百度
百度(バイドゥ、拼音: )とは、中華人民共和国で最大の検索エンジンを提供する企業である。創業は2000年1月で本社は北京市にあり、その他「百度百科」、「百度入力方法」なども提供している。
全世界の検索エンジン市場において、Googleに次いで第2位(米comScore社、2009年8月調べ)、中国国内では、穀歌(Google検索)を押さえて最大のシェアを占める。
Contents
沿革
創業者の李彦宏(ロビン・リー)は、北京大学を卒業後にニューヨーク州立大学へ留学。Dow Jones & Company, Inc.やInfoseekなどを経て、中国帰国後の2000年1月にBaidu, Inc.を創業している。その後急成長を遂げ、2005年5月NASDAQに上場した。
公開初日、公募価格の27ドルから122.54ドルまで急騰。当日の上げ幅は354%までのぼり、アメリカの証券市場、IPO初日に最多利益を上げた株式のひとつに数えられている。なお、2007年10月には時価総額が118億ドルに上っている。
2006年12月に日本法人であるバイドゥ株式会社を設立し、2007年3月には日本語版サイト「Baidu.jp」のベータ版サービスを開始している。2007年6月にはBaidu, Inc.の社外取締役としてソニー前会長の出井伸之が就任。
2008年1月23日に「Baidu.jp」の本格サービス開始。一般の新聞やテレビのニュースでも取り上げられている。2008年12月16日、検索サイト・Baiduの動画検索と画像検索のトップページを刷新した。
2008年、中国検閲当局は陳冠希わいせつ写真流出事件に絡みウェブサイトを介して人気女優の猥褻写真を拡散させたとして百度を批判、謝罪を命じた。11月15・16日には、中国中央電視台 (CCTV) が百度の広告掲載に関する不正行為を特集した番組を放映した[1]。
2015年、自社開発したスーパーコンピュータの人工知能が音声認識能力コンテンストでGoogleなどを上回って世界一になったと発表したものの、ルール違反の発覚で出場停止処分となった[2][3]。
2017年7月からはBYD、フォード、ダイムラー、NVIDIA、マイクロソフト、インテル、本田技研工業[4]なども参加する自動運転車を共同開発する世界最大の企業連合「アポロ計画」を設立[5]しており、2018年7月4日に金龍客車と共同開発を進めてきた世界初の高度自動運転バス(レベル4)「アポロン」の量産を開始したと発表している[6]。
提供サービス
中国国内で提供されているサービスは現在までに35に上る[7]。中国語検索の強みに加え、若者に人気のあるコミュニティやマルチメディアサービス(画像・動画)を拡充したことが、中国ユーザーを引き付けている。2006年4月からは百科事典の百度百科(バイドゥ・バイクー)を新設。
歴史
- 2000年1月1日 - 北京大学の学友であった、李彦宏と徐勇が北京中関村でBaidu, Inc.を創立。
- 2001年8月 - サーチエンジンのベータ版である、Baiduを発表。
- 2001年10月22日 - Baidu (Baidu.com) を正式発表。
- 2002年11月 - MP3ファイル検索を新設。
- 2003年7月 - 画像とニュース検索を新設。
- 2003年11月 - 百度掲示板を新設。
- 2005年5月 - 電話番号、映画、テレビの検索サービスを新設。
- 2005年6月 - 百度知道(知識サイト)を新設。
- 2005年8月5日 - NASDAQに上場。
- 2005年9月22日 - 百度地図検索のベータ版を開設。
- 2006年1月12日 - 百度国学を発表。
- 2006年4月20日 - 百度百科を新設。
- 2006年7月13日 - 百度空間のベータ版を開設。
- 2006年12月 - 日本法人であるバイドゥ株式会社を設立。
- 2007年6月 - ソニー前会長の出井伸之がBaidu, Inc.社外取締役に就任。
- 2007年3月 - 日本語版検索サービス「baidu.jp」のベータ版の提供開始。
- 2008年1月23日 - Baidu.jpの本格サービス開始。
- 2008年12月16日 - Baidu画像検索とBaidu動画検索トップページを一新
- 2009年12月16日 - 文字入力システムの「Baidu Type」をベータ版でリリース。
- 2013年8月 - 百度全景(ストリートビュー)を提供開始。
- 2015年3月16日 - Baidu.jpが利用者の少なさを理由にサービスを終了。その事実が報道されたのは1ヶ月後の2015年4月18日であるが、その間まったく話題になっておらず、日本でのシェアの低さを物語るものであった[8]。
検索機能
検索システム
2006年下期頃から、Baiduのクローラ「Baiduspider」による日本のサイトへの過度なクローリング行為が目立つようになり、大手電子掲示板を始めとしたサイトで利用者がアクセス困難になる事態が発生し、Baiduのクローラからのアクセスをブロックする動きがみられるようになった。
これについて、Baiduは2007年3月、日本の各ウェブサイトにたいしてBaiduspiderが過剰な負荷をかけたことを謝罪するとともに、クローリングの頻度管理を統一するなどの対処策を発表した[9]。また同年5月には負荷の少ない新型クローラである「BaiduChecker」を導入し、ウェブサイトに与える負荷を平均数百バイト程度に抑えられるようになったと表明している[10]。2009年7月現在BaiduImagespider、BaiduMobaider、が別途クロールしており、特にBaiduMobaiderはRobots.txtを無視してクロールしている。
Baidu, Inc.では中国ユーザーのニーズを反映し、検索順位の決定にオークション的な手法を用いている。しかし、この検索順位のモデルについて、日本には投入しないことを、日本法人の担当者がセミナーなどで明言している。
Baidu.jpの画像検索機能における有害コンテンツの取り扱いに関し、日中両国内で話題となった[11]。現在、Baidu.jpではアダルトコンテンツフィルタが導入されている。2008年10月24日より、このフィルタ機能は初期設定で有効になっている。
MP3検索
Baiduのユーザーにとって人気のある機能はMP3検索である。これはMP3、WMA、rmファイルなどの音声・動画ファイルを検索できるサービスである。MP3検索は主に中国の音楽の検索に使用される。
2005年3月30日に中国のレコード会社の上海歩昇音楽文化伝播有限公司が著作権を侵害されたとしてBaiduを提訴している。その他にも、ユニバーサル・ミュージックをはじめとする大手レコード会社からおこされた同様の訴えについては、2006年11月Baidu側の勝訴となった。
著作権の問題に対し、Baiduは2007年からEMIなど音楽業界との提携を進めており、新しいビジネスモデルのプラットフォーム作りに着手していると伝えられている。
地図
本家中国語版のBaiduには、地図の検索機能が組み込まれている。日本語版検索サービスには地図検索は含まれていない。
他の検索エンジンの地図と異なる点として、中華人民共和国が領有権を主張するエリアは台湾を含め各地が収録されているものの、中国国外の陸地はグレーになっているだけで、詳細表示がない。また南シナ海は中国国内法に従い中国の領土とされ、マレーシアのボルネオ島サラワク州北部数10キロ付近までを中国の海域として海上ライン[12]が引かれている。最南端の海域は、ジェームズ礁(漢字表記で「曾母暗沙」)。2013年8月から百度全景(ストリートビュー)が開始されており、中国国内の風景を見ることができる。
諸問題
ドメインネームハック
2010年1月12日、アメリカで管理されているBaidu.comのDNSレコードが、「IRANIAN CYBER ARMY」を名乗る者によって改竄された。百度にアクセスすると、イランの国旗を背景に英語とラトビア語で「イランのサイバーアーミーによりサイトがハッキングされた」というメッセージが表示されるものであった。これは、無名の個人の要求に対して登録されているメールアドレスを変更するという、ドメインを管理しているRegister.comの重大な過失によるものであったとされる。一度メールアドレスを変更してしまえば、パスワード申請によって容易にドメインの乗っ取りが可能になる。
尖閣問題への対応
検索エンジンのホームページに尖閣諸島のイラストを掲載し、中国国旗がその上に飛んでいくというアニメーションを表示した[13]。
日本語ソフトの入力情報無断送信
2013年12月、日本語入力システムのBaidu IMEが、入力文字情報を利用者に無断で百度自社のサーバーに送信していることが発覚。百度日本法人はデータを自社サーバーに送信したが入力精度の向上だと説明するにとどまった[14][15]。
Android OSに対するバックドア作成
2015年10月、Baiduが提供するソフトウェア開発キット(SDK)「Moplus」に「Wormhole」と呼ばれる極めて深刻な脆弱性が存在することが報告された。 トレンドマイクロ社がこの脆弱性について調査を進めた結果、翌11月に、「Moplus」に意図的なバックドア作成機能が搭載されていることを確認し、これを公表した[16]。パソコン雑誌I/Oではこの事件をニュース記事として取り上げ、「非常に悪質なバックドアと言わざるをえない」「百度の信頼性は地に堕ちた」などとした[17]。
脚注
- ↑ グーグルは中国も制するのか~百度の十八番、音楽検索で殴りこみ(JBpress 2009年5月7日)
- ↑ “中国百度がルール違反で世界的AI(人工知能)コンテストに出場禁止: 背景にあるのは米中の過剰な競争意識か”. 日本ビジネスプレス. (2015年6月11日) . 2017閲覧.
- ↑ “人工知能テスト結果で謝罪―中国・百度”. WSJ. (2015年6月4日) . 2017閲覧.
- ↑ “ホンダ、中国・百度の自動運転連合に参加 日本車で初”. 日本経済新聞. (2017年7月5日) . 2018閲覧.
- ↑ “百度、50社と自動運転 フォードなどと「アポロ計画」”. 日本経済新聞. (2017年7月5日) . 2017閲覧.
- ↑ “百度の自動運転バス量産開始 東京や深センで展開へ”. AFP (2018年7月6日). . 2018閲覧.
- ↑ Baidu, Inc.のプロダクト(英語)
- ↑ 中国IT大手・百度が日本語サイトを閉鎖、グーグル・ヤフーに敗北―中国メディア - 2015年4月20日 Record China
- ↑ Baidu.jp、Baidu Spiderに関する御詫びと対処法について(プレスセンター)(2007年6月30日時点のアーカイブ)
- ↑ Baidu.jp、負荷の少ない新型Spiderを投入(プレスセンター)(2007年6月30日時点のアーカイブ)
- ↑ 中国当局、「百度日本」への中国からのアクセスを遮断か インプレス
- ↑ 地図の境界線の例
- ↑ Baidu, Tencent Show ‘Patriotism’ as China, Japan Dispute Islands - Bloomberg News 2012年9月18日
- ↑ 中国「百度」製ソフト、入力の日本語を無断送信
- ↑ 中国百度がIME入力情報送信問題で見解を発表、「Simejiはバグでログ誤送信」
- ↑ 脆弱性を抱えるソフトウェア開発キット「Moplus」、実はバックドア機能の実装が判明
- ↑ 御池鮎樹「Baidu(百度)製開発ツールのバックドア」、『I/O アイオー』第41巻第1号、工学社、2016年1月、 109頁、 ASIN B016YNZ6VE。
外部リンク
- 百度中国 (Baidu China) (簡体字中国語)
- 百度日本 (Baidu Japan) (日本語)
- 百度介绍 (簡体字中国語)(会社紹介)