経済連携協定
経済連携協定(けいざいれんけいきょうてい、英: Economic Partnership Agreement[1]、EPA)とは、自由貿易協定(FTA)の柱である関税撤廃や非関税障壁の引き下げなどの通商上の障壁の除去だけでなく、締約国間での経済取引の円滑化、経済制度の調和、および、サービス・投資・電子商取引などのさまざまな経済領域での連携強化・協力の促進などをも含めた条約である。
Contents
FTAとEPAの違い
- 経済連携協定(EPA)
- 貿易の自由化に加え,投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策におけるルール作り,様々な分野での協力の要素等を含む,幅広い経済関係の強化を目的とする協定。
日本ではEPAを軸に推進しており[2]、GATT(関税および貿易に関する一般協定)およびGATS(サービスの貿易に関する一般協定)に基づくFTAによって自由化される物品やサービス貿易といった分野に加え、締結国と幅広い分野で連携し、締約国・地域との関係緊密化を目指すとしている[2][3][3]。
近年世界で締結されているFTAの中には,日本のEPA同様,関税撤廃・削減やサービス貿易の自由化にとどまらない,様々な新しい分野を含むものも見受けられる[2]、ようになっているため、国によってはFTAとEPAを区別せずに包括的にFTAに区分することも少なくない[4]
2018年6月時点で日本政府が外国または特定地域と締結した協定(発効ずみのもの)はすべてEPA(経済連携協定)となっている。2018年2月に署名した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)及び2018年3月に署名した環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)は、いずれも内容的にはEPAであるが、協定名は「パートナーシップ協定」となっている。
日本が締結したEPAの一覧
外務省によると、日本はFTAだけでなくEPAの締結を軸に求めている[5]。理由として、関税撤廃だけでなく、投資やサービス面でも、幅広い効果が生まれることを期待していることによる[5]。
- 日本・シンガポール新時代経済連携協定:2002年11月30日発効(改正議定書2007年9月2日発効)
- 日本・メキシコ経済連携協定:2005年4月1日発効(改正議定書2012年4月1日発効)
- 日本・マレーシア経済連携協定:2006年7月13日発効
- 日本・チリ経済連携協定:2007年9月3日発効
- 日本・タイ経済連携協定:2007年11月1日発効
- 日本・インドネシア経済連携協定:2008年7月1日発効
- 日本・ブルネイ経済連携協定:2008年7月31日発効
- 日本・ASEAN包括的経済連携協定:2008年12月1日より順次発効し、2010年7月1日に最後のフィリピンについて発効し、すべての署名国について発効となった。ただし、インドネシアについては、国内の実施のための手続きが遅れ、インドネシアの財務大臣規定が2018年2月15日に公布され、2018年3月1日より施行されたことにより、2018年3月1日より、協定の運用が開始され、日本とインドネシアとの間ではAJCEP協定に基づく特恵関税率(注1)が適用されることになった[6][7]。
- 日本・フィリピン経済連携協定:2008年12月11日発効
- 日本・スイス経済連携協定:2009年9月1日発効
- 日本・ベトナム経済連携協定:2009年10月1日発効
- 日本・インド経済連携協定:2011年8月1日発効
- 日本・ペルー経済連携協定:2012年3月1日発効
- 日本・オーストラリア経済連携協定:2015年1月15日発効
- 日本・モンゴル経済連携協定:2016年6月7日発効
- 環太平洋パートナーシップ協定(TPP):2016年2月4日署名[8]、日本は2017年1月20日締結。[9]。未発効。
- 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP、TPP11):2018年3月8日署名[10]、日本は2018年7月6日締結[11]。未発効。
- 日本・EU経済連携協定:2018年7月17日署名[12]。未発効。
日本が交渉中のEPAの一覧
- 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)
- 日本・コロンビア経済連携協定
- 日本・トルコ経済連携協定
- 日中韓自由貿易協定
- 日ASEAN・EPAの投資サービス交渉(実質合意)
日本が交渉を開始したが、交渉延期中または中断中のEPAの一覧
- 日本・カナダ経済連携協定
- 日本・韓国経済連携協定
- 日・GCC(湾岸協力理事会)自由貿易協定
EPAの経済規模
EPAの経済規模(日本の対世界輸出に占める協定対象国への輸出割合。2017年)は以下の通りである[13]。
輸出割合 | |
---|---|
日本・シンガポール新時代経済連携協定 | 3.25% |
日本・メキシコ経済連携協定 | 1.61% |
日本・マレーシア経済連携協定 | 1.83% |
日本・チリ経済連携協定 | 0.25% |
日本・タイ経済連携協定 | 4.22% |
日本・インドネシア経済連携協定 | 1.92% |
日本・ブルネイ経済連携協定 | 0.01% |
日本・ASEAN包括的経済連携協定 | 15.16% |
日本・フィリピン経済連携協定 | 1.59% |
日本・スイス経済連携協定 | 0.73% |
日本・ベトナム経済連携協定 | 2.16% |
日本・インド経済連携協定 | 1.27% |
日本・ペルー経済連携協定 | 0.11% |
日本・オーストラリア経済連携協定 | 2.29% |
日本・モンゴル経済連携協定 | 0.05% |
環太平洋パートナーシップ協定(TPP) | 32.54% |
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP) | 13.24% |
日本・EU経済連携協定 | 11.06% |
東アジア地域包括的経済連携(RCEP) | 45.38% |
日本・コロンビア経済連携協定 | 0.14% |
日本・トルコ経済連携協定 | 0.45% |
日中韓自由貿易協定 | 26.65% |
日本・カナダ経済連携協定 | 1.37% |
日本・韓国経済連携協定 | 7.63% |
日・GCC(湾岸協力理事会)自由貿易協定 | 2.38% |
脚注
- ↑ 経済連携協定の意義と課題-日本の通商政策は転換したか、「東アジア共同体」結成は間近か-RIETI 法律時報 2005年6月号
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 EPA・FTAとは 外務省HP
- ↑ 3.0 3.1 「通商政策 知財・人の移動もカバー」 朝日新聞 2010年5月27日
- ↑ 例えばオーストラリア政府のHP(Australia's free trade agreements (FTAs))
- ↑ 5.0 5.1 「EPA/FTAのメリットとは?」 外務省 FTA広報動画
- ↑ 経済産業省HP 日本とインドネシア間の「日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定」運用開始に関するお知らせ
- ↑ 税関HP 日本国とインドネシア共和国の間の「日・ASEAN 包括的経済連携協定 (AJCEP)」の実施
- ↑ 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の署名 外務省HP
- ↑ 外務省トップページ > 会見・発表・広報 > 報道発表 > 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の国内手続の完了に関する通報 平成29年1月20日
- ↑ 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の署名 外務省HP
- ↑ 外務省HP トップページ > 会見・発表・広報 > 報道発表 > 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の国内手続の完了に関する通報
- ↑ 外務省HP > 会見・発表・広報> 報道発表 > 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の署名
- ↑ 財務省貿易統計 Trade Statistics of Japan
関連項目
- 自由貿易協定(FTA)