環礁
環礁(かんしょう、英語:atoll)は、環状に形成される珊瑚礁のことである。
概要
主に亜熱帯に分布している。最も北にある環礁は北西ハワイ諸島のクレ環礁である。また、最も南にある環礁はタスマン海にあるエリザベス礁である。
環状の礁の部分と、環礁内部の礁湖で構成される。環状の礁の外形は、大きいもので数十キロメートル、環の幅は広いもので数百メートルあり島を形成することがある。環は円になるとは限らず様々な形状をしており、水面に現れる部分が環状に点在するケースが多い。礁湖の海水が満潮時と干潮時に外洋に出入りする自然にできた水道(礁門)があり、船舶が礁湖に出入りできることが多い。モルディブなどは環礁で形成されている国として知られている。
形成過程については、チャールズ・ダーウィンが唱えた沈降説によって説明できる。すなわち、まず熱帯の火山島の周囲に珊瑚礁が形成される。その後、火山島が沈降することにより、珊瑚礁のみが上方に成長、中央の火山島が完全に海面下になると、環状の珊瑚礁のみが海面に残る。現在では、沈降の原因はプレート運動で説明される。したがって、環礁は海洋プレート上の、ホットスポットから離れた周辺部で、しかも低緯度の地域に存在する。
環礁上に形成される島を、環礁州島又は州島と言う[1]。珊瑚礁のみで形成されているため、州島の標高は低く、高いところでも数メートルである。礁湖の水深は50 - 80mであるが、礁の外縁の海底は急崖となっており、海岸よりさほど遠くないところで、水深4,000 - 6,000mの大洋底になっていることも珍しくない。礁湖の深さについては氷河制約説がその説明に使われる。
なお、環礁が大きく隆起すれば、周囲を絶壁で囲まれ、中央にくぼみのある島になる。これを隆起環礁といい、南大東島・北大東島などがその例である。
礁の利用
礁湖は、礁に囲まれた広大な水面を提供するため、艦船の避泊地として利用されてきた。第二次世界大戦がはじまる前から、日本海軍はトラック島などを根拠地として利用していた。戦後、日本の敗戦に伴い撤退している。大戦末期頃、太平洋における制海権を握り、太平洋を飛び石作戦で西進するアメリカ軍は、日本を攻めるために、その根拠地をウルシー環礁に求めた。
北半球の国々は、大戦前にこれらの島々を自国領としており、戦後の冷戦の時代に自国の大都市から遠く隔絶したこれらの島々をしばしば核実験の場(アメリカ:ビキニ環礁、エニウェトク環礁、フランス:ムルロア環礁、ファンガタウファ環礁、イギリス:キリスィマスィ島)として用いた。そのため核関連の用語としてニュースや文献などに頻出する。
環礁での生活
軍事基地・観光・援助によって生活している地区を除けば、礁湖や外洋における漁業によるものがほとんどである。陸地が少ないため、農業には向かず、また山地がないために清水の確保には雨水の利用が重要となる。
大規模な環礁
脚注
- ↑ -太平洋島嶼国とわが国国境の島々の国土維持- 茅根創、ニューズレター 第99号、2004年9月20日、海洋政策研究財団
- ↑ Atoll Area, Depth and Rainfall (2001) spreadsheet from The Geological Society of America. Retrieved d.d. October 1, 2009.
- ↑ http://conserveonline.org/workspaces/pacific.island.countries.publications/fsm/fsmblueprint
外部リンク
- Atoll (英語) - Encyclopedia of Earth「環礁」の項目。