清水市代
清水 市代(しみず いちよ、1969年1月9日 - [1])は、日本将棋連盟所属の女流棋士。高柳敏夫名誉九段門下[1]。女流棋士番号は7[1]。通算女流タイトル保持は43期[1]で歴代1位であり[2]、2016年2月現在、通算獲得数2位の里見香奈以下を大きく引き離している。
日本将棋連盟棋士会副会長(2009年4月 -2011年3月)[3]、日本将棋連盟女流棋士会会長(2015年6月 - 2017年6月)[4]、日本将棋連盟常務理事(2017年5月 - )[5][6]。
東京都東村山市出身[1] 。東京都立清瀬高等学校卒業[7]。
Contents
棋歴
女流プロになるまで
小学3年生の時、自宅で将棋教室を営む父親に将棋の手ほどきを受ける。ただ、小学生の頃は外で体を動かして遊ぶ方が好きな少女であり、遊びで怪我して以来将棋に向き合うようになり、将棋に本気で取り組むようになったのは中学に入ってからだった[8]。
理数系の科目が得意で、女流棋士になる以前は数学の教師になりたいという気持ちも持っていた[8]。
1983年、中学3年生のときに第15回女流アマ名人戦で優勝。女流棋士となった者の中には、中井広恵、林葉直子、矢内理絵子、千葉涼子、甲斐智美ら、男女の区別がない棋士を目指して奨励会に在籍した経験がある者もいるが、清水の場合は奨励会の経験はない[9]。
父親は、礼儀作法については厳しかったものの、将棋は勝ち負けにこだわるよりも楽しんでほしいという方針だったため、娘がプロになろうとしたことに最初は反対だったという[8]。
中学3年の終わり頃、高柳敏夫八段(当時)に入門[10]。年齢的に遅めのスタートだったが、高校2年生に上がった1985年4月1日に女流棋士(女流2級)となる[1][10]。これは女流育成会制度による初めてのプロ入りとなった。初期の女流育成会制度では、女流育成会の上位者と、女流棋士のなかの成績下位者との入れ替え戦が実施されていた。この入れ替え戦を勝ち抜いて女流棋士になったのは、清水市代だけである[11]。なお、高柳には「タイトルをとるまで、恋も化粧もするな」とよく言われたという[12]。
女流プロ入り後
詳細は、末尾の年表 を参照。
1987年度の第14期女流名人位戦[10]を皮切りに女流タイトルを次々獲得。林葉直子、中井広恵との三強を形成した。林葉が将棋界を離れた後も、中井との二強時代が続いた[12]。
1996年7月には、3年間遠ざかっていた女流王将に返り咲き、女流名人、女流王位、倉敷藤花と合わせて女流四冠独占を達成[10]。これにより文部大臣表彰も受けた[10]。同時期に羽生善治が七冠タイトルを独占していたことから、俗に「女羽生(おんなはぶ)」と呼ばれた[12]。
1996年7月17日に文部大臣表彰[7]、1997年に都民文化栄誉章をそれぞれ受ける[13]。
2000年、5度目の女流王将位を獲得して永世位にあたる「クイーン王将」となり、他の3タイトルのクイーン位と合わせて“クイーン四冠(全4タイトルを通算5期以上獲得)を達成[10]。その功績により、同年10月1日、女流棋士としては最高位となる「女流六段」が与えられた[10][1]。
2004年、中井との対戦が女流棋士同士では初の百番指しを記録。この時点での対戦成績は清水の60勝40敗である[14]。
2009年3月5日、第35期女流名人位戦で矢内理絵子に勝利し、40歳1ヶ月で女流名人位を奪取、従来の記録の2006年に斎田晴子が倉敷藤花を獲得した時の39歳11ヶ月の最年長女流タイトル獲得記録を更新した。
2010年10月11日、激指、GPS将棋、Bonanza、YSSによる多数決合議で指し手決定を行うコンピュータ将棋システム「あから2010」と対戦し敗北する[15]。
2010年10月28日、第32期女流王将戦で里見に敗れ、1992年3月に女流王将のタイトルを獲得してから18年7ヶ月ぶりに無冠となる。
2012年2月19日、第5回大和証券杯ネット将棋・女流最強戦準決勝を戦い、公式戦年間対局数単独歴代1位の49局を達成する[16]。また、3月22日、第39期女流名人位戦A級リーグ戦で中村真梨花女流二段に勝ち、公式戦年間勝数単独歴代1位の40勝を達成する[17]。最終的に2011年度の成績は、対局55局で40勝15敗だった。
2012年3月26日、第23期女流王位戦挑戦者決定戦で里見に敗れたため[18]、女流王位戦登場連続19年で記録が止まる[19]。
2014年3月14日、第25期女流王位戦挑戦者決定戦で中井に勝利し、2012年2月以来のタイトル戦出場を決めた。五番勝負では甲斐智美に第1局で勝利するも、その後3連敗し、タイトル獲得はならなかった[20]、
2014年第36期女流王将戦は前回2回戦で敗退したが、里見が体調不良で欠場し、清水がクイーン称号を持っているため、シードとして本戦に出場。本戦決勝では上田初美女流二段に勝利して香川愛生への挑戦権を得た。三番勝負では第1局で勝利するも第2、第3局で連敗して7年ぶりのタイトル獲得はならなかった。
また、第41期女流名人リーグでは6勝3敗でプレーオフの末、3年ぶりに挑戦権を獲得。しかしタイトル戦では里見香奈に3連敗でタイトル獲得を逃す。
2015年第42期女流名人リーグでは8勝1敗で2年連続の挑戦権獲得となるも、フルセットの末2勝3敗でタイトル獲得を逃す。
2016年第43期女流名人リーグでは旧A級リーグ時代を含めて最上位リーグで初の負け越しを喫し、第14期に昇級して以来初の最上位リーグ陥落。
2018年1月19日、第45期女流名人戦予選でカロリーナ・ステチェンスカに敗れ、女流名人リーグ連続在位記録が31期でストップした(女流名人タイトル保持、女流名人リーグA級時代を含む)。一方、第29期女流王位戦では挑戦者決定リーグ白組で優勝するが、挑戦者決定戦で渡部愛に敗れ、約3年ぶりのタイトル挑戦はならなかった。
連盟常務理事として
2017年5月に、日本将棋連盟常務理事に就任[6]。連盟の常勤の理事は株式会社の取締役に相当する。女流棋士が連盟の常勤の理事となったのは、清水が史上初である[6]。清水の担当業務は渉外部・事業部であるため[5]、連盟機関誌『将棋世界』の奥付に「Producer 清水市代」とクレジットされている[21]。
人物
- 市代という名前は、父親の名前の一字に「“代”という字を付けたかった」ということで名付けられた[22]。
- かつては女流棋士を弟子に持つ唯一の女流棋士であった[23]。1999年の女流王将戦で、弟子の石橋幸緒と師弟対決が実現し石橋が清水からタイトル奪取した[24]。
- 勝負に徹する堅い性格のイメージがあるが、おちゃめな一面も持っており、著書や将棋雑誌のエッセイなどではかなりくだけた文体で文章を書く[25]。
- 対局中はいつも背筋をピンと伸ばす、駒音はほどほどにするなど、作法にこだわりがある[26]。
- 自宅にて子供向け将棋教室「ショウギ・キッズ・ハウス」を開いている[27]。
- 趣味は読書(池波正太郎の時代小説などが特にお気に入り)、茶道(表千家)、家庭菜園など[8]。
テレビ出演
- 1993年1月20日放送のさすらい刑事旅情編V「山形新幹線・殺意の名将戦振り飛車の女」に女流棋士・森川成美役で出演。他に、同じく女流棋士の斎田晴子とプロ棋士の小林健二も共演している[7]。
- 1993年4月~1996年3月、NHK-BS「囲碁・将棋ウィークリー」(現「囲碁・将棋ジャーナル」)の司会を担当[7]。
- 2003年4月から半年間、女流棋士として初めてNHK将棋講座の講師を務めた[7]。
- 2014年4月から2016年3月にかけてNHK杯テレビ将棋トーナメントの司会を担当した[2]。
表彰
- 1996年7月 - 文部大臣表彰[1][10]
- 1997年2月 - 都民文化栄誉章[1][10]
- 2000年11月 - 東村山市民栄誉賞[1][10]
- 2008年8月 - 倉敷市将棋文化栄誉章[1][28]
- 2009年 - 現役勤続25年[1]
おもな成績
女流タイトル・永世称号
詳細は末尾の年表 を参照。 他の女流棋士との比較は、棋戦 (将棋)#女流タイトル 、および、将棋の女流タイトル在位者一覧 を参照。
タイトル | 番勝負 | 獲得年度 | 登場 | 獲得期数 | 連覇 | 永世称号資格 |
女王 | 五番勝負 4-5月 |
- | - | - | - | |
女流王座 | 五番勝負 10-12月 |
- | 1 | - | - | |
女流名人 | 五番勝負 1-2月 |
87(第14期)、89、94-98、03-04、08 | 20 | 10期 (歴代1位) |
5 (歴代2位) |
クイーン名人 |
女流王位 | 五番勝負 4-6月 |
93(第4期)-96、98-06、09 | 20 | 14期 (歴代1位) |
9 (歴代1位) |
クイーン王位 |
女流王将 | 三番勝負 10月[注 1] |
91…93(第14、15期)、96(第18期)、 98、00-01、07-09 |
15 | 9期 (歴代2位) |
3 (歴代2位タイ) |
クイーン王将 |
倉敷藤花 | 三番勝負 11月 |
94(第2期)-00、04-05、07 | 14 | 10期 (歴代1位) |
7 (歴代1位) |
クイーン倉敷藤花 |
登場回数合計70回、 獲得合計43期 = 歴代1位 (番勝負終了前は除く。最新は2016年2月の女流名人戦敗退) |
女流一般棋戦優勝
優勝年度・詳細は末尾の年表 を参照。
- 合計11回
記録(歴代1位のもの)
※2016年2月24日現在
- 女流タイトル戦関連
- 通算女流タイトル獲得 - 43期
- 女流タイトル戦登場回数 - 70回
- 同一女流タイトル獲得 - 14期(女流王位:1993-1996・1998-2006・2009年度)
- 同一女流タイトル戦連続登場回数 - 19期(女流王位:1993-2011年度)
- 同一女流タイトル戦通算登場回数 - 20期(女流王位:1993-2011・2014年度、女流名人:1987-1990・1992・1994-1999・2003-2005・2008-2011・2014-2015年度)
- 優勝関連
- 通算女流公式戦優勝回数 - 54回(女流タイトル戦43・女流一般棋戦11)
- 女流一般棋戦優勝 - 11回
- 将棋大賞関連
- 女流最高賞受賞回数 - 13回(女流棋士賞8回・最優秀女流棋士賞5回)
- 女流最多対局賞受賞回数 - 3回(2010・2011・2014年度)
- 女流年度最多対局 - 55局 (2011年度)
- その他
著書
- 『清水市代の将棋トレーニング』(NHK出版)ISBN 978-4-14-016139-5
- 『天辺―将棋・女流トッププロの生き方』(毎日コミュニケーションズ)ISBN 4-8399-1522-9
- 『清水市代の囲いのエッセンス』(毎日コミュニケーションズ)ISBN 978-4895635943
脚注
- ↑ 2008年度以前の女流王将戦は、5月から7月にかけて五番勝負として行われた(休止になりかかったが、スポンサーが替わって年度中に復活)。また、1992年度は開催されなかった。
出典
- ↑ 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 1.12 1.13 1.14 “女流棋士データベース 女流六段 清水市代”. 日本将棋連盟. 2018年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2018閲覧.
- ↑ 2.0 2.1 “高校の授業と対局の両立…清水市代さん”. 読売新聞 (2015年4月13日). . 2016閲覧.
- ↑ “新棋士会発足について”. 日本将棋連盟 (2009年4月6日). . 2016閲覧.
- ↑ “女流棋士会 新役員のお知らせ”. 日本将棋連盟女流棋士会 (2015年6月25日). . 2016閲覧.
- ↑ 5.0 5.1 “日本将棋連盟新役員のお知らせ”. 日本将棋連盟 (2017年5月29日). 2018年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2018-2-21閲覧.
- ↑ 6.0 6.1 6.2 “将棋連盟新理事紹介〈7〉清水市代女流六段「力の限り尽くして参りたい」女性初の常勤理事”. スポーツ報知 (2017年5月30日). 2018年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2018-2-21閲覧.
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 『天辺―将棋・女流トッププロの生き方』p.218 - 223
- ↑ 8.0 8.1 8.2 8.3 婦人公論 1998年12月7日号 p.179 - 181
- ↑ 道新TODAY(北海道新聞社)2002年4月号 p.152
- ↑ 10.0 10.1 10.2 10.3 10.4 10.5 10.6 10.7 10.8 10.9 “東村山市在住のあの人・この人-清水市代”. 東村山市商工会. 2018年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2018閲覧.
- ↑ 『天辺―将棋・女流トッププロの生き方』p.48 - 50
- ↑ 12.0 12.1 12.2 週刊朝日 1996年7月19日号 p.37 - 39
- ↑ ふれあいケア(全国社会福祉協議会)2001年6月号 p.4 - 8
- ↑ 将棋世界 2005年2月号 p.46 - 53
- ↑ “清水市代女流王将vs.あから2010速報”. 一般社団法人情報処理学会 (2010年10月12日). . 2016閲覧.
- ↑ 日本将棋連盟 2012年2月21日 『清水女流六段、年間対局数単独歴代1位に』 - 日本将棋連盟、2016年1月31日閲覧
- ↑ 日本将棋連盟 2012年3月22日 『清水女流六段、年間勝数単独歴代1位に』 - 日本将棋連盟、2016年1月31日閲覧
- ↑ “過去の棋譜(第23期)挑戦者決定戦(2012年3月26日)”. 日本将棋連盟. . 2016閲覧.
- ↑ 産経新聞 2012年3月27日 将棋関係面
- ↑ “女流王位戦に関するトピックス”. 朝日新聞. . 2016閲覧.
- ↑ 『将棋世界』2018年8月号 奥付。
- ↑ 『天辺―将棋・女流トッププロの生き方』p.16
- ↑ 『清水市代の囲いのエッセンス』p.147
- ↑ 朝日新聞 1999年6月30日 将棋関係面
- ↑ 『天辺―将棋・女流トッププロの生き方』p.21、173、175、177、185 など
- ↑ 第三文明(第三文明社)2010年5月号 p.34 - 37
- ↑ 『天辺―将棋・女流トッププロの生き方』p.27 - 28
- ↑ 清水市代倉敷藤花・女流王将に倉敷市将棋文化栄誉章 - 日本将棋連盟、2016年1月31日閲覧
- ↑ 第37期ユニバーサル杯女流名人位戦 - 日本将棋連盟、2016年1月31日閲覧
- ↑ 第38期ユニバーサル杯女流名人位戦 - 日本将棋連盟、2016年1月31日閲覧
関連項目
外部リンク
女流タイトル(4冠)43期 |
---|
テンプレート:女流名人位戦 テンプレート:女流王将戦 テンプレート:女流王位戦 テンプレート:倉敷藤花戦 |
一般棋戦優勝 11回 |
---|
テンプレート:鹿島杯女流将棋トーナメント テンプレート:大和証券杯ネット将棋・女流最強戦 |
将棋大賞 |
---|
テンプレート:将棋大賞特別賞 テンプレート:将棋大賞最優秀女流棋士賞 テンプレート:将棋大賞女流棋士賞 テンプレート:将棋大賞女流最多対局賞 |