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いも)とは、植物地下茎といった地下部が肥大化して養分を蓄えた器官である[1]。特にその中で食用を中心に利用されるものを指すことが多い。但し、通常はタマネギのような鱗茎は含めない。

食品栄養上の特徴

芋はデンプンなどの炭水化物を多く含み栄養価も高いことから、世界には芋を主食としている地域が多数ある。ジャガイモサツマイモのように、痩せた土地でも耕作が出来ることから、原産地から移出された先で主食作物としての地位を得たものもある。例えば、アンデス山脈原産のジャガイモは、ヨーロッパとロシアで主食に準じる重要性を占めている。

一般に芋の栽培は穀物の栽培と比べて容易で、天候の変化にも強い。面積あたりの生産量が多く、面積あたりのカロリー生産量でも、芋のほうが穀物より多い[2]。そのため日本のサツマイモの様に飢饉対策作物として栽培された例や、重税や非食用作物の栽培を強制された農民が自分たちの食用に栽培する事がある。

栄養上の主な成分はデンプンだが、比率としては穀物と比べて遜色ないタンパク質も含む。しかし含有水分が多いので、重量あたりでみるとカロリー・タンパク質とも穀物より少ない[3]。たくさん食べるか、他の食物で補うかしなければならない。もっとも、太るまで食べ過ぎることがないというのは、現代的には健康によい特徴とも言える[4]

水分量が多いことは腐りやすさにもつながり、穀物と比べると保存が利かず、貯蔵や輸送管理に困難がある[5]

工業的に澱粉が分離精製される。また、蒸留酒の原料ともされてきたが、近年ではアルコール燃料バイオエタノール)の原料ともされる。

植物としての特徴

芋をもつ植物は、その進化の過程で種子による子孫繁栄よりも栄養繁殖器官(塊根塊茎球茎担根体など)による同一個体の複製を目指した植物ではあるが、有性生殖の機能は完全には失っておらず、花や種を付ける。栽培に適した地域であるほど花や種を付ける事が多い。この花や種は繁殖手段として必ずしも有効なものではないが、ウイルスによる遺伝子汚染の影響が少ない真正種子は親とは異なる性質を持つことから、芋植物の品種改良は採種を介して行われる場合も多い。

芋は地上に出た部分で光合成を行い、地下の肥大部分すなわち芋に栄養を蓄えて、葉や茎が枯れてしまう冬や乾季を芋のみの状態で過ごし、成育に適した季節が訪れると再び芽を出して育つ。多くの芋は多年草で、種子から育てると一年以内に芋が大きくならない。種芋から育てて一年以内で収穫するのが普通だが[6]、中にはコンニャクイモのように数年越しで育てる芋もある。但し、無性生殖によって単一品種のみが栽培された場合には特定の植物固有の病気が蔓延しやすくなる傾向(連作障害)もあり、それが原因となってジャガイモ飢饉のような飢饉を招いた例もある。

食料としての芋は焼く・煮る・炒めるといった簡単な調理で食用とすることが可能なものが多い。しかし例えばキャッサバのように有毒な栽培種もあり、害虫や他の動物に食べられる被害にあい難い利点があり、毒抜きして食用にされる。一般的なジャガイモであっても発芽部分や緑色になった皮には嘔吐や腹痛・下痢や頭痛といった食中毒程度の被害が主ではあるとはいえ毒性が存在し、その食用には注意を要する[7]

俗語と芋

ファイル:Ishi yakiimo vendor by MShades in Nara.jpg
古くから甘くて美味しい石焼き芋は人気がある

栽培場所を選ばず安定供給が可能なため、得易く安価な食料として庶民に広く親しまれてきた。しかし、「何処でも得られる食料」ゆえ、蔑まれる傾向も見られる。いわゆる「イモ」というと「洗練されていない」の意味を含んだ、いわゆる「ダサい奴」という意味で使われる蔑称となる。芋料理は、しばしば「田舎料理」(郷土料理)の代表に挙げられる。(例:九州大学生をカリカチュアライズした菓子『いも九』

芋づる式
芋のつるを引っ張ると、芋が連なって一度に取れることから、一度に取得できること又は一つが取れると連なって取れる事を指す。
芋を引く
不良用語、俗語の一つ。芋を引いて土から抜く時、引手の人間は後ろに後ずさり尻餅をつくことが多い。このことから、喧嘩や揉め事の場でおじけづく、たじろぐ、逃げ出すことを意味する。主にやくざが使う隠語で、こういった意味から臆病者の事を「芋引き」と呼んでいる。

代表的な芋類

塊根

地下茎

塊茎

球茎

その他

担根体

芋の加工品

脚注

  1. 「飲食事典」本山荻舟 平凡社 p40 昭和33年12月25日発行
  2. 渡邉和之「イモ類の未来」、『週刊朝百科植物の世界』72(食糧としての植物)、14-181頁。
  3. 渡邉和之「イモ類の未来」、『週刊朝百科植物の世界』72(食糧としての植物)、14-182頁
  4. 渡邉和之「イモ類の未来」、『週刊朝百科植物の世界』72(食糧としての植物)、14-184頁。
  5. 渡邉和之「イモ類の未来」、『週刊朝百科植物の世界』72(食糧としての植物)、14-182頁。
  6. 渡邉和之「イモ類の未来」、『週刊朝百科植物の世界』72(食糧としての植物)、14-181頁。
  7. 農林水産省「ジャガイモ中の天然毒素による食中毒」

参考文献

  • 『週刊朝百科植物の世界』72(食糧としての植物)、朝日新聞社、1995年9月3日発行。

外部リンク