第4世代移動通信システム
第4世代移動通信システム(だいよんせだいいどうつうしんシステム)とは、国際電気通信連合 (ITU) が定めるIMT-Advanced規格に準拠する無線通信システムのこと[1]。英語: 4th Generation, 「4G」と略記される。LTE、WiMAXそれぞれの後継規格であるLTE-AdvancedとWirelessMAN-Advanced(WiMAX2)が該当する。
Contents
概論
IMT-2000の後のシステム進化はBeyond 3G(B3G)などとも呼称されていたが、ITUではこれを第3世代移動通信システム(3G)の発展型としてIMT-Advancedと名付け、第4世代システムと定義した[2]。
第4世代携帯電話の特徴としては、50Mbps - 1Gbps程度の超高速大容量通信を実現し、IPv6に対応し、無線LANやWiMAX、Bluetoothなどと連携し固定通信網と移動通信網をシームレスに利用(FMC)できるようになる点がある。
通信スピードが超高速化される代わりに、第3世代移動通信システムで使用している 2GHz帯より高い周波数帯を用いる予定であるため、電波伝搬特性によりサービスエリアが狭くなってしまうことや、電波の直進性が高いことにより屋内への電波が届きにくいことが予想されている。サービス時には第3世代移動通信システムとのデュアルモードで利用される可能性が高い。
通信速度の高速化はシャノン=ハートレーの定理により高消費電力も招きうるものであるため、モバイル環境での電源容量の確保も技術的な課題となっている。もっとも、モバイル環境における安定した電源確保の問題は、第3世代移動通信システムから続く、永続的な問題でもある。
4Gとしての承認
2010年10月21日、ITU-R はLTE-AdvancedとWiMAX2の2規格がIMT-Advancedに適していると報告し[3]、2012年1月18日にジュネーブで行われた ITUの会議で IMT-Advancedとして正式に承認された[4]。
LTE-Advancedは3GPPが、WiMAX2はIEEEがそれぞれ標準化を行っている。
商業上の4G
上述したように2012年現在、ITU が規定する IMT-Advanced の基準を満たす厳密な4G規格は LTE-Advanced と WiMAX2 の二つのみである[5]。しかし、3.9Gに相当する LTE や WiMAX 、あるいは3.5Gに相当する HSPA+ などもマーケティング的に「4G」と呼称されることがある。そのため ITU は市場の混乱を避けることを名目に2010年12月6日に LTE や WiMAX 、さらには HSPA+ などの3Gを発展させた規格も「4Gと呼称してよい」とする声明を発表した[6]。
例えば日本で初めて「4G」を冠するサービスとしては、ソフトバンクモバイルが Wireless City Planning の MVNO として提供する「SoftBank 4G」が2012年2月24日より開始されているが、これは AXGP (TD-LTE) 規格によるいわゆる3.9G規格であり、IMT-Advancedに準拠した4Gではない。その後、割当帯域のうち、制限が付いて使用が出来なかった10MHz幅の帯域を使用することになり、既存の帯域との2波に束ねて使用する形が必要となったため、キャリア・アグリゲーションを行うことになり、これを以てようやく厳密な意味での4Gとなった。
また、KDDI(au)でも、3.9G規格である LTE (FDD) サービスを「au 4G LTE」と呼称している[7]。その後、キャリア・アグリゲーションを採用したサービスである、「au 4G LTE CA」が開始されることになり、この時点で厳密な意味での4Gサービス開始となった。グループ会社であるUQコミュニケーションズにおいても、WiMAX 2+の前身規格であるモバイルWiMAXの帯域を削って、キャリア・アグリゲーションを行ったことによって、厳密な意味での4Gサービス開始となった。
なお、NTTドコモの「PREMIUM 4G」は、名実ともに第4世代規格を指し、第3.9世代はXiとして区別される(そのため、Xiでは「4G」の呼称は“お預け”状態であった)。
周波数帯
2007年に開催された世界無線通信会議、WRC-07 において第3および第4世代移動通信システム (IMT) に使用する世界共通の周波数帯が採択された[8]。
- 450 - 470 MHz band
- 698 - 862 MHz band in Region 2 and nine countries of Region 3
- 790 - 862 MHz band in Regions 1 and 3
- 2.3 - 2.4 GHz band
- 3.4 - 3.6 GHz band (no global allocation, but accepted by many countries)
このうち日本では、3.4 - 3.6GHz と 698 - 806MHz の一部を使用する予定[9]。
日本国内における動向
NTTドコモでは2003年5月から屋外実験を開始しており[10]、2004年8月20日には 1Gbps [11]、2005年12月14日には 2.5Gbps [12]、2006年12月25日には 5Gbps のパケット信号伝送に成功した[13]。この実験では、無線アクセス方式に VSF-Spread OFDM を、周波数帯域幅に 100MHz を使用し行われた。
さらに同社では、2015年3月27日から LTE-Advancedによる4Gサービスを開始した。[14]
その後、東京オリンピックが開催される2020年には 10Gbps 以上の通信速度と LTE の約1000倍の容量を実現する第5世代移動通信システム (5G) のサービス開始を目標としており[15]、国際規格化を前提とする規格の1つとして LTE-X (仮称) が検討されている。また、それまでのつなぎとして2010年代後半をめどに、 LTE-Advanced (通称・LTE-A) を高度化した LTE-Advanced Evolution (通称・LTE-B) のサービス開始も検討されている。
脚注・出典
- ↑ “IMT-Advancedの勧告化に向けた対応について (PDF)”. 総務省 情報通信審議会情報通信技術分科会ITU-R部会 地上業務委員会IMT-WG. . 2010閲覧.
- ↑ “What really is a Third Generation Mobile Technology (PDF)”. ITU. . 2010閲覧.
- ↑ ITU paves way for next-generation 4G mobile technologies ITU 2010年10月21日
- ↑ IMT-Advanced standards announced for next-generation mobile technology ITU 2012年1月18日
- ↑ ITU World Radiocommunication Seminar highlights future communication technologies ITU 2010年12月6日
- ↑ ITU、LTEとWiMAXの「4G」名称使用を公式に認可--「発展した3G技術」も認可対象に CNET Japan 2010年12月21日
- ↑ KDDIが「4G LTE」開始を前倒し、全国へ急速展開で実人口カバーは約96%に BUZZAP 2012年5月15日
- ↑ “Press Release: International treaty sets future course for wireless”. ITU. . 2010閲覧.
- ↑ http://www.soumu.go.jp/keisai_shuuryo.html
- ↑ 報道発表資料:第4世代移動通信システムの実現に向けた無線アクセスの屋外実験を開始 | お知らせ | NTTドコモ
- ↑ 報道発表資料:第4世代移動通信システムの実現に向けた無線アクセス実験装置による1Gbit/sリアルタイムパケット信号伝送実験に成功 | お知らせ | NTTドコモ
- ↑ 報道発表資料:第4世代移動通信システムに向けた実験において、世界初の2.5Gbps伝送に成功 | お知らせ | NTTドコモ
- ↑ 報道発表資料:第4世代移動通信システムに向けた実験において、世界初の5Gbpsパケット信号伝送に成功 | お知らせ | NTTドコモ
- ↑ 国内最速となる受信時最大225Mbpsの次世代ネットワーク「LTE-Advanced」を提供 | お知らせ | NTTドコモ
- ↑ 世界主要ベンダーと5G実験で協力(NTTドコモ:記者発表資料 2014年5月8日)