波動方程式

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波動方程式(はどうほうていしき、: wave equation)とは、

[math]\frac{1}{s^2}\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} = \Delta u[/math]

で表される定数係数二階線型偏微分方程式の事を言う[1]s は波動の位相速度 (phase velocity) を表す係数である。波動方程式は振動電磁波など振動・波動現象を記述するにあたって基本となる方程式である。

概要

3次元のケース時刻 t におけるある位置の振動の変位を表す未知関数を u, 振動の位相速度を s とすると、u は往々にして波動方程式

[math]\frac{1}{s^2}\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} = \frac{\partial^2 u}{\partial x^2} + \frac{\partial^2 u}{\partial y^2} + \frac{\partial^2 u}{\partial z^2} [/math]

と書かれる[2]

なお、記述される波動現象によって u の座標変数は変わってくるため、それに伴い波動方程式の形状も異なってくる。

  • 1次元の波動方程式(主な現象:弦の振動[3]
[math]\frac{1}{s^2}\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} = \frac{\partial^2 u}{\partial x^2} [/math]
  • 2次元の波動方程式(主な現象:膜の振動[4]
[math]\frac{1}{s^2}\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} = \frac{\partial^2 u}{\partial x^2} + \frac{\partial^2 u}{\partial y^2} [/math]

振動・波動現象と呼ばれるものは一般に空気など媒質の振動現象を指し主に流体力学弾性体力学の扱うところである。ただし、例外として電磁波は、媒質の振動現象と同じく波動方程式で記述されるが、媒質が存在せず[5]、正確に取り扱うには特殊相対性理論を考慮された電磁気学の議論が必要である。

波動方程式の解法

関連項目

関連人物

脚注

  1. 大石 (1989) p. 126
  2. ラプラス作用素 [math]\Delta \equiv \frac{\partial^2 }{\partial x^2} + \frac{\partial^2 }{\partial y^2} + \frac{\partial^2 }{\partial z^2}[/math] を用いて
    [math]\frac{1}{s^2}\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} = \Delta u[/math]
    と記述される場合も多い。さらにダランベール演算子
    [math] \square_s \equiv \Delta - {1 \over s^2} {\partial^2 \over {\partial t^2}} [/math]
    を用いて
    [math] \square_s u = 0 [/math]
    と記述されることもある。
  3. 恒藤 (1983)
  4. 恒藤 (1983)
  5. 物質として媒質が存在しないという意味で、電磁場が媒介する。電磁的な方程式は任意の慣性系で不変なため、別の慣性系に移行するときに通常の物質を媒介する波とは異なる挙動を見る。

参考文献

  • 恒藤 敏彦 『弾性体と流体』 岩波書店〈物理入門コース 8〉、1983年。ISBN 4000076485。
  • 際本 泰士 『振動・波動論講義―物理実験を取り入れて』 コロナ社、2005年。ISBN 4339066095。
  • 大石 進一 『フーリエ解析』 岩波書店〈理工系の数学入門コース 6〉、1989年。ISBN 4000077767。