無宗教
無宗教(むしゅうきょう)は、概して特定の宗教を信仰しない、または信仰そのものを持たないという思想・立場を指す。無宗教はしばしば無神論と混同されるが、それとは異なる概念である。
無宗教の背景と成立要件
無宗教が成立するには、以下の2つの要件があるとされる。
- 信仰を持たない自由を含めた信教の自由が保証されている国家で、居住環境周辺の共同体によって特定の信仰を強制されることが無い、あるいは回避しても社会的な制裁を科されることのない生活が保証され、なおかつ周知されていること。
- 特定の宗教や信仰に傾倒、ないし取り込まれることを能動的に避けるための、広範な知識や教養を得られる環境があること。
これらの条件を満たすことのない途上国などでは、自らがそれを望むと望まざるとを問わず、またそれを自覚し得るか否かをも問わず、自動的に何らかの文化的な因習・慣習を含む信仰・宗教に組み込まれ、離脱を許されずにいるとする見解もある。
無神論との違い
狭義の無神論は、神が存在しないことを積極的に主張することである。この点において、無神論は一種の思想であり主張である。一方で、無宗教とは宗教的主張がないことであり、神の存在を必ずしも否定しない。無宗教者の中には、特定の宗教に属していないが、神に類する超越的存在を認めている者もいる。また日本においては、神道における「八百万の神々」が潜在的に根付いており、「米粒には神様がいる」や「トイレの神様」など、いわゆる多神論的な環境となっているが、その中で「唯一の神」が存在しないことを積極的に主張する論理もある。
日本と無宗教
日本は統計上、無宗教を自覚する人の割合が多い国である。ただし、無宗教は無神論を意味しないため、習慣的に宗教的行為を行っている人も多い。また家がある寺の檀家であるため、本人の意識にかかわらず統計上仏教徒として扱われている場合もある。
規模
総数
2012年12月18日、調査会社ピュー・リサーチ・センターの発表の世界の宗教動向に関する調査によれば、世界の無宗教者(無神論者ではないことに注意)の総数は約11億人。キリスト教、イスラム教に続く規模[1]。
国別の調査
ギャラップの調査は無宗教に最も広い定義を用いている。質問は「宗教は重要ですか?」で、下の値は「いいえ」と答えた人の割合を示す。電通総研は「宗教を持たない」と答えた人の割合である。フィリップ・ズッカーマンの調査は無神論者と不可知論者であると答えた人の割合である。ギャラップの調査は2007年から2008年に、電通総研の調査は2006年に、ズッカーマンの調査は2005年に行われた。
イギリスで社会調査を行っている国立社会調査センター(National Centre for Social Research)が発表した信仰している宗教に関する調査によると、現在イギリスで何の宗教も信じていないという人の割合が、半数以上の53%に達したという。[2]
国・地域 | ギャラップ[3] | 電通[4] | ズッカーマン[5] |
---|---|---|---|
中国 | 93% | 8 – 14% | |
スウェーデン | 83% | 25% | 46 – 85% |
デンマーク | 80% | 10% | 43 – 80% |
ノルウェー | 78% | 31 – 72% | |
アゼルバイジャン | 74% | ||
チェコ | 74% | 64% | 54 – 61% |
フランス | 73% | 43% | 43 – 54% |
日本 | 73% | 52% | 64 – 84% |
イギリス | 71% | 31 – 44% | |
フィンランド | 69% | 12% | 28 – 60% |
モンゴル | 69% | 9% | |
オーストラリア | 68% | 24 – 25% | |
オランダ | 66% | 55% | 39 – 44% |
ニュージーランド | 66% | 20 – 22% | |
ベラルーシ | 65% | 48% | 17% |
キューバ | 64% | 7% | |
ロシア | 63% | 48% | 24 – 48% |
ベトナム | 61% | 46% | 81% |
台湾 | 58% | 24% | |
ドイツ | 57% | 25% | 41 – 49% |
ウルグアイ | 57% | 12% | |
韓国 | 54% | 37% | 30 – 52% |
イスラエル | 50% | 15 – 37% | |
シンガポール | 49% | 13% | |
アイルランド | 42% | 7% | |
チリ | 29% | 34% | |
アメリカ合衆国 | 33% | 20% | 3 – 9% |
キルギス | 31% | 7% | |
ギリシャ | 30% | 4% | 16% |
メキシコ | 29% | 21% | |
イタリア | 26% | 18% | 6 – 15% |
アイスランド | 4% | 16 – 23% | |
ルーマニア | 18% | 2% | |
ドミニカ共和国 | 17% | 7% | |
インド | 17% | 7% | |
イラク | 17% | ||
イラン | 16% | 1% | |
ペルー | 14% | 5% | |
プエルトリコ | 13% | 11% | |
南アフリカ共和国 | 12% | 11% | |
フィリピン | 5% | 11% | |
トルコ | 9% | 3% | |
ナイジェリア | 5% | 1% | |
アフガニスタン | 3% | ||
パキスタン | 3% | ||
アラブ首長国連邦 | 2% | ||
エジプト | 0% |
脚注
- ↑ “「無宗教」が世界の第3勢力、日本では人口の半数占める=調査”. ロイター (ロイター). (2012年12月22日) . 2012閲覧.
- ↑ イギリスで「自分は無宗教だ」とする成人の数が過半数を上回り過去最高に
- ↑ GALLUP WorldView - data accessed on 17 january 2009
- ↑ Dentsu Communication Institute 電通総研・日本リサーチセンター編「世界60カ国価値観データブック (日本語)
- ↑ The Largest Atheist / Agnostic Populations Zuckerman, 2005