超高層マンション

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ファイル:Q1 Gold Coast March 2006.jpg
超高層マンションのうち世界第5位の高さを有するオーストラリアゴールドコーストQ1

超高層マンション(ちょうこうそうマンション)とは、従来のマンションと比べて際立って高い住居用高層建築物俗称。その外観の形態からタワーマンションとも呼称される。

日本では超高層マンションに対する法的な定義はないが、建築基準法第20条「高さが57mを超える建築物」と同義とすることが多く(ほぼ同程度の高さとなる17階超も含まれる)[1]環境アセスメント条例が適用される「高さ97m以上」とする場合も見られる。

世界

世界最高層の超高層マンション

世界最高層の超高層マンションは、世界の超高層マンションの一覧を参照のこと。

アメリカ合衆国

ニューヨーク市では、早くも20世紀前半・世界大恐慌の前後には高層アパートメントの建築ラッシュを迎えている[1]。同時期、同市セントラル・パークの西側沿いには、「サン・レモ(The San Remo)」(1930年、27階建て)、「エルドラード(The Eldorado)」(1931年、30階建て)、「センチュリー・アパートメント(The Century Apartment)」といった、主にアールデコ様式を用いた何れもツイン・タワー形式のアパートが計5施設完成している。これらのアパートは現在でも歴史的建築物として保存され、ステータスを備えた超高級アパートメントとして高額で売買が行われている。

第二次世界大戦後には、同市マンハッタンミッドタウンアッパーイースト地区には無数の高層アパートメントが林立するようになった。欧米における集合住宅の居住形態ではベランダバルコニーが必要とされないため、それらの建物の外観はオフィスビルホテルなどとの区別が付き難いことが多い。

2001年、マンハッタン東部、国際連合本部ビルの正面に完成し、不動産王ドナルド・トランプが所有する「トランプ・ワールド・タワー(Trump World Tower)」(262m、72階)は、1990年代以降に西半球で建設された高層ビルとしては最高の高さである。住居専用の建築としては現在でも西半球で最高層となっている。同ビル1階には日本料理店が入居するほか、日本人MLB選手が居住していることでも知られる。

ヨーロッパ

欧州では、1960年代にピークを迎えたが、ロンドンでの爆発事故等1970年代抑制傾向が目立ち、公営住宅が連想されるなど、一般的にはあまりよいイメージを持たれていないという[1]

日本

旧来戸建の持ち家に住むことへのこだわりが強く、災害(地震火災)の面からも高層居住への不安が強かった日本では、高層共同住宅の整備は進まなかった。また、高層建築物に対応できる消防車(高機能なポンプ車・高層用はしご車など)が配備出来ていない自治体も多かった(現在は11階以上にスプリンクラー設備設置が義務化)。

しかしながら1974年(昭和49年)、鹿島建設が自社の社宅「椎名町アパート」[2](東京都豊島区、18階建て)をRC構造で建設したことでマンションの高層化が可能であることが立証された。その後、1976年(昭和51年)に住友不動産が埼玉県与野市(現在のさいたま市中央区)に21階建て、高さ66mの分譲マンション 「与野ハウス」を竣工させ、これが日本における高層マンションの第1号とされる。当初は、容積率日照権などの問題から、超高層マンションを建てるには広い土地が必要であり、土地取得のし易い郊外河川沿いなどに立地する例が多かった。

1997年平成9年)、規制緩和の一環として容積率上限を600%まで、日影規制の適用除外とする「高層住居誘導地区」が、第140回国会において議決され、また、廊下・階段等を容積率の計算から除外する建築基準法の改正案が成立した。これにより、超高層マンションの建設は急増、東京都心や湾岸地域などで住居が大量に供給されたことにより、都心回帰と呼ばれる現象も惹起した。その後、大都市近郊の鉄道沿線や地方都市などにも超高層マンションが多く建設されるようになった。

現在日本で最高層の超高層マンションは、大阪市中央区の「The Kitahama」(54階建、高さ209m)である。計画中のもので最高層のものは東京都港区の「虎ノ門・麻布台地区 B-1街区」(63階建、高さ270m)で2022年度に完成予定となっている。

タワーマンションは、デベロッパーによる子育て層を対象にした営業活動もあり、入居者はファミリー層が多い[3]。大型タワーマンションの場合、1棟あたり1,000戸以上あり、一つの町とも言えるものであり、大規模マンション、タワーマンションが丁目を占めている地域もある[3]。周辺に生活に必要な様々な店が開業してコンパクトシティを形成しているが、初期のタワーマンションでは住人の高齢化に伴い、すでに保育所などの数は少ない傾向がある[3]

現在の超高層マンション

2017年平成29年)時点での全国の170m以上の超高層マンションの高さの順位は以下の通り。


名称
画像
所在地
高さ
階数
竣工年月
1 The Kitahama (北浜タワー) 大阪市中央区 209.4m 54階 2009年3月
2 ザ・パークハウス 西新宿タワー60 東京都新宿区 208.97m 60階 2017年7月
3 パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー 川崎市中原区 203.45m 59階 2009年4月
4 クロスタワー大阪ベイ 大阪市港区 200.4m 54階 2006年8月
5 シティタワー広島 広島市 197.5m 52階 2016年8月
6 シティタワー武蔵小杉 川崎市中原区 194m 53階 2015年
7= THE TOKYO TOWERS
MID TOWER
東京都中央区 193.5m 58階 2008年1月
7= THE TOKYO TOWERS
SEA TOWER
東京都中央区 193.5m 58階 2008年1月
9 勝どきビュータワー 東京都中央区 193m 55階 2010年8月
10 ザ・パークハウス中之島タワー 大阪市北区 192.93m 55階 2017年
11 富久クロスコンフォートタワー 東京都新宿区 191m 55階 2015年
12 汐留H街区超高層棟
アクティ汐留他)
東京都港区 190.25m 56階 2004年4月
13 シティタワー神戸三宮 神戸市中央区 190m 54階 2013年2月
14 大阪ひびきの街 ザ・サンクタスタワー 大阪市西区 189.5m 53階 2015年3月
15 アウルタワー 東京都豊島区 189.2m 52階 2011年1月
16 としまエコミューゼタウン 東京都豊島区 189m 49階 2015年
17 キャピタル・ゲートプレイス ザ・タワー 東京都中央区 187m 53階 2015年
18 エルザタワー55 埼玉県川口市 185.8m 55階 1998年7月
19 大川端リバーシティ21
センチュリーパークタワー
東京都中央区 180m 54階 1999年3月
20 パークシティ豊洲 東京都江東区 179.96m 52階 2008年3月
21 パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン タワーズイースト 神奈川県川崎市中原区 178.90m 53階 2017年12月
22 KACHIDOKI THE TOWER 東京都中央区 178.78m 53階 2016年11月
23 Wコンフォートタワーズ 東京都江東区 178.48m 54階 2004年8月
24 シティタワー西梅田 大阪市福島区 177.4m 50階 2007年1月
25= DEUX TOURS CANAL&SPA EAST棟 東京都中央区 177.3m 52階 2015年9月
25= DEUX TOURS CANAL&SPA WEST棟 東京都中央区 177.3m 52階 2015年9月
27 The Tower Osaka 大阪市福島区 177m 49階 2008年6月
28 プラウドタワー東雲キャナルコート 東京都江東区 175.01m 52階 2012年12月
29 グランフロント大阪オーナーズタワー 大阪市北区 174.2m 48階 2013年4月
30 パークアクシス青山一丁目タワー 東京都港区 172.39m 46階 2007年3月
31= シティタワーズ豊洲
ザ・ツインN棟
東京都江東区 171.2m 48階 2009年3月
31= シティタワーズ豊洲
ザ・ツインS棟
東京都江東区 171.2m 48階 2009年3月
33 御影タワーレジデンス 神戸市東灘区 170m 47階 2010年3月
高さの国内最高の変遷
  • 1976年~1987年 - 与野ハウス(66m)
  • 1987年~1989年 - ベル・パークシティG棟(115.95m)
  • 1989年~1991年 - 大川端リバーシティ21リバーポイントタワー(132m)
  • 1991年~1993年 - イーストコート3番街(140m)
  • 1993年~1998年 - オークプリオタワーレジデンス(167m)
  • 1998年~2004年 - エルザタワー55(185m)
  • 2004年~2006年 - アクティ汐留(190m)
  • 2006年~2009年 - クロスタワー大阪ベイ(200m)
  • 2009年~ - The Kitahama(209m)
階数の国内最高の変遷
  • 1976年~1987年 - 与野ハウス(22階)
  • 1987年~1989年 - ベル・パークシティG棟(36階)
  • 1989年~1992年 - 大川端リバーシティ21リバーポイントタワー(40階)
  • 1992年~1993年 - 桜宮リバーシティ・ウォータータワープラザ(41階)
  • 1993年~1998年 - オークプリオタワーレジデンス(50階)
  • 1998年~2004年 - エルザタワー55(55階)
  • 2004年~2008年 - アクティ汐留(56階)
  • 2008年~2009年 - THE TOKYO TOWERS(58階)
  • 2009年~2017年 - パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー(59階)
  • 2017年~ - ザ・パークハウス西新宿タワー60(60階)

建設中・計画中

建設中、計画中の超高層マンションの高さの順番は以下の通り。

虎ノ門・麻布台地区 B-1街区 東京都港区 270m 63階 2022年度
虎ノ門・麻布台地区 B-2街区 東京都港区 240m 53階 2022年度
西新宿三丁目西地区再開発 東京都新宿区 235m 65階 2026年
虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー 東京都港区 221m 54階 2020年
ザ・タワー 横浜北仲 神奈川県横浜市中区 199.95m 58階 2020年
月島三丁目地区第一種市街地再開発事業 東京都中央区 199m 59階 2025年度
勝どき東地区第一種市街地再開発事業 A1棟 東京都中央区 195m 56階 2027年
梅田曽根崎計画 大阪府大阪市北区 193m 56階 2022年3月
浜松町二丁目C地区再開発 東京都港区 190m 47階 2021年
月島三丁目南地区第一種市街地再開発事業 東京都中央区 190m 50階 2024年
豊海地区第一種市街地再開発事業東棟 東京都中央区 189m 56階 2025年
豊海地区第一種市街地再開発事業西棟 東京都中央区 189m 56階 2025年
学校法人日本医科大学武蔵小杉キャンパス再開発計画C街区N棟 神奈川県川崎市中原区 188m 50階 2023年8月
学校法人日本医科大学武蔵小杉キャンパス再開発計画C街区S棟 神奈川県川崎市中原区 188m 50階 2023年8月
シエリアタワー千里中央 大阪府豊中市 184.92m 52階 2019年度
hitoto広島 The Tower 広島市中区 183m 54階 2020年
横浜駅きた西口鶴屋地区第一種市街地再開発事業 横浜市神奈川区 180m 44階 2021年度
豊洲地区1-1街区 東京都江東区 180m 50階 2021年
北8西1再開発 札幌市北区 180m 50階 2018年度
晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業5-5街区 東京都中央区 180m 50階 2024年
晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業5-6街区 東京都中央区 180m 50階 2024年
東高島地区 C地区棟 神奈川県横浜市神奈川区 180m 52階 2025年
南池袋二丁目C地区再開発北棟 東京都豊島区 180m 51階 2025年
南池袋二丁目C地区再開発南棟 東京都豊島区 180m 51階 2025年
西日暮里駅前地区市街地再開発事業 東京都荒川区 180m 2025年
パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン タワーズウエスト 神奈川県川崎市中原区 178.90m 53階 2018年12月
パークタワー晴海 東京都中央区 178m 48階 2019年

問題点

長周期地震動との共振の可能性

超高層建築物の固有振動周期は低層の建物に比べ長いので、地震動の周期の長い海溝型巨大地震の地震動との共振の可能性が最近は指摘されるようになった。日本の超高層ビルの歴史は浅く、実際の海溝型巨大地震を経験した超高層ビルはない為に経験的予測はできず、シミュレーションに頼るしかない。制震工法免震工法で建設される超高層マンションが最近では少なくないが、いずれにせよ海溝型巨大地震の長周期地震動との共振に備えて家具の固定が推奨されている[1]。さらには、地震でエレベーターが停止すると、上階の住人が移動手段を失うという「高層難民」の発生も懸念されている[4]

管理組合運営の難しさ

超高層マンションは、規模が大きく区分所有者の人数も多くなる。さらに、超高層マンションの購入者が重視するポイントに眺望が挙げられ、低層階と高層階との価格格差が大きくなることが一般的であり(数倍となることも見られる)[† 1]、それによる区分所有者間の所得・資産格差の大きさが、管理組合運営へ影響しやすい[1]

健康面

環境が人体に与える影響を研究する東海大学医学部の逢坂文夫は、高層階に住むと女性の流産率が高まり、子供が低体温やアレルギー疾患になりやすいと述べている[5][6]

高齢化

団地と超高層マンションは、完成年と形状(建築物の構造)こそ異なるが、多数の住民が短期間に増える点は共通しており、同じ問題を抱えている。2016年時点で、既に初期の超高層マンションでは、かつての団地と同じく居住者の高齢化が始まっている。都市の人気エリアであっても、急激な高齢化によって、医療や介護の施設は足りるのかといった、山村と同じ問題に直面するという意見もある。[3]

超高層マンションを舞台にした作品

脚注

注釈

出典

参考文献

関連項目

外部リンク