羽田空港発着枠
羽田空港発着枠(はねだくうこうはっちゃくわく)とは、東京国際空港の出・入場許可便枠のことである。この語は国土交通省内でも使用されている[1] ほか、マスメディアにおいても使用される語である。
Contents
概要
歴史
第二次世界大戦後、日本の航空業界は日本国政府(運輸省)の強い規制の下に置かれ、需給調整の観点から路線毎に免許を与えたため、航空会社が自由に参入・撤退はできず、
などと、参入できる路線まで区別されてきた。これが、いわゆる45/47体制である。
この体制は、1986年(昭和61年)に廃止され、規模が一定以上の路線ではダブル、トリプルトラック化[2] が認められる。この基準は徐々に緩和され、1997年(平成9年)には基準自体が撤廃される。その後も規制緩和の中で2000年(平成12年)に航空法が改正され、新規育成と競争促進を目的に、空港への発着は原則的に安全基準などを満たせばよい事前届出制となった。これにより、各航空会社の参入・撤退の自由が原則的に保障された[3]。
だが、東京国際空港(羽田空港)、成田国際空港、大阪国際空港(伊丹空港)、関西国際空港の主要4空港については、これらを「混雑空港」として指定し、混雑空港については、発着を許可制とすることで、参入・撤退への規制が維持された[4]。
しかし、一口に混雑空港といっても、具体的な規制についてはさまざまであり、伊丹空港については、大阪空港訴訟による騒音問題を理由として、ジェット機の総量規制を行っており、成田と関西の両空港については、国内線の発着枠に余裕がある。そのため、空港の発着能力が限界に達しているため、発着枠の配分規制を行っているのは『羽田空港のみ』である。
羽田空港については、混雑空港運行許可の更新(5年ごと)に合わせ、配分を見直すこととしている。2005年(平成17年)2月の更新の際には、有識者による懇談会でルールが作られ[5] 再配分が行われた。
また、羽田空港では日本の空港としては2016年(平成28年)現在、唯一小型機の乗り入れが禁止されている。元々限られた発着枠で、できるだけ輸送量を大きくするため、1969年(昭和46年)の運輸省(当時)航空局長通達で始まったものであり、2016年(平成28年)現在は、混雑空港の許可制を利用して、許可基準上小型機については、一律に発着を許可しないこととされている。これも、発着枠の配分規制同様に発着枠の不足を原因とするものであり、規制方法について、混雑空港の許可制を利用していることにおいても同様である。
時間帯
航空機の発着需要、及び騒音の体感は時間帯によって大きく異なる。そのため、国土交通省では、時間帯を以下の3つに区分し、発着能力と発着枠配分方法を定めている[6]。
6時-8時半 | 8時半-20時半 | 20時半-23時 | 23時-6時 | |
---|---|---|---|---|
出発 | 混雑 | 特定 | 深夜早朝 | |
到着 | 特定 | 混雑 | 深夜早朝 |
このうち、混雑時間帯は発着需要が高いので、国土交通省が省益として発着枠を配分している。以下述べる発着枠のうち、特に注記ないものは、この混雑時間帯の発着枠を指す。
一方、特定時間帯と深夜早朝時間帯については、航空会社が希望すれば使用できる。ただし現状では、特定時間帯のうち出発20時半-21時、到着8時-8時半についても、発着需要が高く、発着能力を使い切っている状況である[7]。また、深夜早朝時間帯は、騒音発生を抑えるため飛行ルートが制限されるので、発着能力も制限されるものの、2017年10月現在でも発着枠に余裕がある。
発着能力
沖合展開事業期
2003年7月時点の旅客機運用は、以下の通りであった。
A滑走路 | B滑走路 | C滑走路 | |
---|---|---|---|
北風時 | 着陸 | 不使用[8] | 離陸 |
南風好天時 | 離陸 | 着陸 | |
南風悪天時 | 離陸 | 着陸 | 不使用 |
滑走路毎に離陸もしくは着陸が連続する場合の処理能力は、以下の通り。
6時台 | 7-21時台 | 22時台 | |
---|---|---|---|
出発 | 32回/時 | 32回/時 | 32回/時 |
到着 | 26回/時 | 29回/時 | 26回/時 |
発着回数は1日あたり774回(28.3万回/年)。以後、管制運用の見直しや高速脱出誘導路の整備などが行われ、830回(30.3万回/年)まで発着枠は増加している。
なお、深夜早朝時間帯に旅客定期便は設定されていない[9]。
D滑走路供用
2010年10月に、D滑走路が供用開始された。滑走路運用は以下の通りである。
昼間時間帯 | A滑走路 | B滑走路 | C滑走路 | D滑走路 |
---|---|---|---|---|
北風 | (南方面からの)着陸 | 不使用 | {北方面から(へ)の}離着陸 | (南・西方面への)離陸 |
南風 | (南・西方面への)離陸 | (南方面からの)着陸 | (北方面への)離陸 | (北方面からの)着陸 |
昼間時間帯 | 出発 | 到着 | 発着枠総数/日 | 国内線 | 国際線 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一般 | リレー時間帯[12] | |||||
2010年10月21日~ | 34回/時[13] | 33回/時[14] | - | - | - | - |
2011年3月27日~ | 35回/時[13] | 35回/時[14] | 960+20回 | 880回 | 80回 | 20回 |
2013年3月31日~ | 37回/時[13] | 37回/時[14] | 1010+20回 | 930回 | 80回 | 20回 |
2013年度中~ | 40回/時 | 40回/時 | 1094+20回 | 930回 | 160+4回[15] | 20回 |
深夜早朝時間帯 | 出発 | 到着 |
---|---|---|
2010年10月21日~ | 8回/時 | 8回/時 |
なお、2012年度の首都圏空港(羽田・成田)の利用者数のうち、国際線の割合は約36%である[16]。ところが昼間時間帯の国際線発着枠は、2014年度の最終形でも16.5%にとどまっている。
技術的な可能性
平成26年7月8日、首都圏空港機能強化技術検討小委員会から中間とりまとめが発表された[17]。まず実測値を元にした現ルートの最大発着回数が示され、続いて新ルート案の最大発着回数が推定されている。その数値は以下の通りである。
種類 | 風向 | 現ルート | 北風案[18] | |
---|---|---|---|---|
南風案1[19] | 南風案2[20] | |||
離陸 | 北風 | 43 | 46 | |
南風 | 42 | 42 | 46 | |
着陸 | 北風 | 45 | 44 | |
南風 | 41 | 42 | 44 |
なお北風時と南風時では回数が異なるが、風向により遅延等を発生させないために、少ない方を発着容量とするのが一般的である。よって現ルートでは離陸42回、着陸41回が時間値となる。同様に北風・南風1案では離陸42回・着陸42回、北風・南風2案では離陸46回・着陸44回となる。
平成27年1月21日に開催された首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会では、国から北風・南風2案の提案がなされている[21][22]。ただし都心上空の飛行については騒音影響が見込まれるため、国際線の離着陸が集中する15時~19時への限定を想定している[23]。
発着枠配分
出典:[3]
沖合展開事業
国内線 | 国際線[24] | |||
---|---|---|---|---|
大手[25] | 新規[26] | 合計 | ||
~1997年7月 | 276 | 0 | 276 | 4 |
1997年7月[27]~ | 310(+34) | 6(+6) | 316(+40) | 4(+0) |
2000年7月[28]~ | 352(+42) | 21(+15) | 373(+57) | 4(+0) |
2002年4月[29]~ | 352(+0) | 25(+4) | 377(+4) | 0(-4) |
2002年10月[30]~ | 340(-12) | 37(+12) | 377(+0) | 0(+0) |
2003年7月[31]~ | 340(+0) | 47(+10) | 387(+10) | 0(+0) |
2003年11月[32]~ | 340(+0) | 47(+0) | 387(+10) | 4(+4) |
こうした新規航空会社への発着枠配分を受けて、35年ぶりの新規参入として、1998年9月にスカイマークエアラインズ(現・スカイマーク)、続いて12月に北海道国際航空(現・AIRDO)、2002年8月にスカイネットアジア航空(現・ソラシドエア)が就航を果たした。
国内線 | 国際線[33] | 合計 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
JAL | ANA | SKY | ADO | SNA | SFJ | 新規未使用枠 | 政策枠 | |||
~2005年4月 | 182 | 158 | 17 | 10 | 12 | 0 | 8 | 0 | 4 | 391 |
2005年4月[34]~ | 171(-11) | 149(-9) | 21(+4) | 14(+4) | 12(+0)[35] | 0 | 20(+12)[35] | 0(+0) | 4(+0) | 391(+0) |
2005年12月[36]~ | 173(+2) | 152(+3) | 28(+7) | 17(+3) | 18(+6) | 9(+9) | 0(-20) | 0(+0) | 8(+4[37]) | 405(+14) |
2007年11月[38][39]~ | 173(+0) | 152(+0) | 28(+0) | 17(+0) | 18(+0) | 13(+4) | 0(+0) | 2(+2) | 12(+4)[40] | 415(+10) |
2009年10月[41]~ | 173(+0) | 152(+0) | 28(+0) | 17(+0) | 18(+0) | 13(+0) | 0(+0) | 2(+0) | 16(+4) | 419(+4) |
なお、2005年4月の、5年に一度の発着枠配分見直しでは、ローカル線を保護するために稚内、中標津、紋別などの1日3便以下の16路線は回収対象から外されている。このうち、10路線を運航する全日本空輸は「路線固定化では自由な経営ができない」と反発、このため、これら16路線をひとつのグループとしてグループ内での便数の増減を認めつつ、完全撤退には歯止めを加えた。
羽田路線は1便あたり20億円の価値があるとされるので、大手2グループとしてはかなりの痛手であった。逆に新規会社にとっては配分された発着枠の運用が今後の成功につながるといえる。
また、2005年12月13日、国土交通省航空局は新たに「羽田空港発着枠の転用に関するルール」を設定した。これは、羽田空港に関係する多様な輸送網の形成を図るため、新規航空会社に配分される羽田空港の発着枠について、新滑走路(D滑走路)の供用開始までの間、新規航空会社に配分された羽田空港の発着枠を使用して運航している路線を減便しようとする場合は、多様な輸送網の形成を目的として羽田空港の着陸料が軽減されている路線(新千歳・伊丹・福岡・那覇以外の地方路線)に転用する場合を除き、減便に関係する発着枠を回収するものである。
なお、この新ルールが適用されるのは以下の通りである。このようなルールが設けられた背景には、スカイマークエアラインズ(当時)が羽田 - 鹿児島便、羽田 - 徳島便を地方便として優先的に発着枠を割り当てられたにもかかわらず、いずれの路線も撤退後に羽田 - 福岡便など高収益路線にその枠をそのまま充当したことに批判が出たためである。
- スカイネットアジア航空
- 羽田 - 長崎 6便(往復)
- 北海道国際航空(エア・ドゥ)
- 羽田 - 女満別 3便(往復)
- スカイマーク
- 羽田 - 神戸 7便(往復)
- スターフライヤー
- 羽田 - 新北九州 3便(往復)
また、アジア・ゲートウェイ構想により羽田空港への国際チャーター便の運航基準が緩められ、20時30分から8時30分まで中・長距離の国際旅客チャーター便の運航が認められている。これを生かし、2008年4月1日には、香港国際空港への定期チャーター便が開設されている[42]。
D滑走路供用
国内線 | 国際線 | 合計 | |||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
JAL | ANA | SKY | ADO | SNA | SFJ | 政策枠 | 一般 | リレー | |||||||||
自由枠 | 地方路線限定枠 | 自由枠 | 地方路線限定枠 | 自由枠 | 地方路線限定枠 | 自由枠 | 地方路線限定枠 | 自由枠 | 地方路線限定枠 | 自由枠 | 地方路線限定枠 | 内際乗継改善枠 | |||||
2010年10月31日&2011年3月27日[43]~ | 173(+0) | 7+0.5[44](+7+0.5) | 152(+0) | 9+2.5[45](+9+2.5) | 24(+3) | 8(+1) | 17(+3) | 4(+1) | 15(+3) | 7(+1) | 9(+3) | 4+1[46](+1+1) | 4(+0) | 3(+1) | 40(+24) | 10(+10) | 490 |
2013年3月31日[47]~ | 176(+3) | 7+0.5[44](+0) | 160(+8) | 9+2.5[45](+0) | 28(+4) | 8(+0) | 19(+2) | 4(+0) | 18(+3) | 7(+0) | 14(+5) | 4+1[46](+0) | 4(+0) | 3(+0) | 40(+0) | 10(+0) | 515 |
2013年度中~ | 176(+0) | 7+0.5[44](+0) | 160(+0) | 9+2.5[45](+0) | 28(+0) | 8(+0) | 19(+0) | 4(+0) | 18(+0) | 7(+0) | 14(+0) | 4+1[46](+0) | 4(+0) | 3(+0) | 82(+42) | 10(+0) | 557 |
国際線
沿革
2007年(平成19年)に、国土交通省は、アジア・ゲートウェイ構想に沿う形で、昼間時間帯の発着枠のうち年間3万回を近距離国際線に割り当てるとしていた。これは、将来の国内航空需要に対応した発着枠を確保した後の、余裕枠を活用したものである。また、深夜早朝時間帯はシンガポール、パリ、ニューヨークなどの、アジア長距離便、および欧米便の就航も可能とした[48]。これに対応するため、新国際線ターミナルビルを整備し、2010年(平成22年)に開業させた。
なお、近距離国際線については、概ね羽田発着の国内線の距離(2012年(平成24年)現在、羽田からの国内線で最も長距離の路線は、石垣空港までの1,947km、1,228マイル)以内の区間を目安とするとされていた。具体的にはソウル、釜山、済州、上海、ウラジオストクなどである。
長距離国際線については、アメリカ合衆国運輸省に対し、デルタ航空[49]、アメリカン航空[50]、ユナイテッド航空[51]、コンチネンタル航空[52]、ハワイアン航空[53] から、運航申請があった。これに対し、2010年(平成22年)5月7日に、アメリカ合衆国運輸省は羽田空港への4航路に関する決定の提案を発表した[54]。アメリカン航空はニューヨーク/ジョン・F・ケネディ空港から[55]、デルタ航空はロサンゼルスおよびデトロイトから[56]、およびハワイアン航空はホノルルから[57] 就航との決定提案となっている。
2009年(平成21年)10月、当時の国土交通大臣・前原誠司は、羽田空港のハブ空港化構想を発表した[58]。これは、増加する発着枠11万回のうち、半分を国際線に割り当てるというものである。この結果として、新規に国内線に配分される発着枠は減少する。過去の経緯にもかかわらず成田空港との棲み分けをなし崩しにされた千葉県及び成田市や[59]、羽田空港への直行便就航を求めていた佐渡空港[60]、但馬空港[61] からは反発の声が挙がった。
この構想を受け、2010年(平成22年)5月17日の、国土交通省成長戦略会議最終報告では、昼間時間帯の国際線について行っていた、アジア近距離ビジネス路線への限定を廃止するとした[62]。そのために、発着枠40.7万回が達成される時点で、基本的には、昼間時間帯の発着枠3万回を、国際線に追加配分して、計6万回にするとしている[62]。
その後、以下の国々との間で、当局間合意[63] により、昼間時間帯の就航が認められている。また、平成25年10月3日に、国土交通省から、日本側発着枠の航空会社への配分が行われた[64]。
協議時期 | 日本側発着枠 | ANA便数 | JAL便数 | 相手国側発着枠 | 就航先 | |
---|---|---|---|---|---|---|
イギリス[65] | 2012年1月17日~20日 | 2 | 1 | 1 | 2 | ロンドン・ヒースロー空港 |
フランス[66] | 2012年7月4日~7日 | 2 | 1 | 1 | 2 | パリ=シャルル・ド・ゴール空港 |
中国[67] | 2012年8月8日 | 2 | 1 | 1 | 2 | 北京首都国際空港 |
シンガポール[68] | 2012年9月18日~19日 | 2 | 1 | 1 | 2 | シンガポール・チャンギ国際空港 |
タイ王国[69] | 2012年11月20日~21日 | 2 | 1 | 1 | 1 | スワンナプーム国際空港(バンコク) |
ドイツ[70] | 2013年2月13日~15日 | 2 | 2 | 0 | 2 | フランクフルト空港、ミュンヘン空港 |
ベトナム[71] | 2013年6月11日~12日 | 1 | 1 | 0 | 1 | ノイバイ国際空港(ハノイ) |
インドネシア[72] | 2013年6月25日~26日 | 1 | 1 | 0 | 1 | スカルノ・ハッタ国際空港(ジャカルタ) |
フィリピン[73] | 2013年9月11日~12日 | 1 | 1 | 0 | 1 | ニノイ・アキノ国際空港(マニラ) |
カナダ[74] | 2013年9月24日 | 1 | 1 | 0 | 1 | バンクーバー国際空港 |
アメリカ合衆国[75][76][77] | 2016年2月16日~18日 | 5 | 3 | 2 | 5 | サンフランシスコ国際空港, ロサンジェルス国際空港, ミネアポリス・セントポール国際空港, ホノルル国際空港 |
合計 | 21 | 14 | 7 | 20 |
国交省はJAL経営再建の過程で両社の財務体質に格差が生じたため、発着枠の配分によって是正する必要があると判断し、発着枠の(ANAへの)傾斜配分[78] を行った。会見した国交省の平岡成哲航空事業課長は、行政が現在の状況を放置すれば、航空業界の中期的な競争環境に歪みが生じる恐れがあるため、発着枠の傾斜配分によって是正すると説明している[79]。
また、アメリカ合衆国とは2012年(平成24年)4月の非公式会談以来、路線開設に向け複数回航空交渉を行っているが、交渉は暗礁に乗り上げていた。その理由は、米国の3大航空会社のうち、デルタ航空とユナイテッド航空が路線開設に消極的なため、米当局が本腰を入れて交渉しないことにある[80]。
デルタ航空は、成田空港をハブ空港として、1日25便を運航しているため、羽田空港に2~3便運航しても、基地コストの負担増や旅客の股裂きが起こることと、日本に提携先がいないため、競争上不利なことを懸念している。一方ユナイテッド航空は、米当局が(日本に提携先のない)デルタ航空を優遇するため、配分において不利との懸念を持っている。
結局、2016年(平成28年)2月18日に、協議と合意がなされたが、これに先立ち、デルタ航空は声明を発表し[81][82]、交渉成立による成田撤退を示唆。合意後にも声明を発表し[83]、分析後に路線の調整を行う旨を明らかにしている。
なお、発着枠の航空会社への配分であるが、「深夜早朝時間帯の双方4便を昼間時間帯に移行[84]」とされていることから、現在の深夜早朝時間帯の配分(日本側が日本航空2便、全日空2便。アメリカ側がデルタ航空1便、ユナイテッド航空1便、ハワイアン航空1便、アメリカン航空1便[85])も移行されると思われる。そのため新規配分されるのは昼間時間帯1便/国、深夜早朝時間帯1便/国となる。
成田縛り
また2014年夏ダイヤから、国土交通省は成田空港から羽田空港への国際線の移管が過度に進まないよう「羽田に国際線を新しく就航させる場合は、成田の発着便も残すように」という「非公式の行政指導」があり、国際線羽田就航の各航空会社は、許認可権限を握る国土交通省が路線維持を強く求めたため、航空関係者は『成田縛り』と呼び「半ば義務づけられた暗黙の紳士協定」と受け止め、日本の航空会社は、コードシェア便や成田空港から相手国に対する新規就航地を新規開設して、高需要路線を羽田空港に移管できるよう対応していた。
しかし外国の航空会社のなかには、収益上対応が出来ずに撤退を検討するところが出始め、相手国の航空当局や航空会社からの不満が出ている[86]。2015年(平成27年)2月28日に、英国ヴァージン・アトランティック航空が成田-ロンドン線を廃止し、日本からの撤退をしたことにより、コードシェア先の全日本空輸の羽田 - ロンドン/ヒースロー線が「このルールに抵触する状況」となっている[87]。さらに2017年(平成29年)1月10日には、ルフトハンザドイツ航空が成田 - フランクフルト線を運休している。
この「成田縛り」により発生した、エコノミークラスの余剰在庫が格安航空券の供給源ともなっていたが、「成田縛り」はヴァージンの日本路線撤退後、運用が曖昧なっており、2016年(平成28年)秋頃に緩和されたと言われ、これに伴い、座席の仕入単価が急騰したことが、格安旅行代理店てるみくらぶの倒産につながったとする意見もある[88]。
効果
「羽田空港の国際化の効果等に関する調査」[89] によれば、2010年10月の国際化によって、地方での国際線利用が韓国・ソウルの仁川国際空港から羽田へ回帰する傾向が見られた[90]。国際化により、羽田の利用は全国的に増加し、特に中国・四国と九州・沖縄からの旅客は仁川経由の割合が減少。仁川の利用割合は、中国・四国は10年が7%だったが、11年には3%に減少し、九州・沖縄では10年の15%が11年は8%とほぼ半減した。
国内線
2013年の配分では、評価期間中に日本航空の企業再建期間が含まれていたため、日航の評価が下がり、配分数が少なくなっている。また、優先的に配分を受けられる新規航空会社の分類が、増枠の時点で保有機材数が12機に達する見込みがない航空会社とされた。そのため、今回配分ではスターフライヤーのみが該当している。
国内線では、発着枠の増加により、飛行機の小型化、多路線化や多頻度化が可能となる。そのため大手航空会社は、2000年代後半以降に順次、国内線の幹線およびそれ以外の高需要路線で主力となっていたボーイング747-400D型機の運行を無くして、燃費などの効率が良いボーイング777型機、ボーイング767型機を含めた、中・小型機の運航を増やしている。1機あたりの定員は減少するが、発着枠に余裕が出ることから、効率的な機材運用、コスト削減を目的としている。
脚注
- ↑ 羽田空港発着枠の配分基準検討懇談会
- ↑ 同一路線を2社、あるいは3社が運航すること。
- ↑ 3.0 3.1 3.2 第1回羽田発着枠配分基準検討小委員会 配付資料2 羽田空港発着枠の現状と検討課題
- ↑ 2016年に福岡空港が混雑空港に追加指定されている。
- ↑ 当面の羽田空港の望ましい利用のあり方について
- ↑ 羽田空港発着枠の配分基準検討懇談会(第4回) 配布資料3-2
- ↑ 「航空機は誰が飛ばしているのか」 轟木一博 日経プレミアシリーズ
- ↑ 海上保安庁や新聞社などの離陸はあった。
- ↑ 南風悪天時の進入路が陸上低空となるため。
- ↑ 羽田空港発着枠の配分基準検討懇談会(第1回) 資料4
- ↑ 東京国際空港(羽田空港)の新滑走路供用に伴う運用変更に関するお知らせ よくある質問 Q4
- ↑ 6時台出発と22時台到着のうちの、一部国際線発着枠のこと。混雑時間帯の発着枠だが、深夜早朝時間帯の国際線との接続のため設けられたものなので、別枠で計上している。
- ↑ 13.0 13.1 13.2 6,7時台は40回、22時台は5回
- ↑ 14.0 14.1 14.2 6,7時台は5回、22時台は40回
- ↑ 羽田空港発着枠の現状と検討課題27頁の、国際定期便の発着回数の部分では160回とされている。しかし、28頁の図では84回増枠分が示されているので、既配分80回と合わせて計164回となる。こちらだと、国内線930回、リレー時間帯20回と合わせて、27頁の発着枠総枠の1114回と合致する。
- ↑ 国内線利用客数は6261万9249人、国際線利用客数は3483万5315人。東京航空局 管内空港利用概況 平成24年度速報値
- ↑ 首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間取りまとめについて
- ↑ 離陸後、荒川河口付近から陸地上空を北向きに飛行。
- ↑ B滑走路から川崎方面に離陸
- ↑ B滑走路から川崎方向に離陸+中野区・新宿区・渋谷区・港区・品川区上空からの着陸
- ↑ 首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会 第2回 参考資料1
- ↑ なお北風案には発着数が同数の1案と2案があるが、国は陸上航行の少ない1案を提案した。
- ↑ 参考資料2 HPでの情報発信に係る関係資料(羽田空港機能強化関係)(1)
- ↑ 金浦線は旅客チャーター便。
- ↑ 日本航空、全日本空輸、日本エアシステムの3社。
- ↑ スカイマークエアラインズと北海道国際航空。その後、2002年8月に就航したスカイネットアジア航空、2006年3月に就航したスターフライヤーも加わる。
- ↑ 新C滑走路の供用開始。羽田空港沖合展開事業の進展による。
- ↑ 新B滑走路の供用。
- ↑ チャイナエアラインズ(中華航空)の成田移転。
- ↑ 日本航空と日本エアシステムの統合による、発着枠の返還。
- ↑ 滑走路占有時間の短縮。
- ↑ 金浦-羽田間航空便の運航について
- ↑ 旅客チャーター便。
- ↑ 発着枠の回収・再配分。JALから22便、ANAから18便を回収して、再配分した。
- ↑ 35.0 35.1 その後、同年12月までに、SNAが新規未使用枠から6便取得している。
- ↑ 管制運用の見直し。羽田空港の増枠及びその配分について
- ↑ 2005年8月1日に、暫定的に公用機等枠を使用して、既に4便/日→8便/日に増便していたものを、通常の発着枠に切り替えた。金浦・羽田チャーター便増便に伴う 東京国際空港到着歓迎イベントについて
- ↑ 高速離脱誘導路の整備による。しかし、航空会社の配分ではなく、航空局が発着枠を留保したうえでの暫定利用である。同年9月1日に設備は完成しており、9月、10月は臨時便として運行されていた。羽田空港の増枠およびその使用について
- ↑ 増加する羽田空港の発着枠を使用する航空会社の決定について
- ↑ 羽田=虹橋旅客チャーター便の開設について
- ↑ 北京首都国際空港への国際旅客定期チャーター便開設。羽田=北京首都空港間の国際旅客チャーター便の開設について
- ↑ 神奈川県 めるまが・神奈川口vol.17
- ↑ 配分枠決定は1回だが、配分は2回に分けて行われた。羽田空港の新規発着枠(37便)の配分について
- ↑ 44.0 44.1 44.2 到着1枠。
- ↑ 45.0 45.1 45.2 出発4枠、到着1枠。
- ↑ 46.0 46.1 46.2 到着2枠。
- ↑ 羽田空港国内線発着枠(25便)の配分について
- ↑ アジア・ゲートウェイ構想の実現に向けた航空分野の取組み
- ↑ 2010年2月16日申請。羽田空港とシアトル、デトロイト、ロサンゼルスおよびホノルル間 Delta Air Lines Seeks to Compete at Tokyo's Haneda Airport
- ↑ 2010年2月16日申請。羽田空港とニューヨーク/ジョン・F・ケネディ空港およびロサンゼルス間。 American Airlines Applies to Fly From New York and Los Angeles to Tokyo (Haneda), the Busiest Airport in Asia
- ↑ 羽田空港とサンフランシスコ間。 United Airlines Seeks to Serve Haneda Airport; Service to Downtown Tokyo Builds on Company's Strong Asia Network
- ↑ 羽田空港とニューヨーク/ニューアーク空港およびグアム間。 Continental Airlines and Continental Micronesia Apply to Fly Nonstop From New York/Newark and Guam to Tokyo's Haneda Airport
- ↑ 羽田ホノルル間。毎日2便。 Hawaiian Eyes Honolulu-Tokyo Service
- ↑ DOT Announces Proposed Decision to Award Four Routes at Tokyo's Haneda Airport
- ↑ American Airlines Awarded Right to Fly From New York Kennedy to Tokyo (Haneda), the Busiest Airport in Asia : New Flights Will Complement American's Service to Tokyo (Narita) and Benefit Japan Airlines and Other oneworld Carriers
- ↑ Delta Air Lines Applauds DOT for Haneda Airport Decision : New flights will connect Detroit, Los Angeles with Tokyo's preferred business airport
- ↑ Hawaiian Receives Tentative Approval for New Tokyo Service
- ↑ “前原大臣会見要旨” (プレスリリース), 国土交通省, (2009年10月13日) . 2016閲覧.
- ↑ “千葉県知事と成田市長、羽田強化方針に懸念表明”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2010年5月26日) . 2017閲覧.
- ↑ 県議会:知事答弁 佐渡-羽田線「不可欠」 北陸新幹線「国などと協議余地」/新潟
- ↑ 羽田空港に新滑走路 但馬-東京直行便へ機運
- ↑ 62.0 62.1 国土交通省成長戦略 航空分野報告書 3-11頁
- ↑ 中国のみ、意見交換と合意
- ↑ 羽田空港国際線発着枠の配分について
- ↑ 日本・英国航空当局間協議の結果について
- ↑ 日本・フランス航空当局間協議の結果について
- ↑ 日中航空関係の拡大について
- ↑ 日本・シンガポール航空当局間協議の結果について
- ↑ 日本・タイ航空当局間協議の結果について
- ↑ 日本・ドイツ航空当局間協議の結果について
- ↑ 日本・ベトナム航空当局間協議の結果について
- ↑ 日本・インドネシア航空当局間協議の結果について
- ↑ 日本・フィリピン航空当局間協議の結果について
- ↑ 日本・カナダ航空当局間協議の結果について
- ↑ 日本・米国航空当局間協議の結果について
- ↑ United States. Department of Transportation. "2016 U.S.-Haneda combination services allocation proceeding. Final order." September 1, 2016.
- ↑ 日米路線に係る羽田空港国際線発着枠の配分
- ↑ 再拡張前の国際チャーター便、および2010年10月の配分では、国際線発着枠は双方同数であった。
- ↑ 「羽田の国際線発着枠はANAに傾斜配分 JALは反発」 ロイター 2013年 10月 2日 19:26 JST
- ↑ 米国との航空交渉が難航で羽田国際化“離陸”の視界不良 週刊ダイヤモンド 2013年8月22日
- ↑ U.S., Japan talks risk Delta flights to Tokyo-Narita
- ↑ デルタ、成田全線の運休示唆、羽田昼枠交渉に反論
- ↑ 日米航空交渉の合意を受けたデルタ航空のコメント
- ↑ 日本・米国航空当局間協議の結果について 日米航空交渉の合意内容
- ↑ 日本・米国航空当局間協議の結果について 日本・米国航空関係(旅客便一覧)第2頁
- ↑ 「成田縛り」ルールは崩壊するか。ヴァージン撤退でANAがコードシェア失い、羽田運航ができなくなる?
- ↑ ヴァージン航空の日本撤退で浮上した「成田縛り」とは何か?
- ↑ “てるみくらぶ、知られざる破綻の真相…呆れた放漫経営、国の「成田ルール」廃止で窮地”. Business Journal (2017年3月31日). . 2017-4-11閲覧.
- ↑ 運輸政策研究所 研究報告会 2013年春 第33回(PDF)
- ↑ 羽田、国際化でハブ機能回復傾向 地方から乗り継ぎ増加