被約環

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環論において、被約環(ひやくかん、: reduced ring)とは、0でないベキ零元をもたないのことである。(ベキ零元とは何乗かすると0になる元のことである。)被約環は数学の分野である可換環論代数幾何学で役割を果たす。被約スキームとは茎が被約なスキームである。可換環上の可換多元環は環として被約なとき被約多元環と呼ばれる。

この記事は可換環論に関するものである。とくに、環は単位元をもち可換なものを考える。環準同型は単位元を単位元に写す。詳細は可換環論を見られたい。

定義

被約環

[math]R[/math] が被約環とは、すべての [math]r \in R[/math] に対して、

[math]r^n = 0 \Leftrightarrow r = 0[/math]

が成り立つことである。これは次と同値である。

[math]\sqrt{(0)}= (0)[/math]
  • すべての [math]r \in R[/math] に対して次が成り立つ。
[math]r^2 = 0 \Leftrightarrow r = 0[/math]

被約イデアル

[math]R[/math] のイデアル [math]I[/math] が被約イデアルとは、次が成り立つことである。:

[math]\sqrt{I}= I[/math]

被約スキーム

スキーム [math](X,\mathcal{O}_X)[/math] が被約であるとは、任意の開集合 [math]U \subset X[/math] に対して環 [math]\mathcal{O}_X(U)[/math] がベキ零元をもたないということである。これは次と同値である。すべての [math]x \in X[/math] に対して局所環(茎)

[math]\mathcal R_x=\operatorname{lim}_{V\ni x}\mathcal F(V)[/math]

が被約である。

性質

  • 被約環の部分環、直積、局所化は被約である。
  • 剰余環 R/I が被約であることと I が根基イデアルであることは同値である。
  • [math]R[/math] がネーター環のとき、次が成り立つ。
[math]R[/math] が被約であることと、零イデアルの準素分解においてその成分として(極小)素イデアルのみ現れることは同値である。
  • 被約性は局所的な性質である。すなわち:
[math]R[/math] が被約であることと、すべての極大イデアル [math]\mathfrak{m}[/math] に対して [math]R_\mathfrak{m}[/math] が被約であることは同値である。

  • [math]\Z[/math] と体上のすべての多項式環は被約である。
  • [math]R/ \sqrt{(0)}[/math] は被約である。
  • すべての整域は被約である。逆は成り立たない。
  • [math]\Z/6\Z[/math] は被約であるが、[math]\Z/4\Z[/math] はベキ零元 [math]2+4\Z[/math] をもつので被約でない。一般に、[math]\Z/n\Z[/math] が被約であることと n が0またはsquare-freeな整数であることは同値である。
  • [math]K[X]/(X^2)[/math] は被約でない。ベキ零元 [math]X+(X^2)[/math] をもつ。

参考文献

  • Ernst Kunz: Einführung in die kommutative Algebra und algebraische Geometrie, Vieweg (1980), ISBN 3-528-07246-6
  • Atiyah, Macdonald: Introduction to Commutative Algebra, Addison-Wesley (1969), ISBN 0-2010-0361-9
  • Brüske, Ischebeck, Vogel: Kommutative Algebra, Bibliographisches Institut (1989), ISBN 978-3411140411
  • H. Matsumura, Commutative algebra 1980 ISBN 0-8053-7026-9.
  • N. Bourbaki, Commutative Algebra, Hermann Paris 1972, Chap. II, § 2.7
  • N. Bourbaki, Algebra, Springer 1990, Chap. V, § 6.7