羊蹄山

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羊蹄山(ようていざん)は、北海道後志地方南部(胆振国北西部)にある、標高1,898mの成層火山である。後方羊蹄山(しりべしやま)として、日本百名山に選定されている[1]

概要

羊蹄山は円錐形の成層火山で、2003年(平成15年)に気象庁により活火山に指定された。山頂には直径700m、深さ200mの火口(父釜)があり、西北西斜面にも側火口(母釜、子釜)を持つ。支笏洞爺国立公園に属し、山頂は倶知安町喜茂別町京極町真狩村ニセコ町の境をなしている。

一等三角点(点名「真狩岳」)の旧山頂が1,892.7m、三等三角点(点名「雲泉」)の北山が1,843.7mである[2]

山腹にはキタキツネエゾクロテンエゾリスエゾシマリスエゾモモンガエゾユキウサギなどの哺乳類が生息しており、130種類以上の野鳥がいることも確認されている。

山頂付近には、高山植物であるコマクサも見られるが、本来の植生ではないため除去も行われている[3]

山名

ほぼ完全な円錐形であり、富士山によく似たその整った姿から、蝦夷富士(えぞふじ)とも称され[4]、各地にある郷土富士の一つとなっている。

明治、大正から昭和にかけて後方羊蹄山(しりべしやま・こうほうようていざん)、マッカリヌプリ、蝦夷富士の呼び名が併存していた。また一部の地図にはマッカリ山(真狩山)の表記も見られた。

陸地測量部の1920年(大正9年)発行の5万分の1地形図「留寿都」では後方羊蹄山(蝦夷富士)と記載されていた。しかし難読であったことから地元の倶知安町が羊蹄山への変更を求め、国土地理院の1969年(昭和44年)11月発行の地形図から羊蹄山と書き換えられた。このため現在の羊蹄山の名が定着することとなった。

旧名である後方羊蹄山は、斉明5年(659年)に阿倍比羅夫が郡領を置いたと日本書紀に記されている地名後方羊蹄(しりべし)に由来する(実際に同じ場所を指すかどうかは不明)。なお、後方で「しりへ」と読み、植物のギシギシの漢名である羊蹄を和名で「し」と読む。

アイヌの人々はマッカリヌプリもしくはマチネシリ(雌山)と呼び、南東にある尻別岳 (1,107m) をピンネシリ(雄山)と呼んだ。なお尻別岳は後方羊蹄山に対して一部のファンの間では前方羊蹄山と呼ぶことがある。

火山活動史

ファイル:Mt YOTEI 8.JPG
羊蹄山火口(父釜)

活動は大きく山体崩壊以前の古羊蹄火山、山体崩壊後の新羊蹄火山の2期に分けられる。どちらも主な岩石は安山岩デイサイトとなっている。但し、古羊蹄火山は比較的斑晶量が多く、角閃石石英を含むのに対し、新羊蹄火山は比較的斑晶量が少なく、角閃石や石英を含まない[5]

約6-5万年前に古羊蹄火山が活動を開始し、小規模なプリニー式噴火を繰り返し、活発に軽石火山灰溶岩流火砕流を噴出した。この活動によって、約4万年前までに標高1,700m程度の成層火山を形成した。古羊蹄火山は活動終了時、或いは新羊蹄火山の活動開始時の約4-3.3万年前に山体崩壊を起こし、体積にして1.3km3の土砂が山体西麓に流下したと推定されている[6]

古羊蹄火山の活動終了後、約7千年程度の休止期を挟み、約3.3万年前に新羊蹄火山が活動を開始した。新羊蹄火山では主にストロンボリ式噴火による活動が多くみられ、羊蹄第1軽石・スコリア層を噴出させる噴火など大きなプリニー式噴火も時折発生している[5]。最近1万年間は山頂付近の火口が活動の中心となっており、約13,500年前の噴火以降に少なくとも6枚の降下火山灰が確認されている。最新の噴火は約1,000年前に発生したものと推定されている[7]。また、約4,000年前の噴火では俱知安町市街の一部まで溶岩流が到達した[8]

半月湖

北西の麓に火山活動で生じた火口湖。火口の中に火口径より小さい溶岩ドームが形成されたため半月形をしている。面積1.3平方キロメートルと小さめの湖で、周囲には原生林が密生している。半月湖の脇には倶知安町が設置したキャンプ場もある。

半月湖周辺から登山道周辺の植物群落が「後方羊蹄山の高山植物帯」として国の天然記念物に指定されている。1921年(大正10年)3月3日指定[9]

土砂災害

羊蹄山山麓付近の入植は、明治年間から行われているが、しばしば山頂付近に存在する崩壊地から発生する土石流の流下により人的及び物的被害を出してきた。崩壊は現在も続いており、大規模な崩壊が発生した際に巻上がる土砂の煙は、噴火や山火事と間違われることがある。

登山コース

羊蹄山に登るには、倶知安コース(半月湖から登るコース)、京極コース、真狩コース、喜茂別コースの4種類がある。どのコースも登山には4時間から6時間程度がかかる。

9合目付近には40名収容の羊蹄山避難小屋がある。有料の避難小屋であり、毎年6月中旬から10月中旬には管理人が常駐しているが、水や食料の販売は行っていない。

近隣の山

羊蹄山の風景

脚注

  1. 深田久弥 『日本百名山』 朝日新聞社、1982年。ISBN 4-02-260871-4。
  2. 国土地理院 基準点成果等閲覧サービス
  3. 羊蹄山コマクサ、遠い根絶 安易な持ち込み「生態系崩す」 北海道新聞(2017年7月23日)2017年7月23日閲覧
  4. 北海道鉄道管理局『北海道鉄道沿線案内』、1918年、53-54頁。荒山正彦監修・解説『シリーズ明治・大正の旅行 第I期 旅行案内書集成』第13巻(北海道旅行案内/樺太の鉄道旅行案内)、ゆまに書房、2014年、77-78頁。
  5. 5.0 5.1 上澤 真平, 中川 光弘 (2009). “西南北海道,羊蹄火山の最近約5万年間のテフラ層序 : 古羊蹄火山起源テフラの発見と岩屑なだれの発生時期”. 日本火山学会講演予稿集: 42. doi:10.18940/vsj.2009.0_42. http://ci.nii.ac.jp/naid/110008511086 . 2016閲覧.. 
  6. 吉田 英嗣 (2015). “流れ山分布の地形学的特徴からみた古羊蹄火山の巨大山体崩壊”. 地学雑誌 124 (4): 575-586. doi:10.5026/jgeography.124.575. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/124/4/124_124.575/_article/-char/ja/ . 2016閲覧.. 
  7. 羊蹄山 - 地質調査総合センター
  8. 16.羊蹄山 (PDF)”. 気象庁 (2013年). . 2016閲覧.
  9. 『自然紀行 日本の天然記念物』 講談社、2003年。ISBN 4-06-211899-8。


関連項目

外部リンク