空機」というものがあるが、これは気球飛行船などの空気より軽い飛行体を指し、軽飛行機とは全く異なるものである。

完成品の販売だけでなくユーザー自らが機体を組み立てることを前提とし、設計図と部品リストに専用部品のみをセットにした組み立てキット(ホームビルト機)も多い。

代表的な軽飛行機

セスナ 170 / 180シリーズ(アメリカ)
単発高翼。180シリーズの方がややエンジン主力が大きい。シリーズの中で特に172がベストセラーとなって1956年の製造開始から1985年の製造中断までに35,000機以上生産され、「セスナ機」が軽飛行機の代名詞ともなる原因を作った(しかも、1996年には製造が再開されている)。高翼式のため遊覧にも好適。170/180は尾輪式であったが172/182から前輪式となった。
パイパー・チェロキーシリーズ(アメリカ)
単発低翼。普及型の軽飛行機。これも各型合わせて30,000機以上が生産された。
ビーチクラフト ボナンザ(アメリカ)
単発低翼。初期型のボナンザ35はV字型の尾翼が特徴だった。現在のA36は通常形式の尾翼に改められている。やや高級なクラスであるが10,000機以上が生産されている。
シーラス SRシリーズ(アメリカ)
単発低翼。2013年に、年間デリバリー機数がセスナ社の軽飛行機(172, 182, 206, TTxの合計)を抜き、次世代のベストセラー機としての地位を確立しつつある。[1]
ソカタTB9 タンピコ(フランス)
単発低翼。系列にTB10 トバゴ、引込脚のTB20 トリニダード等がある。
富士重工 FA-200 エアロスバル(日本)
単発低翼。日本製の代表的な軽飛行機で、スポーツ機としての特性も持つ。約300機が生産された。旧中島飛行機の流れを汲む富士重工の製品ということで当初「」という名前も候補に上がったが結局「エアロスバル」という名前になった。

軍用機としての軽飛行機の例

かつては弾着観測連絡飛行に多用されたが、それらの任務の大半はヘリコプターに移っている。また初等・基本練習機としての用途でも、軍用機の発動機がターボプロップやターボジェットおよびターボファン主流になるなかで、レシプロエンジンよりも強力なターボプロップエンジンを装備した運動性の高いものに変わってきている(ただし、大出力エンジンを搭載した機体の中には、航空機の操縦に不慣れなパイロット課程の初学者にとって過剰性能なものもあるので、その場合は現代でも150~350馬力程度の軽飛行機クラスのレシプロ機もしくは低出力ターボプロップ機が初期段階の訓練に代用もしくは併用されることはある)。そのため、今日では軽飛行機は軍用の主力機として用いられることは多くない。例外として、軽飛行機をベースに武装を施した軽攻撃機がCOIN機(Counter Insurgency) として対ゲリラ戦・対テロ戦などに使用される事がある。

セスナ L-19 / O-1 / T-41(アメリカ)
単発高翼。いずれもセスナ170シリーズの軍用型。L-19は陸軍の連絡機、O-1は空軍の観測機であるがいずれも170を母体とした尾輪タイプである。朝鮮戦争からベトナム戦争にかけて使用された。T-41は1970年代まで初等練習機として使われたタイプで前輪タイプの172が母体である。当時アメリカ空軍では初等訓練を民間委託していたため民間の登録番号も持っていた。

軽飛行機に類似する小型機カテゴリー

軽輸送機
山岳地帯や道路整備が十分でない地域などの輸送を任務とする機体。貨物室を持ち、多くはSTOL性能にも考慮が払われている。セスナ・208シリーズ(ターボプロップエンジン搭載の単発高翼機で、未舗装路への離着陸も可能。バリエーションにはフロート式の水上機も有る)、ピラタス・ポーター(スイス。今日ではターボプロップエンジンを装備してターボポーターと称している)、アントノフAn-2(ロシア。複葉機。農業機や軍用輸送機としても使用される)など。
農業機
大面積の畑に農薬や肥料を散布するための機体。超低空を低速で飛行するため、安定性や操縦者の視界確保のため操縦席が盛り上がっている。また十分な設備のない農場での使用を想定し、STOL性能や不整地での離着陸に耐える降着装置なども重視される。農薬が機内に入らないよう与圧構造とすることが多い。
グラマン・アグキャットエアトラクター AT-400など。
スポーツ機/曲技機
エアレース曲技飛行など、スカイスポーツを目的とした機体で、一般的な軽飛行機より高出力のエンジンを装備し、安定性よりは機動性を重視する。またコストを度外視しカーボンファイバーなどを多用する機体も多い。多くは単座の固定脚である。ピッツ・スペシャルジブコ エッジ540など。
超軽量ジェット機
機長一人での運行が可能で乗客が4-8人のジェット機。ビジネスジェットよりも運行経費も小さく、航空タクシーへの利用が想定されている。エクリプス・アヴィエーションエクリプス 500シーラス・エアクラフトVision Jetなど。
ミニジェット機
主として個人のユーザーを前提とした、スポーツ用のジェット機。超軽量ジェット機よりも小型であり、多くは単座もしくは複座で、軍用のジェット練習機に近似したスタイルを持つ事が多い。安全性や経済性の問題から実用化に至ったケースは少ない。バイパージェット(アメリカ)、ATGジャベリン(アメリカ/イスラエル、中止)、SIPA S-200(フランス)など。

脚注

関連項目