総乗
総乗(そうじょう)とは、積の定義される集合における多項演算の一つで、元の列の全ての積のことである。
定義
結合律を満たす積 × の定義される集合 M の元の列 a1, a2, …, an の総乗を
- [math]\prod_{k=1}^n a_k =a_1 \times a_2 \times \cdots \times a_n[/math]
などと表す。記号 ∏ はギリシャ文字のパイ (Pi) であり、これは積 (Product) の頭文字 P に相当する文字である。
有限集合 E に対し、E の濃度を n とする。このとき、E の元を I = {1, 2, …, n} で添え字付けて、E の元の全体を I を添え字集合とする元の列 (xi)i∈I と思うことができる。この列の総乗を
- [math]\prod E=\prod_{x\in E} x=\prod_{i\in I} x_i =\prod_{k=1}^n x_k[/math]
などのように表す。ここで、E の濃度が 0、すなわち、添え字集合 I が空集合であってもよい。特に、集合 M が積 × に関する単位元 1M を持つとき、空集合を添え字集合とする列(空な列)の総乗は 1M であるとする。(空積も参照)
- [math]\prod \emptyset = \prod_{x \in \emptyset} x=1_M[/math]
積が非結合的な場合
積が結合的でないならば、積をとる順番が問題になるので、a1 × a2 × … × an という記号自体が意味を持たないが、たとえば、部分列を用いて以下のように帰納的に定義することは可能である。
- p1 = a1,
- pk+1 = pk × ak+1
このとき、pn = ∏k=1n ak と書くことにすると、
- [math]\prod_{k=1}^n a_k =(\cdots ((a_1 \times a_2 )\times a_3 )\times \cdots \times a_n)[/math]
の意味になる。このようなものはあまり応用がない。
無限乗積
総和と同様に、可算無限列 (xn)n ∈ N や非可算無限列 (xλ)λ ∈ Λ の総乗
- [math]\prod_{n=1}^\infty x_n ,\quad \prod_{\lambda\in\Lambda} x_\lambda[/math]
を定義することができ、無限積とか無限乗積 (infinite product) と呼ばれる。これらは極限操作であり、適当な意味で収束性を吟味しなければならない。
定義
実数や複素数からなる可算列 (xn)n ∈ N の無限乗積を定義する。k 項部分積 [math]p_k = \prod_{n = 1}^k x_n[/math] からなる数列 (pk)k ∈ N が 0 でない極限値 p に収束するとき、無限乗積は p に収束するといい、 [math] \prod_{n = 1}^\infty x_n = p [/math] と書く。 無限乗積が収束するならば、limn→∞ xn = 1 が成り立つ。 数列 (pk)k ∈ N が収束しない、または 0 に収束するとき、無限乗積は発散するという。
また数列 (xn)n ∈ N に対して無限乗積 [math]\prod_{n = 1}^\infty (1 + \vert x_n \vert)[/math] が収束するとき、無限乗積 [math]\prod_{n = 1}^\infty (1 + x_n)[/math] は絶対収束するという。
例
- [math]\sin \pi z=\pi z\prod_{n=1}^{\infty} \left( 1-\frac{z^2}{n^2} \right)[/math]
- [math]\cos \pi z=\prod_{n=1}^{\infty} \left\{ 1-\frac{z^2}{(n-\frac{1}{2})^2} \right\}[/math]
- [math]\sinh \pi z=\pi z\prod_{n=1}^{\infty} \left( 1+\frac{z^2}{n^2} \right)[/math]
- [math]\cosh \pi z=\prod_{n=1}^{\infty} \left\{ 1+\frac{z^2}{(n-\frac{1}{2})^2} \right\}[/math]
- [math]\prod_{n=1}^{\infty} \frac{(2n)^2}{(2n-1)(2n+1)} =\frac{\pi}{2}[/math]
- [math]\zeta (s)=\prod_{p:\text{prime}} \frac{1}{1-p^{-s}}[/math]