海上保安大学校

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海上保安大学校
大学校設置/創立 1951年
大学校種別 省庁大学校
設置者 海上保安庁
本部所在地 広島県呉市若葉町5-1
キャンパス 広島(広島県呉市)
学部相当 本科(4年間)[1]
専攻科 専攻科(6ヶ月)[1]
ウェブサイト www.jcga.ac.jp


海上保安大学校(かいじょうほあんだいがっこう、英語:Japan Coast Guard Academy)は、広島県呉市若葉町5-1に本部を置く、国土交通省所管の省庁大学校である。1951年に設置された。大学校の略称は海保大または保大[2][1]日本国海上保安庁の幹部職員(幹部海上保安官[3])の養成を目的に設置されている同庁の施設等機関である。設置根拠は国土交通省組織令第二百五十四条。

概要

本大学校の目的は、国土交通省組織令で次のように規定されている。

(海上保安大学校)
第二百五十五条 海上保安大学校は、海上保安庁の職員に対し、幹部としての職務を遂行するに必要な知識及び技能を修得させるための教育訓練並びに海上保安業務を遂行するに必要な専門的知識又は特殊技能を修得させるための教育訓練を行うことをつかさどる[4]

また、海上保安庁法(昭和23年法律第28号)第33条の2 [5]により、「海上保安大学校の名称、位置及び内部組織に関する庁令」(昭和36年10月16日海上保安庁令第二号)[6]にも規定されている。

本大学校の基本理念は、「人格の陶冶とリーダーシップの涵養」、「高い教養と見識の修得」、「強靭な気力・体力の育成」の3点である。

身分・採用試験

本科学生は、幹部海上保安官となるべき者の教育を前提にしており、卒業後に三等海上保安正に任官する。その後専攻科で3ヶ月間世界一周の遠洋航海、国際業務課程を経て12月に現場に配属される。学生の身分は一般職国家公務員たる「海上保安庁職員」であるが、「海上保安官」ではなく階級は指定されない。強いて言うならば「学生」という階級である。

海上保安大学校は一般大学と同じように入校試験に合格する必要があるが、一般の大学入試とは異なり、入校すると国家公務員としての「課業」となるため、入学試験ではなく「採用試験」が正式な呼称である[7]

応募条件には年齢や日本国民であることなど海上保安官となる条件を満たしていることが必要であり、一般的な大学の出願条件とは異なる。全寮制であり[1]、学生は、入校と同時に一般職の国家公務員として海上保安庁の職員に採用され、学費は必要なく給与が支給される(2017年現在で俸給月額約14万円)[1]。このように給与の支給される国土交通省の省庁大学校は、気象大学校航空保安大学校があり、特別職の国家公務員では防衛省防衛大学校防衛医科大学校などがある。

沿革

年表

  • 1951年(昭和26年)4月 - 海上保安庁の附属機関として設置される
  • 1951年(昭和26年)6月 - 本科第1期生入学式を行う
  • 1952年(昭和27年)4月 - 東京都江東区深川越中島の仮校舎から広島県呉市に移転
  • 1952年(昭和27年)7月31日 - (昭和27年法律第267号)海上公安局法の公布により、「海上公安大学校」を置くとされる
  • 1954年(昭和29年)7月1日 - (昭和29年法律第164号)防衛庁設置法附則の第2項により海上公安局法の廃止
  • 1965年(昭和40年)4月 - 講座制を採用する
  • 1966年(昭和41年)2月 - 本科卒業生に大学大学院修士課程への入学資格が付与される
  • 1980年(昭和55年)4月 - 女子学生が初めて入学する
  • 1992年(平成4年)3月 - 本科卒業生に学位授与機構(後に独立行政法人大学改革支援・学位授与機構)から「学士(海上保安)」の学位が授与されることとなる
  • 2006年(平成18年)3月26日 - 第89代内閣総理大臣小泉純一郎)が、内閣総理大臣として初めて卒業式に出席する[8]

基礎データ

所在地

  • 〒737-8512 広島県呉市若葉町5-1

組織

本科(学部相当)

毎年50人程度が本科に入学する。大学校全体の学生数は200人程度であり、そのうちの1割程度が女子である。

2016年度採用の学生より定員が60名となり、同時に女子学生の割合も以前と比べて高くなっている。

専攻

    • 第一群(航海)専攻
    • 第二群(機関)専攻
    • 第三群(情報通信)専攻

特修科

専攻科

その他

  • 各種研修
    • 語学研修
    • 潜水研修
    • 初任監督者研修
    • 中堅幹部研修
  • 講座
    • 基礎教育講座
    • 海事工学講座
    • 海上警察学講座
    • 海上安全学講座
  • 国際海洋政策研究センター
    • 国際海洋政策に関する学際的かつ総合的な研究を推進するため、2002年(平成14年)5月30日に設置された。
      政策研究大学院大学と海上保安庁、海上保安大学校の連携プログラムである海上保安政策課程(Maritime Safety and Security Policy Program)の後期課程が行われる[9][10]
  • 海上保安シミュレーションセンター
  • 事務局
    • 総務課
    • 会計課
  • 教務部
    • 教務課
  • 訓練部
    • 訓練課
    • 学生課
  • 図書館
  • 医務室

教育

1年次と2年次は基礎教育科目を学び、2年次からは専門教育科目の履修が始まる。2年次後期から第一群(航海)、第二群(機関)、第三群(情報通信)の各専攻に分かれ、専門基礎科目(群別科目)を学ぶ[1]。3年次と4年次になると国内航海実習が行われる。また、4年間を通して専門基礎科目(共通)や訓練科目、実習科目を勉強する。本科卒業生に対し、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構から「学士(海上保安)」(日本国内では本校のみで得られる)の学位が授与される[1]。本科卒業生は、その後専攻科(約6ヶ月間)に進み、実務教育が開始され、3ヶ月の世界一周遠洋航海実習に参加し国際感覚を身に付ける。他にも各管区の海上保安官が希望により2ヶ月の潜水訓練を受けることが出来る(映画「海猿」で取り上げられた)。また、2011年度から、語学力向上や国際的な実務対応のために研修科国際業務課程を開設[11]。2017年度入校生よりカリキュラム変更が行われており、主なものとしては20年ぶりの1学年乗船実習復活や柔剣道の廃止などがある。

本科の教育体系

専攻科

練習船「こじま」による世界一周遠洋航海実習など、6ヶ月間の実務教育が実施される。

研修科 国際業務課程

2011年度から実施しており、専攻科を修了した初級幹部職員に対し、実用英語能力や国際関係知識等を付与する。期間は3カ月。

学生生活

寮内の生活について、以下に説明する。

食事
食事は週末を除き、1日3回提供される。週末は希望すれば弁当を取ることができる。ちなみに食費は毎月の給料から天引きされる。
「5分前精神」
平日の起床は6時30分である。6時25分になると「総員起こし5分前」の放送が流れる。学生は直ちに起床し、作業服に着替え、布団をきちんとたたみ、5分以内に寮前広場に整列しなければならない。その後は「海上保安体操」が待っている。体操が終わったら次は朝掃除をしなくてはならない。掃除の分担は学生班の班長が決めることになっている。掃除が終わるとようやく朝食をとることができる。海上保安庁では、海上自衛隊同様、大日本帝国海軍伝統の「5分前精神」がある。
自習室
生活の最小単位は「自習室」である。基本的に1年生から4年生が一人ずつ、計4名から構成される。人数の都合上、5人の自習室も存在する。自習室には学習机と椅子、スチールロッカーが置かれ、勉強をすることができる。各自習室の部屋長は基本的にその部屋の4年生である(4年生がいない場合は3年生になる)。寝室は自習室の廊下を挟んだ反対側にあり、3部屋分の学生を収容する。「自習室」が8-9個集まった単位が「班」である。整列時、訓練時はこの「班」が基本単位になる。
オリエンテーション
4月の初めに着校した新入生に対し、3, 4年生から構成されたオリエンテーション委員が行う生活指導のことをオリエンテーションという。寮での生活規則、海上保安体操、基本動作、校歌などを1年生に叩き込む。1週間ほど行われ、このオリエンテーションを終えて晴れて入学式を迎え、制服を着ることができる(オリエンテーション中は作業服しか着ることができない)。普通の高校生活を過ごしてきた新入生にとって、この最初の1週間はかなりハードである。
外出
平日は午後5時15分から、休日は午前6時30分から外出ができる。門限は午後10時15分、休日の前日は午後10時45分。
長期休暇
夏期に約4週間、冬期と春期に約2週間あり、原則として寮が閉鎖される。

体育部

「強靭な気力・体力の錬成」を目的として全学生が参加する。「学校教育法に於ける大学」ではないが、防衛大学校防衛医科大学校等と共に参加を認めている大会もある(全国国公立大学選手権水泳競技大会など)。


施設

交通アクセス:JR呉線吉浦駅下車、広電バスで「池の浦」下車、徒歩約400m。

  • 男子寮:三ツ石寮(自習室、寝室、食堂、談話室、理髪店、売店(ポプラ)、情操教室、大浴場
  • 女子寮:麗女(うるめ)寮(寝室、談話室、浴室(窓がない)、シャワー室、トイレ、洗面所)

対外関係

関係校

系列校

海上保安庁には、初級職員となる者の教育を担当する以下の施設がある。

脚注

参考文献

  • 海上保安大学校『海上保安大学校30年史』海上保安大学校、1983年 ASIN: B000J7EYM4 ASIN B000J7EYM4
  • 海上保安大学校五十年史編集委員会編『海上保安大学校五十年史』海上保安協会、2002年 全国書誌番号:20316922
  • 海上保安協会監修、海上保安受験研究会編『海上保安大学校・海上保安学校への道-平成17年版』成山堂書店、2005年 ISBN 978-4425970230
  • 神倉力海『駈ける青春-海上保安大学校練習船の世界一周同乗記』毎日新聞東京センター、2003年 全国書誌番号:20572500
  • 佐藤潤子『海を駆ける風-女性キャプテン誕生の航跡』メディアハウス、1988年(女子第1期生の体験記) ISBN 978-4915629235

関連項目

外部リンク



座標: 東経132度31分37.6秒北緯34.246167度 東経132.527111度34.246167; 132.527111