診断
一般的に診断(しんだん、英語:diagnosis)とは、医療においては健康状態あるいは病気を患者の徴候や他方向の結果から見分ける診断手続きである。結果に達するこの過程を診断と呼ぶ。
診断と言うプロセスは、いくつかの分析で検査する広い範囲を扱う。このような検査はいくつかの推論の上に基づいており、これは診断方法と呼ばれる。検査の結果はよく考えられた理想的なものであるが、必ずしも正確なものではない。診断を誤ることは誤診と呼ばれる。医師が行っている診断のうち約10~30%ほどが誤診だと各種調査によって明らかになっている(数字は調査ごとに異なる)。
医療以外においてもこの語は用いられており、機械或いはある種の系について異常の有無を判断し、異常があればその種類を同定し、何らかの介入(修理)が必要かどうかを判断する作業を診断と言う。コンピュータを備えた機械は自己診断機能を持ったものが多い(ハードディスクのSMARTなどが代表的)が、最終的な判断(本当に異常なのか、修理を行うか)を行うのが人間である点は医学と同様である。
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医療における診断
異常な症状を相談された医師は患者の病歴を知った後、彼の病気の徴候を調べる。医師は診断に似た仮説を明確に述べ、多くの場合、治療前に検査をする。一般的に検査とは血圧の計量、脈拍のチェック、聴診器で心音を聞くことなどである。また、血液検査、検尿、検便、心電図、エコー、唾液検査、呼気検査などもよく行われる。
歴史
古来、医師は五感を駆使し、
という判断を無意識のうちに行い、その病気に名前をつけて治療法を探索してきた。しかしそれらは殆ど、先達者の口伝と自分の経験に多くを頼らざるを得なかった。
近代に入り、ヨーロッパでは学術雑誌が医学の世界にも広まり、多くの医師が経験を共有できることになった。また他方では、19世紀末から20世紀にかけてX線写真や顕微鏡をはじめとする技術革新によって、「病気の患者とそうでない人の違い」を発見する手段が飛躍的に広がった。こうして医学は自然科学の仲間入りをしたと言える。
しかしその弊害として、各種検査値の正常/異常に囚われ、ひいては患者のクオリティ・オブ・ライフよりも検査値の正常化を優先して治療しているのではないかという批判が投げかけられるようになった。
問題指向型診断
これに対する反省として、現在では問題指向型(Problem-oriented:PO)臨床診断が各大学・教育病院で広められつつある。これは1968年に米国の医師ウィードによって提唱されたもので、まず何よりも患者の訴えを最も重要な情報として扱う[1]。
- S(Subjective):患者の訴え(ただし、文字通りに受け取ってはならない)。
- O(Objective):他覚的所見。まず五感を駆使して患者の状態を捉え、さらに各種検査の結果も入る。
- A(Assessment):上記に対する医療者の解釈。
- P(Plan):Aに基づき、今後なすべきこと。
SとOは医療者の主観を交えずに書かなければならない。
この方法の長所は、
- 診療録を書くことを通して患者の問題を洗い出すことが出来る。
- 何が一番の問題かが分かり、優先すべき治療が分かる。
- ほかの医療者とも情報・判断を共有しやすい。
という点にある。
臨床決断分析
これまでは、ある疾患に対して唯一最良の医療的介入(検査や治療)手段が存在すると言う意識が医療者の間にはあり、従って治療手段決定まで含めた判断プロセスを「診断」とする暗黙の了解があった。そこではシャーロック・ホームズの推理法が成立する。
しかし、根拠に基づく医療が示すのもあくまで確率論的な数字でしかない。診断がつかないうちに治療を始めなければならない緊急事態も存在する。さらにそのような切迫した状況で、延命治療を希望するか拒否するかと言う患者の価値観も重視しなければならなくなって来ている。
こうした不確定要素が多々ある中で、価値判断の方法論を確立すべくHunickとGlasziouが提唱しているのがPROACTIVEモデルである[2]。ここでは医療資源の問題から患者の価値観まであらゆる要素を考慮に入れ、確率論で数値化・自動化できる計算はコンピュータに任せ、最終的な価値判断を行う。