無線従事者免許証
無線従事者免許証(むせんじゅうじしゃめんきょしょう)とは、電波法に規定する無線従事者として免許が与えられた者に交付される文書である。
略して従免と呼ばれる。
概説
電波法第41条第1項には「無線従事者になろうとする者は、総務大臣(旧:郵政大臣)の免許を受けなければならない。」とあるが、総務省令無線従事者規則(従前は「無線従事者国家試験及び免許手続規則」)第47条には 「総務大臣又は総合通信局長は、免許を与えたときは、別表第13号様式の免許証を交付する。」としている。この総合通信局長には、同規則第3条により沖縄総合通信事務所長が含まれる。
これは、電波法第104条の3および電波法施行規則第51条の15第1項第2号の3により、海上特殊無線技士、航空特殊無線技士、陸上特殊無線技士、第三級・第四級アマチュア無線技士については、総合通信局長又は沖縄総合通信事務所長に権限が委任されていることによる。
申請
期限は無い。国家試験合格、養成課程修了、学校等の卒業、認定講習課程修了、業務経歴の到達などの要件が満たされ次第、任意の時点で申請できる。
申請先
国家試験の実施地、養成課程の実施地(授業がeラーニングによる場合は実施者の事務所)、学校等の所在地、認定講習課程の実施地(講習がeラーニングによる場合は実施者の事務所)を管轄する総合通信局又は沖縄総合通信事務所に申請する。 但し、申請者の住所を管轄する総合通信局又は沖縄総合通信事務所に申請することができる。
申請手数料
2004年(平成16年)3月29日[1] より、1,750円。再交付は2,200円。訂正は規定されていない。
様式
運転免許証やクレジットカードと同じ大きさの縦54mm×横85mmのプラスチックカードでホログラムが施される。
資格の級別の表記は、「第一級陸上無線技術士」のように、「第○級」が前置され「○」の部分(数字)は、アラビア数字でなく漢数字である。
第一級海上特殊無線技士及び第三級・第四級アマチュア無線技士の英語による証明者は、総務大臣を意味する“Minister for Internal Affairs and Communications”である。
裏面には、英語表記のある種別では訳文があり、自署のある種別では申請者の自署が転写されている。
種別ごとに表記が異なる部分
種別 / 表記 | 英語表記 | 国際電気通信連合憲章に規定する証明書への該当証明 | 発行者 | 自署 |
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一総通 | あり | 無線通信士一般証明書 第一級無線電子証明書 航空移動業務及び航空移動衛星業務に関する無線電話通信士一般証明書 |
総務大臣 | あり |
二総通 | 第二級無線電信通信士証明書 制限無線通信士証明書 航空移動業務及び航空移動衛星業務に関する無線電話通信士一般証明書 | |||
三総通 | 海上移動業務に関する無線電信通信士特別証明書 無線電話通信士一般証明書 | |||
一海通 | 第一級無線電子証明書 | |||
二海通 | 第二級無線電子証明書 | |||
三海通 | 一般無線電子証明書 | |||
四海通 | 海上移動業務に関する無線電話通信士一般証明書 | |||
一海特 | 制限無線通信士証明書 | 所轄総合通信局長 | ||
航空通 | 航空移動業務及び航空移動衛星業務に関する無線電話通信士一般証明書 | 総務大臣 | ||
一陸技・二陸技 | なし | なし | なし | |
一アマ・二アマ | あり | |||
三アマ・四アマ | 所轄総合通信局長 | |||
その他 (二海特・二陸特など) |
なし |
免許証の番号
免許証の番号の記号(英字)について、無線従事者関係事務処理手続規程 [2] によるところにより、資格再編[3]前のものを含め示す。
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取扱い
無線従事者は、その業務に従事しているときは、無線従事者免許証を携帯していなければならない。 ただし、不携帯に関して罰則は無い[5]。
無線従事者は、取消し処分または再交付を受けた後、失った無線従事者免許証を発見したときは10日以内に、無線従事者が死亡または失踪宣告を受けたときには戸籍法の届出義務者は、無線従事者免許証を遅滞なく返納しなければならない[6]。
- 訂正
- 再交付
- 氏名の訂正は経過措置によるもの以外は再交付による[9]。
- 免許の年月日が昭和33年11月5日以前の免許証の再交付をすると、免許の年月日は昭和33年11月5日と表記される[10]。
- 資格再編前の免許証が再交付されると、種別は現行のものとなる。特殊無線技士(国際無線電話)と特殊無線技士(無線電話甲)は、各々、第一級海上特殊無線技士と第二級陸上特殊無線技士、第二級海上特殊無線技士と第二級陸上特殊無線技士とみなされるので、再交付されると1枚の免許証に二つの資格が列記される。
沿革
年 | 変遷 |
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1950年 (昭和25年) |
電波法[11]、無線従事者国家試験及び免許規則[12]が制定された。 |
1952年 (昭和27年) |
電波監理委員会廃止、通信行政が郵政省に移管した。[13]
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1954年 (昭和29年) |
大きさが縦140mm×横75mmとなった。 [15] |
1955年 (昭和30年) |
特殊無線技士(超短波海上無線電話)、特殊無線技士(中超短波海上無線電話)に交付される免許証には、免許の内容を英語で付記するものとされた。 [16] |
1957年 (昭和32年) |
特殊無線技士(無線電話甲)の新設にあたり交付される免許証には、免許の内容を英語で付記するものとされた。(特殊無線技士(超短波海上無線電話)、特殊無線技士(中超短波海上無線電話)は特殊無線技士(無線電話甲)とみなされた。) [17] |
1958年 (昭和33年) |
11月5日現在有効な免許証は、終身有効とされ、免許申請の添付書類は、身分証明書以外に、戸籍抄本または住民票抄本(外国人はこれに準ずるもの)も認められた。また、大きさが縦130mm×横80mmとなった。 [18] |
1960年 (昭和35年) |
横書きとなり交付者は郵政大臣。無線通信士と特殊無線技士(無線電話甲)に交付されるものの表紙には「RADIO OPERATOR LICENSE」と「JAPANESE GOVERNMENT」が付記されることとなった。 [19] |
1965年 (昭和40年) |
国家試験合格の日または養成課程修了の日から3ヶ月以内に申請しなければならないとされた。 [20] |
1968年 (昭和43年) |
免許申請の添付書類から、身分証明書 が削除され、住民票抄本が住民票の写しにかわり、大きさが縦115mm×横70mmとなり、無線通信士と特殊無線技士(無線電話甲)に交付されるものの「RADIO OPERATOR LICENSE」と「JAPANESE GOVERNMENT」の付記は表紙から1頁にかわった。 [21] |
1971年 (昭和46年) |
本籍地の都道府県または国籍の記載が削除され、無線通信士以外に交付されるものは表紙を含め全4頁(縦115mm×横140mmの紙を二つ折りにしたもの)となった。 また、特殊無線技士(無線電話甲)に交付されるものへの免許の内容の英語での付記が削除された。 [22] |
1975年 (昭和50年) |
免許申請書の一部が、免許証の台紙となり、氏名と生年月日は申請者が記入したものによるものとなった。
また、特殊無線技士、電信級・電話級アマチュア無線技士への交付者は、地方電波監理局長または沖縄郵政管理事務所長となった。 [23] |
1983年 (昭和58年) |
無線従事者国家試験及び免許規則が、無線従事者規則と改称された。 [24] 特殊無線技士、アマチュア無線技士に交付される免許証は、縦59mm×横89mmで紙片の両面に無色透明の薄板をラミネート処理で接着したものとなった。 また、アマチュア無線技士の免許申請にあたり、診断書は原則として不要となった。 [25]
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1985年 (昭和60年) |
地方電波監理局が、地方電気通信監理局と改称された。[26]
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1990年 (平成2年) |
資格が海上、航空、陸上の利用分野別に再編[3]された。 免許申請の添付書類が、戸籍抄本または住民票の写し(外国人はこれに準ずるもの)から氏名及び生年月日を証する書類とされた。 [28] 第一級海上特殊無線技士に交付される免許証には、免許の内容が英語で付記されるものとされ二枚組みとなった。(一枚目の裏面は英語による免許の内容、二枚目は注意事項) [29] |
1992年 (平成4年) |
第二級・第三級陸上特殊無線技士の免許申請にあたり、診断書は原則として不要となった。 [30] |
1994年 (平成6年) |
亡失届に関する規定が削除された。 [31] |
2000年 (平成12年) |
国家試験合格の日または養成課程修了の日から3ヶ月以内に申請しなければならない旨の規定は削除された。 [32] |
2001年 (平成13年) |
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2003年 (平成15年) |
全資格の免許申請にあたり、診断書は原則として不要となった。 [35] |
2004年 (平成16年) |
総務省の英語表記が変更され、写真への押出しスタンプは「日本国総務省 MINISTRY OF INTERNAL AFFAIRS AND COMMUNICATIONS JAPAN」となった。 |
2008年 (平成20年) |
第一級海上特殊無線技士に交付される免許証は無線通信士と同様の手帳型となり、また、無線通信士・第一級海上特殊無線技士の申請にあたり氏名は自署でなければならなくなった。 |
2009年 (平成21年) |
免許申請書に住民票コードまたは現に有する無線従事者免許証の番号、電気通信主任技術者資格者証の番号、工事担任者資格者証の番号のいずれかを記入すれば、氏名及び生年月日を証する書類の添付は不要になった。 [37] |
2010年 (平成22年) |
4月より、全資格のものがプラスチックカードとなった。 [38]
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2013年 (平成25年) |
4月より、免許申請は申請者の住所を管轄する総合通信局(沖縄総合通信事務所を含む。)にも申請書を提出できることとなった。 [39]
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参考 |
参考画像
平成22年3月31日以前発給の無線従事者免許証 | ||
平成22年4月1日以降発給の無線従事者免許証 | ||
その他
無線従事者免許証は、日本国旅券発給(旅券法施行規則第2条第1項の別表第3)や戸籍謄本請求(戸籍法施行規則第11条の2の別表第1)など官公庁の本人確認の際、1点で確認可能な身分証明書である。
世界においても、本人確認書類として利用できる可能性があり、国家によっては諸手続(銀行口座開設や役所手続)にパスポートを含め、2種類以上の政府発行の身分証明書(second form of ID, two forms of identification)を要求するところも多い。英語が併記された日本国政府の国家資格による免許証・資格証類は少なく、平成22年(2010年)4月から、ホログラムによる偽造防止対策も施されたため、信用度も上がり、利用範囲が広くなっている。
脚注
- ↑ 平成16年政令第12号による電波法関係手数料令改正
- ↑ 総基電第44号 無線従事者関係事務処理手続規程 (PDF) (総務省 所管法令等 通知・通達)
- ↑ 3.0 3.1 無線従事者制度の改革 平成2年版通信白書 第1章平成元年通信の現況 第4節通信政策の動向 5電波利用の促進(4)(総務省情報通信統計データベース)
- ↑ 沖縄総合通信事務所(従前は電波監理局、電気通信監理局または沖縄郵政管理事務所)を含む。
- ↑ 電波法施行規則第38条第8項
- ↑ 無線従事者規則第51条
- ↑ 平成21年総務省令第103号による無線従事者規則改正附則第4項
- ↑ 昭和33年郵政省令第28号による無線従事者国家試験及び免許手続規則改正附則第16項
- ↑ 無線従事者規則第50条
- ↑ 無線従事者制度 よくあるお問い合せ1の注2 (総務省電波利用ホームページ)
- ↑ 昭和25年法律第131号
- ↑ 昭和25年電波監理委員会規則第6号
- ↑ 昭和27年法律第280号による郵政省設置法改正
- ↑ 昭和27年郵政省令第32号による無線従事者国家試験及び免許手続規則改正
- ↑ 昭和29年郵政省令第30号による無線従事者国家試験及び免許手続規則改正
- ↑ 昭和30年郵政省令第43号による無線従事者国家試験及び免許手続規則改正
- ↑ 昭和32年郵政省令第24号による無線従事者国家試験及び免許手続規則改正
- ↑ 昭和33年郵政省令第28号による無線従事者国家試験及び免許手続規則全部改正
- ↑ 昭和35年郵政省令第23号による無線従事者国家試験及び免許手続規則改正
- ↑ 昭和40年法律第114号による電波法改正
- ↑ 昭和43年郵政省令第16号による無線従事者国家試験及び免許手続規則改正
- ↑ 昭和46年郵政省令第27号による無線従事者国家試験及び免許手続規則改正
- ↑ 昭和49年郵政省令第21号による電波法施行規則改正の施行
- ↑ 昭和58年郵政省令第2号による改正
- ↑ 昭和58年郵政省令第38号による無線従事者規則改正
- ↑ 昭和59年法律第87号による郵政省設置法改正
- ↑ 昭和60年郵政省令第5号による電波法施行規則改正
- ↑ 平成2年郵政省令第18号による無線従事者規則全部改正
- ↑ 平成2年郵政省令第62号による無線従事者規則改正
- ↑ 平成4年郵政省令第71号による無線従事者規則改正
- ↑ 平成6年郵政省令第12号による無線従事者規則改正
- ↑ 平成12年法律第109号による電波法改正
- ↑ 総務省設置法の施行
- ↑ 平成12年郵政省令第60号による電波法施行規則改正
- ↑ 平成15年総務省令第40号による無線従事者規則改正
- ↑ 平成19年総務省令第60号による無線従事者規則改正
- ↑ 平成21年総務省令第15号による無線従事者規則改正
- ↑ 平成21年総務省令第103号による無線従事者規則改正
- ↑ 平成24年総務省令第56号、平成25年総務省令第19号による電波法施行規則改正