虚偽告訴罪
虚偽告訴等罪 | |
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法律・条文 | 刑法172条 |
保護法益 | 国家の審判作用の適正、私生活の平穏 |
主体 | 人 |
客体 | - |
実行行為 | 虚偽の告訴、告発、その他の申告 |
主観 | 故意犯、目的犯 |
結果 | 挙動犯、抽象的危険犯 |
実行の着手 | - |
既遂時期 | 虚偽の申告が官署に到達した時点 |
法定刑 | 3月以上10年以下の懲役 |
未遂・予備 | なし |
虚偽告訴等罪(きょぎこくそとうざい)とは、刑法が定める犯罪類型の一つで、他人に刑罰や懲戒を受けさせる目的で、虚偽の告訴をする行為を内容とする。告訴だけでなく虚偽の告発や、処罰を求めての申告も含む。
虚偽の申告で人を貶めることを古くは讒訴(ざんそ)または誣告(ぶこく)といった。旧刑法下でも誣告罪(ぶこくざい)と呼んでいた。
概説
保護法益は、第一次的には国家の適正な刑事司法作用という国家的利益であり、二次的に個人の私生活の平穏という個人的利益であると解するのが通説である。
そして、本罪が成立するためには、これら両者がともに危殆化されることを要する[1]。
なお、本罪の有罪判決のほか公訴棄却・免訴を含む本罪の「証明」となる確定判決は、本罪にかかる虚偽告訴によって有罪判決を受けた者について、再審請求の法定事由となる(刑事訴訟法435条3号、「有罪判決を受けた者を誣告した罪」という形で本罪が引用されている)。
虚偽告訴等罪
人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、3月以上10年以下の懲役に処する(刑法第172条)。
目的犯
本罪は目的犯であり、「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的」が必要である。なお、本罪は虚偽の申し出による被害者が存在する点で、虚偽の申し出における告訴・告発の対象が存在せず、また事件も存在しない虚偽申告(軽犯罪法第1条第16号)と異なる。
行為
本罪の行為は「虚偽の告訴、告発その他の申告」である。警察など行政機関に申告したり、弁護士会に対して弁護士の懲戒請求をする場合も本条に該当しうる。
虚偽告訴罪にいう「虚偽」の申告とは、客観的事実に反する申告を行うことをいう。申告者が自己の記憶に反して主観的に虚偽だと思って申告をしても、それがたまたま客観的事実に一致しているのであれば、国の捜査権が害されることはないので、罪にはならない。
自白による刑の減免
前条の罪(虚偽告訴等罪)を犯した者が、その申告をした事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる(刑法第173条)。
海外の虚偽告訴
韓国
韓国では人口比での虚偽告訴が世界一であり、全国18の地方検察庁に提出された誣告事件は毎年増加傾向を見せている。2000年から2014年までの韓国の虚偽告訴罪の平均は日本の500倍以上である。2013年8816件から2014年に9862件増え、2015年には1万156件で1万件を超えた。2016年上半期基準で4633件あった。韓国のマスコミによると韓国社会特有の「他人の良い姿を見られない」[2]嫉妬による陰湿な攻撃の横行に訴訟万能主義が加わり、虚偽告訴事件が頻繁に起きている。韓国の虚偽告訴では女性が男性に性的暴行を受けたという嘘の主張で男性を告訴する『性的暴行型虚偽告訴事件』が大半を占めている。人口比告訴率が世界最高水準である韓国では専門家たちが虚偽告訴した女性らには犯した罪に相当する厳罰を与える法律を定める必要があると注文している[3][4]。2016年の虚偽告訴罪の発生件数が2012年より32.3%増加した。このうち、性犯罪での虚偽告訴が占める割合が40%ほどであることが判明している。2016年に虚偽告訴罪で起訴されたが約5%だけが逮捕・拘束、残りの約95%は在宅起訴・略式命令にとどまっている。韓国人検察庁の統計によると、2016年に虚偽告訴で起訴されても実刑が宣告された割合は10%にとどまり、更に大半が懲役1年未満が宣告されている。2014年に国内の性犯罪での起訴率は80.5%だったが以後毎年減少し、2016年には77.6%で約3%減少、2017年7月末基準での起訴率は76.5%で最近5年間の中で最も低い数値を記録した。初犯の場合は上記のように執行猶予や軽い罰金刑罰で済むため、和解金や相手の名誉を毀損目当てに「とりあえず告訴」するという「性的暴行を受けた」と虚偽の申告による告訴が社会問題になっている[5]。偽証などが韓国社会で蔓延っている背景について朝鮮日報は縁故主義などウリと見なす者への温情といった文化的背景の影響、そしてそれ以上に「どうせ摘発されても処罰は軽い」という認識が韓国社会定着していることだと指摘している。偽証した場合の罪については「5年以下の懲役あるいは1000万ウォン(約93万円)以下の罰金」と法律で定められているが、韓国の裁判所での実際の判決で約80%が執行猶予付である。そのため、更に韓国人が嘘の「証言」をして嫌いな相手を貶めようとする犯罪行為に対する罪の意識が最初から非常に軽くなっているとして、日本と人口比を考慮せずとも遥かに上回る韓国社会への対処に厳罰化を求めている[6]。
関連項目
- 偽証罪
- 刑事告訴
- 再審
- 痴漢冤罪 - 大阪市営地下鉄御堂筋線痴漢捏ち上げ事件など、虚偽告訴が認定された事例もある。
- 四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件 - 窃盗未遂容疑で誤認逮捕された男性が逮捕翌日に死亡した事件で、窃盗被害の訴えは虚偽告訴とみられている。