覇権
覇権(はけん)あるいはヘゲモニー(hegemony)とは、特定の人物または集団が長期にわたってほとんど不動とも思われる地位あるいは権力を掌握すること。それによる地域あるいは国家の統治を覇権統治という。それに成功した国や人物は、覇者と呼ばれる。
但し、覇権を得る過程はいわゆる既定路線や全体的同意によるものであってはならず、相対的に有利な立場にある者が武力、権力、財力などの力(power)の行使によってその敵対的立場にある者を制し、勝利あるいは事実上の最優位の立場を獲得することによってでなければそれは覇権とは称されない。
覇権や覇権主義にしても、組織を巨大化する方策として有効な手段であるため、一概に悪とは言えない。第二次大戦下、イタリアのマルクス主義者であるアントニオ・グラムシがこの用語を多用したことから一般に広まったとされる。覇権は、被支配者の「同意に基く」支配を強調した統治体系という理解が一般的である。
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国際関係における覇権
覇権安定論
覇権安定論(Hegemonic stability theory)とは経済学者のチャールズ・キンドルバーガーによって発表され、ロバート・ギルピンによって確立された理論である。一国の覇権で世界が安定し、かつ経済的に発展するには以下の条件を要する。
- 一国が圧倒的な政治力及び経済力、すなわち覇権(Hegemony)を有していること。
- 覇権国が自由市場を理解し、それを実現するために国際体制を構築しようとすること。
- 覇権国によって国際体制の中で利益を享受すること。
ある単一の国が圧倒的な覇権を掌握しておくことで国際社会は安定するというものではない。覇権国が諸国に利益を提供することができる国際体制を構築・維持する点が重要である。この体制が諸国にとって有益なものである限り、非覇権国は自ら国際体制を築くことなく円滑な経済活動を行うことができる。
覇権循環論
覇権循環論(hegemonic cycle theory)は近現代の国際関係についてジョージ・モデルスキーによって唱えられた理論。
概ね16世紀以降、世界の政治・経済・軍事他覇権は欧米を中心にある特定の大国によりその時代担われ、その地位の循環を繰り返すとする。この世界大国は歴代16世紀のポルトガル、17世紀のオランダ、18世紀と19世紀の大英帝国、20世紀のアメリカ合衆国といった具合に2世紀連続してその地位を務めた大英帝国を例外とし、大体1世紀で交代するものとされその覇権に異議を唱え対抗するのはスペイン、フランス、ドイツ、ソ連といった大陸国で、決まって勝利することは無い。
新興大国が既存の世界大国に反旗を翻し世界の不安定性が増した際に決まって世界戦争が起こり、そこで新興大国は敗北し先代の世界大国の側に付き共に戦った国が新しい世界大国の地位を得るとする。世界大国となる条件には
- 外界に対して開かれた島国もしくは半島国であること。
- 内政に競合があり、しかも政局が安定(例としては大英帝国の保守党と労働党、アメリカの共和党と民主党の二大政党制)していること。
- 世界中にその意思を知らしめ影響力を行使する暴力装置(例としては強力な海軍や情報機関)を持っていること。
などを要するとされる。